Archive for the ‘刑事事件’ Category
建造物侵入事件での身柄解放
建造物侵入事件での身柄解放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県加古郡稲美町にある学校に、深夜不法に侵入したとして、県内に住むAさんが建造物侵入の容疑で兵庫県加古川警察署に逮捕されました。
Aさんは容疑を認めていますが、何とか早期釈放とならないかと心配しています。
(フィクションです)
建造物侵入罪について
建造物侵入罪は、刑法第130条に規定されています。
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪は、
①正当な理由がないのに、
②人の看守する建造物に
③侵入する
ことにより成立する犯罪です。
①正当な理由がないのに
「正当な理由がないのに」とは、違法にという意味です。
判例によれば、正当な理由のある侵入というのは、法令のより捜索等のため看守者の意に反して立ち入る場合のようなことをいい、看守者の意に反してまで建造物に立ち入ることを正当視するためには極めて強い理由が存在しなければならない、としています。(東京高判昭27・4・24)
②人の看守する建造物
「人の看守する」というのは、人が事実上管理・支配していることをいいます。(最判昭59・12・18)
「建造物」とは、住居、邸宅以外の建造物およびこれに付随する囲繞地をいいます。
人の起臥寝食に使用される場所を「住居」、人の住居の用に供せられる家屋に付属し、主として住居者の利用に供されるために区画された場所を「邸宅」といいます。
③侵入
「侵入」の意義についての学説には、意思侵害説と平穏侵害説とが主張されています。
前者は、住居者・看守者の意思に反する立ち入りを「侵入」とする立場で、後者は、住居等の事実上の平穏を侵害する態様での立ち入りを「侵入」とするものです。
判例は、意思侵害説に立っています。
この立場にたてば、許諾権者、つまり、管理権者の立入りについての許諾の有無によって建造物侵入罪が成立するか否かが決まることになりますが、この許諾権を誰が有するのかが問題となります。
建造物については、看守者が許諾権者となります。
看守者は、門衛や守衛とは異なり、建物について管理権限を有する者のことを指します。
立入りの許諾が欺罔などによる錯誤に基づいて与えられた場合、その許諾が有効なものと認められるかも問題となります。
判例は、許諾が錯誤に基づくものであれば、建造物侵入罪が成立するものとしています。
特に、一般に立ち入りが禁止されている場所へ、違法目的で立ち入ったケースにおいては、違法な目的を隠していたことから、侵入罪の成立を肯定した判例が多くなっています。
建造物侵入で逮捕されたら
建造物侵入事件で逮捕されると、逮捕から48時間以内に事件の証拠や書類とともに被疑者の身柄を検察に送致するか、それとも被疑者を釈放するかが決められます。
検察に送致された場合、検察は、身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、あるいは裁判所に勾留請求をするかを決めます。
検察が勾留請求すると、今度は裁判官が被疑者を勾留すべきか否かの判断を行います。
裁判官が勾留を決定した場合、検察官が勾留請求をした日から、原則10日間、延長が認められれば最大で20日間の身体拘束を強いられることとなります。
そのような長期間身体を拘束されることとなれば、当然会社や学校に行くことはできませんので、退学や懲戒解雇となる可能性が生じます。
そのような事態を回避するためにも、逮捕されたら早期に身柄解放活動に着手することが重要です。
逮捕から勾留が決定するまでの限られた時間内に、勾留阻止を目指した活動を行わなければなりません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
数多くの身柄解放にも成功した実績があります。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
介護殺人事件で執行猶予
介護殺人事件で執行猶予を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
「近所から異臭がする。」と通報を受けた兵庫県福崎警察署は、兵庫県神崎郡神河町にある民家に駆け付けました。
民家の部屋には練炭が置かれており、一酸化炭素が充満していました。
そこに、親子とみられる高齢女性と男性が倒れていました。
救急搬送され、男性は一命を取り留めましたが、高齢女性は既に死亡しており、死因は首を絞められたことによる窒息死であることが分かりました。
男性に事情を聴いたところ、「介護をしていた母が、死にたいと口にしたので、一緒に死のうと思った。」と供述しています。
接見に訪れた弁護士は、Aさんに、今後の手続の流れについて説明しており、執行猶予の可能性についても話をしています。
(フィクションです)
執行猶予について
「執行猶予」とは、裁判で有罪が言い渡された場合、一定の要件のもとに様々な情状を考慮し、その刑の執行を一定期間猶予し、その猶予期間中何事もなく無事に経過すれば、刑の言渡しの効力を失わせるという制度のことです。
