喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:違法性阻却事由~

2020-03-31

構成要件該当性が肯定された後に問題となる第2の犯罪成立要である違法性(違法性阻却事由)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)

犯罪が成立するためには

犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。

前回のブログでは、構成要件該当性について検討しました。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。

構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。

2.違法性について

「違法性」というのは、形式的には、問題となる行為が法規範に反することをいいます。
構成要件は違法行為類型であると理解する限り、構成要件に該当する行為は、原則として違法であることになります。
しかし、この原則の例外となる特別の事情がある場合には、その違法性が否定され、犯罪は成立しないことになります。
そのような違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。

違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。
ここでは、正当防衛についてみていきましょう。

違法性阻却事由:正当防衛とは

「正当防衛」とは、(1)急迫不正の侵害に対して、(2)自己又は他人の権利を防衛するため、(3)やむを得ずにした行為、のことをいいます。

(1)急迫不正の侵害

①急迫性
侵害は、「急迫」したものでなければなりません。
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。
すでに侵害が終了しているときは、その直後であっても急迫性は認められませんが、一旦法益が侵害されても、新たな侵害がさらに加えられる状況があれば、侵害の急迫性を肯定することができます。
また、侵害が予期されたものであった場合でも、判例は、侵害の急迫性は直ちに失われるものではないとする立場をとっています。(最判昭46・11・16)
しかしながら、予期された侵害の機会を利用し、積極的に相手方に対して加害行為を加える意思で侵害に臨んだときには、侵害の急迫性の要件は充たされないとしています。

②不正
「不正」は、違法であることを意味します。
侵害者の行為は有責である必要はなく、構成要件該当行為である必要もないとされています。
要保護性を備えた利益に対する侵害であれば足りると解されます。

(2)自己又は他人の権利の防衛

正当防衛は、「自己又は他人の権利」を「防衛」するために認められます。
正当防衛として許されるのは、侵害者の法益を侵害する場合に限られます。
正当防衛は、防衛行為でなければなりません。
防衛行為といえるためには、客観的に防衛行為としての性質を有していることに加えて、防衛の意思でその行為がなされることが必要となります。
判例は、防衛意思の内容について、相手の加害行為に対し憤慨・逆上して反撃をしたからといって、直ちに防衛の意思を欠くものではなく(最判昭11・12・7)、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められる(最判昭50・11・28)と、防衛の意思についての解釈を示しています。
しかしながら、攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為にでたなどの特別な事情がある場合には防衛の意思が否定され(最判昭46・11・16)、防衛の名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は防衛の意思を欠く(最判昭50・11・28)、としています。

(3)やむを得ずにした行為

正当防衛として違法性が阻却されるためには、防衛するために「やむを得ずにした行為」であることが必要です。
正当防衛の成立要件として、①必要性と②相当性の両方を必要とされます。

①必要性
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法である必要はなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手方に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するものと理解されています。

②相当性
許容される防衛行為には限度があり、防衛行為としてどのような手段がとられたのかという点に着目して、その相当性が判断されます。

喧嘩闘争における正当防衛について

さて、喧嘩においても正当防衛が成立し得るのでしょうか。
喧嘩が発展し、双方が、攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合、「喧嘩両成敗」として正当防衛は成立しません。
しかし、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、当初は素手で喧嘩していた相手方が、急に刃物を持ち出して攻撃したことに対して反撃した場合や、けんかが一旦収まったにもかかわらず、相手方がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるとされます。
喧嘩の一部分だけを切り取って判断するのではなく、一連の事態を全体的に観察し正当防衛が成立する余地があるか否かが判断されるのです。

上のケースでは、いったん喧嘩が収まったにもかかわらず、Vさんが再度Aさんを執拗に殴り始めたため、これに反撃するためにAさんがVさんを殴った、というものです。
喧嘩が一度収まっているところ、攻撃と防御の連続的行為が崩れたとみて、さらにAさんの加害行為が急迫不正の侵害に対して、自己の権利を防御するためにやむを得ずにした行為であると判断されれば、Aさんの正当防衛が認められ犯罪は成立しないことになります。

正当防衛が成立する余地があるかについては、事件の内容によりますので、刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。