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少年事件の手続について~捜査段階~
少年事件の手続(捜査段階)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県赤穂郡上郡町の公園にある公衆トイレの個室に火をつけ建物を損傷させたとして、町内に住むAくん(15歳)が兵庫県相生警察署に逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、これからどのような手続となるのか分からず不安で仕方ありません。
すぐにネットで少年事件に強い弁護士を探し、相談電話をすることにしました。
(フィクションです)
20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が、事件を起こしてしまった場合、少年法が適用されることは、みなさんご存知だと思います。
しかし、実際にどのような手続がとられることになるのかについてはあまり知られていません。
ですので、ある時、突然あなたの子供が、事件を起こしたと警察から連絡がきたら、今後の流れや、あなたの子供がその後どのような処分を受けることになるのか、先の見通しが立たず、一体どのように対応すればよいのか分からず不安に駆られることでしょう。
今回は、少年事件の捜査段階の手続について説明していきます。
捜査段階における少年事件の手続
まず、捜査段階についてですが、「捜査」というのは、警察をはじめとする捜査機関が、犯罪があると考えるときに、犯人と思われる者(「被疑者」といいます。)を特定・発見して、必要である場合には、その身柄を確保し、証拠を収集・保全するといった一連の手続のことをいいます。
捜査段階の流れとしては、概ね、次の通りです。
①捜査の端緒
捜査が始まるきっかけとなるものには、被害者からの被害届の提出、警察官による職務質問、犯人の自首などがあります。
これらをきっかけに、警察などの捜査機関は、捜査を開始します。
↓
②捜査の実行
捜査を行うにあたって、原則としては強制ではない処分(「任意処分」)によるものとされます。
例えば、被疑者の了解を得た上で警察署に出頭して取調べを行う方法によるものがあります。
しかし、必要があれば、捜査は強制処分によって行われます。
犯人の身柄を確保する必要性があると判断されれば、犯人を逮捕・勾留することもありますし、関係場所に赴き捜索・差押えを行うこともあります。
↓
③捜査の終結
警察により一通り捜査がなされると、通常、検察官により事件が処理されます。
検察官は、終局処分として、起訴処分、不起訴処分、家庭裁判所送致のいずれかを行います。
身体拘束の可能性
捜査段階では、少年事件であっても、刑事訴訟法が適用されるため、成人の刑事事件とほとんど同じ手続となります。
そのため、少年であっても、逮捕・勾留される可能性はあります。
ただし、14歳未満の者については、刑事責任を問うことができず犯罪が成立しないため、捜査機関が逮捕することはありません。
勾留について、少年事件においては、「勾留に代わる観護措置」という制度が設けられており、検察官が勾留の要件を満たすと判断した場合においても、この措置の請求をすることができます。
基本的には、勾留に関する規定が準用されますが、勾留に代わる観護措置においては、少年鑑別所収容の観護措置のみならず、家庭裁判所の調査官による観護の方法がとることが可能な点、勾留と異なり、10日間の観護措置期間は延長できない点、そして、勾留に代わる観護措置により少年鑑別所に収容されていた事件が家庭裁判所に送致されると、当然に家庭裁判所は送致後の少年鑑別所収容の観護措置とみなす点が勾留と異なります。
身体拘束が長期化することで、学校や職場に行くことができず、少年が被る不利益も大きくなるでしょう。
不必要な身体拘束を避けるためにも、早期に弁護士に相談し、身柄解放活動を行うことが重要です。
全件送致主義
捜査機関による捜査が終了すると、犯罪の嫌疑がある場合や、犯罪の嫌疑はないけれども家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合には、原則として、全ての事件を家庭裁判所に送致することになります。
成人の刑事事件のように、犯罪を行ったという事実を十分に証明することができる場合であっても、公訴を提起しないとする処分(「起訴猶予」)は少年事件ではなされません。
他方、嫌疑がなく、家庭裁判所の審判に付すべき事由もない場合には、不起訴処分となります。
少年が容疑を否認している場合には、嫌疑がないこと、そして、家庭裁判所の審判に付すべき事由もないことをしっかりと主張していくことが必要です。
また、容疑を認める場合であっても、審判に向けて、捜査段階から少年の更生に向けた環境調整を行うことが重要です。
このように、少年であっても捜査段階で身体拘束を受ける可能性も十分ありますし、この段階から家庭裁判所送致後に予定されている審判に向けて準備を始めることも大切です。
あなたの子供が事件を起こして対応にお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士による無料法律相談・初回接見サービスを行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
少年事件:学校への対応
少年事件を起こした場合の学校への対応について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古郡稲美町に住む高校生のAくんは、ある日、兵庫県加古川警察署に強制わいせつの容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しました。
Aくんの両親は、今後学校にどのように対応すればよいのか分からず困っています。
(フィクションです)
少年事件において、少年本人や少年の家族が懸念する問題のひとつに、事件を起こした少年が、学校に所属する場合、事件が原因で学校を退学せざるを得ない状況になるのではないか、ということがあります。
今回は、少年事件において、どのように学校に対応すべきか、また、学校にどのような協力を得る必要があるのか、という点について考えてみましょう。
