万引きと常習累犯窃盗

万引きと常習累犯窃盗

万引き常習累犯窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加古郡稲美町のスーパーで食料品など計5点(6,000円相当)を万引きしたとして、Aさんは兵庫県加古川警察署に逮捕されました。
Aさんは、過去にも万引きで逮捕されており、直近では2年前に懲役6月の実刑判決が言い渡され刑に服していました。
Aさんは生活に困ってやったとのことですが、窃盗の前科もあり、今回は自身がどのような処罰を受けるのか心配しています。
(フィクションです)

常習累犯窃盗について

あなたがスーパーで商品を支払うことなく店を後にしたとしましょう。
これは、いわゆる「万引き」で、刑法における「窃盗罪」に当たります。

窃盗罪とは、「他人の財物を窃取」する犯罪です。
「他人の財物」は、他人の占有する他人の財物です。
つまり、他人が事実上支配し管理している他人のものをいいます。
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
窃盗罪が成立するには、これらの要件に加えて、次の主観的要件を満たす必要があります。
1.故意
 ①財物が他人の占有に属していること、及び、②その占有を排除して財物を自己又は第三者の占有に移すことを認識すること。
2.不法領得の意思
 不法領得の意思の要否については争いがありますが、判例では、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として経済的用法に従い利用処分する意思」をいうと解されています。
 つまり、窃盗罪の成立要件には、故意に加えて、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として扱う意思(排除意思)と、他人の物をその経済的用法に従い、利用又は処分する意思(利用意思)から構成される「不法領得の意思」が求められます。

窃盗罪の罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
あなたが万引きで捕まり、検察官に起訴され、有罪判決を言い渡された場合には、10年以下の懲役あるいは50万円以下の罰金の範囲内での刑事罰が科されることになります。

万引きの場合、初犯であり、被害金額も少額で、被害弁償が済んでいれば、微罪処分として事件が処理されるケースも多く、検察官によって起訴されずに事件終了となることが多いでしょう。
しかし、過去に何度も万引きを行っていた場合には、当然ながら事件を穏便に済ませるというわけにはいきません。

窃盗罪は再犯が多い犯罪です。
窃盗罪を常習的に繰り返す「常習累犯窃盗罪」が特別法(「盗犯等ノ防止及処分二関スル法律」)で規定されています。

第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

当該条項は、常習累犯窃盗および常習累犯強盗について規定しており、常習としての窃盗等を行う習癖を有する者に対して、行為前野一定の前科を考慮し、その習癖のない者より重く処罰することとしています。

常習累犯窃盗とは、
①過去10年間に、窃盗罪等で6月以上の懲役刑を3回以上受けた者が
②常習として窃盗を行うこと
です。

①について、過去10年の内に、窃盗罪等で実刑判決を3回受けていれば当てはまるのですが、例えば、一回目が懲役6月の執行猶予判決、二回目が懲役1年の保護観察付執行猶予判決、三回目が懲役2年の実刑判決であった場合、一回目と二回目の執行猶予が取り消され、三回目の懲役2年の刑の執行後に、引き続き一回目と二回目の刑の執行を受けた場合においても、それらは合計3回の刑の執行を受けたことになる点に留意が必要です。
①の要件に加えて、「反復して犯罪行為を行う習癖」があるか否かという②の要件を満たして初めて常習累犯窃盗が成立するというわけです。

常習累犯窃盗は、刑法で規定されている窃盗罪より刑罰が重く規定されており、3年以上の有期懲役に処せられる可能性があります。
このように窃盗罪と常習累犯窃盗罪の法定刑は異なります。

万引きの前歴前科が多数あり、常習累犯窃盗にあたるのではとお困りであれば、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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