喧嘩闘争における正当防衛

喧嘩闘争における正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県兵庫警察署は、「路上で喧嘩している人たちがいる。一人は腹を刺されて血を流している。」との目撃者からの通報を受けました。
現場に駆け付けた警察官は、現場にいたAを傷害の容疑で逮捕しました。
しかし、Aは「相手が手を出してきて、喧嘩になった。いったんやめたのに、相手が一方的に殴る蹴るしてくるから、自分の身を守るために護身用のナイフを出したら相手に刺さった。」と正当防衛を主張しています。
Aは、接見にやってきた弁護士に、自身の行為が正当防衛に当たるのか聞いています。
(フィクションです。)

正当防衛とは

犯罪は、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」をいうと一般的に理解されています。
構成要件というのは、犯罪の類型のことで、法律で、こういう行為を犯罪とします、と定められている行為のことです。
例えば、殺人罪であれば、「人を殺した」行為であることが、殺人罪の構成要件となります。
問題となる行為が、構成要件に該当する場合でも、それが違法でなければ犯罪は成立しません。
犯罪として法律に定められた行為は、その行為を禁止するために規定されているので、本来違法であることが想定されているものです。
ただ、例外的な事情がある場合にのみ、その違法性を否定し、犯罪は成立しないこととされています。
そのような例外的な事情を「違法性阻却事由」といいます。

違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。

正当防衛

刑法第36条1項は、

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

と規定しています。
これが「正当防衛」と呼ばれる違法性阻却事由です。

①急迫不正の侵害

「侵害」とは、権利を侵害する危険をもたらすものをいいます。
「不正な侵害」とは、違法である侵害を意味します。
この「不正な侵害」は「切迫」したものでなければなりません。
判例によれば、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味」するとしています。(最判昭46・11・16)
この点、急迫性が認められるかどうかの判断において、被侵害者がその侵害を予期していたような場合には、急迫性が認められるかどうかが問題となります。
判例は、侵害が予期されるものであっても、被侵害者に積極的加害意思がなければ急迫性が認められるとするとの立場に立っています。

②権利の防衛

正当防衛は、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するために認められます。
正当防衛は「防衛するための行為」でなければならず、攻撃を受けたのに乗じて積極的に相手方を加害する場合は、防衛の意思を欠き、正当防衛は成立しません。

③やむを得ずした行為

正当防衛は、防衛するために「やむを得ずにした行為」でなければなりません。
判例は、正当防衛の成立要件として、必要性、相当性の両方を必要とするとの立場をとっています。
つまり、必要性については、必ずしもその行為が唯一の方法であることを要せず、また、厳格な法益の権衡も要求されないが、少なくとも相手に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するとしています。
また、相当性については、「急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が上記の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとして法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべきである。」として、どのような結果が生じたかよりも、どのような手段がとられたのかという観点から相当性について判断されています。(最判昭44・12・4)

さて、喧嘩において正当防衛は成立するのでしょうか。
基本的には、双方が攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合は、喧嘩両成敗として正当防衛は成立しません。
ただ、喧嘩闘争状況であれば常に正当防衛の成立が否定されるわけではなく、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、最初は素手で喧嘩をしたいたものの、突然相手が刃物を持ち出して攻撃してきたので、それに反撃した場合や、喧嘩がいったん収まったにもかかわらず、相手がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるでしょう。

Aは、正当防衛を主張していますが、喧嘩全体の流れの中でのAの反撃行為が正当防衛に当たるかどうかを検討しなければなりません。
事案によっても異なりますので、刑事事件に強い弁護士に早めに相談されるのがよいでしょう。

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