有罪となっても、実際に刑罰を受けることはないため、執行猶予が付いているのと付いていないのとでは、裁判後の生活は全く異なります。
執行猶予には、全部執行猶予と一部執行猶予とがありますが、今回は前者について説明します。
当たり前ですが、どんな事件でも執行猶予を付けることができるわけではありません。
執行猶予を付けることができるのは、様々な要件を充たしていなければなりません。
◇執行猶予の要件◇
執行猶予については、刑法第25条に規定されています。
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
執行猶予の要件は、
(1)①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、あるいは、
②前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処させらことがない者、であり、
(2)3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合で、
(3)執行猶予を相当とするにたりる情状があること
です。
(1)の「前に禁固以上の刑に処せられたことがない」とは、これまでに死刑・懲役・禁錮の刑に処する確定判決を受けたことを意味します。
罰金・拘留・科料の前科が何回あっても関係ありません。
(2)の要件について、拘留・科料を言い渡す場合には、その執行を猶予することはできません。
そして、(3)の情状に関しては、犯行方法や犯行態様が悪質ではないこと、犯罪の結果が軽微であること、動機に酌むべき事情があること、被告人に反省が見られること、被害者への被害弁償が済んでいること又は被害者の許しを得ていること、などが量刑の際に考慮される要素です。
また、前に禁固以上の刑の処せられたことがあっても、その執行を猶予された者に、1年以下の懲役・禁錮の言渡しをする場合、「情状に特に酌量すべきものがある」ときは、同様に全部執行猶予となる可能性があります。
これを「再度の執行猶予」といいます。
さて、上記ケースについて検討してみましょう。
まず、Aさんが行った行為に対して、如何なる罪が成立するでしょうか。
Aさんは、母親の介護をしていたようで、その母親が死にたがっていたので、自分も死ぬつもりで母親を殺害した後に、練炭自殺を行ったようです。
母親が既に死を心に決め、自分を殺すようAさんに頼んだのであれば、「同意殺人」罪が成立する可能性があります。
しかし、同意殺人が成立するためには、被殺者が殺人の意味を理解し、死について自由な意思決定能力を有する者であることが必要です。
また、被殺者である人からその殺害を依頼されてこれに応じる、もしくは、被殺者である人から殺害されることについての同意を得た上で殺す行為が対象となりますが、この嘱託・承諾は被殺者本人の意思によるものであることが必要であり、通常の弁識能力を有する者の自由かつ真意に基づいてなされていなければなりません。
ですので、欺罔や威迫に基づく嘱託・承諾は無効となり、この場合は殺人罪を構成することになります。
また、被殺者が自殺意思を有していただけにすぎない場合、行為者と被殺者との間に嘱託・承諾の関係がないため、同意殺人ではなく殺人罪が成立することになります。
Aさんに対して、同意殺人罪が成立する場合、刑罰は6月以上7年以下の懲役・禁錮の範囲で決められます。
法定刑の下限が6月であるので、執行猶予の要件である、「3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合」にも該当する余地があります。
一方、殺人罪が成立する場合、その法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役ですので、「3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合」には該当しないことになります。
しかしながら、事件の内容によっては、刑の減軽により執行猶予となったケースもあります。
執行猶予となる可能性があるか否かについては、事件の内容にもよりますので、刑事事件を起こしお困りの方は、一度刑事事件に精通する弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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ゴミの不法投棄で刑事事件
ゴミの不法投棄で刑事事件へと発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
自宅にため込んだ家庭ごみを兵庫県たつの市内の空き地に複数回捨てたとして、兵庫県たつの警察署は、市内に住むAさんに出頭を求めました。
Aさんは、出頭予定日前に、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
ゴミの不法投棄が犯罪になる場合とは
「ゴミを無断で捨てたぐらい、大したことない」と軽く考えていませんか?
