墓石に落書きで礼拝不敬罪

墓石に落書きで礼拝不敬罪

礼拝不敬罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県丹波市にある墓地のとある墓石に赤い塗料が吹き付けてあるのを通行人が発見し、兵庫県丹波警察署に通報しました。
警察は捜査を開始し、周囲への聞き込みや防犯カメラの解析を始めました。
警察が捜査に乗り出したことを聞きつけた同市に住むAさんは、いずれは自分がやったことがバレて逮捕されるのではないかと心配しています。
すぐにでも自首したほうがいいのかと悩んでおり、自分の行為がどのような犯罪に当たり、自首した場合どのような処分を受けるのか気になり、刑事事件専門弁護士に相談することにしました。
(NHK NEWS WEB 2019年6月12日19時47分掲載記事を基にしたフィクションです)

墓石への落書き行為で成立し得る犯罪は?

墓石落書きするなんて、なんとも罰当たりな行為ですよね。
では、このような行為により成立する可能性がある罪とはどのようなものがあるのでしょうか。

(1)器物損壊罪

刑法
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は、公用文書等、私用文書等、建造物等以外の「他人の物を損壊・傷害」することで成立する犯罪です。
(a)「他人の物」
動産、不動産を広く含みます。
電磁的記録媒体も含まれます。
また、判例は、法令上違法なものも客体に含まれると解しています。
(b)「損壊・傷害」
「損壊」とは、物の物理的な損壊だけでなく、物の効用を害する一切の行為を含みます。
例えば、飲食器に放尿する行為や、鯛や海老が描かれた掛け軸に黒墨で「不吉」と書く行為、施設の塀に赤色スプレーで落書きする行為も「損壊」に当たるとされます。
「傷害」は、客体が動物の場合に用いられ、動物を殺傷したり、逃がすなど本来の効用を失わせる行為を含みます。

他人の墓石に塗料で落書きする行為は、他人の物を損壊したと言えるので、器物損壊罪の構成要件に該当するでしょう。

(2)礼拝不敬罪

刑法
第百八十八条 神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。

礼拝不敬罪の保護法益(法令がある特定の行為を規制することによって保護・実現しようとしている利益)は、国民の宗教的感情及び死者に対する敬虔・尊崇の感情とされています。
対象となる場所は、神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所です。
「礼拝所」とは、宗教的に崇め敬われている場所を指し、既存の宗教と関係のない施設でも構いません。
被爆慰霊碑やひめゆりの塔なども含まれます。

次に本罪の行為である「公然と不敬な行為」に関してですが、「公然と」というのは、不特定多数の人が認識し得る状態のことをいいます。
実際に、不特定多数の者が認識したことは必要としません。
例えば、深夜の墓地で誰もいなかったとしても、誰かが通る可能性があれば、「公然」であるとみなされます。
「不敬な行為」とは、神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所の尊厳を害するに足りる行為を広く含むと解されています。
壊す、倒す、汚す、除去するといった行為が広く含まれます。

このように、墓石落書きをする行為は、犯罪となる可能性があります。
逮捕の要件に該当すれば、捜査機関に逮捕されることもあります。
器物損壊罪のように親告罪の場合には、被害者との示談を成立し、事件化回避や不起訴処分で事件を穏便に終了させるために動くことが重要です。
また、上記ケースのAさんのように、自首をすることにもメリットがあるでしょう。
自首が成立すれば、刑が減軽される可能性もありますし、自首することにより罪証隠滅や逃亡のおそれが低いと判断され捜査機関に逮捕されない可能性も高まります。
しかし、そもそも問題の行為が何等かの犯罪に該当するのかといった点や、自首した後の流れや取調べ対応についても事前に弁護士に相談されることをお勧めします。

刑事事件でお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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