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薬物事件で執行猶予付き判決

2019-04-09

薬物事件で執行猶予付き判決

薬物事件での執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県須磨警察署は、兵庫県神戸市須磨区に住むAさんがMDMAを自宅で所持していたとして、麻薬取締法違反(所持)の疑いでAさんを逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、薬物事件に強い弁護士に弁護を依頼しました。
Aさんはその後起訴され、公判では懲役1年執行猶予3年の判決が言い渡されました。
Aさんは、実刑判決を受けずに済んだことに感謝し、これからは心を入れ替え新しい人生を歩んでいくことを心に誓いました。
(フィクションです)

執行猶予とは

刑を言い渡すにあたり、犯情により一定の期間その執行を猶予し、猶予期間を無事に経過したときは、刑罰権の消滅を認める制度を「執行猶予」といいます。
上記ケースでは、「懲役1年、執行猶予3年」が言い渡されたいますが、これは、刑の言渡しを受けてから3年間、罪を犯すことなく過ごすことができれば、この刑の言渡しそのものが無効となり、刑務所に行かなくてもよくなる、ということです。
執行猶予期間中に罪を犯さないこと」を条件としていますので、この期間中に何らかの罪を犯し有罪となると、執行を猶予されていた刑も受けなくてはなりません。

執行猶予には、刑期全部の執行猶予と刑の一部執行猶予の2種類があります。

刑の全部執行猶予の要件

(1)初度の場合
①(a)前に禁固以上の刑に処せられたことがないこと。
 または、
 (b)前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免   除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役もしくは禁錮または50年以下の罰金の言渡しをする場合であること。
③執行猶予を相当とするにたりる事情があること。

(2)再度の場合
①前に禁固以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。
 (ただし、刑の執行猶予中保護観察に付され、その保護観察期間内に更に罪を犯した場合には、 執行を猶予することは許されません。)
②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。

刑の一部執行猶予の要件

宣告刑の一部だけの執行を猶予する制度です。
例えば、「懲役2年に処する。その刑の一部である懲役4月の執行を2年間猶予する。」と言い渡されたとします。
この場合、まず、猶予されなかった1年8か月の懲役刑の執行を実際に受けて服役することになります。
服役後、猶予された4か月の執行猶予期間である2年間が始まり、この2年間を無事に経過すれば、4か月の懲役刑は執行されないことになります。

(1)初めて刑事施設に入所する者の場合
①(a)前に禁固以上の刑に処せられたことがない者
 または
 (b)前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
 あるいは、
 (c)前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除   を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者。
②3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたこと。
③犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐため必要であり 、かつ、相当であると認められること。

(2)薬物使用者の場合
①薬物使用等の罪を犯した者であること。
②3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたこと。
③犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められること。

以上のように、実刑を回避し、執行猶予となるためには満たすべき要件が設けられています。
裁判では、このような要件を被告人が満たしていることを客観的な証拠に基づいて主張する必要があります。
このような弁護活動は、薬物事件に詳しい刑事事件専門弁護士にご依頼されるのがよいでしょう。

ご家族が薬物事件で逮捕・起訴されてお困りの方は、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

盗撮事件で逮捕されるか不安

2019-04-08

盗撮事件で逮捕されるか不安

盗撮事件で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県揖保郡太子町に住むAさんは、通勤に電車を利用しています。
ある日、通勤で利用する駅構内の階段で、若い女性のスカート内を持っていた自分のスマートフォンを差し入れて撮影しました。
Aさんは、そのような行為を度々していました。
ある日、盗撮行為をした人が駅の防犯カメラの映像で特定され逮捕されたというニュースを知り、自分もいつかは逮捕されるのか不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

逮捕とは

「○○事件で逮捕」「△△事件で現行犯逮捕」といったことをニュースでよく耳にします。
弊社の無料法律相談でも、「○○してしまったのだが、逮捕されるか不安だ」と来所される方は少なくありません。
それでは、そもそも「逮捕」とは何なのか、逮捕の要件とはどのようなものなのかについて説明したいと思います。

逮捕」とは、被疑者に対して最初に行われる強制的な身柄拘束処分であって、法に定められた短期間の留置という効果を伴うものをいいます。
この「逮捕」には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3つの種類があります。

