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債務不履行と詐欺罪

2019-09-17

債務不履行と詐欺罪

~ケース~
Aさんは、会社の経営がうまくいかず、知り合いから会社の運営資金200万円を借りていました。
しかし、その借金を返すことができないため、知人のVさんから運営資金200万円を借り、経営が軌道に乗れば必ず返済することを約束しました。
その後、Vさんが借金の返済を迫っても、Aさんは、「必ず返す。あともう少し資金があれば、経営がうまくいくんだ。」と更なる借り入れを申し入れる始末でした。
そのうち、VさんはAさんと連絡がとれなくなってしまいました。
いつまで経っても返済する様子がないことに業を煮やしたVさんは、Aさんに対して、債務不履行による損害賠償の請求を裁判所に申し立てました。
それでも何ら連絡のないことに腹を立てたVさんは、「Aさんは元々返すつもりがなく借りたのではないか?」と疑いはじめ、兵庫県宍粟警察署詐欺の疑いで被害届を提出することにしました。
(フィクションです)

借金を踏み倒すと…

「会社の経営がうまくいかない…」、「生活が苦しい…」等の理由で貸金業者や知人等からお金の借り入れをされた経験がある方も少なくないと思います。
借りる際には、「きちんと借りたお金を返す」と約束するのですが、いつまで経っても貸したお金を返してもらえないというケースも残念ながらあります。
借金を踏み倒した場合、債権者は債務者に対してどのような手段を講じ得るのでしょうか。

1.債務不履行による債務履行請求・損害賠償請求~民事事件~

お金の貸し借りの約束は、債権者と債務者との私人間の約束です。
当該約束内容には、お金を借りた者(債務者)はお金を貸した者(債権者)にいついつまでに借りたお金を返すことが含まれています。
この約束により、債務者には、借りたお金を返す「義務」が生じるわけですが、借りたお金を返さない行為は、その約束に違反する行為、つまり、借金を返済する義務を怠ることとなります。
故意または過失によって自分の債務(この場合の債務は、お金を借りた者がお金を貸した者に借りたお金を返すという義務)を履行(実行)しないことを「債務不履行」といいます。
そして、債務を履行しない場合には、法的な責任=債務不履行責任が債務者に生じます。
債務不履行責任が生じた場合、債権者は債務者に対して、完全な履行を請求すること、契約に基づく債務の場合には契約を解除すること、債務不履行から生じた損害賠償を請求することができます。
よって、お金を貸したがいつまでたっても返済されない場合には、債権者が貸金返金請求(債務履行請求)訴訟や債務不履行により生じた損害賠償請求訴訟を裁判所に起こすことが予想されます。

2.詐欺罪による被害届等の提出~刑事事件~

先述しましたが、借金の貸し借りというのは私人間のやりとりですので、私人間の消費貸借契約から生じた紛争は民事事件として取り扱われます。
しかし、「最初から返すつもりがないにもかかわらず、相手方に返すと嘘をついてお金を借りた」場合に限っては、詐欺罪として刑事事件へ発展する、ということがあります。

詐欺罪は、「人を欺いて財物または財産上不法の利益を詐取する」犯罪です。
詐欺罪の成立には、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転または利益が移転するといった一連の関係性がなければなりません。
借金返済が問題となる場合、①の欺く行為があったかあったのか、つまり、相手方を騙す行為があったのかどうかがポイントとなります。
つまり、返済する意思がない、返済する能力がないにもかかわらず、あるかのように装い、相手方を騙してお金を借りたのであれば、欺罔行為に当たることになります。

実際にはそのような人の心の中を立証することは困難です。
しかし、その時の金銭状況を示す客観的な証拠があれば、返済する意思も能力もなかったことを立証することは可能です。
借金の返済踏み倒しで刑事事件に発展する可能性も0ではありません。

詐欺罪の疑いがかけられている方やご家族が詐欺事件で逮捕されてしまいお困りの方は、今すぐ刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件専門の弁護士による無料法律相談初回接見サービスをご案内いたします。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

少年事件における示談

2019-09-16

少年事件における示談

~ケース~
兵庫県養父市に住むAくん(15歳)は、市内の商業施設内のエスカレーターで女子高校のスカート内にスマホを差し入れ盗撮しました。
女子高生の隣にいた友人がAくんの盗撮に気づき、「あなた友達のスカートの中を盗撮してましたよね!?」と言って、腕を掴んできました。
Aくんは、そのまま警備員室に連れていかれ、兵庫県養父警察署から駆け付けた警察官に警察署に連れて行かれ、取調べを受けることになりました。
警察からAくんの両親に連絡が入り、その日の夜には両親が迎えに来て釈放となりました。
Aくんの両親は、被害者の方に謝罪と被害弁償をしたいと考えており、警察にもその意向は伝えています。
(フィクションです)

