職務強要事件で逮捕
職務強要罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加西警察署は、兵庫県加西市に住むAさんを職務強要の容疑で逮捕しました。
Aさんは、同市にある処理施設で、焼却炉の検査に来た県保健所の職員に対して、県の許可が必要ない小型焼却炉として認めさせようと、「これで通せ。殺してやる。」などと脅迫し、職務を強要した疑いがあるとのことです。
Aさんは容疑を否認しています。
(読売新聞オンライン2019年8月7日掲載記事を基にしたフィクションです)
職務強要罪について
職務強要罪は、刑法第95条第2項に規定されています。
第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
本条の第1項には、ニュースでもよく聞く「公務執行妨害罪」が規定されています。
職務強要罪は、公務執行妨害罪と同じく、公務の円滑な遂行をその保護法益(法律によって保護される利益)とするものです。
職務強要罪は、公務員の将来の職務執行に向けられる点で、職務の現実の執行に向けられる公務執行妨害罪とは異なります。
職務強要罪の構成要件は、
①公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、
②暴行又は脅迫を加えたこと
となります。
①「公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために」
職務強要罪の客体である「公務員」とは、「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」をいいます。
強要の対象となる処分は、当該公務員の職務に関係のある処分であればよく、職務権限外の処分でもよいとされています。(最判昭28・1・22)
また、職務強要罪の成立には、結果として目的(ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるという目的)が達成されたことは必要ありません。
②「暴行又は脅迫を加えた」
「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使をいい、「脅迫」は、恐怖心を起こさせる目的で他人に害悪の告知をすることをいいます。
職務強要罪と似た犯罪として、「強要罪」があります。
強要罪は、刑法223条に規定されています。
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
このように、強要罪は、暴行・脅迫により、人に義務のないことを行わせる等する犯罪です。
職務強要罪と異なるのは、強要罪は結果として被害者において義務のないことを行われたことが必要である点です。
強要罪は未遂犯も処罰されますが、職務強要罪は、例え結果として目的を達成できなかったとしても未遂犯ではなく既遂犯として成立します。
所定の目的で暴行・脅迫を加えた時点で既遂となりますので、上記ケースにおいて、Aさんは保健所の職員に対して、小型焼却炉として自己若しくは会社所有の焼却炉を許可するよう脅迫を用いて強要していますので、既遂となり職務強要罪が成立するものと考えられるでしょう。
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