通常逮捕

逮捕状による逮捕を「通常逮捕」といいます。
通常逮捕の要件は、①逮捕の理由、および②逮捕の必要性である。
①逮捕の理由
逮捕の理由とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、つまり、嫌疑の相当性のことをいいます。
②逮捕の必要性
逮捕の必要性とは、被疑者の逃亡・罪証隠滅のおそれをいいます。
逮捕状の請求を受けた裁判官が、逮捕の必要性について判断します。
一定の刑儀犯罪では、被疑者の住所不定や正当な理由のない出頭要求の無視の場合のみ逮捕の必要性が認められます。

緊急逮捕

緊急逮捕とは、一定の重大犯罪について、充分な嫌疑があり、急速を要する場合に、逮捕後「直ちに」逮捕状を求めることを条件に認められる無令状の逮捕をいいます。
緊急逮捕の要件は、次の通りです。
①一定の入内犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由
②急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
③被逮捕者に逮捕の理由を告げること
逮捕後「直ちに」逮捕状請求の手続を行うこと
逮捕の必要性

現行犯逮捕

現行犯人に対して行われる無令状の逮捕を「現行犯逮捕」といいます。
「現行犯人」というのは、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」です。
現行犯逮捕の要件は、①犯行と逮捕行為との時間的場所的密着性、②犯罪および犯人の明白性、そして、③逮捕の必要性です。
逮捕者の逮捕行為着手後、犯人追跡行為が継続していれば、数時間経過後であっても現行犯逮捕と言えます。
逮捕者が被逮捕者の犯行を現認する場合でなくても、現場の客観的・外部的状況に照らして犯行・犯人が明白な場合は、現認に準ずることができるとされます。

盗撮事件で逮捕されるケース

盗撮事件で逮捕されるケースは、現行犯逮捕や通常逮捕が多いでしょう。
特に、盗撮を行った直後に、被害者や目撃者に犯行を問い詰められ、身柄が確保され、そのまま駅員室や交番・警察署に連れていかれる現行犯逮捕が多く見受けられます。
また、盗撮行為に気づいた被害者が、警察に相談し、警察が現場付近の防犯カメラの映像から犯人を特定し、通常逮捕となることもあります。

しかし、捜査機関が犯人を特定した場合であっても、逮捕されず在宅のまま捜査が進むこともあります。
逮捕の必要性がないと判断される場合です。
容疑を認めており、素直に取調べに応じている、被害者との接点がない、家族の監督が期待できるなどの事情は、逮捕の必要性がないと判断する要素になるでしょう。
また、自首することで、逃亡や罪証隠滅のおそれがないと判断され、逮捕されないこともあるので、自首するというのも逮捕を免れるひとつの選択肢になるでしょう。

盗撮事件を起こし逮捕されないか心配な方、ご家族が盗撮事件で逮捕されてしまいお困りの方は、盗撮事件も含めた刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。

土下座強要で刑事事件

2019-04-07

土下座強要で刑事事件

土下座強要での刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、友人Bと兵庫県神崎郡市川町にあるボーリング場にやってきました。
Aさんは、店員Vの接客態度が悪いと因縁をつけ、Vに「土下座して謝れ。」「土下座せんかったら、店のもん壊したるからな。」「もう、お前ここで働かれへんようにしたるからな。」などと怒鳴りつけ、店員Vに土下座して謝罪することを要求しました。
店員Vは、Aの態度に怯え、Aの要求通り土下座をしました。
翌日、ボーリング場の責任者は、事件を聞き、店員Vと共に兵庫県福崎警察署に相談し、被害届を提出しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

強要罪について

強要罪とは、暴行や脅迫を用いて、相手に義務のないことを行わせる犯罪です。
強要罪は、刑法第223条に以下のように規定されています。

第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

行為

本条1項では、本人の「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用い」る場合、本条第2項では「親族の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫」する場合について規定されています。
(1)「脅迫」
本罪の「脅迫」は、脅迫罪の実行行為としての脅迫と基本的に同じで、「恐怖心を生じさせる目的で、相手方またはその親族の生命、身体、自由、財産に対し、害を加えることを告知する」ことをいいます。
「害悪の告知」に関して、その告知内容は、相手方の対応および客観的状況から判断して、一般に人を畏怖させるにたりる程度のものであることが必要です。
(2)「暴行」
被害者が畏怖し、そのため行動の自由が侵害されるにたりる程度の有形力の行使であることが必要となります。
本罪は、相手方を畏怖させて、瑕疵ある意思を生じさせ、その意思に基づいておこなわせるという犯罪であるため、物理的強制力をもって機械的に行動させた場合には、本罪は成立しません。
暴行について、相手方を畏怖させるにたりる程度のものであることを要求しており、一定の場所にとどまる権利を有する者をその意思を無視して身体を運び出す行為は、有形力の行使であっても、本罪における「暴行」にはあたりません。

