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不法就労助長で逮捕

2019-06-19

不法就労助長で逮捕

不法就労助長罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
技能実習生として来日した外国籍の男女30人を不法就労させたとして、兵庫県警組織犯罪対策課兵庫県加古川警察署は、兵庫県内に住む人材派遣会社社長のAさんを逮捕しました。
Aさんは、部下のBさんと共謀し、不法に在留していた外国籍の男女に偽造した在留カードを提供し、県内にある工場で働かせていた疑いがもたれています。
Aさんは容疑を否認しており、刑事事件に強い弁護士との接見を希望しています。
(神戸新聞NEXT 2019年6月3日22時3分掲載記事を基にしたフィクションです)

外国人技能実習制度

日本の会社が発展途上国から人材を受け入れ、日本が持つ技能・技術・知識を彼らに伝え人材を育成し、自国の経済発展に貢献してもらうことを目的とした制度を「外国人技能実習制度」です。
平成28年11月28日に公布され、平成29年11月1日に施行された「外国人の技術実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づき、新たな外国人技能実習制度が実施されました。
技能実習生を受け入れる方式には、「企業単独型」と「団体管理型」の2タイプがあります。
前者は、日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式で、後者は、事業協同組合や商工会等の営利を目的とした団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する方式です。
技能実習の区分は、先述した2タイプの受け入れ方式ごとに、入国後1年目の技能等を修得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の技能等に習熟するための活動(第2号技能実習)、4・5年目の技術等に熟達する活動(第3号技能実習)の3つに分けられます。
技能実習生の在留資格は、上の区分に応じて異なります。
まず、1年目は、「技能実習1号」(企業単独型は「技能実習1号イ、団体管理型は「技能実習1号ロ」)の在留資格となり、原則2か月の講習を受けた後、実習が開始されます。
2・3年目は、「技能実習2号」(企業単独型は「技能実習1号イ、団体管理型は「技能実習1号ロ」)4・5年目は、「技能実習3号」(企業単独型は「技能実習3号イ、団体管理型は「技能実習3号ロ」)とう在留資格となり、技能実習生として最長で5年間日本に滞在することができます。

しかし、様々な理由により技能実習生が失踪するケースが増えています。
技能実習の滞在資格は、自動的に滞在期間が更新されるのではないため、適時手続を行う必要があります。
その手続を怠ると、滞在資格がなくなりますので、不法に日本に滞在していることになります。

不法就労助長罪

出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」)は、全ての人の日本への出入国、外国人に関しての在留資格、在留期間、退去強制、難民に関しての認定・処遇について規定しています。

不法就労助長罪というのは、「不法就労」を手助けする行為に関する犯罪です。
不法就労」とは、日本に不法に入国・上陸したり、在留期間を超えて不法に残留するなどし、正規の在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動、並びに、正規の在留資格を持っている外国人が、許可を受けずに、与えられた在留資格以外の収入を伴う議場を運営する活動又は報酬を受ける活動のことをいいます。
このような不法就労をしている外国人を雇った場合、不法就労助長罪となる可能性があります。

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

第1項の「外国人に不法就労活動をさせた者」というのは、不法就労者を雇用・使用した者や、不法就労者を派遣して労務に従事させた者を指します。
また、第2項の「外国人の不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」とは、不法就労者に宿舎を提供した者、不法就労者のパスポート等を預かった者や入国費用の負担等を事実上支配下に置いた者が該当します。
そして、第3項の「外国人の不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者」については、ブローカーやその他あっせんをした者、仲介等をなした者です。

外国人を雇用する際に、当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れません。

このように、不法就労外国人を雇用する行為は犯罪となる可能性があります。
ご家族が、不法就労助長罪で逮捕されてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

放尿行為で器物損壊罪

2019-06-17

放尿行為で器物損壊罪

器物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川西市に住む会社員のAさんは、同市に住む女性Vさんの乗用車のドアなどに尿をかけ、汚損させた疑いで、兵庫県川西警察署器物損壊の容疑で逮捕されました。
Aさんは、深夜にVさんの乗用車が止めてある駐車場で、Vさんの乗用車の運転席ドアなどに放尿したとのことです。
何度も同様の被害にあっていたVさんは、業を煮やして兵庫県川西警察署に相談したことで事件が発覚しました。
Aさんは容疑を認めており、なんとか事件を穏便に解決できないものかと思っています。
(フィクションです)

成立し得る犯罪は?

