性犯罪と暴行・脅迫、故意

2019-05-31

性犯罪と暴行・脅迫、故意

~ケース~
兵庫県美方郡香美町に住むVさんは、会社の飲み会の帰りに、帰り道が一緒だということで、上司のAさんと一緒に帰宅の途につくことになりました。
その途中、AさんはVさんにキスし、Vさんのお尻に手を回してきました。
Vさんはあまりの驚きと怖さで硬直した状態で、なんとかその場から立ち去ることしかできませんでした。
Vさんは、その後会社に行くとAさんと顔を合わせることになるので会社に行くことが苦痛になり、兵庫県美方警察署に相談しました。
後日、同警察署からAさんに連絡が入り、強制わいせつ事件で出頭するように言われています。
Aさんは、自分がしたことは罪になるのか心配になり、出頭前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

性犯罪の厳罰化

2017年に性犯罪の厳罰化などを盛り込んだ改正刑法が成立しました。
改正の主なポイントは、次のとおりです。

①強姦罪から強制性交等罪、準強姦罪から準強制性交等罪に罪名が変更。
強制性交等罪は、膣内性交のみならず、それまで強制わいせつ罪で処罰されてきた肛門内や口腔内への陰茎挿入も「性交等」とし、処罰の対象としました。
また、被害者は女性のみに限定されず、男性も成り得るとされました。
②懲役刑の下限の引き上げ。
強姦罪・準強姦罪の懲役3年、同致死傷罪の5年から、強制性交等罪・準強制性交等罪を懲役5年、同致死傷罪を6年に引き上げました。
③監護者性交等罪、監護者わいせつ罪の創設。
18歳未満の者に対し、親などの監護者がその影響に乗じて性交等やわいせつ行為に及んだ場合、暴行・脅迫がなくとも処罰される監護者性交等罪、監護者わいせつ罪が新たに規定されました。
④親告罪から非親告罪へ。
それまで強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪、強姦罪、準強姦罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪でしたが、改正により非親告罪となり、公訴の提起に告訴は必要なくなりました。
⑤集団強姦罪の削除。

性犯罪を厳しく取り締まる世論に答える形での刑法改正となったわけですが、改正当初から挙げられていた課題がありました。
それは、強制性交等罪と強制わいせつ罪が成立するための要件として「暴行または脅迫」が変わらず求められていることです。

暴行・脅迫の要件

(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪及び強制性交等罪は、相手方が13歳以上である場合には、「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為・性交等をしたことが成立要件となります。

この「暴行脅迫」の程度については、「反抗を著しく困難にする程度のもの」であることが必要とされてきました。
その判断は、暴行脅迫の態様、時間的・場所的状況、被告人および被害者の年齢、経歴、体力等の諸般の事情を総合的・客観的に判断されます。
暴行脅迫」のハードルを高くしすぎると、相手方の行為に対し被害者は頭が真っ白になり抵抗することが出来なかった場合には、暴行脅迫はなかったと判断され、犯罪が成立しないケースが出てくるのです。

強制性交等罪も強制わいせつ罪も故意犯のみを罰する規定となっています。
つまり、罪を犯す意思を持って犯行に及んだ場合のみこれらの犯罪が成立することになるのです。
相手方が13歳以上の場合、相手方の同意があると思い込んでいた場合には、故意がないとして罪に問われません。
単に「同意があった」と主張するだけでは故意がなかったことは立証できません。
相手方の抵抗の程度やその後のやり取りなど、その当時被疑者・被告人が被害者の同意があると誤信する状況にあったことを客観的に証明することが必要となります。

人の心の内を客観的に証明することは容易なことではありません。
だからこそ、刑事事件を専門とする弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
性犯罪事件でお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。