少年院送致の回避を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
大学生のAさん(18歳)は、特殊詐欺の受け子をしたとして、窃盗の容疑で兵庫県三木警察署に逮捕されました。
余罪も複数あるとみられ、被害金額も高額になることが予想されます。
事件の連絡を受けたAさんの両親は、少年院送致の可能性が高いのではないかと心配し、少年事件専門弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
保護処分としての少年院送致
家庭裁判所は、審判で非行事実が認められた後、要保護性の有無・程度を判断し、終局決定をします。
少年法は、選択し得る終局決定として、
①審判不開始
②不処分
③知事・児童相談所長送致
④検察官送致
⑤保護処分
の5種類を設けています。
⑤保護処分は、非行を行った少年に対して、性格の矯正及び環境の調整を目的として行われる少年法において中心的な処分で、保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設送致、少年院送致の3種類があります。
保護観察は、少年を家庭や職場に置いたまま、保護観察所の行う指導監督と補導援護によって、少年の改善更生を図る社会内処遇です。
児童自立支援施設は、不良行為を行い、又は不良行為を行うおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由から、生活指導等が必要な児童を入所させ、必要な指導と自立への支援を行うことを目的とする施設です。
児童養護施設は、保護者がいない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を必要とする児童を入所させ、その養護・保護を行うことを目的する施設です。
これらの施設へ入所させる処遇が、児童自立支援施設又は児童養護施設送致です。
少年院送致は、矯正教育を受けさせるために少年院に収容する処分です。
少年の自由を拘束するという点で、保護処分の他の2つよりも厳しい処分と言えます。
少年院にも、その収容する少年の特色によって4つに分類されます。
第1種少年院は、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満の者を収容する少年院です。
第2種少年院は、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を収容します。
第3種少年院は、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満の者を収容します。
そして、第4種少年院は、少年院において刑の執行を受ける者を収容する施設となっています。
少年院送致を回避するために
審判では、非行事実及び要保護性が審理されます。
非行事実は、審判において審理の対象となる事実であって、成人の刑事裁判における公訴事実に当たります。
要保護性の意義については争いがありますが、一般的には、①犯罪的危険性、②矯正可能性、③保護相当性、の3つの要素で構成されると理解されています。
裁判所は、要保護性の有無や程度に基づいて処遇を選択します。
①犯罪的危険性
少年の性格、環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性のことです。
②矯正可能性
保護処分により犯罪的危険性を解消できる可能性を意味します。
③保護相当性
少年の処遇によって保護処分が最も有効、適切な手段であること。
非行事実が比較的軽微なものであっても、要保護性が高いと判断されれば、少年院送致が決定される可能性はありますし、非行事実が重大であっても、審判時には要保護性が解消されていると認められれば、保護観察処分となることもあります。
そのため、少年院送致の可能性がある事案では、要保護性を解消することが少年院送致回避にとって不可欠であり、付添人が担う重要な役割のひとつとなります。
要保護性の解消に向けた活動は、審判直前に行っても意味がありません。
できる限り早い段階から、少年やその保護者、学校関係者や職場の人間と協力して行う必要があります。
例えば、家庭環境に問題がある場合、少年とその家族との関係性を改善していくことになりますが、通常、2~3日であっさり解決するようなものではありません。
時間をかけてじっくりと、必要であれば当事者間の距離を一定程度離してみたり、腹を割って話してみたり、臨床心理士に協力を仰ぎ専門的な見解を得たり、様々な方法で、少年が事件と向き合い、自身が抱える問題を見出し、それをどのように解決していくべきかを、少年とその周囲の者と連携しながら、検討していくことが必要となります。
弁護士は、少年が再び非行を犯すことがないような環境を整える手助けをし、その過程や結果を裁判所に報告し、裁判所に少年の要保護性について正しく判断してもらうように努めます。
少年院送致の可能性がある事件を起こしてしまったとしても、少年の更生のために適切な処遇となるよう要保護性の解消に向けた活動を行うことは重要です。
そのような活動は、少年事件に詳しい弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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