運転手役は共同正犯?幇助犯?②

2020-06-21

運転手役が共同正犯となるか幇助犯となるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aは、先輩Bから、Bと知り合いのCを指定された場所まで送り迎えをするよう頼まれました。
兵庫県養父市のとある事務所までBとCを車で送り、その場で待機していました。
BとCは、帽子を被りマスクを着用した姿で車を降り、15分後、大きな袋に荷物を詰めて戻ってきました。
そして、AはBとCを指定された場所まで送り届けました。
Aは、Bから謝礼として3万円を受け取りました。
後日、兵庫県養父警察署がAさん宅を訪れ、窃盗容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)

共謀共同正犯の成立は、
①共同実行の意思の連絡(=共謀)、
②犯行実現への強い動機、関心、利害があり、これに基づいて犯行を実現するのに重要な役割を果たすこと、
③共謀者の少なくとも1人による実行
が要件となります。
共謀共同正犯が成立する場合、すべての者が正犯として処罰されることになります。

一方、共犯の一種である幇助犯は、正犯の犯罪行為を容易にするなど、手助けをする行為を行った者をいいます。

2.幇助犯について

幇助犯については、刑法第62条に次のように規定されています。

正犯を幇助した者は、従犯とする。

幇助犯の成立要件は、
(1)正犯者を幇助すること(幇助行為と幇助の犯意)
(2)正犯が犯罪を実行すること
(3)幇助の因果関係
の3つです。

(1)正犯者を幇助すること

①幇助行為
正犯の犯罪行為を手助けすること。
その手段や方法に制限はありません。
道具や場所などの提供といった有形的な方法や、犯行場所の情報提供や精神的に決意を維持させるなどの無形的な方法でも構いません。

②幇助の犯意
正犯の犯罪行為を手助けする意思があること。
正犯者が幇助の意思に気が付いていない場合でも幇助犯は成立します。

(2)正犯が犯罪を実行すること

幇助行為の対象となる正犯は、不作為犯でもよいのですが、過失犯は含まれません。
また、幇助意思に基づき幇助したとしても、正犯が実行しない場合は幇助犯は成立しません。

(3)幇助の因果関係

幇助が正犯の実行に役立った、容易にした場合でないと幇助犯は成立しません。
幇助行為が正犯者の実行行為を物理的・心理的に容易にすれば足りるとされます。

幇助犯は、正犯の刑が減軽されます。

運転手役は、共同正犯か?幇助犯か?

それでは、侵入盗の運転手役は、共同正犯(共謀共同正犯)となるのか、それとも幇助犯となるのか、について考えてみましょう。

共謀共同正犯幇助犯の要件を比較してみると、「正犯意思があるか否か」という点が両者の違いであることに気付くでしょう。
つまり、犯行実現への強い動機、関心、利害があって、これに基づき、犯行を実現するために重要な役割を果たしているか否か、という点です。

侵入盗の実行行為は、BおよびCが行っており、Aは実行行為ではない「送迎行為」を行いました。
「送迎行為」は実行行為ではありませんので、当該行為を行ったAは、窃盗の幇助犯となるのか、それとも共謀共同正犯となるのかが問題となります。

繰り返しになりますが、共謀共同正犯幇助犯の要件の違いは、「正犯意思があるか否か」という点ですので、ここで2つを区別するために、「送迎行為」が「正犯意思に基づく行為」か否かを検討する必要があるわけです。
つまり、正犯意思に基づく場合は窃盗の共謀共同正犯、正犯意思に基づかない場合は窃盗の幇助犯となるのです。

そこで、Aについて、①犯行実現への強い動機・関心・利害があるか、②犯行を実現するために重要な役割を果たしたか、を検討する必要があります。

①犯行実現の強い動機・関心・利害がある場合
事前に分け前の約束に基づいて送迎行為をしている場合や、組織的な窃盗グループの一員で、組織の指示に従って送迎行為をしている場合などは、犯罪実現の強い動機・関心・利害があると考えられます。

②犯行の実現に重要な役割を果たした場合
送迎行為は、実行行為(窃盗)を直接援助する行為とは言えません。
しかし、盗品を持って現場からすぐに逃走するためにはAの送迎行為、一般的に犯行の実現に重要な行為であると言えます。

Aが、事前にBから、侵入盗の計画について聞いていた、もしくは、Bの話からAが侵入盗について認識していたり、報酬についても事前に決められていた上で、Aが運転手役を積極的に担ったのであれば、共謀共同正犯が成立すると考えられるでしょう。

一方、AとBとの関係から、Aが運転手役を引き受ける以外に選択肢がなかった場合には、幇助犯にとどまる可能性もあります。

共謀共同正犯が成立する場合に科され得る刑罰と幇助犯が成立する場合の刑罰とは異なりますので、どちらが成立するかによりその後の処分が大きく変わることになります。

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