他人の車に放尿する行為は、如何なる犯罪に該当するのでしょうか。

(1)器物損壊罪

まずは、上記ケースにおいて逮捕容疑となっている器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪は、刑法第261条に規定されています。

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する

客体
「前三条に規定するもののほか」というのは、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊及び同致死傷罪の客体、つまり、公用文書等、権利義務に関する文書や他人の文書、他人の建造物や艦船以外の物をいいます。
動産・不動産だけでなく、動物も含まれます。

行為
本罪の問題となる行為は、「損壊」または「傷害」です。
判例及び通説によれば、損壊とは、「広く物本来の効用を失わしめる行為を含む」と解されます。
例えば、他人の飲食器に放尿する行為も「損壊」に当たるとされます(大判名42・4・16)。
簡単に言うと、皿に放尿したことで、皿自体が壊れていなくても、人の尿がかかったということで当該皿を再度使いたいとは一般的に思いませんから、食べ物を乗せるという皿本来の用途(効用)を失わせたと言えるため、「損壊」したことになるのです。
ですので、上記ケースにおいては、車のドアに放尿されていますが、これにより直ちに車自体が故障するということではありませんが、人の尿がかかった車を使いつづけたいかと問われれば、一般に否定的な回答になるでしょう。

それでは、特定の人に対して複数回上の行為をしていたとなれば、器物損壊罪以外にも次の罪に問われる可能性もあります。

(2)ストーカー規制法違反

第十八条 ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

ストーカー規制法における「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等を反復して行うことと定義されています。
問題となる「つきまとい等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること」です。
①つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき等
②監視していると告げる行為
③面会や交際の要求
④乱暴な言動
⑤無言電話、拒否後の連続した電話・FAX・電子メール・SNS等
⑥汚物等の送付
⑦名誉を傷つける
⑧性的羞恥心の侵害
AさんがVさんに好意を寄せており、それを満たすために、Vさんの車のドアに放尿していたのだとすれば、⑥号に該当し、2回以上当該行為を行っていたのであれば、反復して行ったことになり、「ストーカー行為」となるでしょう。
⑥号の原文は、「汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。」ですので、送付する以外にも、駐車してある車に放尿することにより、Vさんがそのことを分かり得る状態にしているので、車に放尿する行為も⑥号に当たります。

(3)迷惑防止条例違反

嫌がらせとして特定の者に対して、複数回人の車に放尿する行為をしたのであれば、兵庫県迷惑防止条例違反となる可能性もあります。

第10条の2 何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第2条第3項に規定するストーカー行為を除く。以下「嫌がらせ行為」という。)をしてはならない。
(略)
(6) 汚物、動物の死体その他の著しく不快若しくは嫌悪の情を催させるような物又は当該情を催させるようなものを視覚若しくは聴覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第8号において同じ。)その他の記録を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

器物損壊罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。
ですので、被害者との示談を成立させることが事件を穏便に解決するうえで重要となります。
器物損壊事件を起こしお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

危険運転で裁判員裁判②

2019-06-16

危険運転で裁判員裁判②

裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、通勤に車を使用していました。
ある日、会社の飲み会があり、Aさんは車は会社の駐車場に止めておいて、バスで帰宅しようと考え、飲酒しました。
相当酔っていたAさんは、バスで帰宅することが面倒に思い、自分で車を運転して帰ることにしました。
しかし、Aさんは車を走らせてしばらくすると、急に眠気に襲われ、運転中に眠りこけてしまい、車線をはみ出し、対向車線に進入し、Vさんが運転する対向車に衝突してしまいました。
Vさんは救急搬送されましたが搬送先の病院で死亡が確認されました。
Aさんは兵庫県豊岡南警察署に逮捕され、その後神戸地方検察庁に危険運転致死罪で起訴されました
(フィクションです)

危険運転致死事件は、裁判員裁判の対象事件となります。
裁判員制度は、平成16年5月21日に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、平成21年5月21日から当該制度が始まりました。
裁判員制度が始まって、今年で10年となります。
神戸地方裁判所姫路支部で行われた裁判員裁判は、その審理期間が200日を超えたことでも話題になりました。

裁判員制度とは

裁判員裁判とは、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、以下のことを裁判官を一緒に決める裁判制度のことをいいます。
・被告人が有罪か否か。
・有罪の場合にはどのような刑にすべきか。

裁判員裁判となる事件は、刑事裁判の中でも一定の重大事件だけです。
最も重い刑として死刑や無期懲役が定められている罪や、故意の犯罪行為で人を死亡させた罪に問われている事件です。
例えば、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪、危険運転致死罪などです。