ゴミの不法投棄が犯罪となり刑事事件へと発展するケースについてみてきましょう。
廃棄物処理法について
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃棄物処理法」といいます。)は、廃棄物の排出を抑え、発生した廃棄物はリサイクルする等の適正な処理をすることで、生活環境と公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律です。
廃棄物処理法において「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の姿態その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」と定義されています。(廃棄物処理法2条1項)
つまり、「汚物又は不要物」が「廃棄物」ということになりますが、「不要物」については、「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではない」と環境省は解釈しています。
ここでいう「占有者の意思」というのは、その物の性状、保管および排出の状況、取引価値の有無など客観的な諸事実から社会通念上合理的に推認できる占有者の意思のことをいいます。
例えば、古タイヤがある場所に積まれていたとしましょう。
それらのタイヤが再生タイヤ、土止め材料・燃料などに利用することを内容とする履行期限が確定した具体的な契約が結ばれているような場合には、有用物といえ、廃棄物には当たらないでしょう。
廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。
産業廃棄物は、事情活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類のほか政令で定める廃棄物及び輸入された廃棄物です。
一般廃棄物は、産業廃棄物に当たらない廃棄物をいいます。
さて、上記ケースにおいては、Aさんは家庭ごみを空き地に捨てていましたが、家庭ごみは一般廃棄物の家庭廃棄物であり、廃棄物処理法における「廃棄物」に該当します。
廃棄物の不法投棄
廃棄物処理法は、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」と定めています。(廃棄物処理法第16条)
ここでいう「捨てる」とは、地上に投棄する行為のみならず、海中に投棄する行為や地中に埋める行為など、最終処分する行為のことをいい、廃棄物を最終的に占有者の手から離して自然に還元することを意味します。
「捨てる」行為は、廃棄物をある場所に置いた時点では不要でなくとも、その後、不要物として取りに行かずそのまま放置するといった不作為によっても該当することもあります。
個人が廃棄物処分場として決められていない場所に廃棄物を捨てたといった場合の不法投棄に関して、違反者に対して、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科という刑罰が設けられています。
廃棄物処理法違反事件で、警察などの捜査機関から取調べを受け、その対応にお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)事件で逮捕
覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、海外から帰国するにあたり、覚せい剤約1㎏を引越荷物内に隠匿して密輸入しようと企てたが、神戸税関が実施した引越荷物の別送品検査において覚せい剤を発見しました。
神戸税関は、兵庫県警察と共同調査を実施し、神戸地方検察庁に告発しました。
Aさんは、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の容疑で逮捕されました。
調べに対してAさんは、「友人から日本の知人に渡してほしいと頼まれただけで、中身が覚せい剤だとは知らなかった。」と容疑を否認しています。
(フィクションです)
覚せい剤取締法違反:営利目的輸入
覚せい剤取締法は、覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用について必要な取締を行うことを目的に、昭和27年7月30日に施行されました。
覚せい剤取締法の規制対象となる「覚せい剤」は、
①フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン及び各その塩類
②①に掲げる物と同種の覚醒作用を有する物であって政令で指定するもの
③①及び②のいずれかを含有する物
です。
第十三条 何人も、覚せい剤を輸入し、又は輸出してはならない。
第四十一条 覚せい剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第四十一条の五第一項第二号に該当する者を除く。)は、一年以上の有期懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
覚せい剤取締法は、覚醒剤の輸入を絶対的に禁止しています。
覚せい剤をみだりに輸入した者については、これを1年以上の有期懲役に処し、営利目的で輸入した場合は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により1000万円以下の罰金を併科することとされています。
覚せい剤取締法第41条は、覚せい剤をみだりに本邦に輸入する行為を処罰することとしており、覚せい剤輸入罪が成立するためには、「覚せい剤を輸入する行為」がなければなりません。
「輸入」とは、「国外から我が国へ物品を搬入すること」と理解されます。
どの段階に至った時に我が国内に搬入されたと理解するのかが問題となります。
陸路による密輸入については、「国境線を踰越して我が国内へ搬入した時点」と解する見解が有力です。
海路・空路については、船舶から覚せい剤を我が国領土内へ陸揚げした時点又は航空機の場合は機内から地上へ持ち出された時点で既遂に達するとする見解が、通説・判例の立場となっています。
覚せい剤を密輸入した場合、覚せい剤は関税法で輸入を禁止される貨物に当たり、関税法違反(禁制品輸入罪)が成立することとなります。
覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の禁制品輸入罪の罪数関係については、両者は観念的競合の関係(1個の行為が2つ以上の罪名に触れる場合)に立つと判例・実務上ともに解されています。
観念的競合の処罰については、その最も重い刑によって処断されます。
さて、Aさんのように「覚せい剤だとは知らなかった。」と弁解している場合、覚せい剤の輸入罪は成立しないのでしょうか。
覚せい剤の輸入罪は、覚せい剤であることを知りつつそれを我が国内に搬入することによって成立します。
そのため、覚せい剤の認識に欠ける場合、輸入罪は成立しません。
