ネットの中傷書き込みで告訴

2020-04-08

ネット中傷書き込み告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、インターネットの掲示板に、「X社の社長Vは、昔やくざをしていた。今もやくざ関係者とつながっていて、表は貿易会社だが、裏では覚せい剤の密輸を行っていて、その利益でX社をやりくりしている。」などとX社や社長の実名を挙げて書き込みをしました。
この掲示板は誰でも閲覧可能なものでした。
ある日、会社に書き込みについての問い合わせがきたことで事件が発覚し、社長はすぐに兵庫県丹波警察署に相談しました。
後日、兵庫県丹波警察署は、Aさんに連絡し、ネット中傷書き込みの件で任意出頭するよう要請しました。
Aさんは、X社の元社員で、それを知った社長は激怒し、告訴をしたということです。
Aさんは出頭する前に、自分がどのような罪に問われるのか、どのように対応すべきかを弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

他人をインターネットで誹謗中傷した場合

インターネットの掲示板などに、他人を誹謗中傷する内容が書き込まれることがあります。
インターネットの掲示板は、基本的に誰でも閲覧することができますので、不特定または多数人が閲覧できる状態にあると言えます。
このような場合、名誉毀損罪あるいは侮辱罪が成立する可能性があります。

名誉毀損罪とは

名誉毀損罪は、刑法230条に規定されています。

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

名誉毀損罪の客体は、「人の名誉」です。
「人」には、自然人だけでなく、法人や法人格のない団体も含まれます。
「名誉」というのは、「人に対する社会一般の評価」を意味します。(大判昭8・9・6)
名誉には、人の倫理的価値、政治的・学問的・芸術的能力、容貌、健康、身分、家柄など、およそ社会において価値があるとされるものが含まれますが、人の経済的な支払能力に対する評価は、名誉毀損罪の「名誉」には当たらず、信用棄損罪の客体に当たります。(大判大5・6・26)

名誉毀損罪の行為は、「公然と事実を適示し」て「人の名誉を毀損」することです。
「公然」とは、不特定または多数人の認識し得る状態をいいます。
「不特定」は、相手方が特殊な関係によって限定されたものでないことをいい、限定された数名の者にたいしてであっても、その場所の通行や出入りが自由であって、その数名はたまたま居合わせたにすぎない場合は「不特定」に当たります。(大判大6・10・19)
また、「多数人」は、数字によって何人以上と限定することはできないが、単に数名では足りず、相当の員数であることを要します。
「公然」には、適示する相手方は、特定かつ少数であったとしても、伝播して不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれます。

適示される「事実」は、人の社会的評価を害するに足りる事実でなければなりません。
人の社会的評価を害するか否かは、相手方の有する名誉によって相対的に決まるとされています。
例えば、医者でない者に「藪医者」といっても名誉毀損にはなりません。
また、適示される事実が、真実か否か、公知か否か、過去のものか否かは問われません。
「適示」とは、「具体的に人の社会的評価を低下させるにたりる事実を示す」ことをいいます。
その方法や手段に制限はありません。

また、「名誉を毀損」するとは、人の社会的評価を低下させるおそれのある状態を作ることをいい、現実に社会的地位が傷つけられたことまでは必要とされません。(大判昭13・2・28)

以上の構成要件に該当し、かつ、公然と事実を適示して人の名誉を毀損することの認識・認容がある場合に、名誉毀損罪が成立することになります。

侮辱罪とは

一方、ネット中傷書き込みが、名誉毀損罪ではなく侮辱罪に当たることもあります。

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

侮辱罪の客体は、名誉毀損罪のそれと同じく、「人の名誉」です。
本罪の行為は、「公然と人を侮辱する」ことです。
「侮辱」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。
名誉毀損罪のように、具体的な事実を適示する必要はなく、人の社会的評価を低下させるような抽象的判断、批判を表現することが求められます。(大判大15・7・5)

公然と人の社会的評価を低下させ得ることを示す点で、名誉毀損罪と侮辱罪は共通しています。
しかし、具体的な事実を示す場合には名誉毀損罪に、具体的な事実に至らない抽象的な評価などを示す場合が侮辱罪に該当することになります。

上のケースを検討した場合、Aさんは、「X社の社長Vは、昔やくざをしていた。今もやくざ関係者とつながっていて、表は貿易会社だが、裏では覚せい剤の密輸を行っていて、その利益でX社をやりくりしている。」などとネットの掲示板に書き込んでいますので、適示した事実は、具体的な事実であると言えるでしょう。

名誉毀損罪と侮辱罪は、法定刑や刑事手続に大きな違いがありますので、その区別は重要だと言えるでしょう。
また、どちらの罪も告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪ですので、事件を穏便に解決するには、被害者と示談を成立させる必要があります。

名誉毀損罪や侮辱罪を含めた刑事事件・少年事件を起こし、対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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