Archive for the ‘刑事事件’ Category
児童と性交類似行為に及んだ場合
児童と性交類似行為に及んだ場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース①~
会社員のAさんは、出会い系サイトで知り合った高校生のVさん(16歳)とカラオケに行きました。
Vさんは「家出中なので、しばらく家に泊めてほしい。そうしてくれるなら、口ならいいよ。」と言われ、口淫に及びました。
その後、Aさんは2日間、Vさんを自宅に泊めました。
(フィクションです)
~ケース②~
会社員のAさんは、出会い系サイトで知り合った高校生のVさん(16歳)とカラオケに行きました。
Aさんは、Vさんと話をしているうちに劣情を催し、Vさんに口淫をするように頼むと、Vさんが応じたため、口淫に及びました。
(フィクションです)
児童と性交類似行為に及んだ場合に成立する罪とは?
18歳未満の者(以下、「児童」といいます。)との性交や性交類似行為をする場合、その対価として現金等を渡すケースが少なくありません。
対価の提供やその約束がある場合には、児童買春に該当することになります。
しかし、そのような対価がない場合には、各都道府県が規定する条例違反が成立します。
1.児童買春
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下、「児童買春法」といいます。)は、児童買春を禁じ、違反者に対して5年以下の懲役または300万円以下の罰金を科すものとしています。
児童買春法における「児童買春」というのは、児童、児童に対する性交等を周旋した者、または児童の保護者に対して、対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等をすることと定義しています。(児童買春法2条2項)
「性交等」には、性交、性交類似行為、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触る若しくは児童に自己の性器等を触らせる行為をいいます。
性交類似行為には、手淫、口淫などが含まれます。
2.兵庫県青少年愛護条例違反
各都道府県において、18歳未満の者とのみだらな性交・性交類似行為を禁止する内容の条例が制定されています。
兵庫県では、「青少年愛護条例」において、その21条は、青少年(=18歳未満の者)とのみだらな性行為等を禁止しています。
青少年との性交等一切を禁止したものではなく、「みだらな」と限定されており、18歳未満の者を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不正な手段により行うものや、単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしかみえないようなものについて禁止しています。
そのため、真摯な交際中の場合、例えば、親公認であったり、性交に至るまで相当の期間があった場合などは、「みだらな」とは言えず、条例違反に当たらないことがあります。
児童買春、条例違反ともに、18歳未満の者に対し、みだらな性交や性交類似行為等を行うことを禁止する点でおおむね共通しています。
両者の違いは、性交等に対する対価を与えたか、もしくは対価を与える約束をしたか否か、です。
対価の供与や対価供与の約束をした場合には、児童買春にあたることになりますが、「対価」とはどういったものをいうのでしょうか。
「対価」は、児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を供与する、又は、その約束をすることです。
現金を渡すほかにも、食事を御馳走することや、プレゼントを渡すこと、親の雇用を約束することなどが対価に当たります。
ケース①の場合、Vさんを自宅に泊める代わりに口淫していますし、行為後、実際にVさんを自宅に泊めています。
自宅に泊めることも、口淫したことへの反対給付としての経済的利益の供与に当たります。
よって、Aさんは、児童買春の罪責を負うものと考えられます。
一方、ケース②では、出会い系サイトで知り合ったVさんと、交際も経ずに性交類似行為を行っています。
よって、Aさんは、条例違反の罪責を負うことになります。
どちらのケースも、AさんがVさんを18歳未満だと分かっていながら行為に及んだことが前提です。
Vさんが、偽造の免許証を提示するなど、年齢を18歳以上と偽っており、Aさんも誤信したことに過失がない場合は、犯罪が成立しないことになります。
ただし、「相手が18歳以上と言ったから信じた」というだけでは足らず、身分証明書を見せてもらうなどして相手の年齢を確認する必要があります。
このように、児童と性交類似行為に及んだ場合には犯罪が成立する可能性があります。
児童買春事件や条例違反事件でお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:違法性阻却事由~
構成要件該当性が肯定された後に問題となる第2の犯罪成立要である違法性(違法性阻却事由)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)
犯罪が成立するためには
犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。
前回のブログでは、構成要件該当性について検討しました。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。
構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。
2.違法性について
「違法性」というのは、形式的には、問題となる行為が法規範に反することをいいます。
構成要件は違法行為類型であると理解する限り、構成要件に該当する行為は、原則として違法であることになります。
しかし、この原則の例外となる特別の事情がある場合には、その違法性が否定され、犯罪は成立しないことになります。
そのような違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。
違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。
ここでは、正当防衛についてみていきましょう。
違法性阻却事由:正当防衛とは
「正当防衛」とは、(1)急迫不正の侵害に対して、(2)自己又は他人の権利を防衛するため、(3)やむを得ずにした行為、のことをいいます。
(1)急迫不正の侵害
①急迫性
侵害は、「急迫」したものでなければなりません。
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。
