特殊詐欺の受け子~詐欺罪と窃盗罪~

2020-04-07

特殊詐欺受け子を行い、詐欺罪または窃盗罪で問われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
先輩から「高額バイトがあるから、やってみないか?」と誘われて、特殊詐欺受け子をやることになったAくん(18歳)は、ある日、指示役から兵庫県芦屋市にある民家に行くように言われました。
警察官と名乗り、高齢女性からキャッシュカードが入った封筒を受け取ったAさんは、女性が電話に対応している間に、持参した封筒とすり替えて戻ってきた女性に封筒を渡しました。
Aさんは、女性宅を出た後、指示された銀行のATMで受け取ったキャッシュカードを使って現金50万円を引き出しました。
50万円のうち5万円を報酬として受け取り、残りは指定されたコインロッカーに入れました。
後日、兵庫県芦屋警察署の警察官がAさん宅を訪れ、窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです)

特殊詐欺の受け子

特殊詐欺と言えば、少し前には、「オレオレ詐欺」が代表的なものでした。
突然、電話がかかってきた、「オレ、オレだよ。」と切り出し、電話に対応した家族の息子からの電話であるかのように装い、「交通事故を起こしたから、示談金が必要。」だとか、「会社のお金を横領したから、返済にお金が必要。」などと言って、相手からお金を騙し取ろうとする手口です。
要求した金の受領方法は、振込先を指定して振り込ませるやり方から、郵便で指定した住所へ送らせるものまで広範囲に及びます。
しかし、警察の取り締まりが厳しくなるにつれて、特殊詐欺の手口は巧妙化・多様化しています。
最近では、銀行員、警察官、弁護士などを語り、「あなたの口座が特殊詐欺グループに不正に使用されている。停止するために、キャッシュカードと暗証番号が必要。今から自宅に行くので対応してほしい。」などと言って、相手からキャッシュカードを騙し取るやり口が横行しています。
キャッシュカードを騙し取る方法も、キャッシュカードを相手から受け取る方法から、キャッシュカードを封筒に入れさせ、確認すると受け取り、電話か何かに相手が対応している隙に、事前に用意しておいた別の封筒と入れ替え、別の封筒を相手に渡し、キャッシュカードを取得する方法へと移行してきているようです。
どちらの方法も、相手に自分は銀行員・警察官・弁護士だと偽り、嘘の理由でやってきたと信じ込ませている分には変わりありませんが、キャッシュカードを取得した方法が異なるため、成立し得る犯罪も変わってくるのです。

(1)詐欺罪

人を欺いて財物を交付させた場合、詐欺罪が成立します。
「人を欺いて財物を交付させる」という行為であるためには、①相手を騙し、②相手が騙されて嘘を本当のことと信じ、③相手が行為者に財物を渡し、④行為者側が財物を入手する、といった一連の流れが必要となります。
この①欺罔→②錯誤→③財産的処分行為→④財物の交付という行為の流れをとることが、詐欺罪の本質であり、特に③財産的処分行為は、窃盗罪との区別において重要です。
財産的処分行為が成立するためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要です。
なので、自分の行動の意味が分かっていない幼児や精神障害者を騙して、その財物を取得したとしても、幼児や精神障害者に財物を処分する意思が認められないので、財産的処分行為がなく、その財物の取得は詐欺罪ではなく窃盗罪となります。

(2)窃盗罪

窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪です。
「窃取」というのは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
さきほど述べたように、詐欺罪の成立に重要なポイントである「相手の財産的処分行為」は、相手が財物を処分する事実と処分する意思が含まれます。
ですので、相手が自分の意思で財物を処分するということが詐欺罪では必要になるのに対して、窃盗罪においては、財物の占有者の意思に反して、その財物を自分(または第三者)の物にすることが求められますので、財物の占有を相手(被害者)から自分や第三者に移転させるという点では共通していますが、その移転が財物の占有者の意思に反していたか否かが異なります。

特殊詐欺受け子の件について検討しますと、被害者に対して嘘の話をして、被害者が自分の口座が悪用されているから、自分の財産を守るためにも、自宅にやってきた者(つまり、受け子)にキャッシュカードを渡さなければならないと信じ込ませ、キャッシュカードを自ら受け子に渡しています。
例えば、被害者がキャッシュカードを銀行員と称する受け子に渡したら、後日新しいキャッシュカードが郵送されてくると信じて、当該キャッシュカードを受け子に渡したのであれば、「錯誤に基づく被害者の財産的処分行為がある」ということになります。
さらに言えば、特殊詐欺グループが被害者に対してついた嘘の内容が、財産的処分行為に向けられたものであった、ということになります。
よって、この場合は、詐欺罪が成立すると考えられます。

一方、被害者が受け子にキャッシュカードを確認させるためだけに、封筒に入れたキャッシュカードを受け子に渡したのですが、共犯者と共謀し、共犯者がタイミングよく被害者に電話をし、電話に応対するために被害者が席を外した隙をみて、事前に用意した他のカードなどが入った封筒と入れ替え、その封筒を被害者に返し、キャッシュカードを入手する行為については、先ほどのケースとは異なります。
なぜなら、特殊詐欺グループは、キャッシュカードを他の物とすり替えるために、被害者の隙をつくるために嘘の電話をかけたのですから、その嘘は、被害者の財産的処分行為(キャッシュカードを受け子に渡す行為)に向けられたものではないからです。
そのため、被害者は自分の意思でキャッシュカードを受け子に渡したのではなく、その意思に反して勝手に持っていかれたことになります。
よって、この場合は、窃盗罪が成立することになるでしょう。

特殊詐欺事件は、組織犯罪であることが多く、また、複数件行っていることが多いため、身体拘束が長期化し、接見禁止に付される可能性が高くなっています。

ご家族が特殊詐欺事件で逮捕されたのであれば、今すぐ刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで今すぐご連絡を!