結果

(1)義務なき作為の強要
「義務のないことを行わせた」例として、子守の少女に水入りのバケツを数十分ないし数時間、胸のあたりまたは頭上に支持せしめた場合があります。
店員に土下座強要する行為も、義務のなき作為の強要に当たります。
(2)権利実行の不作為の強要
「権利の行使を妨害」するというのは、例えば、告訴を断念させることがあげられます。

故意

本罪の故意は、暴行または脅迫をもって人に義務のないことをおこなわせ、またはおこなうべき権利を妨害することの認識・予見です。

上記ケースでは、Aさんが店員Vさんに対して、「土下座しろ。」「土下座せんかったら、店のもん壊したるからな。」「もう、お前ここで働かれへんようにしたるからな。」と、Vさんの生命・身体・自由に対して害を加える旨を告知しており、この行為は「脅迫」に該当するでしょう。
脅迫を用いて、Aさんは店員Vさんに対し、「土下座」という義務のない作為を強要しており、実際にVさんは土下座しているので、Aさんに対する強要罪は成立するものと考えられます。

強要事件における弁護活動

強要事件のように、被害者がいる事件については、被害者との示談成立の有無が、最終的な処分に大きく影響します。
強要罪は、親告罪ではありませんので、被害者との示談が成立したからといって、必ずしも検察官が起訴しないとは限りません。
しかし、被害者との示談が成立しており、被害者も被疑者に対して処罰を望んでいない場合には、不起訴処分となる可能性は高いと言えるでしょう。
ですので、強要事件では、まず被害者との示談交渉を開始する必要があります。
ただし、被疑者が直接被害者と連絡をとり、示談交渉を行うことはお勧めしません。
被害者が被疑者に連絡先を教えることは稀ですし、当事者間で交渉すると、感情論的になり交渉がうまく進まないことが多いからです。
そこで、示談交渉は弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士であれば、粘り強く被害者との示談交渉を行うことができ、相場の金額で示談を成立させることが期待できます。

兵庫県の強要事件でお困りの方、被害者の方と示談交渉をしたいがどうしたらよいか分からずお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
まずは、フリーダイアル0120-631-881までお気軽にお電話ください。

窃盗事件で逮捕

2019-04-04

窃盗事件で逮捕

窃盗事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県美方郡香美町の民家に侵入し、現金300万円と宝石類を盗んだ疑いで、県内に住むAさんとBさんは兵庫県美方警察署窃盗容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、警察から事件の詳細について教えてもらえず、Aさんと会うこともできず困っていました。
そんな時、知人から弁護士に相談することを提案された、Aさんの家族は、慌ててネットで検索した刑事事件専門の弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです)

窃盗事件で逮捕されたら

あなたが、犯罪を犯し、警察に逮捕されたとしましょう。
あなたは、警察署内の留置場で身体拘束をうけることになります。
逮捕から48時間以内に警察は、あなたを釈放するか、それとも検察に送致するかを決めます。
警察が、あなたの身柄を事件の証拠物などと共に検察に引き継ぐことを「送致」といいます。
検察官は、あなたの身柄を受けてから24時間以内に、あなたを引き続き身体拘束するかどうかを判断します。
被疑者または被告人を拘禁する裁判および執行を「勾留」といいます。
勾留には、起訴前勾留と起訴後勾留とがありますが、ここでは起訴前勾留について説明します。
裁判官が勾留請求しない場合には、あなたは釈放されます。
勾留の要件は、(1)犯罪の嫌疑、(2)勾留の理由、および、(3)勾留の必要性があることです。
(1)犯罪の嫌疑
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がなければなりません。
身体拘束をする上で、犯罪を行ったことを裏付ける事実が必要となります。
しかし、勾留段階では、すべての証拠がそろっていることはなく、ここで要求されている嫌疑の程度は、それほど高いものではありません。
(2)勾留の理由
以下のうち、どれか一つに該当している必要があります。
①定まった住所を有しないとき。
②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(3)勾留の必要性
嫌疑及び勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これにより生ずる不利益とを比較し、権衡を失するときは、被疑者を勾留することは許されません。
以上の要件に該当すると判断した場合には、検察官は勾留請求をします。
勾留請求前の段階で、あなたは、弁護人に依頼し、勾留の要件に該当しないことを示す証拠を収集し、検察官に提出してもらうことで、勾留請求しないよう検察官に働きかけることができます。

