覚せい剤密輸でコントロールド・デリバリー

2019-05-18

覚せい剤密輸でコントロールド・デリバリー

~ケース~
兵庫県神戸市北区に住むAさんは、国際郵便を使ってアメリカから覚せい剤密輸しようと兵庫県神戸北警察署の警察官に逮捕されました。
関西国際空港に到着した税関当局は問題の国際郵便に覚せい剤が入っていることを確認しました。
郵便物の真の受取人が誰であるかを突き詰めるために、コントロールド・デリバリーを用い、中身を他の物と入れ替えた当該郵便物を警察の厳重な監視の下、受取人のところまで配達させ、現に受け取らせた上で検挙することになりました。
すると、Aと名乗る男が郵便局に当該郵便物に関する問い合わせがあり、荷物を受け取りに現れたところを張り込んでいた警察官に逮捕されたということです。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

捜査

警察などの捜査機関は、犯罪があると考えるときは、犯人や証拠を捜査します。
「捜査」というのは、公訴の提起・追行・維持のために、被疑者の身柄を確保し、証拠を収集する捜査機関の活動のことです。
捜査は、「任意捜査」と「強制捜査」とに分けられます。
前者は、任意処分による捜査をいい、参考人取調べ、実況見分などが挙げられます。
一方、後者は、強制処分による捜査で、逮捕、捜索・差押え・検証などです。

捜査には、「おとり捜査」というものがあります。
おとり捜査は、捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するもの」です(最決平16・7・12)
薬物事件など、国民生活に対する弊害を大きい重大な罪であって、極めて秘密裡に組織的に行われるため、通常の操作方法では検挙することが困難な場合に有効だとされます。
しかし、国家がおとりを用いて人を犯罪行為に誘い込むため、捜査の公正性や廉潔性の観点から疑問視する見解もあります。
この点、判例は、「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査においては、通常の操作方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、刑訴訟197条1項に基づく任意捜査として許容される」と解しています(最決平16・7・12)

コントロールド・デリバリー

コントロールド・デリバリー(監視付移転:controlled delivery)とは、捜査機関が禁制品の取引であることを知りつつ、その場では押収せず、監視の下に禁制品を流通させ、不正取引の関係者を特定するという捜査手法のことをいいます。
コントロールド・デリバリーは、規制薬物の不正取引が行われている場合に、その事情を知る捜査機関が検挙のタイミングを遅らせるだけの措置であって、犯人に対し、何らの強制力を用いるものではなく、特定の受忍義務を課すものではないので、任意捜査の一種と考えられています。

禁制品をそのまま流通させる「ライブ・コントロールド・デリバリー」と、禁制品を無害の物品に入れ替えて流通させる「クリーン・コントロールド・デリバリー」とに分けられます。
上のケースでは、郵便物に入っていた覚せい剤を他の物と入れ替えてから流通させていますので、クリーン・コントロールド・デリバリーが用いられました。
その荷物を受け取ったAさんは、監視していた警察官に逮捕されたわけなのですが、中身が偽物であっても何故逮捕されたのでしょうか。

実は、麻薬特例法は、以下のような条項を設けているのです。

第八条 薬物犯罪(規制薬物の輸入又は輸出に係るものに限る。)を犯す意思をもって、規制薬物として交付を受け、又は取得した薬物その他の物品を輸入し、又は輸出した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

薬物犯罪の輸出入の罪を犯すつもりで、「その他の物品」を輸出入した場合にも該当することになるので、本物と入れ替えられた偽物を手にしたとしても麻薬特例法違反は成立することになります。

覚せい剤をはじめとする薬物を密輸し、ご家族が逮捕されてお困りの方は、薬物事件も取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。