しかし、認識の程度については、「被告人は本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤であるかもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物であるかもしれないとの認識はあったことに帰する。そうすると覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない」とした判決(最決平2・2・9)があるため、状況証拠から被告人が覚せい剤もしくは体に有害な薬物「かもしれない」と思っていたと判断された場合、覚せい剤輸入罪が成立することになります。
覚せい剤取締法違反事件では、逮捕後、勾留される可能性が非常に高いと言えるでしょう。
また、組織犯罪が疑われた場合には、勾留と同時に接見禁止に付されることも多く、家族であっても被疑者・被告人と接見することができない可能性もあります。
そのような場合でも、弁護士であれば、いつでも接見することができます。
ご家族が覚せい剤取締法違反事件で逮捕されてお困りの方は、今すぐ刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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暴行罪で刑事事件の被疑者になったら
暴行罪で刑事事件の被疑者となった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡新温泉町の居酒屋に訪れていたAさんは、会計時に請求額に納得がいかず店長と口論になりました。
店長が挑発的な言葉を発してきたことに苛立ったAさんは、前のめりになっていた店長の頭を手で押し返しました。
店長は、「暴力はあかんやろう、警察呼ぶわ。」と言って、兵庫県美方警察署に通報したところ、同署から警察官が現場にやってきました。
(フィクションです)
暴行罪とは
暴行罪は、刑法第208条に規定される罪です。
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
上に規定されているように、暴行を人に加え、その人が傷害しなかった場合に成立する犯罪です。
◇暴行の意義◇
「暴行」は、様々な犯罪の構成要件的要素となっていますが、その意義については、犯罪の保護法益や罪質によって異なります。
いずれの犯罪についても共通する点は、「暴行」は「他人の身体に対する有形力の行使」です。
「暴行」の意義については、大きく4つに分けられます。
①最広義の暴行
不法な有形力の行使のずべてで、その対象は人でも物でも構いません。
例)騒乱罪、多衆不解散罪、内乱罪の暴動
②広義の暴行
人に対する不法な有形力の行使ですが、必ずしも人に直接加えられることは必要ではなく、物に対して加えられた有形力であっても、それが人の身体に物理的に強い影響を与えるものであれば足ります。
例)公務執行妨害罪、職務強要罪、加重逃走罪、逃走援助罪、特別公務員暴行陵虐罪、強要罪
③狭義の暴行
不法な有形力の行使が人の身体に対して加えられる場合です。
例)暴行罪
④最狭義の暴行
人に対して、かつ、その反抗を抑圧するに足りる程度の強度の不法な有形力の行使をする場合をいいます。
例)強盗罪、事後強盗罪、強制性交等罪
暴行罪における「暴行」は、人に対する不法な有形力の行使を意味します。
判例においては、暴行は穏やかに捉えられており、人の身体に対する不法な一切の攻撃方法を含み、性質上傷害の結果を惹起すべきものであることまで求められません。
例えば、大太鼓などを連打して意識朦朧とした気分を与え、又は脳貧血を起こさせ、息詰まる程度にさせたことも「暴行」であるとし、塩を振りかける行為についても、相手がこれを受忍すべき理由はなく、不快嫌悪の情を催させるに足りるものであるため「暴行」にあたるとした裁判例があります。
また、物理的に人の身体に接触することは不要で、驚かす目的で人の数歩手前を狙って石を投げる行為、狭い四畳半の部屋で在室中の被害者を驚かすために日本刀の見ぬ気を振り回す行為、高速道路上で並走中の車に嫌がらせをするために幅寄せをする行為も「暴行」にあたるとされます。
◇故意◇
暴行罪が成立するためには、犯罪を犯す意思をもって人に暴行を加えたことが必要となります。
つまり、「人の身体に対して有形力を行使することの認識」が必要となります。
これは、未必的な認識でも構いません。
相手を傷害してやろうと思って暴行を加えたけれども、傷害の結果が発生しなかった場合も、暴行の故意があったとみなされます。
暴行罪で刑事事件の被疑者となったら
あなたが相手方に暴行を加え、警察に事件が発覚すれば、あなたは暴行事件の被疑者として捜査の対象となります。
暴行事件の場合、逮捕や勾留といった身体拘束を受ける可能性はそう高くはないでしょう。
ですので、ほとんどの場合、在宅事件として、何度か警察署に出頭し、取調べを受けることになります。
容疑を認めている場合には、すぐに被害者への謝罪・被害弁償を行い、示談交渉を進めることが重要です。
被害者との示談交渉は、通常、弁護士を介して行います。
元々の知り合いだった場合を除けば、相手方の連絡先を知るためには捜査機関を通じて取得するしかありません。
しかし、罪証隠滅のおそれなどから捜査機関が被害者の連絡先を教えない場合もありますし、被害者が連絡先を教えることを拒絶されることもあります。
仮に元々の知り合いで連絡先を知っている場合であっても、当事者が直接やり取りすることで、話し合いが感情的になり交渉が決裂するケースも少なくありません。
そのような事態を避けるためにも、第三者である弁護士を介して示談交渉に着手するのがよいでしょう。
弁護士であれば、法律的な知識や交渉の経験に長けており、被害者に対して加害者からの謝罪および被害弁償の意思があることを伝え、示談についてもメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、被害者加害者の両者が納得のいく内容で示談が成立するよう粘り強く交渉することが期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
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自転車事故でのひき逃げ
自転車事故を起こしひき逃げした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
夜、勤務先から自転車で帰宅していたAさんは、前方不注意で前を歩いていた歩行者に気づかずぶつかってしまいました。
歩行者は転倒していましたが、Aさんは声をかけることなくその場を立ち去りました。
翌日、自転車で会社に向かっていると、昨日歩行者とぶつかった場所に、自転車と歩行者の事故についての目撃情報を募る立て看板が設置されていることに気がつきました。
Aさんは、兵庫県兵庫警察署に出頭することを考えていますが、その前に交通事故を含む刑事事件に精通する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
