身代わり出頭で書類送検②

2019-05-26

身代わり出頭で書類送検②

~ケース~
公務員のAさんは、兵庫県多可郡多可町を運転中、物損事故を起こしてしまいました。
事故を起こしたことが職場に発覚することを恐れたAさんは、慌てて家族に連絡を入れました。
事情を把握したAさんの母親のBさんは、急いで現場に駆け付けました。
Aさんの将来を案じて、今回の事故はBさんが起こしたことにしようということになり、Bさんは兵庫県西脇警察署に出頭しました。
しかし、取調べでのBさんの供述が腑に落ちないと感じた警察官が、Bさんを問い詰めたところ、実はAさんが事故を起こしたことが発覚しました。
兵庫県西脇警察署は、Aさんを道路交通法違反と犯人隠避教唆の疑いで神戸地方検察庁社支部書類送検しました。
母親のBさんも犯人隠避の疑いで書類送検されました。
(フィクションです)

身代わり出頭

前回は、身代わり出頭を頼まれた側の刑事責任について説明しました。
今回は、身代わり出頭を頼んだ側についてみていきたいと思います。

上記ケースでは、物損事故を起こしたのはAさんです。
自動車やバイク等を運転中に、他の車等に接触するなどの物損事故を起こしたにもかかわらず、道路の危険を防止することなく現場から離れています。
これは、いわゆる「当て逃げ」で、当て逃げは道路交通法違反となります。
運転手は、交通事故を起こした場合、人身か物損かを問わず、適切な処置を講じて警察に報告しなければなりません。
事故により道路上に危険が生じた場合には、それを防止する措置を講じなければならず、この措置をとらなかった場合には、危険防止等措置義務違反となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられる可能性があります。(道路交通法第117条の2)
また、報告義務に違反した場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。(道路交通法第119条第1項10号)
ですので、まず、Aさんに問われる罪としては、道路交通法違反が考えられます。

加えて、他人に身代わり出頭を頼んだ行為については、犯人隠避罪の教唆犯が成立する可能性があります。

教唆犯とは

「教唆犯」とは、「人を教唆して犯罪を実行させた者」をいいます(刑法第61条1項)。
教唆犯が成立するためには、
①教唆者が「人を教唆」して、
②被教唆者が「犯罪を実行」したこと
が必要となります。
ここでいう「教唆」というのは、他人を唆して犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。
判例は、「教唆犯の成立には、ただ漠然と特定しない犯罪を惹起せしめるにすぎないような行為だけでは足りないけれども、いやしくも一定の犯罪を実行する決意を相手方に生ぜしめる手段、方法が指示たると指揮たると、命令たると嘱託たると、誘導たると慫慂たるとを問うものではない」と解しています(最判昭26・12・6)。
日時、場所、方法、犯罪対象などの細部を常に特定する必要まではなく、具体的事情によって被教唆者に一定の犯罪行為をなすべきことを了解させる程度に達していればよいと解されます(大判大5・9・13)。

犯人隠避罪の教唆

犯人等が自ら逃げ隠れすることは犯人隠避罪の行為には当たりませんが、犯人自身を隠避させるよう教唆した場合に、本罪の教唆罪が成立するか否かについては議論があります。
大きく分けると、犯人自身による蔵匿が処罰の対象ではないならば、より間接的な犯罪への関与である教唆は、なおさら可罰性がないという消極説と、他人の教唆は定形的に期待可能性がないとはいえないとして処罰を求める積極説とが主張されています。
これに対して、判例は、防御権の乱用を根拠として、教唆罪の成立を肯定しています。
例えば、道路交通法違反の罪を犯した暴力団の組員が、配下の者を身代わりとして警察に出頭させた事件についても、犯人隠避罪の教唆罪の成立を肯定しています(最決昭60・7・3)。

教唆犯には、「正犯の刑を科する」と規定され、刑の必要的減刑が受けられる幇助犯よりも重い関与類型です。
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