すでに侵害が終了しているときは、その直後であっても急迫性は認められませんが、一旦法益が侵害されても、新たな侵害がさらに加えられる状況があれば、侵害の急迫性を肯定することができます。
また、侵害が予期されたものであった場合でも、判例は、侵害の急迫性は直ちに失われるものではないとする立場をとっています。(最判昭46・11・16)
しかしながら、予期された侵害の機会を利用し、積極的に相手方に対して加害行為を加える意思で侵害に臨んだときには、侵害の急迫性の要件は充たされないとしています。
②不正
「不正」は、違法であることを意味します。
侵害者の行為は有責である必要はなく、構成要件該当行為である必要もないとされています。
要保護性を備えた利益に対する侵害であれば足りると解されます。
(2)自己又は他人の権利の防衛
正当防衛は、「自己又は他人の権利」を「防衛」するために認められます。
正当防衛として許されるのは、侵害者の法益を侵害する場合に限られます。
正当防衛は、防衛行為でなければなりません。
防衛行為といえるためには、客観的に防衛行為としての性質を有していることに加えて、防衛の意思でその行為がなされることが必要となります。
判例は、防衛意思の内容について、相手の加害行為に対し憤慨・逆上して反撃をしたからといって、直ちに防衛の意思を欠くものではなく(最判昭11・12・7)、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められる(最判昭50・11・28)と、防衛の意思についての解釈を示しています。
しかしながら、攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為にでたなどの特別な事情がある場合には防衛の意思が否定され(最判昭46・11・16)、防衛の名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は防衛の意思を欠く(最判昭50・11・28)、としています。
(3)やむを得ずにした行為
正当防衛として違法性が阻却されるためには、防衛するために「やむを得ずにした行為」であることが必要です。
正当防衛の成立要件として、①必要性と②相当性の両方を必要とされます。
①必要性
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法である必要はなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手方に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するものと理解されています。
②相当性
許容される防衛行為には限度があり、防衛行為としてどのような手段がとられたのかという点に着目して、その相当性が判断されます。
喧嘩闘争における正当防衛について
さて、喧嘩においても正当防衛が成立し得るのでしょうか。
喧嘩が発展し、双方が、攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合、「喧嘩両成敗」として正当防衛は成立しません。
しかし、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、当初は素手で喧嘩していた相手方が、急に刃物を持ち出して攻撃したことに対して反撃した場合や、けんかが一旦収まったにもかかわらず、相手方がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるとされます。
喧嘩の一部分だけを切り取って判断するのではなく、一連の事態を全体的に観察し正当防衛が成立する余地があるか否かが判断されるのです。
上のケースでは、いったん喧嘩が収まったにもかかわらず、Vさんが再度Aさんを執拗に殴り始めたため、これに反撃するためにAさんがVさんを殴った、というものです。
喧嘩が一度収まっているところ、攻撃と防御の連続的行為が崩れたとみて、さらにAさんの加害行為が急迫不正の侵害に対して、自己の権利を防御するためにやむを得ずにした行為であると判断されれば、Aさんの正当防衛が認められ犯罪は成立しないことになります。
正当防衛が成立する余地があるかについては、事件の内容によりますので、刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
喧嘩で刑事事件に~犯罪の成立:構成要件該当性~
殴り合いの喧嘩で犯罪が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
仲間内の揉め事が原因で、AさんとVさんとの間で激しい言い争いに発展しました。
次第に、二人は殴り合いの喧嘩に発展しました。
見かねた周囲の人間が二人の間に入り、二人を引き離し、いったん殴り合いは納まりました。
しかし、怒りが納まらないVさんは、なおもAさんに対して執拗に殴り続けてきたため、Aさんは反撃に一発Vさんの顔を殴りました。
すると、Vさんは地面に倒れ動かなくなりました。
すぐに救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
駆け付けた兵庫県西脇警察署の警察官は、Aさんや目撃者らから事情を聞いています。
Aさんは、「Vが喧嘩続けてきたから反撃しただけ。正当防衛になりませんか。」と話しています。
(フィクションです)
犯罪が成立するためには
社会的に許されず、避難されるべき行為は、多々ありますが、その中でも刑罰を加えるとしたものについては、あらかじめ法律の条文という形で私たち国民に提示されています。
芸能人の不倫騒動が、ニュースで大きく取り沙汰されている昨今ですが、不倫自体は社会的に許されず、社会的に避難されるべき行為ではありますが、犯罪ではありません。
犯罪は、法律の条文に該当し(これを「構成要件該当性」といいます。)、社会的に許されず(「違法性」)、社会的に非難される(「有責」)行為です。
犯罪が成立するか否かを判断するにあたっては、①構成要件に該当するかどうか、②違法であるかどうか、③有責であるかどうか、と順に検討していく必要があります。
1. 構成要件該当性
構成要件の意義については、様々な見解がありますが、「立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型」をいうとするのが基本的な理解となっています。
構成要件は、それを構成する構成要件要素により成り立っています。
構成要件要素は、個別の犯罪ごとに異なりますが、一般的には、①行為の主体、②行為、③結果、④行為と結果との間の因果関係、⑤故意・過失、です。
喧嘩の場面では、通常、暴行罪や傷害罪が成立することが多いでしょう。
喧嘩の末に、相手方が亡くなってしまった場合には、傷害致死罪、場合によっては殺人罪が適用されることがあります。
