身代わり出頭で書類送検①
身代わり出頭について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
公務員のAさんは、兵庫県多可郡多可町を運転中、物損事故を起こしてしまいました。
事故を起こしたことが職場に発覚することを恐れたAさんは、慌てて家族に連絡を入れました。
事情を把握したAさんの母親のBさんは、急いで現場に駆け付けました。
Aさんの将来を案じて、今回の事故はBさんが起こしたことにしようということになり、Bさんは兵庫県西脇警察署に出頭しました。
しかし、取調べでのBさんの供述が腑に落ちないと感じた警察官が、Bさんを問い詰めたところ、実はAさんが事故を起こしたことが発覚しました。
兵庫県西脇警察署は、Aさんを道路交通法違反と犯人隠避教唆の疑いで神戸地方検察庁社支部に書類送検しました。
母親のBさんも犯人隠避の疑いで書類送検されました。
(フィクションです)
身代わり出頭
交通違反や交通事故を起こしてしまったが、「免許の点数の残りが少ないから、これで行政処分を受けるのは避けたい…。」とか、「経歴に傷がついてしまうのは嫌だ…。」といった理由で、本人ではなく第三者が代わりに警察署などに出頭するという身代わり出頭事件は度々ニュースで話題になっていますね。
しかし、身代わり出頭を頼んだ側も、その要求を受けた側も刑事責任を負うことになるのです。
身代わり出頭を引き受けた側の責任
何らかの罪や法律違反に該当するような行為を行った者の代わりに、自らが行ったと警察署などに出頭した場合には、刑法上の犯人隠避罪が成立する可能性があります。
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
犯人隠匿罪の構成要件(犯罪類型)は、
①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を
②隠避させたこと
です。
本罪の客体は、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃亡した者」です。
前者の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」における「罰金以上の刑に当たる罪」というのは、法定刑に罰金以上の刑を含む罪を指します。
「罪を犯した者」とあるので、訴追・処罰の可能性がある者でなければなりません。
過去の判例は、「罪を犯した者」の意義について、犯罪の嫌疑を受けて捜査・訴追されている者と解しています。
告訴権の消滅や、時効の完成などにより訴追・処罰の可能性がなくなった者については、本罪の客体とはなりません。
一方で、保釈中の者であっても、その行方をくらませば公判手続・刑の執行に支障が生じるので、保釈中の者は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当します。
また、後者の「拘禁中に逃走した者」についてですが、法令により拘禁されている間に逃走した者のことです。
次に、本罪の行為である「隠避」とは、「蔵匿」以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れしめるべき一切の行為をいいます。
「蔵匿」は、官憲による発見・逮捕を免れるべき隠匿場所を提供することです。
逃走のために資金を調達することや、身代わり犯人を立てるなどの他にも、逃走者に捜査の形勢を知らせて逃避の便宜を与えるなどの場合も「隠避」に含まれます。
加えて、本罪の成立には、客体である被隠避者が罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であること、または拘禁中逃走した者であることを認識し、かつ、これを隠避することを認識すること(故意)が必要となります。
「罰金以上の刑にあたることの認識」について、過去の裁判例は、罪を犯した者または拘禁中に逃走した者であることの認識で足り、その法定刑が罰金以上であることまで認識している必要はないと解しています。(最決昭29・9・30)
以上のように、犯人の代わりに警察署などに出頭した場合には、犯人隠避罪に問われる可能性があるのです。
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