示談とは

示談は、加害者が被害者に対して謝罪や被害弁償を行うことにより、被害者と加害者間では今回の事件は解決したとする合意のことです。
刑事事件においては、被害者感情が重視される昨今、告訴がなければ公訴を提起することが出来ない親告罪の場合のみならず、被害者がいる事件において、検察官が起訴・不起訴を決める際に考慮される要素のひとつとなっています。
被害者との示談が成立したからといって、検察官は必ずしも不起訴にするわけではありませんが、当事者間で示談が成立している場合には、不起訴処分で事件を終了することが多くなっています。
勿論、法定刑が重い犯罪や、犯行が悪質であったり、比較的軽微な犯罪であっても件数が多い場合には、被害者との示談が成立していたとしても、検察官が起訴(略式起訴も含め)に踏み切ることは大いにあります。

少年事件における示談

先述のように、成人の刑事事件では、被害者との示談が成立しているか否かは、不起訴処分を獲得する上で重要なポイントとなります。
それでは、少年事件において示談はどのような効果があるのでしょうか。

結論から言うと、成人の刑事事件のように、被害者との示談の有無により最終的な処分が大きく違ってくるというわけではありません。

少年事件の手続には、不起訴処分といった処分はありません。
捜査機関による事件の捜査が終了すると、原則すべての少年事件は家庭裁判所に送致されることになっています。
これを「全件送致主義」といいます。

家庭裁判所に送致されると、調査・審判を経て終局処分が言い渡されます。
審判において審理されるのは、「非行事実」と「要保護性」です。
前者は、少年が何をしたかということですが、後者は、①犯罪的危険性(少年の性格や環境等に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること)、②矯正可能性(保護処分による矯正教育を施すことで当該少年の犯罪的危険性を除去できる可能性)、③保護相当性(保護処分による保護が当該少年に対して最も有効かつ適切な処遇・手段であること)から構成されてます。
少年が行った行為が重い罪に当たるものであっても、要保護性が低い又はないと判断されれば、少年院送致といった収容措置がとれらないこともあるのです。
この点、刑事事件と異なります。

さて、示談成立によって家庭裁判所が決定する終局処分が大きく変わるわけでないのであれば、少年事件において被害者と示談をする必要がないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
少年が行った行為によって被害者がどれだけ苦しい思いをしたのかを理解させ、被害者に対する心からの謝罪をさせることを通じて、少年ははじめて内省を深めることができるのです。
この内省を深めるということが、少年の更生につながるので、要保護性の解消という点で重要なのです。
そこで、付添人である弁護士は、早期に被害者対応を行い、謝罪や被害弁償等をおこなうよう少年や保護者に働きかけを行います。
しかし、そこで留意する必要があるのは、単に示談金を支払い示談書を作成したということだけでは、要保護性の観点から評価されることにはつながらない、ということです。
重要なのは、少年や保護者が被害者の負った苦しみを理解し、いかに誠意をもって被害者に謝罪し被害者の被害回復に努めたかです。

少年事件の手続は、成人の刑事事件と異なります。
お子様が事件を起こして対応にお困りであれば、少年事件を数多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

観護措置の回避に向けた活動

2019-09-15

観護措置の回避に向けた活動

~ケース~
兵庫県伊丹市に住む中学生のAくん(15歳)は、通学中の電車内で盗撮行為を行ったとして、兵庫県伊丹警察署に迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されました。
Aくんの両親が身元引受人となり、Aくんはその日の夜には釈放となりました。
Aくんには他にも複数の盗撮を行っており、ネットで知り合った相手に裸の画像を送らすなど児童ポルノ禁止法違反に該当するような行為をおこなっていたことが明らかになってきました。
Aくんの母親は、知り合いから「捜査段階で身体拘束を受けていなくても、家庭裁判所の裁判官と面談するということで家庭裁判所に行ったら、そのまま少年鑑別所に収容された子の話を聞いた。」と聞き、Aくんのお母さんは、Aくんも少年鑑別所に収容されることになるのか不安です。
(フィクションです)

観護措置とは

捜査機関による捜査が終了すると、原則として、すべての少年事件は家庭裁判所に送致されます。
被疑者段階で逮捕または勾留されている少年が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は、裁判所に到着したときから24時間以内に「観護措置」をとるか否かを決定します。
観護措置」とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、その身柄を保全するとともに、緊急に少年の保護が必要である場合に、終局決定に至るまでの間、暫定的に少年を保護するための措置です。
監護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する措置と少年鑑別所に送致する措置の2種類があります。
しかし、実務上、前者の措置はほとんどとられず、観護措置という場合には、後者を指します。