ここでは、傷害罪の構成要件に該当するか否かを検討します。
傷害罪
傷害罪は、刑法204条に規定されています。
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
傷害罪は、他人の身体に対する侵害を内容とする犯罪です。
ですので、本罪の客体である「人の身体」は「他人の身体」であるのた、後者自身の身体の傷害は罪とはなりません。
さて、傷害罪の行為は、人の身体を「傷害」することです。
「傷害」というのは、人の生理的機能に障害を加えることです。
傷害は暴行によって生じることが多いのですが、暴行によらない傷害もあり、怒号等の嫌がらせによって、不安・抑うつ状態に陥れることも傷害に当たります。
傷害の方法については、有形無形を問いません。
また、傷害罪は故意犯です。
「故意」とは、「罪を犯す意思」のことをいいます。
傷害罪の場合、暴行罪の結果的加重犯の場合も含むと解する立場が通説となっており、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りるとされます。
殴り合いの喧嘩の場合、相手を殴るという暴行を加えていますが、積極的に相手方に怪我を負わせてやろうと思っていないとしても、殴ることで怪我を負っても構わないと思っていたのであれば傷害の故意が認められます。
そもそも、傷害罪の場合には暴行の認識があれば足りますので、相手に手を出していることで傷害の故意が認められます。
上のケースでは、双方が殴り合う喧嘩ですので、両者ともに暴行を加えていますが、AさんがVさんを殴り、そのことが原因で意識障害に陥ったのであれば、Aさんの行為は、傷害罪の構成要件に該当することになるでしょう。
構成要件に該当するのであれば、次に、違法性や責任を否定する何か特別の事情があるか否かについて検討することになります。
構成要件に該当する行為が認められると、違法性を有することも推定されますが、具体的な事情を検討すると、違法性を欠く場合があり、違法性が阻却される事由があるか否かを検討することとなります。
違法性阻却事由として刑法が定めるものに、「正当防衛」があります。
この言葉は、みなさんもご存知だと思います。
次回は、この正当防衛について解説します。
喧嘩から刑事事件に発展することは少なくありません。
目撃者や被害者が警察に通報することで、事件が警察に発覚することが多いようです。
相手が因縁をつけてきたからかっとなって…、相手が手を出してきたから…、など様々な事情がその背景にあることもありますが、喧嘩で相手に怪我を負わせた場合、傷害事件の被疑者となる可能性も大いにありますので、一時の感情で動くことには注意しましょう。
傷害事件で被疑者となり対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
ひったくり事件で逮捕
ひったくり事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県洲本市の路上を歩いていた高齢女性に、原付バイクで背後から近づき、女性が持っていたカバンをひったくろうとする事件が起きました。
女性は、カバンを盗られまいとカバンを手放そうとしなかったため、数メートル間原付バイクに引きずられた結果、腕や脚に擦り傷を負ってしまいました。
被害女性は、すぐに警察に通報しました。
捜査に乗り出した兵庫県洲本警察署は、現場付近の防犯カメラの映像から原付バイクに二人乗りしている若い男2名を特定しました。
後日、兵庫県洲本警察署は、AとBを強盗致傷の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)
ひったくりは何罪になるの?
被害者に背後から忍び寄り、持っているカバンなどを一瞬で奪う「ひったくり」は、どのような罪になるのでしょうか。
ひったくりは、多少なりとも被害者に対して何らかの接触を要します。
その接触の程度や具体的な状況により、窃盗罪が成立する場合もありますし、強盗罪となる場合もあります。
(1)窃盗罪
ひったくり事件の多くは、窃盗罪に該当します。
窃盗罪は、刑法235条に以下のように規定されています。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪が成立する要件は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取したこと
です。
①他人の財物
窃盗罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
②窃取
窃盗罪の実行行為である「窃取」というのは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
③不法領得の意思
窃盗罪が成立するためには、主観的要件も満たす必要があります。
主観的要件のひとつは、故意であり、窃盗罪における故意は、①財物が他人の占有に属していること、および、②その占有を排除して財物を自己または第三者の占有に移すことを認識することです。
加えて、不法領得の意思の要否については争いがありますが、判例上認められた要件となっています。
不法領得の意思は、権利者を排除する意思および他人の物を自己の所有物のようにその経済的用法に従い、これを利用または処分する意思のことです。
ひったくりは、他人が持っているカバンなどを、当該所有者の意思に反して、自己または第三者の占有に移すものですので、窃盗に該当するでしょう。
しかし、以下でも解説するように、ひったくりの状況が、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行に至っている場合には、窃盗にとどまらず、強盗となることがあります。
(2)強盗罪
強盗罪は、刑法236条に次のように規定されています。
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗罪は、
(1項) ①暴行または脅迫を用いて、
②他人の財物を
③強取したこと
(2項) ①暴行または脅迫を用いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
によって成立する罪です。
①暴行・脅迫
強盗罪の実行行為は、「暴行または脅迫」を用いて、他人の財物を「強取」することです。
その手段となる「暴行・脅迫」とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることが求められます。
ひったくりは、犯行抑圧に向けられた暴行ではなく、暴行を手段とするものであっても基本的には窃盗罪に当たるのみですが、暴行の程度如何によっては強盗罪が成立することがあります。
