特殊詐欺における共犯①

2019-03-31

特殊詐欺における共犯①

~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)

特殊詐欺事件~詐欺罪~

特殊詐欺は組織的に行われることが多く、電話を被害者にかける「かけ子」、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、そして、キャッシュカードを使って現金を引き出す「出し子」と呼ばれる役割を組織内で分担して実行していることにその特徴が見られます。

特殊詐欺に関与した場合、詐欺罪に問われる可能性があります。

詐欺罪は、刑法第246条に以下のように規定されています。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件、つまり、法律の条文上に記載されている犯罪が成立するための原則的な要件は、以下の通りです。
1項詐欺
①人を欺いて
②財物を
③交付させたこと
2項詐欺
①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと

まず、詐欺罪の客体についてですが、1項詐欺では「他人の財物」が客体となります。
自然人であっても法人であってもよく、他人の占有する他人の動産および不動産です。
2項詐欺において、客体とは「財産上の利益」です。
これは、債券などの有体物以外の財産的権利や利益を意味します。
典型的な2項詐欺は、債権者を欺いて債務免除を受け、債務を逸脱して財産上の利益を不正に得る場合です。

詐欺罪が成立するためには、「人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財物または財産上の利益を交付させること」が必要です。
「人を欺く行為による錯誤の惹起」、「錯誤に基づいた交付行為」、「交付行為による財物又は利益の移転」という一連の因果経過をたどることが必要となります。

(1)人を欺く行為
「欺く」とは、一般人をして財物または財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。
また、「人を」欺く行為でなければならいので、機械に対して虚偽情報を入力した場合には詐欺罪における「人を欺く行為」には該当しません。
不正な方法で取得したキャッシュカードを使って銀行のATMから金銭を引き出す行為は、詐欺ではなく窃盗となります。
この点、Aさんが被害者から騙し取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出した行為については、窃盗罪が成立するでしょう。
(2)錯誤
人を欺く行為により生じる「錯誤」は、財産的処分行為をするように動機付けられるものであれば足ります。
換言すると、錯誤は「交付の判断の基礎となる重要な事項」についてのものであって、それがなければ交付行為を行わなかったであろうような重要な事実に関するものでなければなりません。
(3)交付行為
交付行為(処分行為)は、財物または財産上の利益を相手方に移転させる行為をいいます。
交付行為には、財産処分の意思と財産を処分する事実とが必要となります。
財産を処分する意思をまったく有しない幼児や高度の精神病者などには、財産的処分行為は認められず、これらの者を欺いてその財物を奪う行為は窃盗となります。
(4)財物又は利益の移転
財物や利益が交付行為によって移転することで、詐欺罪は既遂となります。

以上の要件に加え、主観的要件である「故意」がなければ詐欺罪は成立しません。
詐欺罪の故意は、「人を欺いて錯誤に陥らせ、かかる錯誤に基づく交付行為により、財物または財産上の利益を交付させ、自己または第三者がその占有を取得することについての表象・容認をいいます。
詐欺だ」と確信をもって行う場合だけでなく、「詐欺かもしれないけど、もしそうだとしてもいいか」と思っていた場合も「故意」が認められることになります。

特殊詐欺は、被害者を騙して金銭やキャッシュカードを取得するものですので、詐欺罪が成立することになります。
では、一連の行為を分担して複数の人が実行した場合には、それぞれがどのような責任が問われるのでしょうか。
次回は、特殊詐欺事件の「共犯」について説明します。

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