検察官が勾留請求をすると、あなたの身柄は裁判所に移され、裁判官はあなたと面会し、事件についてあなたの反論・弁明を聞いた上で、あなたを勾留するかどうかを判断します。
裁判官が、勾留の要件を満たしていると判断した場合には、勾留決定を出します。
勾留が決定する前に、弁護人に依頼し、裁判官に対して勾留決定しないよう、勾留要件を満たさないことを示す証拠を裁判官に提出するなど、働きかけを行うことにより、勾留阻止の可能性を高めることができます。

勾留が決定すると、あなたは、検察官が勾留請求した日から10日間、必要があれば勾留延長され、最大で20日間勾留されます。
ただし、勾留決定に対しては、裁判官に対し不服申立てを行うことができます。
不服申立てを受けた裁判官が、あなたは勾留の要件を満たしていないと判断すれば、勾留決定を取消し、あなたを釈放することになります。

勾留されると、長期間の身体拘束を受けることになり、それによって生じる不利益は小さくはありません。
もし、あなたの家族が刑事事件で逮捕されてしまったのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。
刑事事件専門弁護士が、逮捕されている方のもとへ赴き接見を行う「初回接見サービス」をご案内いたします。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。

刑事事件専門の私選弁護人

2019-04-03

刑事事件専門の私選弁護人

刑事事件専門私選弁護人を選任するメリット・デメリットについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
車を運転していたAさんは、兵庫県相生市の交差点で人身事故を起こしてしまいました。
Aさんは、飲酒していたことがバレると思い、怖くなって、そのまま現場から離れました。
しかし、翌日、兵庫県相生警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんを過失運転致傷および道路交通法違反の容疑で逮捕しました。
Aさんの家族は、すぐに刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)

刑事手続における弁護人の役割

刑事手続は、個々の犯罪に関し犯人の処罰について判断するために設けられた一連の手続です。
この刑事手続には、多くの者が関与しています。
Aさんは、過失運転致傷罪および道路交通法違反の容疑で捜査の対象となっており、「被疑者」として刑事手続における権利・義務の主体となっています。
今後、Aさんは、警察や検察といった捜査機関から取調べを受け、検察官が勾留請求をした場合には、裁判所により勾留の判断がなされることになります。
更に、起訴された場合には、Aさんは裁判を受けることになり、有罪となれば刑罰が科されることになります。
このような手続において、被疑者、或いは、被告人は、自らを法的に防御し、正当に権利を行使し、正当な利益を擁護する必要があります。
しかしながら、現実において、一般市民である被疑者・被告人が、警察や検察官といった捜査機関と比べると、その立場は圧倒的に弱いと言えます。
そこで、刑事手続において、被疑者・被告人の権利を正当に行使し、正当な利益を擁護する「弁護人」の活動が重視されます。

憲法第34条前段は、身柄の拘束を受けている者に対し、憲法第37条3項は、被告人に対して、弁護人依頼権を保障しています。

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

刑事訴訟法は、全ての被疑者・被告人に対し弁護人選任権を保障しています。

第三十条 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。

弁護人の資格として「弁護士」であることが必要とされますが、地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所では、裁判所の許可を受けて、弁護士でない者を弁護人に選任することもできます。

弁護人は、選任方式の違いにより、「私選弁護人」と「国選弁護人」とに区別されます。

私選弁護人
被疑者・被告人、および一定の関係人が選任した弁護人です。
被疑者・被告人が、自ら弁護士を選び、弁護人として選任しますので、自分に合った弁護士を弁護人として選任できるメリットがあります。
医者にも内科医や外科医がいるように、弁護士にもある特定の分野に特化していることが多く、刑事事件専門の弁護士であれば、適切かつ迅速に対応してくれることが期待できます。
一方、デメリットとしては、弁護士費用を自己負担しなければなりませんので、費用面で工面することが出来ない場合には、国選弁護人を検討されるのもオプションのひとつです。

国選弁護人
裁判所、裁判長または裁判官が選任する弁護人です。
国選弁護人は、「被告人国選弁護」と「被疑者国選弁護」の2つの制度によって就任する弁護人です。
(1)被疑者国選弁護
被疑者に対して勾留状が発せられている場合で、被疑者が貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができないときには、裁判官に対し、国選弁護人の選任を請求することができます。
(2)被告人国選弁護
被告人は、貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができないときは、裁判所に対し、国選弁護人の選任の請求をすることができます。
国選弁護人は、費用を国が負担してくれるので、経済面でメリットが大きいのですが、必ずしも刑事事件に詳しい弁護士が選任されるわけではありません。
また、被疑者段階では、勾留前から選任することは出来ませんので、逮捕後すぐに勾留阻止を目指した活動を依頼することはできません。