被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫に判断するにあたっては、暴行・脅迫の態様、行為者と被害者の性別・年齢・体格・人数、犯行の時刻・場所、犯行時の被害者と行為者の態度、被害者の心理状況・被害状況などの事情を総合的に考慮して判断されます。
相手方の隙をついて、追い抜きざまに、持っていたカバンなどを引っ張って金品を奪うひったくりの場合、相手方に対し、一定の接触はあるものの、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行を加えたとは言えないことが多く、窃盗にとどまることになります。
しかし、上のケースのように、相手方が金品を奪われないように抵抗したため、金品を奪うためにさらにカバンなどを引っ張り続けるなどの暴行を加えるひったくりの場合、さらに金品を奪うために暴行などが加えられていることから、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行などを加えたと評価することが多く、強盗罪が適用されることがあります。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金とその振り幅も広いですが、強盗罪のそれは、5年以上の有期懲役と、罰金刑はなく重い刑罰が科される可能性があります。
また、強盗の結果、相手方に怪我を負わせてしまった場合、強盗致傷となり、裁判員裁判の対象になります。
以上のように、ひったくりは、その犯行態様によって成立し得る罪が異なります。
刑事事件を起こし、どのような罪が成立し得るのか、如何なる処分を受けることになるのか、対応にお困りの方は、今すぐ刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を!
兵庫県青少年愛護条例違反事件が発覚
兵庫県青少年愛護条例違反事件が発覚するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、出会い系サイトで知り合った16歳の高校生と何回か性交しました。
ある時、相手の父親と名乗るものから連絡があり、「娘との関係について、警察に相談しました。あなたも大人としてしっかり対応してください。」と言われました。
いきなりの連絡に驚いたAさんでしたが、すばらくすると兵庫県宍粟警察署から話が聞きたいから出頭するようにとの連絡を受けました。
困ったAさんは、出頭する前に、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
兵庫県青少年愛護条例違反事件について
全国の地方公共団体は、青少年保護育成とその環境整備を目的とした条例を公布しています。
この条例は、「青少年保護育成条例」や、「青少年健全育成条例」などと呼ばれ、地方公共団体によって正式名称に多少の違いはあります。
兵庫県は、「青少年愛護条例」を制定しています。
本条例は、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある営業等の制限や行為の禁止等について定めています。
ここでは、青少年愛護条例違反となるもののうち、弊所の法律相談で取り扱うことが多い違反行為について解説します。
(1)みだらな性行為等の禁止違反
第21条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
いわゆる「淫行条例」です。
暴行や脅迫を用いずとも、また、金銭のやり取りがなくても、18歳未満の者と性交等をした場合に成立し得る罪です。
どういった行為が「みだらな性行為・わいせつな行為」にあたるのか、という点については、福岡県青少年保護育成条例違反事件ではありますが、「淫行」の内容についての解釈を明らかにした最高裁判例が参考となります。
『…「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。…』(最高裁判所大法廷、昭和60年10月23日)
このように、淫行条例は、青少年との性行為すべてを禁止としているのではなく、「淫行」、つまり、みだらな性行為を禁止対象としているのです。
ですので、婚約中の青少年またはこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上処罰対象とするのは考え難い場合は、淫行条例違反には当たりません。
しかしながら、単に「真剣に付き合ってました!」と主張するだけでは、淫行ではなく真摯な交際の上での性行為であったことは認められないでしょう。
淫行にあたるか否かは、当事者それぞれの年齢、性交渉に至る経緯、その他両者の付合いの態様等の諸事情に照らして判断されます。
淫行条例違反に対する罰則は、1項については2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。2項については30万円以下の罰金または科料です。
(2)児童ポルノ等の提供の求めの禁止
第21条の3 何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録をいう。以下同じ。)の提供を求めてはならない。
青少年の自画撮りによる被害が多いことを受け、平成30年4月1日に条例改正に伴い、児童ポルノ自画撮り勧誘行為の禁止が新設されました。
条例は、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノや電磁的記録等を提供するよう求める行為を禁止するとともに、欺き、威迫し又は困惑させる方法や、青少年に対し、財産上の利益を供与し又はその供与の申し込み若しくは約束をする方法により提供を求めた者に対し罰則を科しています。
単に、青少年に裸の写メを送るように頼んだだけでは、条例違反とはなるものの、頼み方が、青少年を騙したり、脅したり、困惑させるようなものだった場合や、お金やプレゼントをあげる代わりに裸の写メを送るように頼んだのであれば、30万円以下の罰金または科料が科される可能性があります。
これらの兵庫県青少年愛護条例違反が警察などの捜査機関に発覚する経緯としては、主に以下のような場合です。
①被害児童やその保護者からの被害申告
被害児童が親に事件のことを相談したり、親が被害児童のスマートフォンを見たことで事件が親にバレ、親と一緒に警察に相談しに行き、被害届を提出するケースは少なくありません。
②被害児童が別件で補導・逮捕されて発覚
被害児童が、本件とは別の事件を起こして、警察に補導や逮捕された際に、所持していたスマートフォンを調べられて、相手とのやりとりが見つかるということもあります。
③一緒に居るところを警察に職務質問されて発覚
淫行条例違反事件では、被害児童と一緒に繁華街などでいるところを警ら中の警察官に発見され、職務質問を受けて事件が発覚することもあります。
