殺人未遂で逮捕

殺人未遂について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県高砂市のマンションに住むAさんは、マンション前の路上で、近くに住むVさんと口論になりました。
Vさんは、「埒が明かないので、警察を呼ぶ。」言い、携帯電話で通報し始めました。
Aさんは、警察を呼ぶVさんに腹が立ち、マンションの自分の部屋に戻り、ベランダから路上に立っているVさんの頭上めがけて、ダンベルを投げつけました。
幸い、Vさんにダンベルは当たらず、Vさんは無傷でした。
Vさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県高砂警察署の警察官にAさんの行為を報告したところ、警察官はAさんを殺人未遂の容疑で現行犯逮捕しました。
Aさんは、「Vさんに腹が立ったからやったが、結局Vさんには当たってないし、なんで殺人未遂なんや。」と不満を述べています。
(フィクションです。)

Aさんは、マンションのベランダから下にいたVさんを狙ってダンベルを投げつけた行為について、殺人未遂に問われています。
そこで、今回は、殺人未遂罪とはどのような場合に成立する罪であるかについて説明していきます。

殺人未遂罪

殺人未遂は、その名の通り、「殺人」が「未遂」に終わったものを意味します。
殺人」は、みなさんご存じの通り、「人を殺す」という罪ですね。

犯罪が成立するのは、構成要件(殺人の場合は、人を殺すこと)に該当する場合です。
より細かく言えば、犯罪の成立には、法律の条文に規定された要件に該当し(=構成要件該当性)、社会的に許されず(=違法性)、かつ、社会的に非難される(有責性)行為であることが求められますが、基本的に構成要件に該当する行為は、違法性及び有責性を一応有しているものと考えられるため、犯罪が成立しているかどうかを検討するときには、まず、構成要件に該当するか否かを検討してから、特に違法性や有責性を否定する特別な事情があるか否かを検討することになります。
構成要件に該当しているか否かは、条文に規定された実行行為があり、その行為により結果が発生していること、そして、実行行為にはその行為を認識、認容して行動に出るという内心、つまり、故意があるかどうかという要素に基づいて検討されます。
実行行為に基づき結果が発生した場合を、既遂といいます。
一方、犯罪の実行に着手したが、結果が発生しなかった場合を未遂といい、法律で未遂犯に処罰規定がある場合には、未遂罪として処罰される可能性があります。
殺人には未遂犯がありますので、人を殺そうとして実行行為を行ったけれども、人を死亡させるに至らなかった場合には、殺人未遂罪が適用され、処罰の対象となります。

殺人未遂罪が成立するには、犯罪の実行に着手していなければなりません。
実行の着手時期については、結果が発生する危険性が認められる行為への着手の時点とされており、判例では、クロロホルムを吸引させて被害者を失神させ、その失神状態を利用して被害者を自動車ごと海中に転落させて溺死させる事案においては、すでに最初の行為を開始した段階で、殺人未遂が成立するとしています。(最決平16・3・22)

Aさんのマンションのベランダから下にいたVさんを狙ってダンベルを投げつける行為は、Vさんを死亡させる危険性が認められる行為と言えます。
高い場所からダンベルを投げつけて、それが人の頭に当たったら、その人が死んでしまう可能性は高いですからね。
実際に、Aさんはその行為を行っていますので、犯罪の実行に着手していることになります。
また、故意についてですが、Aさんが「Vさんを殺してしまえ!」と確信的な殺意を有していなくても、鉄の塊であるダンベルを投げつければVさんに当たって死なせてしまうかもしれないことは通常予測することができますので、「Vさんに当たったら死んでしまうかもしれない。」という程度の認識があったことは認められるため、未必の故意があったと言えるでしょう。
Aさんは、犯罪の実行に着手はしたものの、たまたまダンベルがVさんに当たらなかったので、Vさんが死亡するようなことはありませんでしたが、結果が発生しなかったのは、Aさんの意思によるものではなく、それ以外の理由により、Aさんの実行行為に基づく結果が生じなかっただけであり、未遂犯のうち「障害未遂」に当たり、任意的に刑が減軽されます。

殺人未遂は、一歩間違えれば、人の命を奪っていたかもしれず、決して軽い罪とは言えません。
しかし、情状により刑が減軽される可能性もあるので、適切な弁護活動により、少しでも寛大な処分となるよう早期に対応する必要があります。

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