放尿行為で器物損壊罪

2019-06-17

放尿行為で器物損壊罪

器物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川西市に住む会社員のAさんは、同市に住む女性Vさんの乗用車のドアなどに尿をかけ、汚損させた疑いで、兵庫県川西警察署器物損壊の容疑で逮捕されました。
Aさんは、深夜にVさんの乗用車が止めてある駐車場で、Vさんの乗用車の運転席ドアなどに放尿したとのことです。
何度も同様の被害にあっていたVさんは、業を煮やして兵庫県川西警察署に相談したことで事件が発覚しました。
Aさんは容疑を認めており、なんとか事件を穏便に解決できないものかと思っています。
(フィクションです)

成立し得る犯罪は?

他人の車に放尿する行為は、如何なる犯罪に該当するのでしょうか。

(1)器物損壊罪

まずは、上記ケースにおいて逮捕容疑となっている器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪は、刑法第261条に規定されています。

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する

客体
「前三条に規定するもののほか」というのは、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊及び同致死傷罪の客体、つまり、公用文書等、権利義務に関する文書や他人の文書、他人の建造物や艦船以外の物をいいます。
動産・不動産だけでなく、動物も含まれます。

行為
本罪の問題となる行為は、「損壊」または「傷害」です。
判例及び通説によれば、損壊とは、「広く物本来の効用を失わしめる行為を含む」と解されます。
例えば、他人の飲食器に放尿する行為も「損壊」に当たるとされます(大判名42・4・16)。
簡単に言うと、皿に放尿したことで、皿自体が壊れていなくても、人の尿がかかったということで当該皿を再度使いたいとは一般的に思いませんから、食べ物を乗せるという皿本来の用途(効用)を失わせたと言えるため、「損壊」したことになるのです。
ですので、上記ケースにおいては、車のドアに放尿されていますが、これにより直ちに車自体が故障するということではありませんが、人の尿がかかった車を使いつづけたいかと問われれば、一般に否定的な回答になるでしょう。

それでは、特定の人に対して複数回上の行為をしていたとなれば、器物損壊罪以外にも次の罪に問われる可能性もあります。

(2)ストーカー規制法違反

第十八条 ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

ストーカー規制法における「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等を反復して行うことと定義されています。
問題となる「つきまとい等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること」です。
①つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき等
②監視していると告げる行為
③面会や交際の要求
④乱暴な言動
⑤無言電話、拒否後の連続した電話・FAX・電子メール・SNS等
⑥汚物等の送付
⑦名誉を傷つける
⑧性的羞恥心の侵害
AさんがVさんに好意を寄せており、それを満たすために、Vさんの車のドアに放尿していたのだとすれば、⑥号に該当し、2回以上当該行為を行っていたのであれば、反復して行ったことになり、「ストーカー行為」となるでしょう。
⑥号の原文は、「汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。」ですので、送付する以外にも、駐車してある車に放尿することにより、Vさんがそのことを分かり得る状態にしているので、車に放尿する行為も⑥号に当たります。

(3)迷惑防止条例違反

嫌がらせとして特定の者に対して、複数回人の車に放尿する行為をしたのであれば、兵庫県迷惑防止条例違反となる可能性もあります。

第10条の2 何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第2条第3項に規定するストーカー行為を除く。以下「嫌がらせ行為」という。)をしてはならない。
(略)
(6) 汚物、動物の死体その他の著しく不快若しくは嫌悪の情を催させるような物又は当該情を催させるようなものを視覚若しくは聴覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第8号において同じ。)その他の記録を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

器物損壊罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。
ですので、被害者との示談を成立させることが事件を穏便に解決するうえで重要となります。
器物損壊事件を起こしお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。