服の上からの盗撮で迷惑防止条例違反
服の上からの盗撮(迷惑防止条例違反)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市北区の商業施設で、女性のお尻部分を服の上から盗撮したとして、会社員のAさんは迷惑防止条例違反の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんは、兵庫県有馬警察署で取り調べを受けており、「女性の下着を盗撮したのではなく、女性が普通に服を着ていた状態のお尻部分を撮っただけです。」と、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されたことに不満がある様子です。
Aさんは、接見に訪れた弁護士に自分の行為が迷惑防止条例違反となるのか聞いています。
(フィクションです)
盗撮~迷惑防止条例違反~
「盗撮ぐらいならバレないだろう。」と、人のスカート内に自身が所持するスマートフォンを差し入れ、その下着を撮影するといった「盗撮」は、捜査機関に発覚していないことも多く、実際の件数はかなりの数に上ると言われています。
盗撮事件で逮捕された方が、実は逮捕された被疑事実以外にも盗撮行為を何件も行っていたことが発覚するケースが多く見られます。
みなさんご存知の通り、盗撮行為は犯罪です。
「盗撮罪」という犯罪はありませんが、各都道府県が定める迷惑防止条例が「盗撮」を禁止しており、違反者に対しては罰則を定めています。
兵庫県迷惑防止条例では、次のように規定しています。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
禁止される行為は、「盗撮」だけでなく、盗撮目的でカメラを向けたり、設置したりする行為も含まれます。
服の上から撮影しても迷惑防止条例違反の盗撮に?
「盗撮」といった場合、多くの人が、他人の下着や裸などを許可なく撮影することを想像されると思いますが、被撮影者が服を着た状態で勝手に撮影した場合でも、迷惑防止条例で禁止されている盗撮に該当するのでしょうか。
この点、札幌の迷惑防止条例に関してではありますが、服の上からでも「公共の場所・乗物において、卑わいな言動」に当たり条例違反となることを肯定した裁判がありますので、ご紹介しましょう。
事件の内容は、被告人が、ショッピングセンター内で女性に執拗につきまとい、ズボンを着用した女性のお尻部分をカメラで11回撮影したというものです。
女性の下着や身体を盗撮したのではないから、「卑わいな言動」には当たらないのではないかと争われましたが、最高裁判所は、「被告人の本件撮影行為は、被害者がこれに気付いておらず、また被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえるから、上記条例10条1項、2条の2第1項4号に当たるというべきである。」とし、服の上からであっても被害女性のお尻を盗撮する行為は、迷惑防止条例における「卑わいな言動」に当たると解されました。(最決平20・11・10)
このように、人が服を着た状態であっても、その臀部を盗撮する行為は、卑わいな言動に当たる可能性があり、上記ケースにおいてAさんに対して迷惑防止条例違反が成立するものと考えられます。
盗撮事件のような被害者が存在する事件においては、被害者との示談の有無が処分結果に大きく影響します。
被害者との示談は、弁護士を介して行うことをお勧めします。
盗撮事件でお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。