共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aは、先輩Bから、Bと知り合いのCを指定された場所まで送り迎えをするよう頼まれました。
兵庫県養父市のとある事務所までBとCを車で送り、その場で待機していました。
BとCは、帽子を被りマスクを着用した姿で車を降り、15分後、大きな袋に荷物を詰めて戻ってきました。
そして、AはBとCを指定された場所まで送り届けました。
Aは、Bから謝礼として3万円を受け取りました。
後日、兵庫県養父警察署がAさん宅を訪れ、窃盗容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)
共同正犯と幇助犯
1.共同正犯について
2人以上の行為者が、意思の連絡に基づき、共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
「共犯」にも、2人以上の者が共同して犯罪を実行する「共同正犯」、他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせ、その決意に基づいて犯罪を実行させる「教唆犯」、実行行為以外の行為で実行行為者の実行行為を容易にさせて犯罪を実現する「幇助犯」とがあります。
「共同正犯」は、2人以上の者が、共同して犯罪を実行するもので、すべての者が正犯として処罰されます。
共同正犯が成立するためには、
(1)共同実行の意思に基づき、
(2)共同実行の事実
が必要となります。
(1)共同実行の意思
2人以上の者が、共同してある特定の犯罪を行おうとする意思を「共同実行の意思」といい、この意思の連絡が必要となります。
共同実行の意思の連絡を「共謀」といいます。
共同実行の意思は、必ずしも犯行の細部にわたって認識していたことまでも必要とされません。
(2)共同実行の事実
共同実行の意思の連絡に基づいて、共謀者の全部又は一部が犯罪の実行行為をおこなったことが必要となります。
共同正犯の成立には、(1)共同実行の意思、そして、(2)共同実行の事実が必要となるのですが、共同実行の事実を欠いた場合でも、共同実行の事実がある場合と実体的に共同実行したのと変わりない関与をした場合には、共同正犯が成立します。
これは、いわゆる「共謀共同正犯」といいます。
共同実行の事実と変わらない関与をした場合とは、①犯行実現への強い動機、関心、利害があり、②これに基づいて犯行を実現するのに重要な役割を果たした場合です。
①犯行実現の強い動機・関心・利益
利益の分配があること、犯罪の実現によって利益を得る関係にあること、暴力団・過激派・会社犯罪のような組織犯罪であることなどから、犯罪実現に強い動機・関心・利益があるか否かが判断されます。
②犯罪の実現に重要な役割を果たした
時間的・場所的に実行行為に近接し、実行行為を直接援助する行為や、実行行為を直接援助する行為とは言えないけれど、犯行遂行上、重要かつ不可欠な行為を担った場合には、犯罪の実現に重要な役割を果たしたと考えられます。
以上のように、実行行為を行っていない場合であっても、共謀共同正犯が成立し、正犯と同じように処罰されることがあります。
共謀共同正犯の場合、実行していないため、本当に犯罪の共謀をしたのかについて争われることがあります。
例えば、上のケースにおいて、Aさんが共謀共同正犯の成立を争う場合には、Aさんが、共同実行の意思を欠いており、共謀共同正犯が成立しないことを主張することがあります。
そのような場合には、単に「共同実行の意思はない!」と述べるだけではなく、客観的な証拠に基づいて説得的に主張していかなければならず、刑事事件に精通する弁護士による弁護が必要となるでしょう。
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