どの経緯であれ、捜査機関に事件が発覚した場合、捜査が開始されることになります。
捜査を行う上で、被疑者の身柄確保の必要性ありと判断されれば、逮捕の可能性もあります。
兵庫県青少年愛護条例違反事件を起こし、事件が捜査機関に発覚して対応にお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
チケット詐欺で被害届が提出されたら
チケット詐欺で被害届が提出された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県たつの警察署は、人気アイドルグループXのコンサートチケット代名目で現金を騙し取ったとして、県外に住むAさんを詐欺容疑で逮捕しました。
Aさんは、Twitterで「Xのコンサートチケット売ります」などと投稿し、被害者Vさんに現金5万円を振り込ませ、だまし取ったとされています。
チケットが届かず、VさんがAさんに連絡しようとしたところ、AさんのTwitterのアカウントが削除され連絡がとれなくなったことから、兵庫県たつの警察署に相談し、被害届を提出したようです。
(フィクションです)
チケット詐欺によるトラブルが後を絶ちません。
人気のアイドルや歌手ともなると、コンサートチケットを手に入れるだけでも一苦労です。
コンサートに行きたいと願うファンの気持ちを利用する悪徳なチケット詐欺は、もちろん犯罪です。
チケット詐欺の多くの場合、刑法の詐欺罪に該当します。
詐欺罪とは
ある犯罪が成立するためには、法律に定められる犯罪類型に該当し、違法であり、かつ有責でなければなりません。
どのような行為が処罰の対象となるかは、あらかじめ法律に規定されています。
法律によって定義された犯罪行為の類型を「構成要件」といいます。
ある犯罪が成立するか否かを判断する際には、まず、この構成要件を満たしているか否かを検討することになります。
詐欺罪については、刑法246条が以下のように定義しています。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
つまり、詐欺罪の構成要件は、
(1項)①人を欺いて
②財物を
③交付させたこと
(2項)①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
となります。
まずは、1項の詐欺についてですが、これは「人を欺いて財物を交付させる」ことにより成立するものです。
つまり、(a)人を欺く行為、(b)それに基づき相手方が錯誤に陥り、(c)その錯誤によって相手方が処分行為をし、(d)それによって財物の占有が移転し、(e)財産的損害が生ずる、といった一連の流れがなければならず、これらの行為が客観的に相当因果関係にあることが必要です。
(a)欺く行為(欺罔)
欺く行為は、「一般人をして財物や財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせる」ことです。
「人を欺く行為」であるので、機械に対して虚偽の情報を入力しても本罪の欺く行為にはあたりません。
また、詐欺罪における欺く行為(欺罔)が認められるのは、「財物交付や財産上の利益移転に向けられた」欺罔行為をした場合であることに注意が必要です。
つまり、財物の交付や財産上の利益の移転に関する判断の基礎となる重要な事項について偽ることが必要で、単に、嘘をついただけでは欺罔には当たらず、詐欺罪が成立しないことになります。
(b)錯誤
(a)の欺く行為によって、被害者が実際に錯誤に陥ったことが必要です。
錯誤とは、真実と観念との不一致のことをいいます。
それは、財産的処分行為をするように動機付けられるものであればよく、法律行為の要素の錯誤であると、動機の錯誤であるとを問いません。
(c)処分行為
被害者が錯誤に陥ったことによって、被害者が財物を処分することが必要です。
財産の処分とは、1項詐欺の場合、「財物を交付させる」ことです。
つまり、欺かれた者の瑕疵ある意思に基づく交付により、財物が犯人または犯人に関係する第三者に移転することです。
処分行為は、処分の意思と処分の事実が必要となります。
(d)財物の移転
財物の移転とは、(c)処分行為によって、被害者の財物の占有が移転したことをいいます。
(e)財産的損害
財産が移転した結果、被害者に何らかの財産的損害が生じていることが必要です。
1項詐欺については、欺かれなければ交付しなかったであろう財物を交付していれば、財産的損害が発生しているものと解されます。
次に、2項詐欺に関して、「人を欺いて財産上不法の利益を得ること」が構成要件となります。
「財産上不法の利益を得る」とは、欺く行為に基づく錯誤の結果、行われた財産的処分行為によって行為者または一定の第三者が不法に財産上の利益を取得することをいいます。
債務免除、弁済の猶予、役務の提供などが含まれます。
加えて、詐欺罪の成立には、故意が必要です。
人を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤に基づく財産的処分行為により、財物を交付させ、自己または第三者がその占有を取得すること、あるいは、財産上不法の利益を得または他人に得させることの認識がなければなりません。
チケット詐欺の場合、はじめから手元にチケットがないのに、嘘のチケットの販売を持ち掛け、その嘘を信じた被害者がチケット代を支払ってしまったのであれば、詐欺罪が成立するでしょう。
このような場合、被害者から被害届が提出されることで、事件が警察などの捜査機関に発覚します。
被害届の提出を端緒として、警察は捜査を開始します。
捜査を行う上で、犯人の身柄確保が必要と判断されれば、警察は裁判官に逮捕状を請求し、許可が出れば犯人を逮捕します。
チケット詐欺事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
特殊詐欺事件で接見禁止解除に成功
特殊詐欺事件における接見禁止解除について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大学生のAくん(20歳)は、特殊詐欺の受け子として犯罪に関与したとして、兵庫県川西警察署に詐欺の疑いで逮捕されました。
警察から逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、すぐにAくんとの面会を希望しましたが、警察官からは「勾留がつくまでは会えない。」と言われました。
翌日の夜に、警察官から勾留の連絡がきましたが、接見禁止が付いていて親でも面会できないと言われ、Aくんの両親は驚きました。
そこで、何とか面会することができないかと思い、刑事事件に強い弁護士に相談しに行くことにしました。
(フィクションです)
接見禁止とは?
