特殊詐欺における共犯②

2019-04-01

特殊詐欺における共犯②

特殊詐欺における共犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)

特殊詐欺と共犯~共同正犯~

特殊詐欺は、組織的に行われ、被害者に電話をかける「かけ子」、被害者から直接現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、キャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」などの役割を分担して犯罪を実行します。
ほとんどのケースで、「かけ子」が組織の主犯格と関りが強く、「受け子」や「出し子」は組織の主犯格と面識がなく、特殊詐欺の実態を把握しないまま指示に従っている傾向が見受けられます。

それでは、「受け子」として特殊詐欺に関った場合には、どのような刑事責任に問われることになるのでしょうか。

複数人が、共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
共犯は、次の3つに分けられます。
1.共同正犯
2.教唆
3.幇助

共同正犯

2人以上共同して犯罪を実行することを「共同正犯」といいます。
共同正犯者は、「すべて正犯」とされます。
つまり、共同して実行した犯罪について、共同者全員が正犯者としての刑事責任を問われることになるのです。
共同正犯には、「実行共同正犯」と「共謀共同正犯」の2種類があります。
実行共同正犯は、共同者全員が実行行為を分担し合って犯罪を実現する場合をいい、共謀共同正犯は、複数人が特定の犯罪を行うため、共同実行の意思のもとに相互に他人の行為を利用しあって犯罪を実現するための謀議をし、共謀者のうちのある者が共同実行の意思に基づいてこれを実行する場合をいいます。
共同正犯が成立するためには、次の要件を満たす必要があります。
①主観的に複数人に共同実行の意思が存在すること。
「共同実行の意思」とは、各行為者が相互に他人の行為を利用し補充しあって構成要件を実現させる意思のことをいいます。
この共同実行の意思は、行為者相互間に存在していなければなりませんが、行為の際に存在すればよく、必ずしも事前の打ち合わせ等があったことは必要とされません。
②客観的に共同実行の事実が存在すること。
複数人が実行行為を共同して犯罪を実現させることを「共同実行の事実」といいます。
「共同して」は、共同者全員が相互に他人の行為を利用し補充しあって犯罪を実行するということを意味します。

特殊詐欺事件において、実行行為を行う時点で、自身が行う行為が詐欺行為に加担するものだと認識あるいは認容しつつ、実際に行為を遂行したのであれば、詐欺罪の共同正犯が認められる可能性があるのです。
「受け子」が指示された場所に赴き、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る際に、「これはもしかして詐欺じゃないのか」と思っていればアウトです。
そのような意思があったか否かは、犯行の経緯・動機、犯罪により得た利益、詐欺組織における役割や関係性、犯罪への主体的関与の程度などの事情が考慮され判断されます。

例え、組織の末端である「受け子」であっても、逮捕・勾留されると長期間身体拘束を受ける可能性が非常に高いです。
また、組織犯罪ということで接見禁止が付される場合もあります。
ご家族が特殊詐欺事件に加担したとして逮捕されたのであれば、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。