落とし物の取得は窃盗?

2021-02-03

他人の落とし物取得した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
Aさんは、兵庫県豊岡市のホテルに宿泊していました。
Aさんは、ホテルのエレベーター内に財布が落ちているのを見つけ、その財布を拾い上げ自分のポケットに入れました。
後日、Aさんは、兵庫県豊岡北警察署から「△△ホテル内で財布を拾われた件について話を聞きたい。」と連絡を受けました。
ホテルの防犯カメラの映像からAさんが特定されたようですが、Aさんは自分がどのような罪に問われるのか心配しています。
(フィクションです。)

他人の落し物を自分のものとして取った場合、窃盗罪、あるいは占有離脱物横領罪が成立するものと考えられます。

1.窃盗罪

窃盗罪は、他人の財物を、不法領得の意思をもって窃取する罪です。

◇客体◇

窃盗罪の客体は、「他人の財物」です。
「他人の財物」とは、「他人の占有する財物」のことをいいます。
つまり、窃取時に、他人の占有下にある物のことです。
刑法上の「占有」は、支配意思をもって財物を支配することにより、これを事実上支配することをいうとされています。
つまり、「占有」は、占有の事実(客観的要素)と占有の意思(主観的事実)という2つの要素から構成されているものと考えられているのです。

占有の事実については、占有者が財物を事実上支配している状態をいい、事実上の支配の有無の客観的な基準として、財物自体の特性、占有者の支配の意思の強弱、距離などの客観的物理的な支配関係の強弱が考慮されます。
例えば、被害者が身辺約30センチの箇所にカメラを置いたが、バスの列が進んだためカメラを置いたまま前進したものの、カメラを置き忘れたことに気付き置いた場所まで戻ったが既にカメラが持ち去られた事件で、列が動き始めてからその場所に引き返すまでの時間が約5分、カメラを置いた場所と引き返した地点との距離は約19.58メートルにすぎないような場合は、未だ被害者の占有を離れたものとはいえないとした判例があります。(最高裁判決昭和32年11月8日)

占有の意思とは、財物を事実上管理・支配しようとする意欲・意思をいいます。
この意思は、時間的にも対照的にも包括的なもので足りるとされており、着衣内の財布、所持しているカバンの中にある財物、自宅内や事故の経営する会社の事務所内にある財物等といった事故の支配領域内に存在する財物に対しては、一般的に占有の意思があるものと考えられます。

◇行為◇

「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。

◇主観的要件◇

窃盗罪の成立には、①財物が他人の占有に属していること、および、②その占有を排除して財物を自己または第三者の占有に移すことを認識すること、つまり、「故意」が必要となります。
加えて、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思」である不法領得の意思も必要となります。

2.占有離脱物横領罪

占有離脱物横領罪は、遺失物、漂流物その他戦y封を離れた他人の物を横領した場合に成立する罪です。

◇客体◇

「遺失物」とは、占有者の意思によらずにその占有を離れ、いまだ誰の占有にも属していないものをいいます。
「漂流物」は、水中にある遺失物のことです。
「占有の離れた」とは、占有者の意思に基づかないでその占有を離れたことを意味します。

◇行為◇
「横領」とは、委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為をいいます。

それでは、上記事例について考えてみましょう。

まず、Aさんのした行為についてどのような罪が成立し得るかを考える際、落とし物である財布に対する「占有」が誰にあるのかについて問題となります。
財布の持ち主については、その者が財布を落としてから財布を落としたことに気が付くまでの時間や、気付いたときに居た場所から財布を落とした場所までの距離や戻るまでにかかる時間等にもよりますが、仮に、持ち主が落としたことに全く気が付かずホテルを出て、だいぶ後になって気が付いたとしたら、持ち主の財布に対する「占有」が失われたと考えられるでしょう。
しかしながら、元の占有者(財布の持ち主)の占有が喪失したからといって、直ちにAさんの行為が占有離脱物横領罪しか該当しないことになるわけではありません。
所有者がその占有を失った場合には、当該領域を支配している者に占有は移行すると考えられるため、旅館内のトイレや脱衣所に忘れた財布に対しては旅館主に占有があるとした判例があり(大判大正8年4月4日)、ホテル内で財布を落としたケースでは、持ち主の占有が喪失した場合には、ホテルに占有が移行するものと考えられます。
よって、Aさんが取得した財布は窃盗の客体になるものと考えられるでしょう。

このように、他人の落し物取得した場合には、窃盗罪、あるいは占有離脱物横領罪が成立する可能性がありますので、弁護士に相談し、しっかりと対応することが重要です。

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