殺人未遂事件で逮捕

2020-09-20

殺人未遂事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県相生市に住むAさんは、自宅を訪れた交際相手のVさんから別れ話を切り出され、口論に発展しました。
カッとなったAさんは、Vさんの首を絞めましたが、抵抗したVさんは部屋から逃げ出し、110番通報をしました。
通報を受けて現場に駆け付けた兵庫県相生警察署の警察官は、部屋にいたAさんを殺人未遂の疑いで現行犯逮捕しました。
Aさんは、「別れを切り出され、喧嘩になった。カッとなって首を絞めてしまったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
(フィクションです)

殺人未遂罪

◇殺人罪◇

第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

殺人罪の行為は、人を「殺す」こと、つまり、自然の死期に先立って他人の生命を断絶することです。
「殺す」行為に該当するものとして、刺殺、斬殺、絞殺、撲殺、毒殺、焼殺、溺殺などが含まれます。
殺人行為と言えるためには、その行為自体に、被害者の死の結果を惹起させ得る危険性を有していなければなりません。
当該危険性の判断は、行為時の場面設定において、その行為が行われた場合、一般人の視点で、被害者が死亡する危険性があるか否かに基づいて判断されます。
例えば、人を殺害する目的で、わら人形を作って釘を打ち付ける行為は、殺人行為には該当しません。
他方、人を殺害する目的で、警官から奪取したけん銃を人に向けて引き金を引いたが、偶然弾丸が入っていなかった場合については、一般人の視点では、けん銃を人に向かって発射させる行為は、射殺の危険性が認められ、殺人行為に該当します。
「殺す」という行為を実行に移す時期(実行の着手時期)は、行為者が、殺意をもって、他人の生命に対する現実的危険性のある行為を開始した時であるとされます。
被害者にけん銃で狙いを定めた時や、被害者に刀を振りかざした時に、実行の着手が認められます。

「殺す」という実行行為がなければ被害者が死亡しなかったと言えれば、その途中で結果発生に特異な事情や予想外の事情が関係したとしても、おおむね因果関係が肯定できればよく、被害者が死亡した時に殺人罪は既遂となります。

殺人罪の成立には、「殺意」をもって、人を殺したことが求められます。
人に暴行を加えて死亡させた場合、殺意がなければ、殺人罪ではなく傷害致死罪が成立するにとどまるため、殺意は重要な要素となります。
殺意の認定にあたっては、人の心の中のことなので、客観的な事情に基いて認定されます。
つまり、人の行動に即すれば、人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かっていて行ったか否かを客観的な事情に基いて認定することになります。
このような客観的な事情には、創傷の部位、創傷の程度、凶器の種類、凶器の用法、動機の有無、犯行後の行動などがあります。

事例においては、AさんはVさんを殺す意図はなかったと供述しています。
しかし、首を絞めるという行為は相手方を直接窒息させる行為であるため、その行為自体が殺意を認定する積極的な要素と判断されるおそれがあります。

殺意がないと判断されば、Vさんの首には痣が残っている可能性が高いですから、傷害罪に問われることになるでしょう。

◇未遂◇

さて、仮にAさんが殺意をもってVさんの首を絞めたが、Vさんが上手く逃れたため、Vさんは死亡するに至らなかった場合、Aさんは殺人未遂罪に問われます。

未遂犯」とは、犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者のことをいいます。
未遂処罰は例外であって、未遂犯を処罰する旨の記載がない限り未遂犯は処罰されません。

殺人罪については、刑法203条で未遂犯も処罰するとされていますので、「殺人未遂罪」について処罰の対象となります。

未遂犯には、遂げなかった態様によって区別した場合、実行行為自体が終了していない場合である着手未遂と、実行行為は終了したが結果が生じなかった場合である実行未遂の2つに分類されます。
また、遂げなかった理由に基づいて区別した場合には、自分の意思によってやめた場合である中止未遂と、それ以外の理由によって結果が発生しなかった場合である障害未遂とがあります。

未遂罪の成立には、「犯罪の実行に着手」することが必要となります。
犯罪の実行行為とは、犯罪の結果を発生させる具体的危険性のある行為のことをいい、犯罪の実行の着手とは、犯罪の結果を発生させる具体的危険性のある行為を開始することを意味します。
殺人罪の場合、他人の生命を侵害する具体的危険(結果の発生する可能性が相当に高い状態)が発生する行為を行った時点で、実行の着手が認められます。
この点、人の首を絞めるという行為は、それ自体他人の生命を侵害する具体的危険が発生する行為だと言えるため、実際に相手方が死亡しなかったとしても、殺人罪の実行行為に着手したことになります。

殺人未遂事件といっても、その態様や被害の軽重は様々あり、計画性がなく、殺意の程度が高くなく、被害者への被害弁償や示談が成立しているなどといった事情があれば、執行猶予付きの判決が言い渡される可能性もありますので、殺人未遂罪に問われている場合にはすぐに弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

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