逮捕から勾留の間は、原則ご家族の方であっても、逮捕された方と面会することはできません。
勾留が決定すると、ご家族の方も面会することができます。
おおむね、平日の9時から17時までの間に15~20分ほど面会室でアクリル板越しに逮捕されたご家族と会うことができます。
ただし、面会は一日に一組限定で、時間も制限されている上に、立会いの警察官が同席することになります。
そうであっても、ご家族のことが心配ですので、限られた時間であっても直接会いたいと留置場所まで赴かれる方が多くいらっしゃいます。
さて、さきほど、勾留となればご家族との面会が可能だといいましたが、そうでない場合もあることに留意が必要です。
勾留後に「接見禁止」決定がなされると、ご家族の方は被疑者と面会することができないことがあります。
これは、勾留されている者が成人か少年かによって異なります。
成人の場合、弁護人、刑事収容施設視察委員、外国籍の場合にはその国の国籍国の外交官以外との接見や文書の授受が禁止されます。
他方、少年の場合には、上の接見可能な者に加えて、多くの場合、両親との接見が接見禁止対象から外れていることがあります。
この接見禁止が付される理由は、大きく分けて3つあります。
①住所不定であったり、重大な犯罪を犯した者であるなど、逃亡するおそれがある。
②被疑者が容疑を否認しており、証拠隠滅や共犯者などとの口裏合わせの可能性がある。
③組織犯罪の場合も、証拠隠滅や口裏合わせをするおそれがある。
組織的な詐欺事件であると疑われる場合には、接見禁止となるケースがほとんどです。
先述のように、接見禁止が付されている場合であっても、被疑者・被告人の弁護人または弁護人になろうとする者として、弁護士との接見は可能です。
被疑者は、外部との接触が断たれ、連日の取調べにより、身体的にも精神的にも大変な負担を感じられることでしょう。
そのような中で、弁護士との接見により、ご家族への伝言やご家族からの伝言を伝えることができ、また取調べ対応についてアドバイスを受けることができます。
また、弁護士は、接見禁止解除に向けた活動も行います。
接見禁止が付された場合の活動
接見禁止を解除し、ご家族との面会を可能にするため、弁護人は、次のような活動を行います。
(1)準抗告・抗告
裁判所に対して、接見等禁止決定の取消または変更を請求します。
準抗告・抗告が認められると、接見禁止が解除され、その後被疑者・被告人と家族が接見できるようになります。
(2)接見禁止処分の解除申立て
接見禁止処分について解除を申し立てる権利は、被疑者・被告人、弁護人に認められた権利ではなく、裁判官の職権発動を促す「お願い」になります。
一般人である配偶者・両親などの近親者については、罪証隠滅のおそれが低く、これらの近親者について一部解除を申し立てると、解除が認められることが多くなっています。
このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が、特殊詐欺事件で逮捕され、勾留後に接見禁止が付されており面会できずにお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。
薬物事件で強制採尿
薬物事件での強制採尿について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市中央区を警ら中の兵庫県生田警察署の警察官は、路上を歩いている男性が挙動不審な行動をとったため、男性に対する職務質問を開始しました。
薬物使用を疑った警察官は、男性に任意での尿検査を提案しましたが応じなかったため強制採尿したところ、覚せい剤の陽性反応が出たので、男性を逮捕しました。
逮捕された男性は、「強制採尿は違法だ。」と主張しています。
(フィクションです)
薬物事件における尿鑑定
薬物の使用事犯においては、被疑者の尿を採取し、採取した尿から薬物の反応が出るかどうかの鑑定をすることは、薬物事犯として起訴するためにも非常に重要な証拠となるため、必要不可欠な手続です。
しかしながら、被疑者の立場からすれば、尿鑑定の結果によって自分が逮捕、起訴されるおそれがあることから、進んで自分の尿を提出することを嫌がることも少なくありません。
薬物を使用したと疑われる者に対して、尿鑑定を行うために尿を採取する行為は、捜査の実行であり、証拠の収集であって、きちんと法律に基づいたやり方で行われなければなりません。
捜査は、任意捜査と強制捜査に分けられます。
任意捜査というのは、任意処分による捜査のことです。
法律は、捜査は、できるだけ任意捜査によるべきとし、強制処分による捜査(強制捜査)は特別の必要がある場合にのみ許されるとの考えにあります。
ですので、薬物の使用事犯についても、可能であれば被疑者の同意の下に尿を採取し鑑定にかけるべきです。
強制採尿について
上のケースのように、薬物の使用が疑われている場合に、被疑者が尿の採取を拒否する場合が少なくありません。
そのような場合、強制処分として「強制採尿」が行われることがあります。
強制採尿とは、尿道にカテーテルを挿入して強制的に尿を採取する捜査手法のことをいいます。
強制採尿は強制処分ですので、事前に令状を得ることが前提となります。
過去の裁判例(最決昭55・10・23)が、捜索差押許可状によって行うことができると判断して以来、実務に置いてはこの決定に従った運用がされています。
この判例によれば、「被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解する」としています。
つまり、判例は、強制採尿について、
①犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に、