観護措置は、少年法において「審判を行うため必要があるとき」にとられると定められているのみですが、次のような要件が必要であると解されています。

①事件の係属
事件が観護措置をとる家庭裁判所に係属していること。
②審判条件
審判条件が満たされていること。
③審判に付すべき事由があることの蓋然性
審判に付すべき事由(非行事実・ぐ犯事由等)が認められることの蓋然性がある。
④審判開始決定を行う蓋然性
審判開始が見込まれる事件であること。
⑤観護措置の必要性
次のいずれかが認められることが必要。
(ア)身柄確保の必要性
   住所不定または逃亡のおそれがあるなど、少年の出頭を確保する必要がある場合や、証拠隠滅のおそれがあり、証拠保全のためには必要である場合。
(イ)緊急保護のための暫定的身柄確保の必要性
   自殺や自傷のおそれがある場合、家族から虐待を受けている場合、暴力団などの反社会的活動を行う集団の悪影響から保護する必要がある場合など。
(ウ)収容鑑別を実施する必要性
   少年の心身の状況や性格傾向などを考慮し、継続的な行動観察や外界と遮断された環境で鑑別する必要がある場合。

以上のような要件を満たし、観護措置がとられた場合、原則2週間、実務上は4週間少年鑑別所に収容されることとなります。

観護措置を回避する活動

観護措置は長期間の収容となるため、少年は学校や職場を休まざるを得ず、後の生活に大きな影響を及ぼしかねません。
そのため、付添人である弁護士は、家庭裁判所が観護措置を決定する前に、観護措置をとらなうよう意見書を提出したり、裁判官と面談するなどし、観護措置回避に向けて動きます。
逮捕・勾留により捜査段階から身体拘束を受けている場合には、事件が家庭裁判所に送致されたタイミングで、意見書を提出し、裁判官が少年と面談する前に少年が抱える事情を考慮してもらう必要があります。
また、捜査段階で身体拘束を受けていない場合でも、事件内容や少年の性格等から観護措置をとる必要があると判断されるケースもありますので、この場合も事件が家庭裁判所に送致された段階で、観護措置をとらないよう説得的に主張する必要があります。

先述しましたが、観護措置がとられると約1か月少年鑑別所に収容されることになるので、その間学校や職場に行くことができないという不利益が生じてしまうことになります。
しかし、観護措置をとることにより、少年を外界と切り離した環境に置くことで、少年が自分のしてしまった行為やその原因についてゆっくりと考えることができ、ひいては少年の真の反省、そして更生に資するといった面もあります。

お子様が事件を起こし、観護措置がとられるのではないかとご心配されているのであれば、少年事件に詳しい弁護士にご相談され、お子様の更生にとってどのような方法が適するのか、一緒に考えてみてはいかがでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
少年事件でお困りであれば、弊所までご連絡ください。

商標法違反で略式手続

2019-09-14

商標法違反で略式手続

~ケース~
某有名ブランドのロゴを使用した商品をネット販売していた兵庫県加東市に住む会社員のAさん。
ある日、警察官がAさん宅を訪れ、商標法違反事件で捜索・差押えを行った後に、Aさんは警察に連れていかれ、逮捕令状を提示されました。
その後、勾留が決定したAさんは、勾留期限の満期前に検察官から略式手続の話を聞くこととなりました。
(フィクションです)

偽ブランドの販売で商標法違反

商標法は、事業者が、自分の会社の取り扱う商品やサービスを他の会社のものと区別するために使用するマークである「商標」を保護する法律です。

私たちが日頃商品の購入やサービスを利用する際、それらの「名前」や「マーク」を見て選びますよね。
それは、私たちが商品等の「名前」や「マーク」が信頼する会社の商品等であると認識しているからです。
ですので、勝手にある商品の「名前」や「マーク」をコピーして、品質の悪い商品に使ったのであれば、その「名前」や「マーク」の会社は消費者の信頼を失うことになります。
このような事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマークを「商標」といいます。

商標法は、商標権または専用使用権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することを定めています。(商標法第78条)
「商標権」とは、商標登録を受けている商標を指定した商品またはサービスについて排他的独占的に使用できる権利をいいます。
「専用使用権」というのは、設定行為で定めた範囲内において、指定した商品・サービスについて登録商標を排他的独占的に使用できる権利です。
「商標権の侵害」は、他人の登録商標をその指定した商品・サービスについて使用する行為や、他人の登録商標の類似範囲において使用する行為を意味します。
使用権限のない者が、指定された商品・サービスについて商標登録を受けている商標である登録商標と同一の商標を使用した場合は、商標権の直接侵害行為となります。
例えば、服の首部分のタグに商標を表示する、お菓子の包装紙に商標を表示してお菓子を包装する行為などは、直接侵害行為です。

また、商標法は、商標権又は専用使用権を侵害する行為と「みなされる行為」を行った者については、5年以下の懲役若しくは500万円いかの罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。(商標法第78条の2)
商標権の侵害とみなす行為には、他社のブランドの「名前」や「マーク」に似た商標を使う、他者の商標に指定されている商品やサービスに似た商品・サービスを商標登録する、他社の商標に指定された商品・サービスに似た商品・サービスをその他社の商標の付いた包装紙で包装して人に渡す行為などが含まれます。

