身柄解放活動③~起訴後~
起訴後の身柄解放活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、警察はAさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
逮捕・勾留・勾留延長を経て、神戸地方検察庁洲本支部はAさんを窃盗罪で起訴しました。
(フィクションです)
窃盗事件で起訴されたら~保釈で身柄解放~
逮捕後に、勾留が決定し、10日間もしくは20日間の身体拘束を余儀なくされた場合であっても、起訴後に釈放となる可能性はあります。
それは、「保釈」により身柄解放となる場合です。
「保釈」というのは、一定額の保釈保証金を納付することにより、勾留されている被告人を暫定的に釈放する制度です。
この保釈は、起訴前の段階では利用することが出来ません。
つまり、検察官が被疑者を起訴してから利用できるものです。
保釈には、次の3種類があります。
1.権利保釈(必要的保釈)
第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
例外として、刑事訴訟法第89条の1号~6号の除外事由がある場合には、請求を却下することができます。
2.裁量保釈(任意的保釈)
第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。
3.義務的保釈
第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許可しなければなりません。
上記ケースにおいて、Aさんは窃盗罪で起訴されています。
まずは、権利保釈が認められるか検討しましょう。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので、「短期一年以上の懲役」には該当しないので、除外事由1号には当たりません。
Aさんに前科がないとすれば、2号も該当しません。
しかし、問題は3号です。
Aさんが窃盗1件のみで起訴されたとしても、同じ犯罪を複数回(2回以上)繰り返していた場合には「常習」犯とみなされます。
また、法定刑が「長期3年以上の懲役」の罪となっていますので、上限が3年以上である窃盗罪(上限が10年)も含まれますので、3号に該当する可能性はあります。
また、4号の「逃亡・罪証隠滅のおそれ」についても、余罪が複数ある場合や共犯者が複数いる場合など捜査が終了していなければ、罪証隠滅のおそれが高いと判断される可能性があります。
権利保釈が認められない場合であっても、裁量保釈が認められる可能性もあります。
形式的には逃亡・罪証隠滅のおそれが残る場合であっても、その程度が低く、身体拘束によって被る被告人の不利益の程度等を考慮して、裁判所の裁量によって保釈が許可されるのです。
権利保釈と同時に裁量保釈を請求することが出来ますので、弁護人に頼んで両方の保釈を請求してもらうのがよいでしょう。
裁判所に保釈が許可され、保釈保証金を納付すれば、被告人は釈放されることになります。
保釈保証金の額は、犯罪の性質や被告人の資力にもよりますが、窃盗被告事件で被告人の資力もそれほどでない場合は、150~200万円が相場となっています。
出頭を拒んだり、逃亡したりしなければ保釈保証金は、裁判終了後に戻ってきます。
逮捕後に勾留となり、長期間の身体拘束を余儀なくされた場合には、家族や仕事の関係ですぐにでも釈放されることを希望されるものです。
早期の保釈を希望されるのであれば、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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