私選弁護人、国選弁護人ともにメリット・デメリットがあります。
ご自身やご家族が信頼することができる弁護士を選任することが何よりも重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門とする法律事務所です。
刑事事件でお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、0102-631-881まで。

特殊詐欺における共犯③

2019-04-02

特殊詐欺における共犯③

特殊詐欺における共犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)

特殊詐欺と共犯~幇助犯~

前回は、「受け子」として特殊詐欺にかかわった場合に「共同正犯」として正犯として刑事責任が問われる可能性があることを説明しました。
今回は、詐欺罪の「幇助犯」について見ていきたいと思います。

幇助

刑法第62条
1 正犯を幇助した者は、従犯とする。

幇助犯とは、「正犯を幇助した者」のことをいいます。
幇助は、正犯に物的・精神的な支援や援助を与えることにより、その実行行為の遂行を促進し、構成要件該当事実の惹起を促進することを意味します。
つまり、幇助犯が成立するためには、
①幇助者が「正犯を幇助」し、
②被幇助者が犯罪を実行したこと、
が必要となります。

①正犯を幇助すること
幇助犯の成立要件である「正犯を幇助した」と言えるか否かは、「幇助行為の存否」という客観面の検討、並びに、「幇助の故意の有無」という主観面の検討が必要とされています。
(ア)幇助行為
幇助行為は、犯罪の実行を容易にするものでれば、凶器を渡すなどの物理的方法であること、激励するなどの精神的方法であることを問いません。
(イ)幇助の故意
幇助の故意の内容については、争いがありますが、正犯の犯罪行為を容易にしているという認識・容認と、幇助行為の結果被幇助者が犯罪の結果を発生させることを認識・容認していたことも必要とする立場もあります。
②被幇助者が犯罪を実行したこと
幇助者が正犯を幇助し、それに基づき、正犯が犯罪を実行行為したことが必要です。
「幇助の未遂」とは、幇助行為は行われたけれども、正犯が実行の着手に至らなかった場合をいい、被幇助者が実行行為に出たがその犯罪が未遂に終わった場合を「未遂犯の幇助」といいます。
前者は不可罰となり、後者は処罰されます。

共同正犯と幇助犯の区別

「共同正犯」と「幇助犯」の区別は、一般的に、「特定の犯罪を自己の犯罪として実現する意思がある」か、あるいは、「他人の犯罪を手助けする意思がある」にすぎないのか、です。
これらの意思は、主観的なものであり、犯罪の動機、犯罪から得る利益、犯罪までの経緯、正犯者との関係性、犯罪への主体的関与の程度、担った役割の重要性などの事情を考慮して判断されます。
「受け子」についてみれば、例えば、正犯から脅されて特殊詐欺に関与した場合には、自己の犯罪を実現する意思がなかったと判断され、幇助犯が成立する可能性がありますが、特殊詐欺と認識・容認しつつ、小遣い稼ぎのために加担した場合には、自己の犯罪を実現する意思があったと判断され、共同正犯となるでしょう。
共同正犯は正犯として扱われますので、起訴され有罪判決を受けると、詐欺罪の法定刑である10年以下の懲役の範囲内で刑が言い渡されます。
一方、幇助犯で起訴され有罪判決を受けた場合には、5年以下の懲役の範囲内で刑が言い渡されます。

ご家族が特殊詐欺の受け子として詐欺事件に加担してしまい逮捕されてお困りであれば、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
ご本人様が逮捕されている場合には、刑事事件専門弁護士が留置先に赴き接見を行う「初回接見サービス」をご案内いたします。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。

特殊詐欺における共犯②

2019-04-01

特殊詐欺における共犯②

特殊詐欺における共犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)

特殊詐欺と共犯~共同正犯~

特殊詐欺は、組織的に行われ、被害者に電話をかける「かけ子」、被害者から直接現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、キャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」などの役割を分担して犯罪を実行します。
ほとんどのケースで、「かけ子」が組織の主犯格と関りが強く、「受け子」や「出し子」は組織の主犯格と面識がなく、特殊詐欺の実態を把握しないまま指示に従っている傾向が見受けられます。

それでは、「受け子」として特殊詐欺に関った場合には、どのような刑事責任に問われることになるのでしょうか。

複数人が、共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
共犯は、次の3つに分けられます。
1.共同正犯
2.教唆
3.幇助