自転車での交通事故
自転車を運転し人身事故を起こしてしまった場合には、過失傷害罪、過失致死罪もしくは重過失致死傷罪に問われる可能性があります。
(過失傷害)
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死)
第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
1.過失傷害罪
過失傷害罪は、「過失」により人を傷害した場合に成立する罪です。
暴行や傷害の故意がなく、不注意によって人に傷を負わせてしまうものです。
自転車事故の原因が、ちょっとしたよそ見などの場合は、過失傷害罪となるでしょう。
2.過失致死罪
過失致死罪は、過失によって人を死亡させた場合に成立する罪です。
上の過失傷害のように、不注意によって人を死亡させてしまうものです。
3.重過失致死傷罪
「重大な過失」により人に怪我を負わせたり死なせてしまった場合に成立する罪です。
こちらも、暴行や傷害の故意はなく、「重大な過失」の結果、人に傷を負わせたり死亡させて
しまう犯罪です。
「重大な過失」とは、注意義務違反の程度が著しい場合をいいます。
発生した結果の重大性、結果発生の可能性が大であったことは必ずしも必要ではありません。
自転車事故では、
・携帯電話で通話しながらの運転
・スマートフォンを操作しながらの運転
・イヤフォンをつけて音楽を聴きながらの運転
・ものすごいスピードで歩道を走っていた場合
・夜間に無点灯で走っていた場合
などが、重過失致死傷罪に問われる可能性が高いと言えます。
自転車事故のひき逃げ
さて、自転車で人身事故を起こしたにもかかわらず、その場を立ち去った場合にも、自動車の場合と同様に、犯罪が成立するのでしょうか。
成立します。
道路交通法上の救護義務は、自動車を運転したいる場合だけでなく、自転車を運転し人身事故を起こした場合にも、その運転手等に課されるものです。
第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
条文は、救護義務を当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員に課していますが、「車両等」には自転車などの軽車両も含まれます。
ですので、自転車であっても救護義務に違反した場合には、道路交通法違反となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金となる可能性があります。
ひき逃げ事件は、実際に現場から逃亡していますので、逃亡のおそれがあると判断され、身が拘束される可能性があります。
自転車事故やひき逃げ事件で対応にお困りの方は、交通事件も取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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ネット上の投稿で信用棄損に
ネット上の投稿で信用棄損となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、兵庫県伊丹市にあるエステ店のサービスが粗悪であるとネットの掲示板に投稿したとして、兵庫県伊丹警察署において信用棄損の疑いで取り調べを受けました。
Aさんは、被害を受けたエステ店に半年前まで通っていましたが、料金の支払いについて店側とトラブルになっていました。
その腹いせに、あることないことをネットの掲示板に投稿していたということです。
警察署での取調べを終えたAさんは、エステ店へのどのように対応すればよいのか分からず、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
信用棄損罪について
信用棄損罪は、①虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、②人の信用を棄損した場合に成立する犯罪です。
信用棄損罪は、経済的側面における人の社会的評価を保護するものです。
◇客体◇
信用棄損罪の客体は、「人の信用」です。
「人の信用」というのは、人の経済的信用のことを指し、人の支払能力や支払意思に対する社会的信頼だけでなく、販売される商品の品質に対する信用も含まれます。
◇行為◇
信用棄損罪の実行行為は、「虚偽の風説を流布」し、または「偽計」を用いて人の信用を「毀損」することです。
「虚偽の風説の流布」とは、少なくとも一部が客観的真実に反する噂や情報を不特定または多数の者に伝播させることをいいます。
直接に少人数に対して伝達した場合であっても、それらの者を介して多数人に伝搬するおそれがあるときも含まれます。
「偽計」とは、通説によれば、人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することをいいます。
そして、「毀損」の意義については、判例は、人の経済面における社会的信頼を低下させるおそれのある状態を作り出すことをいい、現実に信用を低下させたことは必要ではないとしています。(大判大2・1・27)
信用棄損事件を起こしてしまったら
信用棄損事件を起こしてしまったら、事件を穏便に解決するためにはどのように対応すればよいのでしょうか。
信用棄損事件のように被害者がいる事件では、被害者対応が重要です。
信用棄損罪は、親告罪ではありませんので、被害者からの告訴がなくとも公訴を提起することは可能です。
しかし、被害者との間で示談が成立しているか否かという点は、検察官が終局処分を決定するにおいて考慮される要素となります。
ですので、できるだけ早い段階から被害者との示談交渉に着手する必要があるのです。
被害者との示談交渉は、通常弁護士を介して行います。
なぜなら、捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えることは稀ですし、被害者は加害者に対して嫌悪や恐怖の感情を抱いていることが多く、加害者に被害者の連絡先を教えたくないと思われることがほとんどだからです。
仮に、加害者が既に被害者の連絡先を知っている場合であっても、直接加害者が被害者に連絡をとることはあまり得策ではないでしょう。
というのも、当事者間の直接の交渉は、感情論的になり交渉が難航する傾向にあるからです。
弁護士であれば、加害者の代理人として、被害者に対して、加害者の謝罪の意思を伝えた上で、示談のメリット・デメリットを丁寧に説明し、当事者の双方が納得できるような内容となるよう粘り強く交渉していくことが出来ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
所属する弁護士は、これまで数多くの刑事事件・少年事件を取り扱ってきており、被害者の方との示談交渉にも豊富な経験を有しています。
信用棄損事件を起こし、被害者対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律とは?
酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市中央区にある神社は、初詣に訪れる人たちで大変賑わっていました。
大学生のAくん(21歳)は、大晦日から友人たちと飲んでおり、神社に到着した時には大分酔った状態でした。
Aくんは、友人らと境内で騒ぎ立てており、「おいこら、道開けろや。」と周りの初詣客に暴言を吐き、初詣客らはAくんらから逃げるように神社を後にしました。
見かねた神社の関係者が近くの交番に通報し、兵庫県生田警察署に警察官が現場に駆け付けました。
Aくんらは、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律違反の容疑で現行犯逮捕されました。
(フィクションです)
酔っ払い防止法って?
「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」は、通称「酔っ払い防止法」と呼ばれており、酒に酔っている者の行為を規制し、または救護を要する酩酊者を保護する等の措置を講ずることによって、過度の飲酒が個人的および社会的に及ぼす害悪を防止し、もって公共の福祉に寄与することを目的として1961年に制定された法律です。
日頃あまり耳にすることがない法律ですが、今回は、この酔っ払い防止法について解説していきたいと思います。
酔っ払い防止法には、以下の通り、罰則規定が設けられています。
第四条 酩酊者が、公共の場所又は乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をしたときは、拘留又は科料に処する。
2 前項の罪を犯した者に対しては、情状により、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。
3 第一項の罪を教唆し、又は幇ほう助した者は、正犯に準ずる。
第五条 警察官は、前条第一項の罪を現に犯している者を発見したときは、その者の言動を制止しなければならない。
2 前項の規定による警察官の制止を受けた者が、その制止に従わないで前条第一項の罪を犯し、公衆に著しい迷惑をかけたときは、一万円以下の罰金に処する。
◇4条1項◇
酩酊者が、公共の場所・乗物で、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野・乱暴な言動をした場合に成立する罪です。
「酩酊者」というのは、アルコールの影響により正常な行為ができないおそれがある状態にある者を指します。(第1条)
「正常な行為ができないおそれのある状態」とは、現実に正常な行為をしていても正常な行為ができなくなるおそれがある場合のみならず、現実に正常な行為ができなくなっている場合も含みます。
ここでいう「正常な行為」とは、通常人が日常生活において健全な判断に従って行うような言動をすることができなくなることをいいます。
本罪の行為が行われる場所は、「公共の場所又は乗物」に限られます。
「公共の場所・乗物」には、道路、公園、駅、興行場、飲食店その他の公共の場所、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他公共の乗物が含まれ(第3条1項)、不特定かつ多数人の利用し得るべき場所・乗物のことをいいます。
「公衆」とは、不特定多数人をいい、現に公衆がいたか否かは問われません。
「迷惑をかけるような」「著しく粗野又は乱暴な言動」とは、相手が困ったり不快に感じるような、場所がらをわきまえない、それ相当の礼儀を守らない、ぶしつけな、又は乱暴な言語・動作を意味し、実際に迷惑をかけたことは必要とされません。
このような言動に当たるか否かの判断は、当該行為の場所、時間、周囲の状況などに基づいて、健全な社会通念に従って総合的に判断されます。
◇5条2項◇
4条1項の行為をしている者に対して警察官がその言動を制ししようとしたものの、その者が制止に従わずに、公衆に著しい迷惑をかけた場合には、1万円以下の罰金が科される可能性があります。
警察官の制止に「従わない」とは、警察官が酩酊者の言動をやめさせるために必要かつ相当と認められるような実力を用いてその言動を制圧する努力を尽くしているにもかかわらず、当該酩酊者が積極的にこれに反抗して著しく粗野・乱暴な言動を引き続いて行うことです。
本罪が成立する場合、4条1項の罪は本罪に吸収されます。
以上より、Aくんの行為は酔っ払い防止法違反に当たるものと考えられます。
しかし、Aくんの行為により神社や露天商の業務に支障をしたしていることを考えると、業務妨害罪が成立する可能性もあります。
また、駆け付けた警察官に対して反抗した場合には、公務執行妨害罪となる可能性もあります。
酒に酔っての行為とはいえ、周囲に迷惑をかける行為は、時に犯罪となることもありますので、飲酒量に気を付けるなど自分の行為には責任を持ちましょう。
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ネット掲示板への書き込みで名誉毀損
ネット掲示板への書き込みで名誉毀損となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、元勤務先のV社についての誹謗中傷の書き込みを約1000回行ったとして兵庫県加西警察署に名誉毀損の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「V社は欠陥品を売りつけている。」「V社は社員のパワハラ問題をうやむやにしているブラック企業だ。」などという内容の書き込みについて認めていますが、「すべて事実を書いただけだ。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、どう対応してよいか分からず慌ててネットで対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
ネット掲示板への書き込みで刑事事件に?