学校が事件を把握する時期について
事件が学校で起きたり、学校関係者が関与している場合には、すぐに学校側は事件について把握します。
しかし、学校外で起きた事件については、学校もすぐには把握することはできません。
学校が事件について把握する経緯としては、おおまかに次の3つがあります。
①警察から連絡がいく場合
地域によっては、警察と学校が連絡を取り合う制度(「警察・学校相互連絡制度」)が実施されています。
例えば、神戸市では、教育委員会と兵庫県警察本部との間で「学校と警察における相互情報連絡制度に係る協定」を結んでいます。
この協定における連絡対象事案には、犯罪または触法事案、またはそのおそれのある事案が含まれています。
つまり、神戸市の公立学校に所属する少年が何等かの事件を起こした場合、事件について所属の学校に連絡がいくことになっているのです。
この制度によって、少年や保護者が知らないうちに警察から学校に連絡が入り、学校に事件のことを知られるという事態が生じることがあります。
しかし、警察は、必ずしもすべての対象事件について自動的に学校に連絡しているわけではないようですので、学校への連絡を避けるべき事情がある場合や連絡に際して配慮が必要となる場合には、早期に警察にその旨を申し入れ、対応を協議する余地はあるでしょう。
②保護者から連絡する場合
事件を起こした少年の保護者から、学校に連絡を入れることによって学校が事件を把握することもあります。
とりわけ、逮捕・勾留され、学校を欠席せざるを得ない場合に、保護者が学校に事件のことを報告することがあります。
③被害者などから連絡がいく場合
事件の被害者や関係者が、少年の所属先を知っており、学校に連絡することもあります。
被害者が少年と同じ学校に所属している場合には、被害者の保護者から学校に被害申告がなされることが多いようです。
学校に事件が発覚した場合、義務教育中の公立学校の場合には退学はありませんが、私立学校や高校、大学では、事件が原因となり退学となってしまう可能性もあります。
後で説明するように、学校は少年の環境調整においても非常に重要な役割を担いますので、退学により少年の更生を害することにならぬよう慎重に対応する必要があります。
環境調整における学校の位置づけ
環境調整は、保護者を含めた家族との関係の調整、就業先の開拓、帰住先の確保等、少年の社会復帰を円滑にするために少年をとりまく環境を調整することです。
少年審判では、非行事実だけでなく、要保護性についても審理されるため、少年の更生に資する環境調整を行うことは、裁判官が少年に対する処分を検討する上でも重要な要素となります。
調整を行う環境のなかでも、少年が一日の中でも大半を過ごす学校について環境を調整することは必要不可欠です。
学校に在籍する少年の場合、今後も在籍できるかどうか、学校側が少年を受け入れて適切な指導をしてくれるかどうかは、少年の更生を考えるうえで重要な事項となります。
しかしながら、前述したように、学校が少年を退学にするなど、学校の対応が要保護性を解消する上での障害となることも少なくありません。
そこで、学校に関する環境調整を行うにあたっては、少年や保護者から、学校の状況やこれまでの学校や教師との関係性について聞き取った上で、適切に学校にアプローチしていかなくてはなりません。
学校が事件について把握している場合には、少年事件の手続や理念について説明したり、少年が自身の行為を猛省していることや復学を希望していること、少年の更生には学校の協力が必要不可欠であることを伝え、学校側の積極的な受け入れを要請することが必要となるでしょう。
少年事件は、成人の刑事事件とは異なる手続となりますので、少年事件については少年事件に強い弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
お子様が事件を起こし、学校への対応にお困りの方は、少年事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
少年事件の審判手続について
少年事件の審判手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡福崎町に住む高校生のAくんは、駅の構内で女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、兵庫県姫路警察署に逮捕されました。
Aくんは、逮捕された日の夜に、Aくんの母親が警察署に迎えに来て家に帰れることになりました。
その後、Aくんは何度か警察署で取り調べを受け、警察官からは「関係書類を検察に送ってから、家庭裁判所に送られることになる。家庭裁判所で審判を受けて、最終的な処分が決まる。」と言われました。
Aくんは、家庭裁判所の審判とはどのようなものなのか分からず心配になり、翌日、AくんとAくんの母親は、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
少年事件の場合、警察官や検察官は、原則としてすべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
家庭裁判所が事件を受理すると、審判条件や非行事実の存否について捜査機関から送られてきた事件記録によって、書記官や裁判官が法的調査を行います。
法的調査というのは、主に事件記録に基づいて、審判条件と非行事実の存否について、法律的な視点から行われる審査・検査のことです。
法的調査の結果、非行事実が存在することについて、裁判官が蓋然的心証を得た場合、原則として調査官に要保護性の判断のために社会調査を命じます。
要保護性というのは、多義的に用いられる用語ですが、概ね次の要素で構成されるものと理解されています。
①再非行の危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって、再非行の危険性を除去できる可能性。
③保護相当性
保護処分による保護がもっとも有効かつ適切な処遇であること。
調査官は、心理学、教育学、社会学などの専門としており、法律家である裁判官とは異なる観点から、非行少年が持つ問題性を探り、裁判官に調査結果を報告します。
社会調査が終了すると、調査官は、少年鑑別所の鑑別結果通知書などとともに裁判官に調査結果を提出します。
