刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件の緊急逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県洲本警察署は、殺意を持ち、ゴルフクラブで男性Vさんの頭部を殴ったとして、兵庫県洲本市に住む少年Aくんを殺人未遂容疑で緊急逮捕しました。
Aくんは、「Vさんとトラブルになりカッとなって殴ってしまったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、急いで接見に行ってくれる弁護士を探しました。
(フィクションです)
被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分である「逮捕」には、3種類あり、前回はそのうちの「通常逮捕」について説明しました。
今回は、「緊急逮捕」についてみていきたいと思います。
「逮捕」や「現行犯逮捕」というワードは、ニュースなどで頻繁に耳にしているとは思いますが、「緊急逮捕」についてはあまり聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
緊急逮捕とは、一定以上の重大な罪の嫌疑が高い場合、急速を要して、裁判官に対して逮捕状を請求することができないため、ひとまず被疑者の身柄を確保した上で、その後、直ちに逮捕状を請求するものです。
緊急逮捕については、刑事訴訟法第210条に次のように規定されています。
第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。
当該条項の趣旨は、現行犯以外の場合で、犯人であることが明らかであるが、事前に逮捕状が必要であるとすると、その手続をしている間に被疑者が逃亡し、その後の逮捕が極めて困難になる場合もあるため、事実発見の観点から、一定の重い罪について厳重な制限の下に無令状の逮捕を認めた点にあります。
この緊急逮捕は、令状主義との関係で、憲法に反しているのではないかとの議論がありましたが、この点、最高裁判所は、「厳格な制約の下に、罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求めることを条件都市、被疑者の逮捕を認めることは、憲法33条規定の趣旨に反するものではない」とし、その合憲性を認めています。(最大判昭30・12・14)
緊急逮捕をする際には、被疑者に「その理由を告げて」行わなければならないとありますが、「その理由」には被疑事実の要旨および急速を要する事情にあることが含まれます。
緊急逮捕の要件は次の通りです。
①一定の重大犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること。
死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪が対象となります。
この「罪」は特定されている必要があります。
そして、そのような重大犯罪を犯したことに対して、単なる疑いがあるだけでは足りず、通常逮捕においては「相当な」とあるのに対して、緊急逮捕では「充分な」とあるため、より高い嫌疑が必要です。
②急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと。
「急を要し」とは、被疑者が逃走しまたは証拠を隠滅するおそれが高く、逮捕状を請求している時間的余裕がないことをいいます。
③理由の告知をすること。
④逮捕後、直ちに逮捕状請求の手続をすること。
⑤逮捕の必要性があること。
通常逮捕と同様に、逮捕時に逮捕の必要があることが前提となります。
このように、緊急逮捕の要件は通常逮捕よりも厳しいものになっています。
通常逮捕や現行犯逮捕と比べると、緊急逮捕で身柄確保となる件数は少なくなっています。
しかし、緊急逮捕された後の流れも、他の逮捕と同様に、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察に送致するかを決めます。
警察が検察に被疑者の身柄と証拠書類等を送致した場合、検察官は被疑者を取り調べた上で、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に対して勾留請求を行うかを決定します。
検察官が勾留請求をすると、裁判官は被疑者と面談をし、被疑者を勾留するか、釈放するかを判断します。
裁判官が勾留を決定した場合、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間身柄が拘束されることになります。
そのような長期の身体拘束を避けるためにも、逮捕されたら早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
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