ネット掲示板への書き込みやSNSへの投稿内容が問題となることがあります。
時には、それが刑事事件へと発展してしまうこともあります。
今回は、ネット掲示板への書き込みにより名誉毀損に問われるケースについて説明していきます。
名誉毀損罪について
刑法第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
◇客体◇
名誉毀損罪の客体は、「人の名誉」です。
「人」は、自然人のほかに、法人、法人格のない団体も含まれます。
「名誉」とは、人に対する社会一般の評価を意味し、人の経済的な支払能力や支払意思に対する社会的評価は含まれません。
人の真価とは異なる評価である虚名も「名誉」にあたり、摘示した事実が真実であっても、真実性の証明による免責が認められないのであれば処罰の対象となります。
◇行為◇
名誉毀損罪の実行行為は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する」ことです。
「公然」とは、不特定多数の者が認識し得る状態をいいます。
ここでいう「不特定」とは、相手方が特殊の関係によって限定された者でない場合をいいます。
また、「多数」とは、単に複数では足りず、相当の員数であることが必要とされます。
では、特定少数人に対して名誉毀損表現を行った場合にも「公然」と言えるかどうかが問題となりますが、これについて判例は、適示の直接の相手方が特定少数人であったとしても、伝播して不特定多数の者が認識し得る可能性を含む場合には「公然性」が認められるとの立場をとっています。(大判大8・4・18、最判昭34・5・7)
摘示される「事実」については、それ自体が人の社会的評価を下げるような具体的事実であることが必要です。
「事実」は、人の社会的評価に関する事実であればよく、被害者が適示された事実に置いて明示的に特定されていない場合でも、他の事情を含めて総合的に判断して特定することが可能であれば足りるとされます。
「事実」が真実であるか否か、公知であるか否か、過去のものか否かは問いません。
「摘示」とは、具体的に人の社会的評価を下げさせるに足りる事実を告げることをいいます。
その手段や方法に制限はなく、口頭であっても文書であっても構いません。
「名誉を棄損する」ことは、社会的評価を害するおそれのある状態を発生させればよく、実際に名誉が侵害されたことまで求められません。
「公然と事実を摘示」した場合、通常人の名誉は毀損されたものといえ、既遂に達したものとされます。
◇故意◇
名誉毀損罪が成立するためには、他人の社会的評価を害し得る事実を不特定または多数人が認識し得る形で摘示していることについての認識が必要です。
◇真実性の証明による免責◇
名誉毀損罪は、真実である事実を摘示した場合にも成立し得るため、言論の自由の保障との関係で問題が生じることになります。
そのため、個人の名誉の保護と表現の自由の調和を図るため、真実性の証明による免責を認める規定が刑法には設けられています。
免責が認められる場合は、名誉棄損行為が、
(a)公共の利害に関する事実に係り、
(b)その目的が専ら公益を図ることにあったと認められる場合で、
(c)摘示した事実が真実であることの証明があったとき、
に認められます。
公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実については、「公共の利害に関する事実」とみなされ、公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に関して、事実の真否を判断し、事実であることの証明があった場合には、免責が認められます。
(a)事実の公共性
「公共の利害に関する」というのは、一般多数人の利害に関することを意味します。
「公共の利害に関する」といえるためには、その事実を公表することが公共の利益の推進にとって必要な限度のものでなければならず、かつ、その事実が公共の利害に関するものであることが一定程度明白でなければなりません。
私人の私生活上の事実についてであっても、その者が携わる社会的活動の性質や影響力の程度などによっては、社会的活動に対する批判・強化の資料として公共性が認められることもあります。
(b)目的の公共性
「専ら」との文言が規定されていますが、主たる動機が公益を図ることであれば足りるとされます。
(c)真実性の証明
証明の立証は被告人にあります。
証明の対象は、摘示された事実で、その主要・重要な部分について真実であるとの証明がなされれば足ります。
証明の方法・程度について、合理的な疑いをいれない程度の証明が必要だとする下級審裁判例もありますが、被告人は強力な証拠収集手段を持たないため、そこまでの証明を要求するのは酷であり、証明の優越の程度で足りるとする見解が有力となっています。
さて、上記ケースのように企業の不祥事をネットで糾弾した場合にも名誉毀損罪が成立するのでしょうか。
Aさんの書き込んだ内容が真実だとして、これを公にするためにネットの掲示板に書き込んだとしたのであれば、発言内容が真実であり批判が公益目的と認められれば、真実性の証明による免責となる可能性もあります。
