事後強盗事件で少年が逮捕

少年事後強盗事件を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加古川市の家電量販店で、Amazonギフト券(2万円分)を万引きしたとして、市内に住むAくん(16歳)は店の出口付近で店員に声をかけられました。
驚いたAくんは、自分の腕を掴んでいた店員の手を振りほどき、そのまま全速力で店外へと逃亡しました。
しかし、数日後、兵庫県加古川警察署の警察官が、早朝にAくん宅を訪れ、事後強盗の容疑でAくんを逮捕しました。
突然の逮捕に驚いたAくんの両親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士はいないかとネットで検索しました。
(フィクションです)

事後強盗とは

上のケースでは、Aくんは商品の代金を支払わずに商品を店外へ持ち去ろうとしています。
このような行為を、「万引き」といいます。
みなさんも一度は耳にされた言葉だと思います。
通常、万引き行為を行った場合、「窃盗罪」が適用されることになります。
しかし、上記のケースでは、Aくんは「事後強盗罪」に問われていますね。
それでは、事後強盗罪とはどのような犯罪なのでしょうか。

事後強盗罪は、刑法第238条に規定されています。

第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

事後強盗罪の成立要件は、次のとおりです。
①窃盗が、
②財物を得てこれを取り返されるのを防ぎ、逮捕を免れ、または罪責を隠滅するために、
③暴行または脅迫をしたこと。

①主体:窃盗
「窃盗」というのは、「窃盗犯人」のことです。
未遂犯であると既遂犯であるとを問いません。

②目的:財物を得てこれを取り返されるのを防ぎ、逮捕を免れ、または罪責を隠滅するため
「財物を得てこれを取り返されることを防ぐ」目的というのは、他人の占有を侵奪して事実上自己の占有下にある財物を被害者側に取り返されるのを阻止しようとする意図をいいます。
「逮捕を免れる」目的は、窃盗未遂・既遂の行為者が、被害者などから取り押さえられて身柄を拘束されるのを阻止しようとする意図です。
そして、「罪責を隠滅する」目的とは、窃盗犯人が後日窃盗犯人として捜査官に検挙され、処罰されることとなると認められる罪責を無にする意図をいいます。

③行為:暴行・脅迫
ここでいう「暴行又は脅迫」というのは、相手方に対する有形力の不法な行使(暴行)、そして、害悪の告知(脅迫)をいいます。
暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りるものであることが必要となります。
この暴行・脅迫の相手方は、窃盗の被害者に限定されません。
また、暴行・脅迫は「窃盗の機会」、つまり、窃盗の現場およびその継続的延長とみられる場所で行われることが必要とされます。
「窃盗の機会」についての判断は、窃盗行為と暴行・脅迫行為との場所的・時間的な近接等を基礎に行われます。

上のケースでは、家電量販店内で窃盗行為を行ったAくんが、店の出口付近で万引きに気づいた店員に声を掛けられ、Aくんの腕を掴んでいた店員の手を振り払うという「暴行」と加えて、逃走しています。
ですので、窃盗犯人であるAくんが、万引きした商品を取り返されるのを防ぎため、もしくは店員に捕まらないために、腕を掴んでいた店員の手を振り払うという暴行を加えていますので、Aくんに対して事後強盗罪が成立するものと考えられます。

窃盗罪の法定刑が10年以下の懲役または50万円以下の罰金であるのに対して、事後強盗罪は強盗と同様に、5年以上の有期懲役と、重くなっています。

少年が事件を起こした場合、原則として、捜査機関の捜査終了後に、事件は家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所は、調査・審判を行い、最終的な処分を決定します。
少年事件は、罪名が重いからといって必ずしも少年院送致のような厳しい保護処分を決定するわけではありません。
逆に言えば、比較的軽微な犯罪であっても、少年の更生には少年院送致が適していると判断されることもあるのです。
家庭裁判所の審判は、非行事実と要保護性を審理対象としています。
非行事実は、成人の刑事裁判でいう公訴事実です。
一方、要保護性とは、概して、①再非行性の危険性、②矯正可能性、③保護相当性の3要素で構成されている概念です。
つまり、①少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があるか、②保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性があるか、③保護処分に寄る保護がもっとも有効でかつ適切な処遇であるか、の3点が考慮されて要保護性の有無が判断されるのです。
事後強盗という重い罪名であったとしても、少年自身が真摯に反省しており、家庭や学校の協力も積極的に期待でき、被害者への謝罪・被害弁償等も済んでいるなど、要保護性が高くはないと判断されれば、最終的な処分が保護観察処分となる可能性はあります。

このように、少年事件の場合には、成人の刑事事件とは手続も異なりますので、お子様が事件を起こして対応にお困りであれば、少年事件に精通する弁護士に相談するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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