兵庫県では、神戸地方裁判所と神戸地方裁判所姫路支部の2つの裁判所が裁判員裁判を行っています。

裁判員裁判の特徴

(1)公判前整理手続
裁判員制度の対象となる事件は、必ず公判前整理手続に付されなければなりません。
公判前整理手続では、検察官と弁護人の主張を聴き、事件の争点および証拠を整理します。
そして、公判の日程についても議論し、短時間で争点に集中した充実した審理ができるように準備します。
公判前整理手続を行うことで、公判を連日開廷し、集中して審理が行えるようになるとともに、裁判員に分かりやすい計画的で充実した審理を行うことができるのです。
弁護士は、公判前整理手続において、積極的に証拠開示を求めるとともに、弁護側からの主張を立て、どこが争点になるのかをしっかりと把握した上で、公判での訴訟活動に向けた準備を行う必要があります。

(2)裁判員の参加
裁判員は、証拠に基づいて、起訴状に書かれていることが常識に照らして間違いないと言えるかどうかを判断します。
有罪とした場合には、被告人にどうような重さの刑罰を科すべきかについても判断します。
これらの判断は、裁判官3名と裁判員6名の合計9名で行なわれ、過半数の5名の意見が一致すれば決定となります。
ただし、被告人を有罪にする場合や、被告人に不利益な判断をする場合には、裁判官のうち少なくとも1名が加わっていなければなりません。

以上のように、裁判員裁判では、事前に裁判官、検察官、弁護人が争点や証拠を整理した上で、一般市民の方が裁判員となり、事実認定や刑の量定を決めることになります。
そのため、裁判員が十分に理解し納得するために、通常の裁判よりも分かり易く丁寧な説明を心がける必要があると言えます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、これまでも数多くの刑事事件を経験してきました。
刑事事件における豊富な経験や知識を活かし、裁判員裁判にもしっかりと対応し最善の弁護活動を行います。

刑事事件でお困りの方、裁判員裁判の対応にお悩みの方は、ぜひ弊所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスについては、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

危険運転で裁判員裁判①

2019-06-15

危険運転で裁判員裁判①

危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、通勤に車を使用していました。
ある日、会社の飲み会があり、Aさんは車は会社の駐車場に止めておいて、バスで帰宅しようと考え、飲酒しました。
相当酔っていたAさんは、バスで帰宅することが面倒に思い、自分で車を運転して帰ることにしました。
しかし、Aさんは車を走らせてしばらくすると、急に眠気に襲われ、運転中に眠りこけてしまい、車線をはみ出し、対向車線に進入し、Vさんが運転する対向車に衝突してしまいました。
Vさんは救急搬送されましたが搬送先の病院で死亡が確認されました。
Aさんは兵庫県豊岡南警察署に逮捕され、その後神戸地方検察庁に危険運転致死罪で起訴されました。
(フィクションです)

危険運転致死傷罪

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(通称、「自動車運転死傷処罰法」)は、従前、刑法第208条の2(危険運転致死傷罪)及び第211条第2項(自動車運転過失致死傷罪)として規定されていたものを、自動車運転による死傷事犯の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、悪質かつ危険な自動車の運転により人を死傷させた者に対する新たな罰則を創設するなどして平成26年5月20日に施行され、現在は、危険運転致死傷罪及び過失運転致死傷罪の規定は、自動車運転死傷処罰法において独立して規定されています。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、自動車運転死傷処罰法の第2条及び3条に規定されています。

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

(1)危険運転致死傷罪(2条)
以下の行為を行い、その結果、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処するとしています。
①アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為、
⑥通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。

(2)危険運転致死傷罪(3条)
アルコール、薬物又は一定の病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら自動車を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を負傷させた者は12年以下の懲役、人を死亡させた者を15年以下の懲役に処するとしています。

上記ケースでは、飲酒運転の末の人身事故を事例として挙げています。
そこで、今回は、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」、そして「アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」について考えてみたいと思います。

1.アルコールの影響により正常な運転が困難な状態
これについては、平成23年10月31日最高裁決定において、以下のように解されています。「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」というのは、「アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいい、アルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処することができない状態もこれに当たる」。
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあったか否かの判断に当たっては、「事故の態様のほか、事故前の飲酒量及び酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒探知結果等を総合的に考慮すべきである」とあり、事故の態様、アルコールの摂取状況、事故前の運転状況や事故後の言動等を総合的に評価して決定されます。

2.アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態
先の「正常な運転が困難な状態」であるとまではいえないが、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が、そうではないときの状態と比べて相当程度減退して危険性のある状態や、そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態を含むと考えられています。