略式手続とは

略式手続」とは、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した資料のみに基づいて公判を開かず、略式命令により罰金または科料を科す手続をいいます。
略式手続の趣旨は、事件が比較的軽微であり、被告人にとって公判に出頭することが必要ではなく、また迅速な裁判が期待できる等被告人にとって利益になること、当事者に一定の場合に手続処分権が認められること、簡易手続により訴訟経済にも益することが挙げられます。

略式手続の特徴は、
・略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でおこなわれる。
・被疑者が略式手続によることについて異議がないことを書面であきらかにしなければならない。
・必要な書類・証拠物は起訴状と共に裁判所に提出される。
・略式命令では、100万円以下の罰金または科料を科すことができる。
こと等です。

略式手続のメリットは、正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなることや、刑罰が罰金で済むことが挙げられます。
一方、デメリットは、有罪判決を受けていることになるので、前科がつくこと、そして、略式起訴される場合、審理は書面だけで行われるので、法廷で自分の言い分を述べるということができないということです。

このように、略式手続にはメリットとデメリットがあります。
事件によっては、略式手続が最善の場合も、そうでない場合もあります。

商標法違反で逮捕されてしまった、略式手続についての説明を受けたが同意すべきかお悩みであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

客引きで逮捕

2019-09-13

客引きで逮捕

~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の繁華街で、Aさんは通行人に対して、「キャバクラどうですか?そこのXという店です。今なら5,000円ポッキリ。」などと、通行人の真横を沿って歩きながら声をかけ続けていました。
すると、声をかけた通行人が、「警察や。迷惑防止条例違反で現行犯逮捕や。」といってAさんを逮捕しました。
Aさんは、キャバクラXの経営者Bさんから、客を勧誘して連れてくるよう依頼され、1人連れてくる毎に3,000円の手数料を支払うことが約束されていました。
(フィクションです)

上の客引きで成立する犯罪は?

繁華街の路上で、通行人に対して、飲食店や風俗店の客になるよう勧誘する「客引き」行為は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、「風営法」という。)違反となるほかに、迷惑防止条例違反が成立する可能性があります。

風営法で禁止される客引き行為

風営法は、22条1号において、風俗営業者に対して客引きを禁止しています。

第二十二条 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。

風営法における「客引き」行為とは、相手方を特定して営業所(お店)の客となるように勧誘することをいいます。
ですので、通行人に対して店の名前を告出さずに「お時間ありませんか」などと声をかけるだけでは「客引き」には当たりません。

風営法違反(客引き)の主体は、「風俗営業を営む者」です。
許可を受けて風俗営業を営む者は「風俗営業者」と風営法大2条2項で定義されていますので、「風俗営業を営む者」には、許可を得て風俗営業を営む者だけでなく、無許可で風俗営業を営む者も禁止の対象となります。
営業者自身が行う場合だけでなく、従業員や営業者から依頼を受けた者が客引きを行う場合も、風営法違反となります。

第五十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十二条第一項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の二十三及び第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の三第二項の規定により適用する場合を含む。)又は第三十一条の十三第二項第一号若しくは第二号の規定に違反した者

第五十六条 法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が、法人又は人の営業に関し、第四十九条、第五十条第一項又は第五十二条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。

従業員らが客引き行為を行い風営法に違反した場合、当該従業員らだけでなく、営業者に対しても罰金刑が科せられることになる点で注意が必要です。

迷惑防止条例で禁止される客引き行為

第4条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対して、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 次に掲げる行為について、客引き(ウに掲げる行為に係る利用者に対する勧誘を含む。)をすること。
ア 人の性的好奇心をそそる見せ物、物品若しくは行為又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供
イ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法で異性の客をもてなして飲食をさせる行為又はこれを仮装したものの提供
ウ 人の性的好奇心をそそる行為を提供する営業又は歓楽的雰囲気を醸し出す方法で異性の客をもてなして飲食をさせる営業に関する情報の提供
(略)
(6) 第1号、第3号及び第4号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服を捕らえ、所持品を取り上げ、進路に立ちふさがり、身辺に付きまとう等の執ような方法で客引きをし、又は役務に従事するよう勧誘すること。

迷惑防止条例で禁止されている客引き行為は、「公共の場所」において、「不特定の者に対して」行うものです。
風営法と異なり、主体は制限されていません。
また、客引きは営業の一環としてなされていることまでは必要とされていません。
このように迷惑防止条例のほうが適用範囲が広く、客引き行為で現行犯逮捕する場合も、まずは迷惑防止条例違反で逮捕し、風俗営業者との共謀や支配従属関係が認められるか否かを検討するケースが多くなっています。

上のケースでは、Aさんは、キャバクラ店Xの経営者Bさんから手数料をもらう約束をし、X店の営業に関して客引きをすることを了承し、繁華街の道路上で、通行人に対して「キャバクラどうですか?そこのXという店です。今なら5,000円ポッキリ。」などと、通行人の真横を沿って歩きながら声をかけ続けて、X店の客になるよう勧誘したというものなので、Aさんの行為は、風営法違反および迷惑防止条例違反が成立することになり、客引き行為で2つの罪が成立することになります。
この場合の処罰は、最も重い刑により処断されることになります。