②最終的手段として、
③適切な法律上の手続を経て、
④被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な考慮が施される限り
許される、との立場を採るものと言えるでしょう。
また、強制採尿の手続について、判例は、「右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである」としていますが、「右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。」としています。
強制採尿に求められる要件を欠くような方法で行われた場合には、違法な捜査であることを主張していく必要があります。
強制採尿を行うに当たっては、職務質問で薬物使用が疑われ、被疑者の同意の下、最寄りの場所まで連行し、そこで尿を採取するという流れではなく、上のケースのように、尿採取を拒否したため強制採尿を行う必要が生じる場合もあります。
そのような場合、警察官は令状請求のために関係書類を作成し裁判所に提出するなど法律に従って様々な手続きを踏む必要があり、実際に令状を手にするまで時間がかかります。
そうすると、職務質問をした場所に被疑者を長時間留めておくことになりやすく、留めておくための手段も強度なものになりやすいので、違法性が問題となることがあります。
以上の様に、強制採尿を実施するにあたっては様々な要件を満たしていることが必要となります。
それらの要件を満たしていない、つまり違法だと主張する場合、単にその旨を主張するだけでは捜査機関や裁判所を納得させることはできません。
きちんと客観的な証拠に基づいて主張を展開する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
薬物事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
あおり運転に対する罰則強化
あおり運転に対する罰則強化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町の高速道路を走行していたVさんは、後方車両に車間距離を極端に詰められていたため、左車線に車線変更しました。
しかし、後方車両もすぐさま車線変更しVさんの車の後ろにつけ、再び車間距離を極端に詰めてきました。
あおり運転だと思ったVさんは、危険を感じ、途中のサービスエリアで降り、警察に通報しました。
Vさんから報告を受けた兵庫県高速道路交通警察隊は、あおり運転をしたと思われる車を発見し、運転手のAさんから事情を聞いています。
(フィクションです)
あおり運転が原因で痛ましい事故が発生するケースが増えたことをうけ、あおり運転に対する罰則強化の動きが強まりました。
そして、今月には、あおり運転に懲役刑を科す道路交通法改正案が閣議決定されました。
早ければ今年の夏までに施行される見通しだということです。
現行法におけるあおり運転に対する罰則
現行法は、「あおり運転」の定義を定めていませんが、あおり運転は、一般に、道路を走行する自動車等に対して、周囲の運転手が嫌がらせ等の目的で運転中に煽ることにより、道路における交通の危険を生じさせる行為のことをいいます。
現在、道路交通法は、急ブレーキや車間距離を極端に詰める行為、幅寄せなどの行為を禁止しており、違反者に対しては、反則金の他に、罰則も設けています。
以下、あおり運転に該当する主な違反について説明します。
1.車間距離保持義務違反
あおり運転の典型は、他車との車間距離を極端に詰めるものです。
このような行為は、道路交通法上の車間距離保持義務違反となります。
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
自分の車と前を走行している車との間は、万が一前の車が急に停止した場合であっても、その車に衝突することがないよう、しっかり空けておかなければなりません。
しかし、前を走る車との距離を極端に詰めて煽る運転は、この義務に違反することになります。
車間距離保持義務違反の罰則は、高速自動車道上の違反については3月以下の懲役または5万円以下の罰金、一般道では5万円以下の罰金です。
2.進路変更禁止違反
急に車線変更などして、後ろから進行してくる車が急ブレーキや急ハンドルで避けなければならないようにするあおり運転は、進路変更禁止違反となります。
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない
道路交通法第26条の2第2項の進路変更禁止違反の罰則は、5万円以下の罰金です。
3.急ブレーキ禁止違反
危険防止を理由としない、不必要な急ブレーキをかけるあおり運転は、道路交通法上の急ブレーキ禁止違反に当たります。
第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
急ブレーキ禁止違反の罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
道路交通法改正案におけるあおり運転に対する罰則
今月閣議決定された道路交通法改正案は、あおり運転を妨害運転罪として新たに定めます。
同案には、他車の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で、通行区分違反、急ブレーキ禁止違反、車間距離保持義務違反、進路変更禁止違反、安全運転義務違反等の一定の違反行為をした場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とする内容が盛り込まれています。