危険運転致死傷罪は、その法定刑が重く、危険運転致死事件は裁判員裁判の対象事件です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、危険運転致死傷事件を含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件でお困りであれば、今すぐフリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

自首と出頭

2019-06-12

自首と出頭

自首出頭について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県洲本市のスーパーマーケットにパートとして勤務するAさんは、度々店の商品を無断で持ち帰ったり、レジから売上金を持ち出したりしていました。
ある日、店長が、商品や売上金がデータと合わないことを不審に思い、各従業員に聞いて回っていました。
店長は、Aさんによる犯行の可能性が高いと思っており、Aさんに対して、「従業員の誰かが商品や売上金を盗んだ可能性が高いようだ。このまま誰も名乗り出なければ、警察に被害届を出そうと思う。」と言いました。
しかし、Aさんは店長に罪を告白しないまま、一身上の都合という理由で退職しました。
後日、元同僚を通じて店長が兵庫県洲本警察署に被害届を出しにいったという話を聞いて、このままではいずれ自分の犯行だということがバレてしまうのでは、と心配になったAさんは、自首することを考えています。
(フィクションです)

自首が成立するためには

刑事ドラマやサスペンスドラマで、「自首しに来ました。」といって警察署に出向く姿を時折目にします。
警察署に行って自分の犯した罪を言えば「自首」が成立すると思っていませんか?
実は、「自首」については法律できちんと規定されており、成立するためには満たさなければならない要件がいくつかあるのです。

罪を犯した人が、自ら捜査機関に対して、自分が犯した罪を自発的に申告し、その処分を求める意思表示のことを「自首」といいます。
単に、警察署などに自ら出向くだけでは、法律上の自首が成立するとは限らないのです。

刑法第42条は、以下のように、自首について規定しています。

第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」
つまり、自首の成立要件は、以下の4つになります。

(1)犯罪を起こした本人自らが自発的に犯罪事実を申告していること。
「自ら自発的に」自分の犯した犯罪を申告しなければならず、取調べで単に犯罪事実を自白しただけでは自首したことになりません。
(2)犯罪を行った本人が自身の罰則や処分を求めていること。
申告内容が、犯罪事実の一部を隠すためにされたものであったり、自己の責任を否定するようなものであったりした場合には、自首は成立しません。
(3)捜査機関に申告していること。
司法警察員または検察官に対して申告している必要があります。
(4)捜査機関が犯罪事実や犯人を特定していない段階で申告していること。
犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合や、犯罪事実は発覚していたとしても、その犯人が誰であるか発覚していない場合を含みます。
犯罪事実や犯人が誰であるか判明しているけれども、単に犯人の所在だけが不明である場合は、これに含まれません。
犯罪事実の申告を受けた警察官等が犯罪事実を知らなくても、捜査機関の誰かが犯罪事実を知っていた場合には、自首は成立しません。

これらの要件を充たしてはじめて「自首」が成立することになります。

一方、「自首」とよく混同される「出頭」とは何を意味するのでしょうか。
出頭」というのは、役所や裁判所など特定の場所に出向くことです。
犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚している場合に、犯人が警察署等に出向いたとしても「自首」ではなく「出頭」ということになります。

自首のメリット

自首が成立すると、刑が減軽される可能性があります。
どの程度刑が減軽されるかについても、刑法第68条が定めています。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
有期懲役の場合、長期及び短期の2分の1に、罰金の場合、多額及び寡額の2分の1に減軽されるので、窃盗罪の場合には、5年以下の懲役又は25万円以下の罰金の範囲内で刑罰が科されることになります。
しかし、あくまで「刑を減軽することができる」とありますので、絶対的に軽減されるものではありません。
また、自首したことそれ自体が、逮捕の要件である逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれを否定する事情となり、逮捕されず在宅のまま捜査が進む可能性もあります。

刑事事件を起こし、自首しようかお悩みであれば、自首する前に一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。
自首するメリット・デメリットを理解し、自首した後の流れや取調べ対応についてしっかりと説明やアドバイスを受けることにより、取調べに対する不安を少しでも和らげることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、一度弊所にご相談ください。

前科と前歴

2019-06-11

前科と前歴

前科前歴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県赤穂市のスーパーマーケットで、商品5点(5000円相当)を会計を済ませずに店を出たとして、店の警備員に呼び止められました。
その後、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県赤穂警察署の警察官に窃盗容疑で逮捕され、同署において取調べを受けました。
Aさんの夫が身元引受人としてAさんを引き取ることで、Aさんは釈放となりました。
Aさんは、同じような万引きをして捕まったことがあり、その時は警察署で話を聞かれて終わったのですが、今回はどのような処分となるのか非常に不安でたまりません。
Aさんは、夫と共に、刑事事件に強い弁護士のところに相談に行きました。
(フィクションです)

逮捕されたら前科が付くの?