裁判官は、検察官や警察から送られた証拠書類などと併せて、調査官から提出された調査結果を検討してます。
その結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない決定をしなければなりません。
他方、少年が非行事実を行った蓋然性があり、調査官による教育的措置を経てもなお少年に要保護性が認められる場合には、審判開始決定がなされます。
ただし、家庭裁判所に事件が送致され、観護措置がとられた事件については、観護措置の要件として審判を開く蓋然性が求められるため、調査命令と共に審判開始決定が出されるのが通例となっています。
少年審判は、刑事裁判とは異なり、審判の手続や進行についても裁判官の裁量が大きいのが特徴です。
審判の時間は、非行事実に争いがなく、1回の審判で決定まで言い渡す事件であれば、40~60分ぐらいとなります。
審判の進行は、概ね、次のような順序で行われます。
①人定質問、黙秘権告知、非行事実の告知、それに対する少年・付添人の陳述
開廷後、裁判官は審判廷の在籍者を確認します。
その際、裁判官が少年やその保護者にどこの誰であるかを問い、出廷者が人間違いではないかを確認します。
次に、黙秘権の告知が行われ、裁判官から審判に付すべき事由の要旨が告げられ、これに対する少年の陳述が行われます。
また、少年の付添人に対しても非行事実に対する陳述が求められます。
②非行事実の審理
非行事実に争いのある場合、まずは、非行事実に関する審理を行い、その結果、裁判官が非行事実があるとの心証を得た場合に、要保護性について審理することになります。
③要保護性の審理
要保護性の審理では、少年本人に対する質問から始まり、少年の保護者や審判に在席している関係者に対する質問が行われます。
④調査官、付添人の処遇意見の陳述、少年の意見陳述
調査官と付添人は、裁判官の許可を得て、審判で意見を述べることができます。
最後に、裁判官が少年の意見を求め、少年が陳述します。
⑤決定の言渡し
審判手続がすべて終わると、裁判官が決定を言い渡します。
言渡しでは、まず初めに、裁判官は少年に対する処分の内容について述べます。
その次に、裁判官は、なぜ当該処分を決めたのか、理由を説明します。
概ね、以上のような流れで事件が処理されることになります。
少年事件の手続は、刑事事件とは異なりますので、少年事件に精通した弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
少年事件における私選弁護人・付添人
少年事件における私選弁護人・付添人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県西宮警察署は、特殊詐欺事件に関与したとして少年Aくん(18歳)を詐欺容疑で逮捕しました。
Aくんは、警察官から、弁護人を付けれることを聞き、国選弁護人を選任することにしました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、刑事事件に強い弁護士に相談し、すぐに接見に行ってもらうことにしました。
両親が依頼した弁護士と接見をしているAくんは、弁護士に国選弁護人と私選弁護人の違いについて聞いています。
(フィクションです)
少年事件の流れについて
Aくんは、特殊詐欺に関与したとして兵庫県西宮警察署に逮捕されました。
特殊詐欺の場合、逮捕後勾留となる可能性が高いと言えます。
ですので、事案によって異なりますが、10日間の勾留の後、勾留延長され20日の勾留延長満期日にAくんの身柄と共に事件が家庭裁判所に送致されることになります。
もちろん、行った犯罪の数が多ければ別件で再逮捕され、勾留期間が更に延長となる可能性はあります。
家庭裁判所に送致されると、観護措置がとられ、身柄は少年鑑別所に収容されることになります。
家庭裁判所は事件を受理すると、事件が係属している間いつでも観護措置をとることができます。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する観護措置と初年鑑別所に収容する観護措置とがありますが、実務上前者はほとんどとられておらず、観護措置という場合には後者を指すものとされます。
捜査段階で逮捕・勾留されている少年の場合、家庭裁判所に送致されるとそのまま観護措置がとられることがほとんどですので、Aくんも送致後少年鑑別所に収容される可能性が高いでしょう。
その後、調査官による調査、少年審判を経て、少年に対して処分が言い渡されることになります。
弁護人と付添人
1.弁護人
弁護人とは、刑事手続において被疑者・被告人が正当に権利を行使し、正当な利益を保護するための支援者・代弁者です。
事件の発覚から家庭裁判所送致までの被疑者段階では、少年と成人の手続に顕著な差異はありません。
少年であっても、少年または少年と一定の関係にある者は、いつでも、弁護人を選任することができます。(刑事訴訟法第30条)
弁護人には、「私選弁護人」と「国選弁護人」とがあります。
◇私選弁護人◇
少年または少年の家族などから選任された弁護人で、弁護士費用は自己負担となります。
身体拘束の有無にかかわらず、被疑者その他の選任権者は、いつでも弁護人を選任することができます。
◇国選弁護人◇
捜査段階においては、少年事件も成人事件と同様に、刑事訴訟法の適用を受けます。
被疑者国選弁護人が選任される要件に該当する場合には、国がその費用を負担する国選弁護人を選任することができます。
被疑者国選弁護人が選任される要件とは、以下のものです。
・対象事件が、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に当たる事件」。
・少年が「貧困その他の事由により弁護人を選任することができない」。
被疑者国選弁護人制度は、逮捕後勾留前の段階では、利用することはできません。
少年事件では、「勾留に代わる観護措置」により少年鑑別所に収容された場合にも、被疑者国選弁護人の選任が可能です。
被疑者国選弁護人制度は、身体拘束されていない在宅事件には適用されません。
少年の場合、学生であれば資力は乏しく、対象事件が該当するのであれば国選弁護人を選任できることが多いでしょう。
2.付添人
付添人は、少年の権利を擁護し、その代弁者としての役割と、少年の更生に向けて家庭裁判所と協力し援助する役割を担う者です。
