少年事件における処分

少年事件における処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
深夜2時ごろ、兵庫県姫路市の道路を複数のバイクや原動機付自転車で暴走し、信号無視や蛇行運転を繰り返したとして、兵庫県姫路警察署は、市内に住むAくん(16歳)を含む8名を道路交通法違反の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、最終的にどのような処分を受けることになるのか心配しています。
(フィクションです)

少年事件における処分

Aくんは、共同危険行為などの道路交通法違反の疑いで逮捕されました。
Aくんは、16歳ですので、罪を犯した場合、成人の場合と同じように、捜査段階では刑事訴訟法が適用され、逮捕となる可能性はあります。
この点、少年が14歳未満であれば、刑事責任は問われませんので、犯罪は成立せず、警察も逮捕することはできません。

Aくんは、警察に逮捕されてから48時間以内に、釈放される、若しくは検察に証拠や関係書類などと共に送られます。
検察に送られた場合、検察官はAくんの身柄を受けてから24時間以内にAくんを釈放するか、Aくんを勾留することを裁判官に請求するかを決めます。
検察官が勾留請求をした場合には、今度は裁判官がAくんを勾留すべきか否かを判断します。
裁判官が勾留の判断をすると、Aくんは検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長されれば最大で20日間拘束されることになります。
少年の場合、検察官は「勾留に代わる観護措置」を請求することができ、裁判官もこの措置をとることができます。
「勾留に代わる観護措置」となれば、留置先は少年鑑別所になり、勾留期間も10日で延長はありません。

捜査機関による捜査が終了すると、検察官はAくんの処分を決めます。
Aくんの被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑は認められない場合でも家庭裁判所の審判に付すべき事由があるときは、検察官はAくんの事件を家庭裁判所に送致します。

事件を受理した家庭裁判所は、Aくんや保護者に対する調査を行い、審判を開きます。
調査の結果、審判を開くことができない、またはその必要がないと考える場合には、家庭裁判所は審判をしない決定をします。
審判を経て、裁判官はAくんに処分を言い渡します。
この処分には、中間決定と終局決定とがあります。

中間決定は、終局決定前の中間的な措置としてなされ、試験観察などがあります。
試験観察というのは、保護処分を決定するため必要があると認めるときに、相当の期間、家庭裁判所調査官の観察に付する決定のことです。
少年に対する終局処分を一定期間留保し、その期間の少年の行動等を調査官の観察に付すために行われます。
試験観察が行われる期間については、一般的には3~4か月ですが、事案によってその期間は様々です。

終局決定には、①審判不開始、②不処分、③知事・児童相談所長送致、④検察官送致、⑤保護処分の5種類があります。

①審判不開始決定

家庭裁判所は、調査の結果に基づき、審判に付することができないとき、審判に付するのが相当ではないときに、審判を開始しない旨の決定をします。
少年事件では、家庭裁判所が事件を受理したからといって必ずしも審判が開かれるとは限らず、調査の結果、審判を開始するのが相当だと認められるときに、その旨が決定されて審判が開かれます。
審判を開くための要件としては、(a)審判条件が存在すること、(b)非行事実の蓋然性が認められること、(c)審判が事実上不可能ではないこと、(d)審判の必要性があること、の4つがあり、このいづれかが欠ける場合には審判不開始決定がされます。

②不処分決定

家庭裁判所は、審判の結果に基づき、保護処分に付することができないとき、そして、保護処分に付する必要がないと認められるときに、少年を保護処分に付さない旨を決定します。
これを「不処分決定」といいます。

③知事・児童相談所長送致

調査または審判の結果に基づいて、児童福祉法の規定による措置を相当を認めて事件を都道府県知事または児童相談所長に送致する決定です。
家庭裁判所による事件の送致後、児童福祉法上どのような措置を行うかは送致を受けた児童相談所長が決定します。

④検察官送致

調査または審判の結果に基づいて、刑事処分が相当と認められるとき、あるいは、本人が20歳以上であるときには、事件を検察官に送致します。
刑事処分相当を理由とする検察官送致について、少年法20条1項は、「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして、刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。」と規定しています。
また、犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件については、原則として検察官送致決定をしなければなりません。
しかし、調査の結果、犯行の動機や態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状や環境その他の事情を考慮して、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りではありません。

⑤保護処分

保護処分は、非行を行った少年に対して、性格の矯正および環境の調整を目的として行われる処分です。
保護処分には、(a)保護観察、(b)少年院送致、(c)児童自立支援施設または児童養護施設送致、の3種類があります。

(a)保護観察
少年を家庭や職場に置いたまま、保護観察所の行う指導監督と補導援護によって、少年の改善更生を図る社会内処遇です。
保護観察の具体的な実施要領や手続等については法務省通達等に定められており、一般保護観察、一般短期保護観察、交通保護観察、交通短期保護観察の4種類に分類されて運用されています。

(b)少年院送致
少年院は、矯正教育を受けさせるための施設です。
その少年院に収容する処分が少年院送致です。
少年院は、第1種から4種まで4つの種類があります。
少年院送致は、少年の自由を拘束するという点で最も強力な保護処分と言えるでしょう。

(c)児童自立支援施設・児童養護施設送致
不良行為を行い、または行うおそれのある児童や、家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、必要な指導と自立への支援を行う施設を「児童自立支援施設」といいます。
「児童養護施設」は、保護者がいない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて、その養護保護を行う施設です。
どちらの施設も児童福祉法上の要保護児童のための施設であるので、保護処分の執行を受ける者を強制収容する少年院とは本質的には異なります。

以上のように、少年事件における処分は多岐に渡ります。
如何なる処分が少年の更生に適切であるか、如何なる処分が見込まれるかについては、事件内容によって異なります。

お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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