ご家族が刑事事件で逮捕されたのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

窃盗罪成立?~一時使用行為~

2019-09-12

窃盗罪成立?~一時利使用行為~

~ケース~
Aさんは、兵庫県宝塚市の駅から友人宅に向かう際、歩くには遠いけれどタクシー代を払うのももったいないと思っていたところ、駅付近の駐輪場に鍵が差し込まれたままの原動機付自転車を発見しました。
Aさんは、後で返すつもりでその原動機付自転車に乗って友人宅に向かいました。
3時間後、Aさんは原動機付自転車に乗って駅に戻り、駐輪場に止めようとしたところ、駐輪場の管理人に「ここは契約者以外は駐車できないから、他に止めてくれるか。」と言われ、対応に困っていたので、怪しいと思った管理人は兵庫県宝塚警察署に通報し、Aさんは警察署で事情を聞かれることとなりました。
(フィクションです)

人の原動機付自転車を使用したAさんは、警察署で事情を聞かれることになりましたが、Aさんは「後で返すつもりで乗って、実際に返しに駐輪場にいたので、原動機付自転車を盗んではいません。」と主張しています。
さて、Aさんの行為について、窃盗罪は成立するのでしょうか。

窃盗罪とは?

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立する犯罪です。
「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転させることをいいます。

窃盗罪の成立を肯定するためには、主観的要件である「他人の財物を窃取することの認識」に加えて、「不法領得の意思」が必要とされます。
判例によれば、「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思」であるとされます。(大判大正4・5・21)
つまり、不法領得の意思は、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として扱う意思(排除意思)、および他人の物をその経済的用法に従い利用・処分する意思(利用意思)から構成されます。

一時使用について

先述のように、窃盗罪が成立するためには、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思」が必要となりますが、他人の物を利用し、利用後は元に戻す意思で物を持ち去って利用するような「一時使用行為」においては、排除意思が認められるかが問題となります。

この点、権利者を排除する意思を認めるか否かを判断するに当たっては、利用により価値の減少や消耗が生じ、または、その危険性が大きい場合には、権利者でなければできない利用である点で排除意思が認められ、利用の妨害の程度が大きければ排除意思が認められます。
上記ケースにおいては、Aさんは原動機付自転車を利用後は元の場所に返すつもりで利用し、実際に元の駐輪場に戻しています。
また、使用時間も3時間ほどであり、使用した原動機付自転車の所有者の利用の妨害も生じていません。
しかし、原動機付自転車を使用したことで、そのガソリンを消耗しており、使用した原動機付自転車で事故を起こし当該原動機付自転車を損傷させてしまう危険性もあると考えられることから、Aさんには排除意思が認められる、つまり不法領得の意思が認められ、窃盗罪が成立することになるでしょう。

「ちょっと借りるだけ」と安易に他人の者を勝手に使用すると、窃盗の罪責を負うことになりかねません。
もし、あなたが窃盗事件の被疑者として取調べを受けているのであれば、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
容疑を認めている場合には、被害者への被害弁償や示談を行い、不起訴処分獲得に向けて動く必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
窃盗事件をはじめ刑事事件でお困りの方は、今すぐフリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年事件で保護観察処分

2019-09-11

少年事件で保護観察処分

~ケース~
兵庫県淡路市に住む高齢女性の自宅を訪れ、弁護士の秘書を装い、女性から現金100万円を騙し取ったとして、少年Aくん(17歳)が兵庫県淡路警察署に詐欺罪で逮捕されました。
Aくんは、逮捕・勾留後に家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることになりました。
Aくんの両親は、審判で少年院送致が言い渡されるのではないかと不安でなりません。
(フィクションです)

少年と特殊詐欺事件

兵庫県警察によると、兵庫県における特殊詐欺の認知件数は、平成26年度以降増加しており、平成30年中には773件となっています。
交付形態は、振込型や現金送付型は減少する一方、現金手交型、キャッシュカード手交型、電子マネー型が増加しています。
増加している手交型のように、被害者に直接会いに行って現金やキャッシュカードなどを受領する役割は「受け子」と呼ばれており、受け子役は犯罪組織の内部の者ではなく、外部の者に担わせることが多くなっています。
ネットの掲示板などで「高額アルバイト募集」などと謳い外部から特殊詐欺に加担する者を募るわけですが、20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が受け子として事件に関与したケースは少なくありません。
少年は、「荷物を受け取るだけで数万稼げるなんて…」「友人や先輩から誘われたし…」と、安易な気持ちで特殊詐欺に加担してしまうケースが多く見受けられます。
このような特殊詐欺の裏には、犯罪組織が存在しており、最も警察に捕まりやすい「受け子」や「出し子」の役割を少年たちに担わせ、自分たちは足がつかないようにしているのです。
言葉巧みに少年たちを勧誘し、利用する大人たちが背後にいるのです。