少年が家庭裁判所に送致された後、少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を得て、付添人を選任することができます。
ただし、弁護士を付添人とする場合には、家庭裁判所の許可は要りません。
少年事件においては、捜査段階で弁護人であっても、家庭裁判所送致後に、新たに付添人として選任する必要があります。
付添人にも、「私選付添人」と「国選付添人」とがあります。
◇私選付添人◇
少年及び保護者は、自ら付添人を選任することができます。
捜査段階で私選弁護人を選任している場合であっても、弁護人選任の効力は家庭裁判所送致時に失われるので、同じ弁護士を付添人として選任するのであっても、家庭裁判所送致後に改めて家庭裁判所に付添人選任届を提出しなければなりません。
◇国選付添人◇
私選弁護人の場合と同様に、捜査段階で被疑者国選弁護人の選任効力は失われるので、被疑者国選弁護人が当然に国選付添人になるわけではありません。
平成26年施行の改正少年法によって国選付添対象事件の範囲が拡大し、被疑者国選弁護対象事件と同じ範囲にまで拡大されましたが、国選付添人を選任するか否かは、家庭裁判所の裁量に委ねられています。
家庭裁判所は、犯罪少年又は触法少年のうち、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪」に該当する非行に及んだ者について、「観護措置」がとられており、弁護士の付添人がいない場合に、事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮して、審判の手続に弁護士である付添人が関与する必要があると認めるときは、弁護士である付添人を付けることができます。
ただし、検察官関与決定がなされた事件で、少年に弁護士である付添人がいないときは、家庭裁判所は弁護士である付添人を付けなければなりません。
少年事件も、成人の刑事事件と同様に、少年の権利・利益の擁護や少年の更生に向けた活動を行う弁護士の役割は大きいと言えるでしょう。
しかし、医者にも内科医や外科医といった専門性があるように、必ずしもすべての弁護士が少年事件・刑事事件に精通しているわけではありません。
少年事件・刑事事件でお困りであれば、専門の弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
特殊詐欺事件で少年院送致回避
特殊詐欺事件で少年院送致を回避する活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県小野市の民家を訪れ、弁護士秘書を名乗り、高齢女性からキャッシュカードと窃取したとして、関西地域に住むAくん(17歳)が窃盗の容疑で兵庫県小野警察署に逮捕されました。
Aくんは、他にも2件同様の手口で特殊詐欺事件に関与しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、Aくんが少年院送致となるのではないかと心配し、急いで少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
特殊詐欺事件の終局処分
事件が家庭裁判所に送られると、調査・審判を経て最終的な処分が言い渡されます。
その終局処分には、次のものがあります。
①保護処分決定(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
②検察官送致
③不処分
④都道府県知事又は児童相談所長送致
⑤審判不開始
⑤の審判不開始は、調査官による調査が終了した後に決定され、審判は開かれません。
少年院とは
終局処分の①保護処分決定には、保護観察、少年院送致、そして児童自立支援施設等送致の3種類があります。
少年が再び非行を犯すおそれが強く、社会内での更生が難しいと判断された場合には、少年を少年院に送致して矯正教育が行われることになります。
この処分を「少年院送致」といいます。
「少年院」は、家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年や懲役・禁錮の言い渡しを受けた16歳に満たない少年を収容し、これらの少年に対して、その健全な育成を図ることを目的として矯正教育、社会復帰支援等を行う施設です。
少年院には4種類あり、年齢、犯罪傾向の程度、心身の著しい障害の有無に応じて、以下のように区分されています。
●第1種:心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満の者を収容。
●第2種:心身に著しい障害がない犯罪傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を収容。
●第3種:心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満の者を収容。
●第4種:少年院において刑の執行を受ける者を収容。
「少年刑務所」や「少年鑑別所」と混同されることがありますが、前者は、懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年の相対的不定期刑を執行する施設であり、少年院が少年の矯正教育をその目的とし、少年の健全育成の理念のもとで処遇が実施されるのに対し、少年刑務所はあくまで刑を執行する刑事施設である点で異なります。
また、「少年鑑別所」は、家庭裁判所等の求めに応じて鑑別対象者を鑑別すること、観護措置が執られて少年鑑別所に収容されている者に対して必要な監護処遇を行うこと、そして、非行及び犯罪の防止に関する援助を行う施設です。
少年院送致回避に向けた活動について
特殊詐欺事件は、その被害の大きさに鑑みて、厳しく罰せられる傾向にあります。
被害額や犯行態様によっては、初犯であっても、いきなり実刑となるケースも少なくありません。
少年事件においても、同様の傾向が見られ、これまで非行歴がない少年であっても、少年院送致が言い渡されることもあります。
少年院送致となれば、少年院に収容中は通常の生活を送ることが出来ませんので、退院後の社会復帰にも影響を及ぼす可能性はあります。
そのような事態を回避するためにも、少年院送致ではなく保護観察のような社会内処遇となるよう働くことが重要です。
