刑罰の決め方について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県宍粟市の民家に侵入し、現金や宝石類を盗んだとして、県内に住むAさんが窃盗および住居侵入の疑いで兵庫県宍粟警察署に逮捕されました。
Aさんは、本件以外にも複数同様の手口で空き巣を行ったと供述しています。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、事件について何も分からず、急いで弁護士に接見に行ってくれるよう頼みました。
弁護士からAさんが本件以外にも同種の余罪があることを聞いたAさんの家族は、Aさんにどんな刑罰が科されれるのか不安でたまりません。
(フィクションです)
刑罰の決め方
刑法や特別刑法には、どのような行為が犯罪にあたり、犯罪を行った者に対してどのような刑罰が科されるが予め定められています。
このように法律で定められている刑を「法定刑」といい、法定刑から、刑罰を加重・減軽する理由がある場合には、加減して科し得る刑(「処断刑」)を導き出し、具体的情状を考慮し、処断刑の範囲内で特定した量の刑(「宣告刑」)が言い渡されます。
法定刑について
上記ケースでは、窃盗罪と住居侵入罪に問われています。
それぞれの罪については、刑法で以下のように規定されています。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
各条項で表記されている通り、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり、住居侵入罪のそれは「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
法定刑は、あくまで罪名と刑の対応となります。
具体的に事件の内容によって実際にどのような刑の範囲が適当であるか、ということとは異なります。
具体的事件の形に合わせて、実際に処罰することが可能な刑の範囲、つまり「処断刑」の定め方には様々あります。
処断刑について
先の述べたように、「処断刑」は、法定刑に法律上または裁判上の加重・減軽を加えたものです。
刑法上、刑を加重する事由としては、併合罪と累犯の場合が予定されています。
(1)併合罪
「併合罪」は、確定裁判を経ていない2個以上の罪、または、ある犯罪について禁固以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪のことです。
併合罪の場合、それらの罪に対する刑を合わせて科したり、加重したり、場合によっては吸収したりします。
併合罪のうち2個以上の罪について、有期懲役・禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
例えば、刑の長期が懲役20年の罪と懲役15年の罪を1度に犯した場合、長期は20年×1.5=30年となります。
「長期」とは、法定刑の「○○年以下」という場合の○○年を指します。
(2)累犯
懲役に処せられた者がその執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合であって、その者を有期懲役に処するときは、「再犯」とし、再犯の刑について定めた懲役の長期を2倍以下とします。
これを「再犯加重」といいます。
減軽事由には、法律上のものと酌量減軽とがあります。
(3)法律上の減軽
心身耗弱、従犯、中止犯のように必ず減軽すべき事由と、過剰防衛、過剰避難、法律の不知、自首等、未遂、偽証罪・虚偽申告罪における自白などのように、減軽が裁判所の任意に委ねられているものとがあります。
(4)酌量減軽
法律上の減軽事由がない場合でも、「犯罪の事情を酌量すべきものがあるときは」、任意に刑を減軽することができます。
処断刑は、累犯加重、法律上の減軽、併合罪の加重、酌量減軽の順に形成されます。
しかし、実務上、加重減軽を行う前に、科刑上の一罪の処理および刑種の選択をすることになっています。
刑法は、観念的競合と牽連犯の関係にある数罪については、科刑上は一罪であるとして、その最も重い刑により処断することとしています。
「観念的競合」とは、1つの行為が2個以上の罪名に触れる場合をいい、「牽連犯」とは、犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れる場合をいいます。
空き巣は、後者の「牽連犯」に当たり、住居侵入罪と窃盗罪の法定刑の重い罪により処断されるので、窃盗罪の刑が適用されることになります。
このように、法定刑の幅は広く、加えて、広範な法定の加減事由や情状による減軽が認められています。
しかし、裁判の実務においては、一定の事情がある場合にどの程度の刑罰が言い渡されるかは、過去の裁判例も参考にした相場のようなものがあります。
どのような事件でどの程度の刑罰が見込まれるのかご不安であれば、刑事事件に詳しい弁護士に一度ご相談ください。
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