窃盗罪と詐欺罪

2019-05-08

窃盗罪と詐欺罪

~ケース~
主婦のVさんは、神戸市灘区の商店街で買い物をしていると、見知らぬ女性たちから声を掛けられました。
女性たちは、「あなたには悪い霊がついている。すぐに除霊しないと、子供が死ぬことになる。」と言われ、Vさんは指示された通り、急いで自宅から貴金属品や現金などを新聞紙に包み、バックに入れて商店街に戻りました。
女性たちは、「今から除霊するから、目をつぶって。」と言われ、Vさんは目をつぶりました。
その後、女性たちはVさんにバックを返し、「これで大丈夫。悪い霊はいなくなった。」と言って去っていきました。
Vさんが家に帰ってバックの中身を確認すると、貴金属や現金が他の物と取り換えられていたことが分かり、慌てて兵庫県灘警察署に被害届を出しに行きました。
同署は、窃盗事件として捜査を開始しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

窃盗罪と詐欺罪の違い

上記ケースでは、犯人たちがVさんを「騙して」Vさんの財物をとったことから、「詐欺罪」に問われるのでは?と思われる方が少なくないのではないでしょうか。

まず、詐欺罪とはどのような場合に成立するのか、以下説明していきます。

詐欺罪

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の基本的な構成要件(犯罪類型)は、「人を欺いて財物を交付」させることです。
つまり、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって才物の占有が移転し、⑤財産的損害が生じることが必要となります。
①欺く行為
「欺く」というのは、一般人をして財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。
「人」を欺くものでなければならないので、機械に対して虚偽情報を入力した場合には、詐欺罪にいう「欺く行為」にはあたりません。
②錯誤
錯誤は、財産的処分行為をするように動機付けられるものであればたります。
③処分行為
相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により財物の占有を取得することです。
処分行為には、財産処分の意思と財産を処分する事実とが必要となります。
④財物の移転
財産の占有が移転することを「財物の移転」といいます。
⑤財産的損害
詐欺罪は財産罪であるため、被害者に何らかの財産的損害が生じたことが成立要件として必要となります。

さて、上記ケースで詐欺罪が成立するか?ということですが、Vさんは犯人に「除霊をしなければ子供が死ぬ」と言われ信じ込んでいます。
除霊のために現金や貴金属を持ってくるよう言われ、Vさんはそれらを自宅から持ってきて犯人に手渡しています。
しかし、Vさんはあくまでその場で除霊をしてもらうために現金や貴金属を持ってき、商店街で除霊のために財物を犯人に手渡しました。
Vさんは、犯人らが「除霊をしている」という点について誤信をして目をつぶっており、「財物に対する自己の占有を解き、これを犯人に終局的に移転することを容認する意思」があったとまでは言えず、「人を欺いて財物を交付」させたことにはなりません。
よって、詐欺罪は成立しません。

窃盗罪

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪の基本的な構成要件は、「他人の財物を、不法領得の意思をもって、窃取」することです。
「他人の財物」とは、他人の占有する他人の財物のことで、「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
この「占有」は、占有の事実と占有の意思という2つの要素により構成されます。
除霊のために財物を一瞬手渡したことにより、Vさんが当該財物を占有していないことにはなりません。
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことを指します。
財物奪取の手段として人を騙したとしても、占有移転行為時に瑕疵ある意思に基づく占有移転がなければ、窃盗罪が成立することになります。
つまり、詐欺罪と窃盗罪の大きな違いは、「占有移転が被害者の意思に基づく処分行為によるか否か」という点にあるのです。
よって、犯人はVさんの意思に反してVさんの財物の占有を自己に移転したので、窃盗罪が成立するものと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
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