少年事件では、非行事実とともに要保護性について審判で審理されます。
要保護性というのは、少年が将来再犯するおそれがあり、保護処分によって再犯のおそれが除去できる可能性があり、かつ保護処分が適切であることです。
非行事実を行ったと認定された場合でも、将来、非行を繰り返すおそれがないと判断されれば、保護処分でも保護観察といった社会内処遇となる可能性があります。
特殊詐欺事件について言えば、非行事実が重い罪名の付くもので会ったり、社会的に問題視されているものであっても、要保護性が解消されていると判断されれば、少年院送致ではなく保護観察となることもあるのです。
要保護性の解消には、少年を取り巻く環境をしっかりと調整することが重要です。
少年自身がきちんと反省し、少年が抱く問題点を理解し、解決策を見出すなど、少年本人の内部の環境を調整することや、保護者や学校などと協力し、少年の更生に資する周囲の環境を調整することも大切です。
また、被害者に対して謝罪や被害弁償を行うことも、少年事件においても重要です。
これらの要保護性を解消する活動は、出来る限り早期に着手するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし、対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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住居侵入事件で現行犯逮捕
住居侵入事件で現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県宝塚市の会社の寮の敷地内に侵入したとして、Aくん(16歳)は、住人からの通報を受けて駆け付けた兵庫県宝塚警察署の警察官に住居侵入の容疑で逮捕されました。
Aくんは、取調べで「スマホでゲームをしようと思ったけど、お金がかからないようにしようとして、Wi-Fiが使えるところがないか探していた。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、ネットで検索し、刑事事件専門の弁護士に相談の連絡をしました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)
住居侵入罪
住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合に成立する罪です。
◇正当な理由がない◇
他人の家などを訪問したりすることは日常的に行われることですので、犯罪となるものを構成要件上明らかにしようとする意図から、「正当な理由がないのに」という文言が定められたと解されます。
どのような場合が「正当な理由」があるとされるのかと言えば、警察官が犯人を逮捕する場合に人の住居等に立ち入って捜索するとき、令状を得て屋内で検証するときなどがあります。
◇客体◇
【住居】
人の起臥寝食に使用される場所を「住居」といいます。
旅館やホテルの客室も、滞在者にとっては住居となり、アパートなどでは、その一部屋がその部屋の住人の住居となります。
【邸宅】
「邸宅」とは、住居用の建造物で、住居以外のものをいいます。
例えば、居住者のいない空き家や閉鎖された別荘などがあります。
集合住宅の通路や階段などの共用部分は邸宅です。
【建造物】
住居や邸宅以外の建造物を広く含み、土地に定着し、内部に人が出来るできる構造をもつ家屋その他これに類似した工作物です。
【艦船】
軍艦および船舶をいいます。
邸宅・建造物・船舶については「人の看守する」ものに限られます。
みだりに他人が出入りできないように人を監視させたり、鍵をかけるなどの戸締りをしている場合、「人の看守する」建物に当たります。
住居・邸宅・建造物については、建物自体だけでなく、付属する囲繞地も客体に含まれます。
◇侵入◇
「侵入する」とは、住居の場合は住居者、邸宅・建造物等の場合は看守者の意思に反して立ち入ることをいいます。
住居者や看守者が立入りについて許諾していた場合には、住居侵入罪は成立しません。
しかし、その許諾が欺罔などの錯誤に基づいて付与された場合には、許諾を無効し住居侵入罪が成立するものとされます。
住居侵入事件で現行犯逮捕されたら
住居侵入事件で現行犯逮捕となる場合、犯行時に住居者や看守者に目撃され、彼らに身柄確保されるケースや、通報により駆け付けた警察官に逮捕されるケースなどです。
住居侵入は、窃盗や盗撮など他の目的があって行われることが多く、その点についても取調べで聞かれるでしょう。
単なる好奇心による侵入の場合には、家族による監督が期待できると判断されれば逮捕後に釈放となる可能性はあるでしょう。
しかし、窃盗やわいせつ目的などがある場合には、逮捕後に勾留となる可能性もあります。
勾留されると、逮捕から最大で23日間身柄が拘束されることになりますので、その間学校や会社に行くことができません。
そうなれば、退学や解雇といったおそれも出てきます。
ご家族が住居侵入事件で逮捕されてお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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恐喝事件で保護観察処分
少年の恐喝事件と保護観察処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県丹波市に住むAくん(16歳)は、知人のVくんにお金を貸していました。
「すぐ返すから。」と言って、いつまでも返済しないVくんについて、Aくんの友人のBくんが、「お前のことなめとんから返さへんのとちゃうか?」と発言したことを受けて、Aくんは、自分がVくんに甘く見られていることに腹を立て、ビビらせてお金を返してもらおうと考えました。
Aくんは、Vくんを市内の公園に呼び出し、Bくんと一緒にVくんに対して返済を求めましたが、Vくんはいつも通り「すぐに返すから待って。」と言うだけでした。
Aくんは、「お前痛い目みんと分からんのか!」と言って、Bくんと一緒になってVくんに殴る蹴るの暴行を加えました。
Aくんは、Vくんが所持していた現金3千円を出させ、「後の分もちゃんと返してな。」と言ってその場を立ち去りました。