ただ、書き込んだ内容を立証する元ネタが噂や信頼性に乏しい情報源であった場合は事情が異なります。
しかし、この場合でも、Aさんが書き込んだ内容が真実であると誤信した相当の理由があると判断されれば、名誉毀損の意図はなかったとして名誉毀損罪が成立しない可能性もあります。
どのような場合に名誉毀損罪が成立するかについて、刑事事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所の弁護士へご相談ください。
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盗撮事件を起こしたら
盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、兵庫県高砂市にある駅構内において、Aさんの前に立っていた女性のスカート内にスマートフォンを差し向け盗撮した疑いで、兵庫県高砂警察署に逮捕されました。
逮捕の翌日にAさんは釈放されましたが、警察が押収したスマートフォンやパソコンからは他にも複数の盗撮画像が見つかっており、警察は余罪についても調べる方針です。
釈放されたAさんは、今後の処分について心配になり刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
Aさんは、常習的に盗撮を行っており、本件の事件現場である駅構内だけでなく、勤務先や商業施設などでも行っていたことを弁護士に話しています。
(フィクションです)
盗撮行為で問われ得る罪とは
みなさんご存知の通り、「盗撮」は「犯罪」です。
しかし、日本の法律には、「盗撮罪」なるものはありません。
それでは、盗撮行為を行うとどのような犯罪が成立し得るのでしょうか。
迷惑防止条例違反
各都道府県は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、住民生活の平穏を保持することを目的とした条例を制定しています。
兵庫県は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」を制定しており、盗撮行為を禁止しています。
(卑わいな行為等の禁止)
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
盗撮行為は、「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たります。
条例における「卑わいな言動」の意義について、北海道の迷惑防止条例についてではありますが、最高裁は、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言動又は動作」をいうとし、衣服の上から女性の臀部を盗撮する行為が「卑わいな言動」に当たるとしています。
兵庫県の迷惑防止条例は、盗撮行為だけでなく、盗撮目的でのカメラの設置やカメラを向ける行為も禁止しています。
例えば、盗撮するために動画撮影モードにしたスマートフォンを女性のスカート内に差し入れたが撮影に失敗した場合や、女性社員の着替えを撮影するために会社の更衣室にカメラを設置した場合も、本条例の規制行為に当たります。
兵庫県の迷惑防止条例は、場所的規制対象を公共の場所・乗物における盗撮等に限定しているわけではありません。
駅構内での盗撮等であれば、①に当たります。
また、学校の教室や会社の事務所で盗撮等をおこなえば②に、学校や会社のトイレや更衣室、そして住居やホテルの部屋での盗撮等は③に当たり、迷惑防止条例違反に問われることになるでしょう。
まとめると、
①公共の場所・乗物における盗撮および盗撮目的でのカメラの設置行為。
②不特定多数の者が利用する場所における盗撮、盗撮目的でのカメラの設置並びにカメラを向ける行為。
③人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所での盗撮、盗撮目的でのカメラの設置並びにカメラを向ける行為。
について禁止しており、これらの違反について罰則が設けられています。
このように、兵庫県の迷惑防止条例は広範囲にわたる盗撮行為を規制しており、ほとんどの盗撮事件では本条例が適用されます。
盗撮事件を起こしてしまった場合、事件を穏便に解決するためには、何よりも被害者との示談を成立させることが重要です。
被害者への謝罪・被害弁償を行った上で、示談を成立させることができれば、不起訴で事件を終える可能性は高まるでしょう。
しかし、被害者が複数いる場合は、それだけ示談交渉を行う相手方がいるということですので、交渉が難航することや示談金額が高くなることも考えられます。
また、被害者が特定されず設置行為や差し向け行為で検挙された場合であれば、示談をする相手方がいないため、示談交渉を行うことはできません。
事件の内容によって対応も異なりますので、盗撮事件を起こしお困りの方は、一度刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。