刑事事件を起こし、逮捕されてしまったら、必ず「前科」が付くと思われている方が多くいらっしゃいますが、逮捕されたからといって必ずしも前科が付くわけではありません。
そもそも、前科とはどのようなものを指すのでしょうか。

前科」という用語は、正確な法律上の用語ではなく、通俗的に使用されているにすぎず、その意味は必ずしも明らかではありません。
しかし、一般的には、前に刑に処せられた事実のことを「前科」と称します。

「前に刑に処せられた」というのは、全ての有罪の確定判決のことを意味します。
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料である場合から、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
裁判所で言い渡されたものであっても、過料等の行政罰や没収、追徴等のいわゆる付加刑は前科ではありません。

前科が付いてしまったら

前科が付くと、法律において一定の不利益を被ることになります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
・執行猶予に付し得ない事由
・執行猶予の取消事由
・再犯加重の事由
・仮釈放の取消事由
・常習犯の認定事由
・必要的保釈を消極とする事由
・特定の法令が定める資格制限事由

一度付いてしまった前科は消えないの?

前科が付くことにより、上のような法律上の不利益を被ることになるわけですので、一度付いてしまった前科がいつまでも消えないのかどうかといった点は気になるところですね。
刑の執行を受け終わった者に対して、いつまでも法律上の不利益を負わせておくことは、その者の改善や構成の意欲を阻害し、善良な社会人として社会復帰する機会を失わせることになるので、現行法では刑の消滅に関する規定が設けられており、執行終了または免除後の一定期間を罰金以上の刑に処せられることなく経過した場合に、その抹消が認められ、刑が消滅することになります。

第三十四条の二 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

刑の消滅の効果は、刑の言渡しに基づく法的効果が将来に向かって消滅するというものであって、過去において刑を受けたことがあるという事実まで消滅させるものではありません。

前歴とは?

最後に、よく「前科」と混同される「前歴」について説明します。
前歴」というのは、警察などの捜査機関から犯罪捜査を受けたことです。
前歴は検察や警察が保管・管理していますが、前歴についてはその記録は抹消されることはありません。

上記ケースの場合、Aさんは前に万引きで警察に逮捕されたことがあるようです。
警察での調べで事件は終了しているとのことですので、警察から検察に送致されてはおらず、おそらく警察段階で「微罪処分」として終了しているのだと考えられます。
しかし、窃盗容疑で逮捕されていますので、Aさんには窃盗の「前歴」が付いています。
その記録は警察や検察で保管・管理されていますので、Aさんがまったくの初犯ではないことはすぐにわかります。
その事実がAさんにとって良い方向に働くことはありません。
しかし、同種の前歴があっても、被害店舗への被害弁償や示談締結、家族の監督やカウンセリング等により再犯防止策がきちんととられている等、Aさんにとって有利な事情について説得的に主張することで、検察官が起訴猶予で事件を終了させる可能性も十分あります。

このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
窃盗事件をはじめとして刑事事件でお困りならば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

殺人罪と傷害致死罪②

2019-06-08

殺人罪と傷害致死罪②

殺人罪傷害致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川辺郡猪名川町にある介護付き有料老人ホームから、入居者Vさんの意識がないと119番の通報が施設職員から入りました。
通報を受けて駆け付けた救急車で、Vさんは病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。
死因は、腹腔内の多発損傷による出血性ショックと診断され、兵庫県川西察署は、Vさんは何者かに暴行を受け殺されたのではないかと捜査に着手しました。
防犯カメラの映像から、事件直前にVさんの部屋に入る施設職員Aさんの姿が確認されたため、警察署はAさんを殺人容疑で逮捕しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

殺人罪と傷害致死罪の違いについて

殺人罪傷害致死罪は、どちらも結果として被害者を死亡させてしまったという点で同じです。
しかし、両罪は、「殺すつもり」で暴行を働いたのか、つまり、殺意があったのか否かという点で異なります。

