大麻の営利目的輸入について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古郡稲美町に住むAさんは、大麻を営利目的で輸入したとして逮捕されました。
輸入した大麻製品は約50グラムと多く、Aさんは営利目的で輸入したとの疑いがもたれています。
Aさんは、調べに対して大麻の輸入に関しては認めていますが、営利目的であったことは否認しています。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
有名人の薬物事件は、マスコミにも大きく取り上げられます。
その多くは、規制薬物の所持や使用などですが、中には薬物を海外から密輸するケースも少なくありません。
今回は、大麻の密輸事件についてどのような罪に問われ得るのかについて説明していきます。
大麻輸入罪
大麻取締法は、大麻の栽培・輸出入・所持・譲渡・譲受などについて必要な取締を行う法律です。
覚せい剤などの規制薬物とは異なり、大麻の使用自体は禁止されていません。
大麻の輸出入に関しては、以下のように規定されています。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻をみだりに輸入した場合、7年以下の懲役が科せられる可能性があります。
また、営利目的に大麻を輸入した場合には、法定刑は加重され、10年以下の懲役、または情状により10年以下の懲役と300万円以下の罰金が科される可能性があるのです。
このような加重処罰規定が設けられているのは、財産上の利得を目当てとして犯罪を行うことが道義的に厳しく非難に値するというだけでなく、一般にその行為が反復・累行され、規制薬物の濫用を助長・増進させ、国民の保健衛生上の危害を増大させる危険性が高いため、それだけ違法性が高いためだとされます。
「営利の目的」というのは、「犯人自らが財産上の利益を得、または第三者に得させることを動機・目的とする場合をいう」と解されます。
ですので、営利の目的は、単なる認識だけでは足りず、犯罪の積極的動因となっている場合であることが必要とされます。
大麻取締法違反が成立するためには、故意が必要となります。
つまり、大麻取締法違反の行為をしている認識・認容がなければならないのです。
大麻の輸入であれば、「大麻」を「輸入」することを認識・認容していることです。
規制薬物に関する認識は、その物が依存性のある薬理作用をもつ有害な薬物であることを未必的であれ認識していれば足ります。
大麻取締法違反においても、大麻に関する認識は、それが大麻であることを未必的にせよ認識していれば足ります。
大麻の学名や成分、薬理効果などについて正確に把握している必要はなく、大麻という名称の他にもマリファナなどの認識で足ります。
大麻が大麻取締法により規制されていることを知らなかった場合は、法の不知にあたり、アサが大麻取締法の規制を受ける大麻に該当することを知らなかった場合は、あてはめの錯誤にとどまり、それ自体で故意を阻却するものとはなりません。
大麻の単純所持の場合、初犯であればいきなり実刑が言い渡される可能性はそう高くはありません。
しかし、営利目的での大麻輸入した場合には、前述のように法定刑も加重され、初犯であっても実刑となる可能性は高いでしょう。
営利目的を否認しているのであれば、単にそのように主張するだけでは、輸入した量から考えても、なかなか合理的な主張とはならないでしょう。
客観的な証拠に基づき営利目的ではない旨の主張をしっかりとしていくことが重要です。
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