危険運転で起訴
危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
兵庫県尼崎市の高速道路で、時速200キロを超える速さで無免許運転し、制御できなくなり前方を走っていたトラックにぶつかり、トラックを運転していた男性を死亡させた事件で、Aさんは神戸地方検察庁に無免許過失致死罪で起訴されていましたが、神戸地方検察庁は、危険運転致死罪などへの訴因変更を神戸地方裁判所に請求しました。
(神戸新聞NEXT 2018年12月27日20時24分掲載記事を基にしたフィクションです)
過失運転と危険運転の違い
上記のケースでは、無免許過失運転致死罪で起訴され、危険運転致死罪への訴因変更が検察側から請求されています。
そこで、今回は、過失運転と危険運転の違いについて概観していきたいと思います。
過失運転致死傷罪及び危険運転致死傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為に対する刑罰を規定する「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(略称:自動車運転処罰法)」に定められています。
過失運転致死傷罪
本罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します。
この場合の「過失」は、前方不注視や脇見運転、巻き込み確認を怠った場合などに成立し、過失運転致死傷罪が適用されるケースは極めて広いと言えるでしょう。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金です。
無免許運転の場合、刑は加重され、10年以下の懲役となります。
危険運転致死傷罪
以下に該当する危険運転によって、人を負傷または死亡させた場合に成立する罪です。
・アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
・その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
・その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
・人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
上記の行為によって人を死亡させた場合、1年以上の有期懲役、人を負傷させた場合には15年以下の懲役が科せられる可能性があります。
上記事例の場合、「その進行を制御することが困難な速度」に該当するかが問題となります。
具体的に時速何キロ以上での走行で危険運転に該当するか否か、ということではなく、速度が速すぎるため、自動車を道路の状況に応じて進行させることが困難な速度を「その進行を制御することが困難な高速度」といいます。
過去の裁判では、「そのような速度での走行を続ければ、道路の形状、路面の状況などの道路の状況、車両の構造、性能等の客観的事実に照らし、あるいは、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度」を「進行を制御することが困難な高速度」と解しており、そのうえで、最高速度50キロと指定されている右方に湾曲する道路を進行する際に、時速90で走行した結果、回り切れず、歩道に進出させ、歩道上にいた被害者3名を負傷させた事件において、そのような速度は、本カーブの限界旋回速度を超えるものではないが、ほぼそれに近い速度であって、そのような速度での走行を続ければ、ハンドル操作のわずかなミスにより車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度であったといえるとし、「進行を制御することが困難な高速度」に該当することを認めています。
過失運転致傷罪も危険運転致傷罪も、加害者は、人を死傷させようと思って交通事故を起こしたわけではない点で共通しています。
しかし、後者の罪には、事故につながるおそれが非常に高く、その結果、人を死傷させてしまう可能性も高い危険運転行為を「故意」に行ったことにその特徴があると言えるでしょう。
そのため、後者の法定刑は、前者のそれよりも重いものとなっています。
兵庫県内で交通事故を起こし、危険運転致死傷罪で起訴され、お困りの方は、交通事件を含む刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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