まずは、殺人罪についてみていきましょう。

殺人罪

刑法第199条
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

「人」が本罪の客体となりますので、人以外の動物を殺しても、殺人罪とはなりません。
ここでいう「人」の意義が問題となるのですが、人の出生・死亡をどの段階で線引きするか、という点で幾つかの見解が主張されています。
まず、人の出生についてですが、胎児が母体から一部露出した時点で人となると考える「一部露出説」が判例・通説となっています。
一方、人の終期については、人の終期は死亡であり、死亡後は死体であって生命・身体に対する罪の客体とはなりません。
死亡の判断については、争いがありますが、脈拍と自発呼吸が不可逆的に停止し、瞳孔が散大したこととを総合して人の死亡を判断する総合判断説が従来の通説とされていますが、近年医療技術の発展により、脳の機能が失われても心臓を動かしつづけることが可能となったため、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した時点を人の死とする脳死説も有力となっています。
本罪の行為である「殺」すとは、自然の死期以前に人の生命を断絶する行為のことで、その手段・方法のいかんを問いません。

そして、本罪が成立するためには「殺意」があったことが必要となります。
殺意には、「人の死亡という結果発生に対する認識・容認」が必要であると理解されています。
「認識」というのは、人が死亡する可能性、蓋然性、確実性を予見することを意味し、「認容」とは、人が死亡してもよい、あるいは死亡するかもしれないがそれでも構わない、やむを得ないとすることです。
客体が「人」であることを認識していたこと、及び、自分の行為によって死の結果が発生するおそれがあることを認識しながらも、その行為に出た場合、殺意が認められることになります。
この故意は、未必的なものでも、条件付きのものであってもかまいません。
上記のケースにおいて、Aさんが「殺してやる!死んでしまえ!」と思って首を絞めた場合のみならず、「死んでしまうかもしれないが、かまわない」と思って行為に及んだ場合にも殺意が認められるのです。
殺意が認められるには、結果の発生に対する認識・容認が必要であるため、凶器の種類、行為態様、創傷の部位・程度等の客観的な事情を重視しつつ、動機の有無や犯行前・犯行時の言動、犯行後の行動等など要素を総合的に考慮して判断されます。

それでは、次に傷害致死罪についてみていきましょう。

傷害致死罪

刑法第205条
 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪は、傷害罪の結果的加重犯であるので、傷害を受けた人が死亡したときに成立する犯罪です。
本罪は、殺意は不要ですが、「暴行の故意」または「傷害の故意」が必要となります。
しかし、死亡結果について「予見可能性(過失)」を必要とするかには争いがあり、判例はこれを不要としています。

このように、結果的に人を死亡させてしまったとしても、「殺意」が認められなかった場合には、殺人罪殺人未遂罪は成立しません。
量刑も殺人罪傷害致死罪では大きく異なります。

殺人の容疑で捜査されている場合、犯行当時に被害者を殺す意志が無かったことを客観的な証拠をもって説得的に主張していかなければなりません。
殺人の容疑がかけられていたとしても、殺意が認められなければ殺人未遂罪は成立せず、刑が軽い傷害罪として成立することもあります。

もし、あなたやあなたの家族が殺人罪で捜査・起訴されてお困りであれば、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
刑事事件でお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡を!
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

殺人罪と傷害致死罪①

2019-06-07

殺人罪と傷害致死罪①

殺人罪傷害致死罪といった犯罪が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川辺郡猪名川町にある介護付き有料老人ホームから、入居者Vさんの意識がないと119番の通報が施設職員から入りました。
通報を受けて駆け付けた救急車で、Vさんは病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。
死因は、腹腔内の多発損傷による出血性ショックと診断され、兵庫県川西察署は、Vさんは何者かに暴行を受け殺されたのではないかと捜査に着手しました。
防犯カメラの映像から、事件直前にVさんの部屋に入る施設職員Aさんの姿が確認されたため、警察署はAさんを殺人容疑で逮捕しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

犯罪が成立する場合

犯罪が成立するためには、
①構成要件該当性
②違法性
③有責性
の各要素を満たす必要がある、とするのが通説です。

構成要件該当性について

「構成要件」とは、刑罰法規に規定された違法かつ有責な処罰に値する行為の類型をいいます。
上で述べたように、犯罪が成立するための第一要件は、問題となる行為が構成要件に該当することです。
構成要件は、構成要件要素から成っており、個別の犯罪ごとに異なりますが、一般的には、次のような要素です。
①行為の主体
②行為
③結果
④行為と結果との間の因果関係
⑤故意・過失(これを構成要件要素とするか否かについては争いあり。)

以下、各構成要件要素についてみていきましょう。

1.行為の主体
法分上、犯罪行為の主体は「者」と表現されていますが、これは自然人を指し、法人はこれに含まれません。
法人を処罰の対象とする特別の罰則がある場合にのみ、法人は限定的・例外的に処罰されるにとどまります。