共同正犯

2人以上共同して犯罪を実行することを「共同正犯」といいます。
共同正犯者は、「すべて正犯」とされます。
つまり、共同して実行した犯罪について、共同者全員が正犯者としての刑事責任を問われることになるのです。
共同正犯には、「実行共同正犯」と「共謀共同正犯」の2種類があります。
実行共同正犯は、共同者全員が実行行為を分担し合って犯罪を実現する場合をいい、共謀共同正犯は、複数人が特定の犯罪を行うため、共同実行の意思のもとに相互に他人の行為を利用しあって犯罪を実現するための謀議をし、共謀者のうちのある者が共同実行の意思に基づいてこれを実行する場合をいいます。
共同正犯が成立するためには、次の要件を満たす必要があります。
①主観的に複数人に共同実行の意思が存在すること。
「共同実行の意思」とは、各行為者が相互に他人の行為を利用し補充しあって構成要件を実現させる意思のことをいいます。
この共同実行の意思は、行為者相互間に存在していなければなりませんが、行為の際に存在すればよく、必ずしも事前の打ち合わせ等があったことは必要とされません。
②客観的に共同実行の事実が存在すること。
複数人が実行行為を共同して犯罪を実現させることを「共同実行の事実」といいます。
「共同して」は、共同者全員が相互に他人の行為を利用し補充しあって犯罪を実行するということを意味します。

特殊詐欺事件において、実行行為を行う時点で、自身が行う行為が詐欺行為に加担するものだと認識あるいは認容しつつ、実際に行為を遂行したのであれば、詐欺罪の共同正犯が認められる可能性があるのです。
「受け子」が指示された場所に赴き、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る際に、「これはもしかして詐欺じゃないのか」と思っていればアウトです。
そのような意思があったか否かは、犯行の経緯・動機、犯罪により得た利益、詐欺組織における役割や関係性、犯罪への主体的関与の程度などの事情が考慮され判断されます。

例え、組織の末端である「受け子」であっても、逮捕・勾留されると長期間身体拘束を受ける可能性が非常に高いです。
また、組織犯罪ということで接見禁止が付される場合もあります。
ご家族が特殊詐欺事件に加担したとして逮捕されたのであれば、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。

特殊詐欺における共犯①

2019-03-31

特殊詐欺における共犯①

特殊詐欺について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、ギャンブルでできた借金の返済に苦労していました。
SNSで「高額アルバイト」で検索すると、「荷物を受け取るだけの高額アルバイト」がヒットしました。
掲載してあった連絡先に問い合わせると、Bと名乗る男が出て、「指定された場所に行ってキャッシュカードを受け取り、現金を引き出すだけ」の内容だと言われました。
Aさんは携帯電話でBと連絡をとり、指定された通りに動きました。
指定された場所に赴く際にはスーツを着用すること、銀行協会の○○だと名乗ることなどが指示されました。
Aさんは、受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出し、自分の取り分を取った残額とキャッシュカードを指定されたコインロッカーに入れました。
このようなことを3~4回繰り返していましたが、ある日、いつものようにBからの指示通りに兵庫県川辺郡猪名川町にある家を訪問した際に、待機していた兵庫県川西警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)

特殊詐欺事件~詐欺罪~

特殊詐欺は組織的に行われることが多く、電話を被害者にかける「かけ子」、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、そして、キャッシュカードを使って現金を引き出す「出し子」と呼ばれる役割を組織内で分担して実行していることにその特徴が見られます。

特殊詐欺に関与した場合、詐欺罪に問われる可能性があります。

詐欺罪は、刑法第246条に以下のように規定されています。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件、つまり、法律の条文上に記載されている犯罪が成立するための原則的な要件は、以下の通りです。
1項詐欺
①人を欺いて
②財物を
③交付させたこと
2項詐欺
①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと

まず、詐欺罪の客体についてですが、1項詐欺では「他人の財物」が客体となります。
自然人であっても法人であってもよく、他人の占有する他人の動産および不動産です。
2項詐欺において、客体とは「財産上の利益」です。
これは、債券などの有体物以外の財産的権利や利益を意味します。
典型的な2項詐欺は、債権者を欺いて債務免除を受け、債務を逸脱して財産上の利益を不正に得る場合です。

詐欺罪が成立するためには、「人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財物または財産上の利益を交付させること」が必要です。
「人を欺く行為による錯誤の惹起」、「錯誤に基づいた交付行為」、「交付行為による財物又は利益の移転」という一連の因果経過をたどることが必要となります。