特殊詐欺事件における処分傾向

少年(20歳未満の者)が犯罪行為を行った場合、原則、少年法に基づいた手続に従って処分が決定されます。
処分は、家庭裁判所の調査や審判を経て、少年の更生に適したものが下されることになります。
家庭裁判所が言い渡す終局処分には、次のようなものがあります。
①保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
②検察官送致
③不処分
④都道府県知事または児童相談所長送致
⑤審判不開始

少年事件であっても、組織的な詐欺に関与したことが疑われる場合には、初犯であっても、逮捕・勾留される可能性が高く、家庭裁判所に送致された後も、そのまま少年鑑別所に収容される割合が高くなっています。
また、勾留と同時に、弁護士以外の者との面会等を禁止する接見禁止が付される可能性もあります。
また、少年に前歴や補導歴がないとしても、終局処分として少年院送致が言い渡される可能性があります。
そのような処分を回避するため、できるだけ早期に弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。

保護観察処分

特殊詐欺の少年事件では、弁護士は、少年院送致を回避し保護観察処分となるよう弁護人・付添人として活動することになります。

保護観察処分は、少年が保護観察官や保護司の指導監督の下、社会内で更生できると判断された場合に付される保護処分です。
保護観察に付された場合、少年は決められた遵守事項を守りながら家庭等で生活し、保護観察官や保護司と定期的に面会し現状報告した上で、彼らから生活や交友関係などについて指導を受けることになります。

保護観察の期間は、原則として、少年が20歳に達するまでです。
ただし、決定時から少年が20歳になるまでの期間が2年に満たない場合は、2年となります。
また、少年の改善更正に役立つと判断される場合には、期間を定めて保護観察を一時的に解除することもあり、保護観察継続の必要性がなくなったと認められるときは、保護観察は解除されます。

少年事件では、付添人である弁護士が、少年が社会内での更生が期待できることを客観的な証拠を提示し、裁判官に説得的に主張するなどの付添人活動を行います。
具体的には、少年が自らの行為を反省しているなど少年自身の更生可能性や、家族や学校・職場の協力を得て少年の周囲の更生環境が整っていることを主張していきます。

お子様が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
少年事件・刑事事件を専門とする弁護士が無料法律相談初回接見を行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

ストーカー規制法違反事件で逮捕

2019-09-10

ストーカー規制法違反事件で逮捕

~ケース~
会社員のAさんは、アイドルグループXのメンバーVの大ファンで、追っかけにも力を入れていました。
出待ちだけでなく、家や宿泊先まで追っかけたりするので、Xの所属事務所やVのマネージャーからも再三注意を受けており、過去には警察を呼ばれて警告されたこともありました。
Xが地方公演で兵庫県神戸市中央区にあるコンサート会場で出待ちをした後、宿泊先ホテル付近で待ち伏せをしている際に、兵庫県水上警察の警察官に職務質問後にストーカー規制法違反で現行犯逮捕されました。
(フィクションです)

追っかけとストーカー行為との線引き

アイドルや俳優などの芸能人のファンが行き過ぎた行為により、ストーカーとして逮捕されるというニュースを度々耳にしますね。
芸能人にとって、ファンの存在は芸能活動をする上でも非常に重要ですが、彼らの行き過ぎた行為により当の本人が精神的な苦痛を負うことになってしまっては芸能活動を支えるファンのあるべき姿ではないでしょう。
追っかけとストーカー行為との線引きは明確にはありませんが、ストーカー規制法におけるストーカー行為に該当する場合には、犯罪が成立し警察に逮捕される可能性があります。

ストーカー規制法におけるストーカー行為とは?

「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」という。)は、平成12年に制定・施行された法律です。
トーカー規制法は、「ストーカー行為」を処罰しているほか、「つきまとい等」の行為を取り締まり、被害者に対してストーカーからの被害の防止のための援助などを行うこととしています。

ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等を反復して行うことであるとストーカー規制法で定められています。