翌日、兵庫県丹波警察署の警察官がAくん宅を訪れ、Aくんを恐喝の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
恐喝罪について
恐喝罪は、刑法第249条に規定される罪です。
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
恐喝罪とは、
①人を恐喝して財物を交付させた場合、又は、
②人を恐喝して財産上不法の利益を得又は他人にこれを得させた場合
に成立する犯罪です。
◇人を恐喝して◇
「恐喝」とは、暴行又は脅迫により被害者を畏怖させることを意味します。
それは財物又は財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。
また、畏怖させる手段である暴行・脅迫は、被害者の犯行を抑圧する程度に至らないものであることが必要となります。
◇財物を交付させ◇
恐喝罪の成立のためには、畏怖により生じた瑕疵ある意思に基づき、物・財産上の利益が交付される必要があります。
交付行為により、物・財物上の利益が移転した場合、恐喝罪は既遂となります。
しかし、行為者の権利実現のために恐喝が用いられた場合、恐喝罪が成立するかどうかが問題とされてきました。
上記事例のように、金銭債権を有する者が、恐喝を用いて返済を受ける場合が典型例です。
この点、判例は、権利の実行は、その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り何ら違法の問題を生じさせないが、その範囲程度を逸脱する場合には違法となり、恐喝罪が成立するとしています。(最判昭和30・10・14)
殴る蹴るの暴行を加えた上で、相手に金銭を出させる行為は、借金返済を求める方法としては一般的に容認されるものではないでしょう。
保護観察処分について
事件が捜査機関から家庭裁判所に送致されると、調査・審判を経て最終的な処分が言い渡されます。
その最終的な処分のなかには、保護処分というものがあり、①保護観察、②少年院送致、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致、の3つがあります。
「保護観察」は、少年を施設に収容することなく、社会生活をさせながら、保護観察所の行う指導監督及び補導援護によって少年の改善更生を図る社会内処遇の保護処分です。
保護司と定期的に面談し、現状を報告しながら、改善更生に向けた助言や支援をもらいます。
保護観察は、少年院送致や児童自立支援施設等送致の収容措置とは異なり、社会内で改善更生を行うものですので、少年の審判後の生活も大きく異なります。
しかし、誰でも保護観察となるわけではありません。
裁判官が、少年は社会内で更生することができるだろうと認めてもらわなければなりません。
そのためには、審判が開かれるまでに、少年が更生施設ではなく社会生活を送りながら更生することができる環境が十分に整っていなければなりません。
具体的には、少年自身が事件や自分が抱える問題と向き合い、再び非行に走らないためにはどうすればいいのか解決策を見つけることや、家庭環境や交際関係の改善など、保護者や学校と協力して少年の更生に適した環境を整える必要があります。
少年事件において、弁護士は、成人の刑事事件と同様に、少年の権利がきちんと守られるように支援するという役割もありますが、家庭裁判所や保護者・学校などと協力して、少年が更生できる環境を整えるという重要な役割も担います。
ですので、お子様が事件を起こして対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
不良行為少年と虞犯少年
不良行為少年と虞犯少年との違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
中学2年生のAさん(14歳)は、夏までは真面目に学校に通っていましたが、夏休みの間にクラブに入り浸り、家にも帰ってこない等、乱れた生活を送るようになりました。
徐々に学校にも行かなくなり、何度も家出を繰り返していました。
ある日、少年Bとクラブに行った帰りに、兵庫県生田警察署の警察官に職務質問を受けたAさんは、酒に酔っていたこともあり気が大きくなり、警察官に反抗的な態度をとりました。
警察官はそのまま2人を署に任意同行し、事情を聴くことにしましたが、薬物をしているわけでもなく、2人の両親に引き取ってもらい一時的な補導で終わらせることにしました。
しかし、Aさんは、迎えに来た母親に対して、「なんでここに来とんねん。お前とは帰らへん。」と反抗的な態度を取り続けました。
母親から事情を聴いた警察官は、Aさんをこのまま自宅に返したとしても、また家出をするかの可能性が高いこと、Aさんは少年Bが恐喝で得たお金で遊んでいること、複数人と性的関係を持つなど、将来、財産犯や売春を行うおそれがあると判断したため、神戸家庭裁判所に虞犯少年として送致しました。
(フィクションです)
不良行為少年とは
不良行為少年は、少年警察活動規則第2条1項6号において、「非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為をしている少年」と定義されています。
警察は、そのまま放置すれば、非行その他健全育成上の支障が生じるおそれがあると認められる少年について、不良行為の中止を促すなど必要な注意を行ったり、非行防止その他の健全育成上必要な助言を行ったりします。
注意・助言だけでは少年の非行防止その他健全育成上十分でないと認められる場合は、警察は保護者と連絡をとり、不良行為の事実を伝え、必要な監護や指導上の措置を促します。
不良行為少年に対しては、補導等で済みますが、場合によっては虞犯少年として家庭裁判所に送致されることもあります。
虞犯少年とは
虞犯少年は、犯罪を犯していないものの、虞犯事由があり、かつその性格又は環境に照らして、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年です。
虞犯は犯罪ではありませんが、少年法は、これを家庭裁判所の審判に付すこととしています。
その理由として、未だ犯罪行為に至ってはいないけれども、不良な行為をしている少年を早期に発見して適切な保護を加えることにより、少年の健全な育成を図るとともに、犯罪の発生を未然に防止するためであることがあげられます。