(1)人を欺く行為
「欺く」とは、一般人をして財物または財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。
また、「人を」欺く行為でなければならいので、機械に対して虚偽情報を入力した場合には詐欺罪における「人を欺く行為」には該当しません。
不正な方法で取得したキャッシュカードを使って銀行のATMから金銭を引き出す行為は、詐欺ではなく窃盗となります。
この点、Aさんが被害者から騙し取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出した行為については、窃盗罪が成立するでしょう。
(2)錯誤
人を欺く行為により生じる「錯誤」は、財産的処分行為をするように動機付けられるものであれば足ります。
換言すると、錯誤は「交付の判断の基礎となる重要な事項」についてのものであって、それがなければ交付行為を行わなかったであろうような重要な事実に関するものでなければなりません。
(3)交付行為
交付行為(処分行為)は、財物または財産上の利益を相手方に移転させる行為をいいます。
交付行為には、財産処分の意思と財産を処分する事実とが必要となります。
財産を処分する意思をまったく有しない幼児や高度の精神病者などには、財産的処分行為は認められず、これらの者を欺いてその財物を奪う行為は窃盗となります。
(4)財物又は利益の移転
財物や利益が交付行為によって移転することで、詐欺罪は既遂となります。

以上の要件に加え、主観的要件である「故意」がなければ詐欺罪は成立しません。
詐欺罪の故意は、「人を欺いて錯誤に陥らせ、かかる錯誤に基づく交付行為により、財物または財産上の利益を交付させ、自己または第三者がその占有を取得することについての表象・容認をいいます。
詐欺だ」と確信をもって行う場合だけでなく、「詐欺かもしれないけど、もしそうだとしてもいいか」と思っていた場合も「故意」が認められることになります。

特殊詐欺は、被害者を騙して金銭やキャッシュカードを取得するものですので、詐欺罪が成立することになります。
では、一連の行為を分担して複数の人が実行した場合には、それぞれがどのような責任が問われるのでしょうか。
次回は、特殊詐欺事件の「共犯」について説明します。

ご家族が特殊詐欺事件に関与し、逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

監護者性交等罪で逮捕

2019-03-28

監護者性交等罪で逮捕

監護者性交等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神崎郡神河町に住むAさんは、妻と妻の連れ子のVさん(13歳)と3人で暮らしていました。
Aさんは、Vさんが12歳の時から、Vさんに対して性交やわいせつな行為を行っていました。
Vさんが深夜俳諧で兵庫県福崎警察署に補導されたことをきっかけに、父親のAさんから性的暴行を受けていることが発覚しました。
Aさんは、監護者性交等罪逮捕されることになりました。
(フィクションです)

監護者性交等罪とは

2017年7月に性犯罪を厳罰化する改正刑法が施行されました。
この改正により、監護者性交等罪が新たに制定されました。

監護者性交等罪は、刑法第179条2項に以下のように規定されます。

第百七十九条 
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

監護者性交等罪は、「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、性交・肛門性交・口腔性交をする」という犯罪です。

被害者が18歳未満であり、精神的に未熟で、かつ精神的・経済的に監護者に依存している状況において、監護者が暴行または脅迫を用いずとも、そのような関係性を利用して、性交等をした場合、被害者の自由な意思決定に基づくものではないと考えられます。
そのため、強制性交等罪と同等の悪質性があるものとして、これと同様に処罰するものとされます。

監護者性交等罪の成立においてポイントとなるのが、「現に監護する者」という成立要件です。
この解釈については、法律上の監護権に基づくものに限られず、事実上、現に監督・保護する者であれば、これに当たり得るとされます。
典型的な監護者は、一緒に生活をしている親です。
同居の親以外にも、事実上親と同程度に保護・監護している場合には、監護者と判断される可能性があります。
その判断にあたっては、同居の有無、生活状況、生活費の負担などが考慮されます。
監護者に該当しない場合でも、一定の影響力を行使し得るものが、18歳未満の男女に性的行為を行った場合には、児童福祉法違反が成立する余地があります。
強制性交等罪においては、被害者が13歳以上である場合、暴行または脅迫を用いて行為に及んだことが必要となりますが、監護者性交等罪では、暴行・脅迫を要件としていません。

