あおり運転で刑事事件~道路交通法違反~

2020-03-03

あおり運転行為により刑事事件道路交通法違反)に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

あおり運転の厳罰化への動き

2017年に神奈川県の東名高速道路で、無理やり停止させられた車の夫婦に、後方を走っていたトラックが追突し死亡した痛ましい事故を機に、あおり運転が社会問題となり、その危険性についてメディアでも大きく取り上げられました。
残念ながら、その後も、あおり運転をする者は絶えず、あおり運転に起因する事故や事件が起きています。
警察庁は、厳罰化に向けて道路交通法あおり運転を新たに定義し、違反1回で即免許取り消しとするほか、懲役刑を設ける改正案を国会に提出する予定だとしています。

現行法では、あおり運転は如何なる罪に当たる可能性があるのでしょうか。

あおり運転は何罪に?

道路交通法上、「あおり運転」の定義はありませんが、一般的に「あおり運転」とは、その言葉の通り、周囲を走行する車などに対して煽るように、つまり、他車の運転手等を刺激して、道を譲らせたり、車を停止させたりといった行動に駆り立てるように運転し、道路における交通の危険を生じさせる行為を意味します。
他車を煽る方法は様々ですが、代表的なものを挙げると、車間距離を極端に詰めたり幅寄せを行ったりする行為、必要のないパッシングやクラクションでの威嚇行為、いきなり急ブレーキをかけて後続車を脅かす行為があります。

1.道路交通法違反

あおり運転の運転態様につき、道路交通法違反が成立する可能性があります。

(1)車間距離不保持違反

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

前を走っている車が急ブレーキをかけたとしても、その車に追突しない距離を空けて自車を運転しなければなりません。
過去の裁判例によれば、保たなければならない車間距離は、車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の区別、見透しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によって異なるので、一律に決定することは難しいとしていますが、具体的な状況において社会通念によって判断するほかはないけれども、運転者としては事故の運転技能、道路の状況その他の諸条件を十分に考慮し、先行者の行動に注意を払いながら適切な判断をする必要があるとしています。(名古屋高裁、昭30・3・10)

罰則は、一般道においては、5万円以下の罰金、高速自動車国道等においては、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

あおり運転の車間距離を極端に詰める行為は、車間距離不保持違反に当たります。

(2)急ブレーキ禁止違反

第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

ここでいう「危険を防止するためやむを得ない場合」とは、走行している車両の直前に歩行者が飛び出してきた場合、左側端を走行していた自転車が走行している車両の直前に急に右折をはじめ入ってきた場合、または道路の損壊や道路上の障害物をその直前で発見した場合などをいい、目前の危険を防止するためやむを得ない場合を指します。

罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

(3)安全運転義務違反

第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

「車両等の運転手」は、車両等を運転し又は操縦することができる免許を受けている者だけでなく、免許を受けていない者が運転している場合も「車両等の運転手」に含まれます。
①装置の確実な操作、②他人に危険を及ぼさないような速度、③他人に危害を及ぼさないような方法の3つの義務のうち一つでも欠いていれば、安全運転義務に違反することになります。

①安全操作履行義務
ハンドル、ブレーキその他の送致を確実に操作し、その機能を正しく発揮することができるようにしなければなりません。
②安全状態確認義務
道路、交通及び当該車両等の状況に応じて、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する義務です。

ブレーキペダルの踏み間違えやハンドル操作の過ち、漫然運転、脇見運転、安全不確認など交通事故の主要な原因は、安全運転義務違反によるものと言われています。
あおり運転においては、幅寄せ行為等が安全運転義務違反に当たります。

罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

現行法において、あおり運転により道路交通法違反が成立する場合、必ずしも刑事事件として刑事手続が進められ、刑事罰を科されるとは限りません。
交通反則通告制度に従い、反則金の納付により公訴を提起されない場合があります。
もちろん、あおり運転が原因で人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といった反則通告制度が適用されない重い罪に問われることになりますので、刑罰が科される可能性があります。
次回は、罰金と反則金の違いについて解説します。

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