2.行為
「行為」のみが処罰の対象となります。
行為者が心の中で思っているだけであれば、それは処罰の対象にはなりません。
では、一体何が行為であるのか?が問題となりますが、この点、「意思に基づく身体の動静」を行為と理解するのが通説となっています。
「意思に基づく身体の『動静』」と解するので、身体の「動」である「作為」だけでなく、身体の「静」である不作為も「行為」に含まれます。
「不作為」というのは、「期待された行為を行わないこと」を意味します。
単に「何もしないこと」ではありません。

3.結果
刑法は、保護法益(生命・身体・自由・財産などの法的に保護に値する利益)を侵害する、または保護法益を侵害する脅威をもたらす(=保護法益侵害の危険をもたらすこと)行為を将来抑止し、法益を保護するために、保護法益の侵害行為や侵害の危険をもたらす行為を犯罪として規定し、処罰の対象としています。
よって、犯罪の成立には、法益侵害や法益侵害の危険を引き起こすことが必要となります。

4.行為と結果との因果関係
行為者は、その行為によって、構成要件的結果を引き起こすことが必要となるのですが、構成要件該当性を肯定するためには、その行為は、構成要件的結果を引き起こす現実的な危険性が認められる行為でなければなりません。
このような構成要件的結果への因果関係の起点となる行為を「実行行為」といいます。
構成要件的結果をもたらす現実的危険性を備えた実行行為と構成要件的結果との間に因果関係が認められなければなりません。
この因果関係をめぐっては、学生上さまざまな議論が展開されてきました。
実行行為(構成要件的行為)と構成要件的結果との間には、事実的なつながりとしての条件関係が必要となりますが、それをどのように判断するのかという点に争いがあるというわけです。
・条件説…「あれなければこれなし」という条件関係があれば、刑法上の因果関係を認める説。
・相当因果関係説…条件関係の存在を前提に、社会生活上の経験に照らしてその行為からのそ結果の生ずることが一般的であり相当である場合に刑法上の因果関係を認める説。
判例は、基本的には条件説にしたがっていると解されますが、相当因果関係説を採用したとも読めるような判例もあり、判例の態度は1つの学説で特徴づけることは難しいとされています。

5.故意・過失
「故意」とは、「罪を犯す意思」をいい、犯罪事実の認識・予見と換言されます。
一方、「過失」は、犯罪事実の認識・予見可能性と解され、実務においては「注意義務違反」であると解されます。
その注意義務には、結果予見義務と結果回避義務とが挙げられます。
本ブログのテーマでもある殺人罪傷害致死罪とを区別するポイントとして「故意」が問題となりますので、次回のブログで詳細にみていきたいと思います。

もし、あなたやあなたの家族が、殺人罪あるいは傷害致死罪で逮捕されお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

児童ポルノ自画撮り勧誘行為の禁止

2019-06-06

児童ポルノ自画撮り勧誘行為の禁止

児童ポルノ自画撮り勧誘行為の禁止について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県丹波篠山市に住む中学生のVさん(14歳)は、SNSで知り合った大学生のAさん(20歳)と頻繁に連絡をとっていました。
Vさんは、Aさんとは会ったことはありませんが、メールや電話で話をするなかで、徐々にAさんに惹かれていきました。
ある日、AさんはVさんに下着姿の写真を送るよう要求するメールを送ってきたので、Vさんは驚きましたが、「またねー。」と返信して、その場をやり過ごしました。
しかし、その後も幾度となくAさんからVさんの裸や下着姿の写真を送るようしつこく要求してくるので、Vさんは困ってしまいました。
Vさんは母親に相談し、VさんはVさんの母親と一緒に兵庫県篠山警察署に相談することにしました。
Vさんと連絡がとれなくなったAさんは、自分のした行為が何か罪にあたるのかと心配になり、刑事事件専門の弁護士に法律相談を申し込みました。
(フィクションです)

未成年者により自画撮り被害の増加

児童ポルノ事件のなかでも、SNS等で知り合った未成年者に自分の裸や下着姿の写真を送らせた内容のものが多く見受けられます。
18歳未満の者(以下、「児童」という。)に自身の裸や下着姿などを撮影させ、その画像を送らせる行為は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造罪)となる可能性があります。
しかし、実際に児童に自画撮りさせるに至らなかった場合でも、児童ポルノに該当する写真を撮って送るように要求する行為自体が罪となり得るのです。

兵庫県は、インターネットで知り合った相手に自分の裸の画像を送ってしまう、いわゆる「自画撮り」被害を防ぐために、児童に画像を要求する行為自体を罰する改正兵庫県青少年愛護条例を平成30年4月1日に施行しました。
当該条例では、以下のように規定されています。