また、妨害運転により、高速自動車道等において他車を停止させるなどして道路における著しい交通の危険を生じさせ場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される旨も規定されています。
以上の様に、あおり運転に対する罰則が強化された場合、逮捕・勾留で身体拘束が長期化する可能性や、略式手続ではなく公式裁判が請求される可能性も高くなるでしょう。
あおり運転や交通事件で対応にお困りの方は、交通事件も取り扱う刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
痴漢事件で勾留に対する準抗告認容で釈放
痴漢事件で勾留に対する準抗告認容で釈放される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
酒に酔った会社員のAさんは、兵庫県加古郡播磨町の路上で、女性のお尻を服の上から触るなどし、通報を受けて駆け付けた兵庫県加古川警察署に逮捕されました。
警察署に連行されたAさんは、酔いが冷め、真摯に反省しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、すぐに釈放されるのか不安でたまりません。
(フィクションです)
痴漢事件で逮捕された場合の流れ
痴漢事件で逮捕された場合、通常の刑事事件と同じ流れとなります。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、または証拠物や関係書類と共に被疑者の身柄を検察庁に送致します。
被疑者の身柄を受けた検察庁は、身柄を受けてから24時間以内に、担当検察官が被疑者の取調べを行った上で、被疑者を釈放するか、それとも当該被疑者に関して勾留請求を行います。
検察官が勾留請求をした場合、今度は被疑者の身柄は裁判所に移り、裁判官と面談します。
その後、裁判官は当該被疑者を勾留するか否かを判断します。
勾留となれば、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間の身体拘束となります。
兵庫県では、通常、警察から検察庁に送致された日に、勾留まで決定してしまいます。
つまり、たった一日で勾留が付くかどうかが決まってしまうのです。
勾留となれば、長期間身柄が拘束されることになり、その間学校や会社には行くことができません。
ですので、事件が学校・会社に発覚し、退学や懲戒解雇となる可能性が高くなってしまいます。
痴漢事件で逮捕された場合の身柄解放活動
長期間の身体拘束を回避するため、弁護士は以下のような身柄解放活動を行います。
(1)勾留決定前
勾留が決定する前の段階においては、検察官や裁判官に対して、勾留をしないよう働きかけます。
具体的には、警察から検察庁に被疑者の身柄が送致された段階で、担当検察官に対して、勾留の要件を充たさないことを主張し、当該被疑者について勾留請求を行わないよう、意見書を提出するなどして働きかけます。
検察官が勾留請求した場合には、今度は勾留状を発付する裁判官に対して、被疑者に対して勾留しないよう意見書を出します。
これらの働きかけは、あくまでお願いという形ですが、検察官や裁判官が把握していない被疑者に有利な事情などを提示することで、勾留の要件を充たさないとして検察官が勾留請求をしない、若しくは裁判官が検察官の勾留請求を却下する可能性も十分あります。
(2)勾留決定後
勾留が決定してしまった後でも、勾留という裁判に対する不服申し立てを行うことができます。
これを勾留に対する「準抗告」といいます。
準抗告は、身柄拘束や接見に関する処分、証人や通訳人の費用負担など裁判官による裁判(決定)に対する不服申立手続で、法律で被疑者や弁護人に認められているものです。
勾留は、1人の裁判官によってなされますが、準抗告についての判断については、勾留決定をしていない3人の裁判官によってなされます。
準抗告を申し立てる場合も、勾留の要件を充たさないことを主張する必要があります。
・罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
・定まった住居を有しないこと。
・罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること。
・逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること。
加えて、上のような理由がある場合でも、被疑者を勾留する利益と、これにより被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留する必要があることが求められます。
容疑を認めている場合には、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことに加え、勾留することにより被る被疑者の不利益が著しいことから、勾留の要件を充たしていないと主張することになります。
例えば、被疑者と被害者の接点がなく、被疑者が被害者に供述を変えるよう迫る可能性がないこと、家族の監視が期待でき、家族も仕事もあるので逃亡する可能性はないこと、勾留されることで仕事を失い、家族の生活に支障をきたすおそれがあることなどを述べます。
勾留に対する準抗告が認容されれば、被疑者は釈放されます。
釈放される時期が早ければ早いほど、早期に社会復帰することができ、退学や懲戒解雇といった不利益を回避する可能性を高めることができます。
ご家族が痴漢事件で逮捕され、早期釈放とならないか心配されているのであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。