「つきまとい等」は、それが「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で行われたものに限られます。
ストーカー規制法における「恋愛感情その他の好意の感情」とは、恋愛感情その他の好意の感情が充足され得るものであることが予定されており、ただ一般的に好きだという感情だけではなく、相手方がそれに答えて何等かの行動をとってくれることを望むものとなります。
また、「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情」とは、特定の者に対して抱いた好意の感情が満たされなかったことから生じた恨みの気持ちを意味します。
ですので、近隣住民とのトラブルにより加害者が被害者宅に執拗に押し掛けるといった行為は、ストーカー規制法のつきまとい等には当たらないことになります。
つきまとい等の行為態様は、以下の8つです。
①つきまとい・待ち伏せ行為など
 尾行してつきまとう、通勤通学途中など行く先々で待ち伏せする、自宅や職場などに押し掛 けるなど。
②監視していると告げる行為
 帰宅直後に「おかえりなさい」などと電話やメールなどをする、その日に取った行動や来て いた服装などについて告げるなど。
③面会・交際などの要求
 断られているにもかかわらず、何度も面会や交際、復縁を迫るなど。
④乱暴な言動
 家の前で大声を出す、車のクラクションをうるさく鳴らすなど。
⑤無言電話、電子メールなどの送付
 電話をかけて何も告げない、許否しているのに何度も電話やメールをするなど。
⑥汚物などの送付
 汚物や動物の死体といった人に不快感・嫌悪感を与えるものを自宅や職場に送るなど。
⑦名誉を害する行為
 名誉を傷つける内容を告げる・メールで送るなど。
⑧性的羞恥心を害する行為
 わいせつな写真などを送る、インターネットに掲載するなど。

先述しましたが、「ストーカー行為」とは、「同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること」をいいますが、つきまとい等のうち、上の①から④に関しては、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限られます。
この点、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」とは、社会通念上、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害されるのではないか、又は行動の自由が著しく害されるのではないかと相手方に不安を覚えさせると評価できる程度のものであることが必要となります。
ファンの追っかけがとる行為も、テレビ局や事務所にとどまらず、追っかけの対象である芸能人の自宅や宿泊先など、通常知り得ることが困難な場所にも待ち伏せするなどした場合には、当該芸能人が上の不安を覚える方法を取ったと言えるでしょう。
また、「反復して」とは、複数回繰り返してということを意味します。

ストーカー規制法違反の処罰規定

1.ストーカー行為に対する罪
ストーカー行為」をした者に対しては、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
本罪は、親告罪で、告訴がなければ公訴を提起することができません。

2.禁止命令等に違反する罪
禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となる可能性があります。
禁止命令等に違反してつきまとい等をすることでストーカー行為をした者も同じです。
さらに、禁止命令等に違反した場合には50万円以下の罰金を科す旨が定められています。

ストーカー規制法違反事件は、被害者がいる事件ですので、早急に被害者対応を行うことが求められます。
刑事事件でお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

自殺ほう助未遂容疑で逮捕

2019-09-09

自殺ほう助未遂容疑で逮捕

~ケース~
兵庫県美方郡香美町に住むAさんは、ネットの掲示板で一緒に自殺をする人を募っていました。
呼びかけに応じた男女3人と共に、Aさんの自宅で練炭自殺をしようとしましたが、練炭が完全に燃えず、結局全員が未遂に終わってしまいました。
参加者の家族からの相談を受けていた兵庫県美方警察署の警察官が現場に駆け付け、Aさんを自殺ほう助容未遂の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)

自殺関与の罪

自らの命を絶つこと(自殺)自体は罪とはなりません。
しかし、他人の自殺を促したり手助けすることは犯罪となる可能性があります。

刑法第202条
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

第202条の前段は、自殺関与罪について規定しています。
自殺関与罪は、意思能力のある者を教唆して自殺させる(自殺教唆)、若しくは意思能力のある者の自殺行為をほう助して自殺させる(自殺ほう助)ことを内容となる犯罪です。

1.客体
自殺関与罪の客体は、「人」です。
この「人」は、自殺の意味を理解し、自由な意思決定の能力を有する者であることが必要です。
ですので、意思能力を欠く幼児や心神喪失者を自殺させる行為、強制的に自殺させる行為は、自殺関与罪とはならず、殺人罪の間接正犯となります。(最決昭27・2・21)

2.行為
自殺教唆罪の実行行為は、「教唆」です。
「教唆」とは、自殺意思のない者に、故意に基づく何らかの手段を講じ自殺意思を起こさせることをいいます。
例えば、Xさんは、元々自殺するつもりはありませんでしたが、XさんがYさんに「借金ばかりで人生楽しくない。」などと相談したところ、Yさんが「それならいっそ命を絶ったほうがいい。」などと説得され、Xさんが自殺することを決意したとしましょう。
元々Xさんには自殺意思がなかったのに、Yさんが自殺することを提案し説得にかかった結果、Xさんに自殺意思が生じたので、Yさんの行為は「教唆」に当たることになります。
それでは、なかなか自殺の意思が固まらないXさんに、Yさんが「一緒に自殺しよう。」と言って、Xさんが自殺を決意し、実際に自殺を図った場合はどうでしょう。
YさんはXさんに自殺を決意させるように動いていますので、Yさんの行為も「教唆」に当たりますね。
しかし、Yさんが実際に一緒に自殺するつもりはなく、Xさんに自殺を決意させるために嘘の提案をしていた場合にも、自殺教唆罪が成立するのでしょうか。
この、いわゆる偽装心中について、判例は、「被害者は被告人の欺罔の結果被告人の追死を予期して死を決意したものであり、その決意は真意に添わない重大な瑕疵である意思であることが明らかである。そしてこのように被告人に追死の意思がないにかかわらず被害者を欺罔し被告人の追死を誤信させて自殺させた被告人の所為は通常の殺人罪に該当する」とし、殺人罪を適用したものがあります。(最判昭33・11・21)
このように、判例は、自殺意思が真意に添うものか否かで、殺人罪か自殺教唆罪か否かの判断をする立場に立っています。