児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第21条の3 何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録をいう。以下同じ。)の提供を求めてはならない。

ここでいう「青少年」とは、18歳未満の者です。
18歳未満の者の「児童ポルノ等」の提供を禁止しています。
愛護条例における「児童ポルノ等」は、児童買春・児童ポルノ禁止法における「児童ポルノ」です。
つまり、「写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」です。
問題となる児童の姿態とは、次の3つです。
①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態。
②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの。
③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの。

18歳未満の者に送るよう求めた自画撮りが、相手方の「裸」であったり「下着姿」であるならば、上の③に該当することになるでしょう。

このような児童ポルノの「提供を求める」ことを愛護条例では禁止しています。
しかし、これに反したからといって必ずしも罰則の対象となるわけではなく、当該条例は、「青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法」若しくは「青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申し込み若しくは約束をする方法」により、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノの提供を求めた者に、30万円以下の罰金又は科料に処すると規定しています。
このような手法で児童ポルノに該当する自画撮りを提供するよう要求する行為が刑罰の対象となるのです。

あなたが、自画撮り勧誘行為で警察から取り調べを受けてお困りであるなら、児童ポルノ事件にも対応する刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に精通する弁護士が、直接無料で法律相談いたします。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881へご連絡ください。

食い逃げで詐欺罪

2019-06-05

食い逃げで詐欺罪

食い逃げ詐欺罪となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市長田区の居酒屋でバイトとして働いるXさんは、若い女性2人組をテーブル席に案内しました。
Xさんは、この女性客から注文を受け料理を運んでいました。
夜の忙しい時間帯でもあったので、他の客の対応に追われていたXさんでしたが、ふと見るとあの女性客らがいなくなっていることに気が付きました。
いつの間に会計を済ませたのかと思ってテーブルの上を見ると、伝票入れには未会計の伝票が入ったままということに気が付きました。
慌てて、店長に報告し、店長とXさんは店を出て、女性客を探し回ると、店から少し離れたところに発見し、Xさんは女性客2人に声を掛けました。
「お客様、お会計が未だだと思うのですが。」と尋ねると、「現金を持ち合わせていないことに気が付いて、近くのATMを探していたところ。」と女性客は回答しました。
店長はすでに兵庫県長田警察署に通報しており、駆け付けた警察官が女性客に事情を聞いています。
(フィクションです)

食い逃げで成立し得る犯罪とは?

レストランなどで料理を注文し、飲食したにもかかわらず、その代金を支払わずにその場を後にすることを「無銭飲食」といい、俗にいう「食い逃げ」のことです。
食い逃げ行為により成立し得る犯罪とは、どのようなものでしょうか。

まず、食い逃げ行為で問われ得る犯罪として挙げられるのが「詐欺罪」です。

詐欺罪

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件は、次のとおりです。
【1項詐欺罪
①人を欺いて
②財物を交
③交付させたこと。
【2項詐欺罪
①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと。

詐欺罪の行為は、「人を欺いて財物を交付させること」、または「人を欺いて財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させること」です。
1項詐欺についていえば、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転し、⑤財産的損害が生ずることが必要となり、①~⑤が客観的に相当因果関係になければなりません。
詐欺罪のポイントは、人を欺く行為によって錯誤に陥った相手方に財物を交付させた、という点です。
つまり、食い逃げ行為が詐欺罪に該当し得るのは、次のケースとなります。
(a)注文する時点ですでに支払いの意思がない場合、
(b)注文時には支払う意思があったが、支払い時にお金がないことに気づき、「お金をおろしてくる」などと嘘を言って支払いを免れる場合
前者については、通常、飲食店で料理を注文する行為は、暗に「後で注文した料理の代金を支払うので、注文した料理をください。」という意味に捉えられますから、支払う意思がないのに支払う意思があるかのように装ったということで、注文行為が欺く行為となります。
その欺く行為により、支払う意思があると騙された店から商品という財物の提供を受けているので、第1項詐欺が成立することになります。
後者は、会計時に支払う意思がないのに支払う意思があるかのように店員を騙して、代金の支払いを免れているので、人を欺き、よって財産上不法の利益を得ていると理解できるでしょう。

さて、ここでふと疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「支払う意思」があったか否か、という人の内面をどのように評価するのか。
その当時の所持金やカードの所持の有無など、客観的に「支払う能力があったのか」という点から、「支払う意思があったか」を判断することになります。
ですので、単に「払うつもりだった」と主張するだけでは、足りません。

詐欺罪をはじめ刑事事件を起こし捜査機関から呼び出しを受けている方、取調べ対応にお困りの方、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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