虞犯事由には、次の4つがあります。
①保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
②正当な理由がなく家庭に寄りつかないこと。
③犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること。
④自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
これらのうち1つでも該当すると、虞犯事由があることになります。
虞犯事由を概観すると、不良行為少年と虞犯少年が重複しているように思えますね。
しかし、不良行為少年の定義である「自己又は他人の徳性を害する行為」と虞犯事由の④が重複しますが、不良行為少年は「非行少年には該当しないが」、虞犯事由④に該当する少年ということになります。
「非行少年」とは、「犯罪少年」、「虞犯少年」、「触法少年」といった家庭裁判所の審判に付することとされている少年です。
さて、不良行為少年と虞犯少年とを区別する要素である「将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれ」、つまり、「虞犯性」は、知能・性格等の本人の問題点や家庭、学校、不良交友等の非行の誘因・抑止双方に関係する環境的要因等を総合的に検討して判断されます。
虞犯に関する通告・送致
警察官が街頭補導等によって虞犯少年を発見した場合、警察官は当該少年の調査を行います。
この調査においては、少年や保護者に対して、事件の事実、原因及び動機、少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等について質問します。
調査の後、少年が14歳以上であり、家庭裁判所の審判に付することが適当と認められるときは、少年を家庭裁判所に送致します。
少年が14歳以上18歳未満であり、保護者がいないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められ、かつ家庭裁判所に直接送致するよりも児童福祉法上の措置をとるべきであると認められる場合は、少年を児童相談所に通告します。
家庭裁判所に送致されると、犯罪少年の場合と同様に、家庭裁判所の調査官による調査が行われた上で審判に付され、終局処分が言い渡されることになります。
また、家庭裁判所送致後に、観護措置がとられる可能性もあります。
このように虞犯少年として家庭裁判所に送致された場合、犯罪少年の場合と同じ手続きとなります。
虞犯少年の場合には、その性質上観護措置がとられることも多いでしょう。
お子様が虞犯少年として家庭裁判所に送致され、対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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万引き事件で審判不開始
審判不開始について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県姫路市の書店で、漫画本を2冊万引きしたとして、中学生のAさん(15歳)は店員に呼び止められました。
Aさんは、その後、兵庫県姫路警察署で取調べを受け、Aさんの母親を身元引受人としてその日の夜に釈放されました。
翌日、今後のことが心配になったAさんの母親は、少年事件に詳しい弁護士に法律相談を頼みました。
(フィクションです)
審判不開始について
捜査機関は、少年の被疑事件について、捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、そして犯罪の嫌疑は認められない場合でも家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致します。
これは「全件送致主義」と呼ばれ、少年事件では、成人の刑事事件における起訴猶予や微罪処分のような捜査機関限りで事件を終了させることは認められません。
家庭裁判所に事件が送致される手順には、①捜査機関からの送致と②簡易送致とがあります。
①捜査機関からの送致
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、原則として事件を検察官に送致することになっています。
ですので、通常は、司法警察員から検察官に事件が送致され、捜査終了後に、検察官が事件を家庭裁判所に送致します。
しかし、少年の被疑事件では、罰金以下の刑に当たる犯罪については、検察官に送致せず、直接事件を家庭裁判所に送致することになっています。
これは「直送」と呼ばれるもので、検察官に事件が送致されないので、少年を勾留することはできません。
②簡易送致
原則、少年の被疑事件は、軽微な事件であっても、全て家庭裁判所に送致されます。
しかし、一定の極めて軽微な少年の被疑事件については、通常の手続よりも簡易な手続に基づいて家庭裁判所に送致することもあります。
この手続を「簡易送致」といいます。
簡易送致の対象となる事件は、各家庭裁判所とそれぞれに対応する地方検察庁、警察本部との協議によって基準が定められています。
少額の万引きや自転車の占有離脱物横領などが、簡易送致の対象事件です。
少年の被疑事件が家庭裁判所に送致され、事件が受理されると、家庭裁判所の調査官は、少年や保護者に対して調査を行います。
調査官による調査は、単なる事情聴取ではなく、少年に内省を促したり、事件の背景にある問題に踏み込み、少年が更生するためにはどのような処分が適切かを調査します。
家庭裁判所は、その調査の結果、審判を開始するのが相当であると認めるときは、審判開始決定をしなければなりません。
審判を開始しないとする決定を「審判不開始決定」といい、これには、(1)形式的審判不開始、および、(2)実体的審判不開始とがあります。
(1)形式的審判不開始
法律上または事実上、審判を行うことができない場合をいいます。
これは、次の3つに分けられます。
・非行なし
非行事実の存在の蓋然性が認められないときで、これは、少年の行為が非行構成要件に該当せず 、非行として成立しない場合と、証拠上、非行事実の存在の蓋然性すら認められない場合を指し ます。
・所在不明等