また、自殺ほう助の「ほう助」とは、既に自殺の決意にある者に対して、その自殺行為を援助し、自殺を容易にさせることをいいます。
自殺教唆罪と異なり、自殺ほう助罪が成立するためには、自殺する人が「既に自殺意思がある」ことが必要です。

自殺関与罪の着手時期については、教唆・ほう助行為が行われたときとする説と、本人が自殺行為に入ったときとする説とがあります。
これらの説の違いは、自殺を教唆・ほう助された者が、自殺を決意しながら翻意して実行しなかったときに生じ、前者の説をとると犯罪は成立せず、後者の説に立てば自殺教唆・ほう助の未遂罪が成立することになります。
自殺関与罪の既遂時期については、教唆・ほう助された人が自殺を遂げたときです。
上記ケースのように、実際に練炭に火をつけ自殺行為を開始したけれども自殺できなかった場合には、自殺行為に入ったが自殺を遂げなかったため、未遂となることに異論はないでしょう。
自殺関与罪の未遂も罰せられます。

自殺関与罪の法定刑は、6月以上7年以下の懲役または禁錮です。
罰金刑はありませんので、起訴される場合は公判請求となります。
公判請求されたら、情状弁護で執行猶予付き判決獲得に向けた弁護活動が重要となるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族が自殺関与罪で逮捕されたら、弊所の弁護士にご相談ください。

ひったくりで窃盗罪?強盗罪?

2019-09-08

ひったくりで窃盗罪?強盗罪?

~ケース~
兵庫県尼崎市や伊丹市などの路上で通行人から現金が入ったかばんを奪ったとして、兵庫県尼崎東警察署は、AさんとBさんを窃盗強盗致傷の疑いで逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、事件の詳細も分からず対応に困ってしまいました。
(神戸新聞NEXT 2019年8月21日21時12分掲載記事を基にしたフィクションです)

ひったくり行為で成立する犯罪は?

道を歩いている人のカバンを、原付バイクや自転車などに乗った犯人が奪取する「ひったくり」事件は、兵庫県警察によれば、平成30年中兵庫県下では、71件が認知されています。
ひったくりの発生は、主に都市部に集中しており、高齢者や女性を狙ったものが多くなっています。
ひったくりは、その犯行内容により成立する犯罪は異なります。

(1)窃盗罪

AさんとBさんは、自転車の前かごに入れてあったカバンを追い抜きざまにひったくり、Vさんはあっけにとられてしばらく呆然としていました。

このような場合には、「窃盗罪」が適用される可能性が高いでしょう。

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取した
ことで成立します。
「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思」のことをいいます。(大判大4・5・21)
また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。(最決昭31・7・3)
窃取の手段や方法は問いませんので、こっそりであっても、ひったくりのようにあからさまであっても構いません。

このように、ひったくり窃盗罪に当たるケースがほとんどです。
しかし、ひったくる時にうまくバックを盗ることができずに、被害者ともみあった場合には、「窃盗罪」ではなく「強盗罪」となることもあるのです。

(2)強盗罪

AさんとBさんは、カバンを肩に提げて歩いていた歩行者から、カバンをひったくろうとしました。その際に、バックを離さない歩行者を転倒させてしまいました。

このような場合、強盗罪が、被害者に怪我を負わせたのであれば強盗致傷罪が成立する可能性があります。

(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

強盗罪は、
(1項)①暴行または脅迫を用いて
    ②他人の財物を
    ③強取したこと
(2項)①暴行または脅迫を用いて
    ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
により成立する犯罪です。
実行行為の手段である「暴行・脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するにたりる程度のものであることが必要となります。(最判昭24・2・8)
ひったくりは、犯行抑圧に向けられた暴行ではなく、暴行を手段とするものであっても窃盗罪にしかなりません。
しかし、暴行の程度如何によっては強盗罪若しくは恐喝罪が成立する可能性はあります。
「強取」とは、暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、その意思によらずに財物を自己または第三者の占有に移す行為をいいます。
強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役と、窃盗罪のそれよりも重くなっています。
また、強盗により人に怪我を負わせた場合には、強盗致傷罪となり、その法定刑も無期または6年以上の懲役と加重されます。

ひったくりには、被害に遭った方がいらっしゃいますので、重要な刑事弁護活動のひとつに、被害者への被害弁償や示談交渉があげられます。
このような活動には、刑事事件に精通する被害者との示談に豊富な経験を持つ弁護士に依頼するのがよいでしょう。

ご家族がひったくり事件で被疑者として逮捕されてしまったのであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

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