【解決事例】飲酒運転のひき逃げ事件で起訴 執行猶予を獲得~前編~
【解決事例】飲酒運転のひき逃げ事件で起訴されるも執行猶予を獲得した事件の解決事例の前編を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
事件の概要
派遣社員のAさん(20代後半)は、前日の夕方から友人とともにお酒を飲んでいました。
そして日が変わってしばらく休んだ後、派遣先の工場に仕事に行くために自分の車を運取運転してしまったのです。
そして兵庫県三木市の信号のない交差点において、横断歩道を歩いていた被害者に気付くのが遅れてしまい、被害者に接触する交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、飲酒運転が警察に発覚するのをおそれ、被害者の救護措置をとらぬままその場から逃走し、工場に出勤したのですが、出勤してまもなくして職場を訪ねて来た兵庫県三木警察署の警察官によって警察署に連行され、逮捕されてしまいました。
被害者は外傷性クモ膜下出血で全治3カ月の重傷を負っており、Aさんは20日間の勾留を受けた後に、道路交通法違反(酒気帯び運転)と過失運転致傷、そしてひき逃げの容疑で起訴されてしまいました。
その後弁護士が保釈を請求したことによって、釈放されたAさんは、刑事裁判で執行猶予を獲得することができました。
(実際に起こった事件を基に、一部変更を加えています。)
酒気帯び運転
Aさんが起訴された罪名を解説します。
まず道路交通法違反の酒気帯び運転から解説します。
道路交通法ではいわゆる飲酒運転を、酒気帯び運転と酒酔い運転に分けて規定しています。
酒気帯び運転とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、または血液1ミリリットル中に0.3mg以上のアルコール濃度を含んだ状態で車両を運転する違反です。
その罰則規定は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
飲酒運転による重大な交通事故が後を絶たないことから、警察は飲酒運転を厳しく取り締まっており、飲酒運転で検挙された場合は、こういった刑事罰だけでなく行政の厳しい罰則を科せられることになります。
過失運転致傷罪
車を運転していて交通事故を起こし、人に怪我をさせると過失運転致傷罪となります。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条に定められている法律です。
過失運転致傷罪で起訴されて有罪が確定すると「7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。
どういった刑事罰が科せられるかは、過失の程度や被害者の怪我の程度によって左右されますが、今回の事件のように被害者が全治3カ月の重傷を負っていると、酒気帯び運転やひき逃げといった別の違反がなくても起訴される可能性が非常に高いでしょう。
ひき逃げ
交通人身事故を起こしたにも関わらず、警察や救急に通報することなく逃走すれば、ひき逃げ事件として、過失運転致死傷罪だけでなく道路交通法の
①救護義務違反
②報告義務違反
に抵触する可能性があります。
①救護義務違反
交通事故の加害者だけでなく、被害者にも救護義務があり、救護義務のある者が、救急に通報する等の負傷者の救護を怠った場合「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。
ただし、事故の原因となった運転手が救護義務を怠ると、より重い罰則「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられるおそれがあるのです。
②報告義務違反
交通事故を起こした運転者は、警察に事故の発生を通報、届け出る事が義務付けられています。
これを怠ると、報告義務違反となり「3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。
~後編に続く~