調査・審判を行うことが法律上又は事実上不可能であると認められる場合で、少年の心神喪失、 死亡、所在不明、疾病、海外居住等の場合です。
・その他
(2)実体的審判不開始
審判に付するべき事由はあるけれども、少年に要保護性の存在する蓋然性が認めらず、裁判官による直接の審理を必要としないため、審判を行う必要性がない場合をいいます。
例えば、①事案が軽微な場合、②別件保護中の場合、③保護的措置による要保護性解消の場合などがあります。
審判不開始を目指す場合、付添人である弁護士は、捜査段階から弁護人として活動していたのであれば、それまでの弁護活動の成果を早期に裁判所に伝え、審判不開始を求める意見書を提出するなどの活動を行います。
例えば、事件後すぐに、被害者に謝罪と被害弁償、示談ができていることや、少年が自身の行為を振り返りしっかりと反省できていること、保護者や学校の監督が期待でき、カウンセリング等を受けており更生に向けた環境が整っていることなど、少年に要保護性がないことを主張します。
家庭裁判所の調査や付添人である弁護士の活動の結果、少年への教育的な働きかけにより、要保護性が解消された場合、あえて審判を行う必要はなく、審判不開始となる可能性があります。
このような活動を依頼するのは、少年事件に精通した弁護士がよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こしてしまった、家庭裁判所に送致されたがどのような処分を受けるのか不安だ、とお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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少年事件の中間処分:試験観察
少年事件の中間処分である試験観察について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神崎郡市川町に住む少年Aくん(16歳)は、高校に進学したものの学校に馴染めず入学から2か月で辞めてしまいました。
Aくんは、中学時代に不良仲間とバイク窃盗で逮捕され、神戸家庭裁判所姫路支部で保護観察が言い渡された過去があります。
高校を辞めてからも不良仲間とつるむようになり、共同危険行為で逮捕され、保護観察となった矢先、今度は傷害事件で逮捕されてしまいました。
Aくんの家族は、今度は少年院送致となるのではないかと心配して、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
少年保護事件の処分
20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が事件を起こした場合、基本的には、家庭裁判所に事件がおくられ、家庭裁判所の調査・審判を経て、何らかの処分が決定されます。
家庭裁判所の取り扱う非行少年に対する事件を「少年保護事件」と呼びます。
家庭裁判所が少年保護事件について行う決定には、事件自体について判断し、最終的な少年の処分を決定する「終局決定」と、終局決定前の中間的な措置としてなされる「中間決定」とがあります。
「終局決定」としては、次の5種類があります。
①審判不開始
②不処分
③保護処分(保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設送致、少年院送致)
④検察官送致
⑤知事又は児童相談所長送致
そして、「中間決定」には、移送決定、観護措置決定、審判開始決定、検察官関与決定などがありますが、ここでは「試験観察決定」について説明します。
試験観察とは
前述の通り、「試験観察」は終局決定前の中間的な措置です。
少年法は、家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもって、相当の期間、少年を調査官の観察に付することができると定めています。
これが、「試験観察」と呼ばれるものです。
試験観察は、少年に対する終局決定を留保し、少年の行動等を観察するために、中間決定をもってとられる措置です。
この試験観察制度の機能については、①調査の機能、そして、②少年の性格矯正・環境調整を図る機能、の2点であると言われています。
①調査の機能
保護処分には、「保護観察」、「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」、「少年院送致」と社会内処遇のものから矯正施設内処遇のものまで身体拘束という点だけでも異なる処分が設けられています。
決定された処分は、例外的な場合を除いては取消し・変更はされません。
ですので、少年審判においては、少年の要保護性に関する資料をしっかりと調査し、少年の行動等も観察した上で、慎重かつ適切な判断がされなければなりません。
ですが、審判までの期間では見極めるのに不十分なこともありますので、少年にとって適正な処分は如何なるものか慎重に見極めるためにも十分な調査をする必要があり、試験観察制度が持つ機能のひとつです。
②少年の性格矯正・環境調整を図る機能
試験観察は、終局処分が一旦保留されている状態であり、少年に心理的な影響を与え、更生を促す効果が期待されます。
いわゆる「プロベーション」の一形態といわれます。
試験観察の要件について、少年法は、「保護処分を決定するため必要があるとき」としか規定していません。
しかし、一般的には、以下の4つの要件を満たす必要があるとされます。
①保護処分に付する蓋然性があること。
②直ちに保護処分に付することができないか、または相当でない事情があること。
③調査官の観察活動が必要であり、かつ、その結果、適切な終局決定ができる見込みがあること。
④相当期間内に観察目的を達成する見込みのあること。
試験観察の期間については、「相当の期間」としか少年法には定められていませんが、在宅試験観察の場合、3~4か月程度、補導委託の場合には4~6ヶ月程度となっています。
少年院送致が見込まれる事件であっても、試験観察となったのにち保護観察で社会復帰できる可能性も大いにあります。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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