監護者性交等罪の法定刑は、強制性交等罪と同様に5年以上の有期懲役です。

監護者性交等罪で逮捕されたら

逮捕から勾留までの間は、原則、家族であっても逮捕された被疑者と面会することはできません。
その間、被疑者は、警察からの取調べや、検察官からの弁解録取、裁判官との勾留質問などを受けることになり、どのように対応すればよいのか分からず不安になるものです。
そのような時には、すぐに弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士であれば、逮捕から勾留までの間であっても、いつでも逮捕された被疑者と面会(接見)することができます。
弁護士は、被疑者から事件の詳細を聞いた上で、今後の流れや処分見込み、取調べ等への対応についてアドバイスすることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
被疑者の方が逮捕されている場合には、弊所の刑事事件専門弁護士が留置施設に赴き、直接接見を行う「初回接見サービス」をご案内いたします。
当サービスの問合せ・ご予約は24時間受付ております。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までご連絡ください。

強制わいせつ事件で不起訴処分

2019-03-27

強制わいせつ事件で不起訴処分

不起訴処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県養父市の路上で、帰宅途中だった高校生の背後から抱きつき、胸を触るなどのわいせつな行為をしたとして、兵庫県養父警察署はAさん(21歳)を強制わいせつの容疑で逮捕しました。
Aさんは容疑を認めています。
Aさんの両親は、逮捕の連絡を受け、慌てて刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)

検察官の事件処理

通常、検察官は、事件を受理してから捜査を開始します。
事件の受理の態様には、以下のようなものがあります。
①司法警察員からの事件送致
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、刑事訴訟法に特別の定めがある場合を除いて、速やかに書類と証拠物と一緒に事件を検察官に送致しなければなりません。
②司法警察員からの事件送付
告訴や告発、または自首に係る事件について、司法警察員は、速やかに一応の捜査を終了した上で、意見を付して書類と証拠物を検察官に送付しなければなりません。
③直受
検察官が、直接告訴や告発、自首、請求を受ける場合。
④認知
検察官が自ら犯罪を探知して捜査に着手する場合。
⑤再起
不起訴処分や中止処分に付した事件について、再び捜査を開始する場合。
検察官は、受理した事件の被疑者や参考人などの関係者の取調べを行い、押収済みの証拠品等の客観的な証拠などを総合的に検討して、事件の真相を解明し、事件処理を行います。
検察官が行う事件処理には、終局処分と中間処分とがあります。
終局処分とは、事件について必要な捜査を遂げた後に、起訴するか否かを最終的に決める処分です。
一方、中間処分は、将来の終局処分を予想し、その前に行う暫定的な処分のことです。
終局処分は、起訴処分と不起訴処分があります。
起訴処分とは、公訴を提起する処分のことで、公訴を提起しない処分を不起訴処分といいます。
不起訴処分は、その理由により以下のように分類されます。

1.訴訟条件を欠く場合
被疑者が死亡した場合、親告罪について告訴が取り消された場合など。

2.被疑事件が罪とならない場合
被疑者が犯行時14歳未満である場合、被疑者が犯行時心神喪失であった場合など。

3.犯罪の嫌疑がない場合
被疑者が人違いであることが明白になったとき、又は被疑者がその行為者であるかどうか、若しくは被疑者の行為が犯罪に当たるかどうかの点について認定すべき証拠がないことが明白になったとき、またはこれらを認定すべき証拠が不十分なときなど。

4.起訴猶予
被疑事実が明白な場合であるが、被疑者の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯行後の状況を考慮し訴追を必要としない場合。

強制わいせつ事件で、被疑事実を認めている場合、起訴猶予での不起訴処分を目指すことになるでしょう。
そのためには、被疑者本人がきちんと反省し、再犯防止のための措置をとることに加え、被害者との示談を成立させることが重要となります。
強制わいせつ罪は親告罪ではありませんので、被害者との示談が成立し、告訴が取り下げられたとしても、検察官は公訴を提起することができます。
しかし、被害者との示談が成立しており、被害者からの許しも得ることができている場合には、検察官が公訴を提起しない決定をする可能性が高いと言えます。
被害者との示談交渉は、通常、弁護士を介して行われます。
多くの場合、被害者は加害者と直接連絡をとることを嫌がられますが、弁護士限りであればコンタクトをとり話を聞いてもよいというケースが多くなっています。
また、当人同士で交渉すると、感情論的になり、交渉が決裂したり、不相当に過大な金額での示談解決となってしまう可能性もあります。
弁護士が間に入ることにより、冷静な交渉により両者が納得できる内容での示談締結が図りやすいでしょう。
ですので、ご家族やご友人が強制わいせつ事件で逮捕されてしまいお困りの方、被害者との示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。
詳しくは、フリーダイアル0120-631-881までお問い合わせください。

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