逃走犯と逃走の罪

2019-07-10

逃走犯と逃走の罪

窃盗罪などで実刑が確定し、横浜地方検察庁の検察事務官や横浜県警察の警察官らが受刑者宅を訪れた際、受刑者が自宅から車で逃走するといった事件が23日に起こったことは、ニュースでも大々的に報じされましたので、みなさまもご存知のことでしょう。
また、昨年の8月には、強制性交等未遂容疑などで逮捕・勾留されていた被疑者が、大阪府警察富田林警察署の留置場から逃亡した事件もありました。

これらの逃走犯すべてが、刑法に規定されている「逃走の罪」に問われるのではないかと思われた方も少なくはないのではないでしょうか。
しかし、前者の逃走犯に対しては「公務執行妨害罪」が、後者の逃走犯に対しては、「加重逃走罪」に問われています。
なぜ、両者に対して「逃走の罪」が適用されていないのでしょうか。

逃走の罪について

刑法に規定されている「逃走の罪」は、以下の犯罪類型に分けられます。
①被拘禁者自身の逃走行為を罰する類型
(a)単純逃走罪(刑法第97条)
(b)加重逃走罪(同法第98条)
②他者が被拘禁者を逃走させる行為を罰する類型
(c)被拘禁者奪取罪(刑法第99条)
(d)逃走援助罪(同法第100条)
(e)看守者等逃走援助罪(同法第101条)

今回は、被拘禁者自身が逃走する行為についての罪である(a)と(b)についてみていきましょう。

単純逃走罪

第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。

本罪の主体は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」です。
「裁判の執行により」とあるので、逮捕状により、ないしは現行犯人として逮捕された者は主体から除外されます。
裁判の執行により拘禁された「既決の者」というのは、確定判決によって、刑事施設に拘禁されている者をいいます。
また、裁判の執行により拘禁された「未決の者」とは、勾留状によって、刑事施設または警察留置場に拘禁されている被告人・被疑者のことを指します。
本罪の対象となる被拘禁者の範囲をまとめると、以下のとおりです。
①確定裁判を受け、それによって拘禁されている者。
②死刑の執行まで拘置されている者、労役場に留置されている者も含まれる。
③被疑者または被告人として勾留状により拘禁されている者。
④鑑定留置に付されている者。

この点、横浜の逃走犯は、確定判決を受けていましたが、保釈により身柄の拘束を受けておらず、拘禁された者には当たりませんので、本罪の主体とはならず、本罪は適用されないのです。

ちなみに、本罪の行為である「逃走」とは、「拘禁から離脱すること」を意味します。
刑事施設等の外へ脱出するなど、一時的であれ完全に看守者の実力的支配を脱した時点で既遂となります。

加重逃走罪

第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

本罪の主体は、単純逃走罪のそれよりも範囲が広くなっており、裁判の執行により拘禁された既決もしくは未決の者、または勾引状の執行を受けた者です。
「勾引状の執行を受けた者」については、勾引状は一定の場所で身体の自由を拘束する令状を広く指すと理解されているので、逮捕状により逮捕された被疑者も含まれます。
また、一定の場所に引致するために発せられる勾引状の執行を受けた被告人、身体検査の対象者、証人なども含まれます。

本罪の行為は、①「拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し」、「暴行若しくは脅迫をし」、または「2人以上通謀して」、②「逃亡」することです。
・手段1:拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊
 「拘禁場」というのは、刑事施設や警察留置場などの拘禁の用に供される施設のことで、「拘束のための器具」というのは、拘束衣、手 錠および捕縄といった被拘禁者の身体を拘束する器 具です。これらを物理的に毀損することを「損壊」といいます。
・手段2:暴行若しくは脅迫
 逃走の手段として、看守者またはこれに協力する者に対してなされることが必要とされます。
・手段3:2人以上通謀して
 2人以上の既決または未決の者、または拘引状の執行を受けた者が意思の連絡を取り合い合意することを要します。

富田林の逃走犯は、勾留中の被疑者でしたので、本罪の主体に該当します。
また、接見室のアクリル板を外して警察留置場から逃走したので、拘禁場を損壊して逃亡したため、加重逃走罪が適用されました。

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