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警察における処理~微罪処分と簡易送致~
警察における処理~微罪処分と簡易送致~
微罪処分と簡易送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県西脇市にあるスーパーで商品4点(計3000円相当)を万引きしたとして、Aさんは店の外に出た際に、警備員に取り押さえられました。
Aさんは、兵庫県西脇警察署で取り調べを受けましたが、その日に釈放されました。
Aさんは、警察から「また呼び出すかもしれない。連絡がとれるようにはしておくように。」とだけ言われましたが、数か月なんの連絡もありません。
この先どうなるのか心配になったAさんは、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
捜査が終結すると~警察での事件処理~
捜査が開始され、その捜査にも一応の目途がつくと、捜査は終結します。
捜査は、警察または検察官が処理することで終結することになります。
今回は、警察における事件処理についてみていきましょう。
警察が犯罪の捜査をした場合、ある一定の場合以外は、速やかに書類や証拠物とともに事件を検察官に送致することになっています。
その例外として、
①告訴・告発・自首を受けた事件
②身柄拘束の法定期間からくる例外
③少年法41条による例外
④微罪処分
⑤簡易送致
とがあります。
微罪処分について
犯罪が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについて、警察は、事件を送致しないことができます。(刑事訴訟法246条但書、捜査規範198条)
この処分を「微罪処分」といいます。
どの事件が微罪処分の対象となるかは、検事総長の通達に基づいて、各地方検察庁のトップである検事正が一般的指示の形で決まります。
対象となる事件は、各地方検察庁により異なりますが、概ね、被害額や犯情などが軽微であり再犯のおそれがない、窃盗、詐欺、横領、盗品等譲受け等、賭博といったものです。
簡易送致について
簡易送致は、微罪処分に似ていますが、少年事件について行われるものです。
検察官または家庭裁判所があらかじめ指定した事件であり、事実が極めて軽微で、再犯のおそれがなく、刑事処分又は保護処分を必要としないものについては、通常の送致の手続をとりません。
簡易送致では、少年事件簡易送致書というものを作成し、1か月分まとめて検察官あるいは家庭裁判所に送致します。
微罪処分・簡易送致ともに、警察段階で事件が終了していますので、前科がつくことはありません。
「前科」というのは、検察官に起訴され、裁判所に有罪判決で刑が言い渡された事実です。
略式起訴で略式命令を受け罰金刑となった場合も、正式裁判で有罪判決(執行猶予判決を含む)を言い渡されたも、前科がつくことになります。
微罪処分・簡易送致で事件が終了した場合、「前科」はつかなくとも、「前歴」はつくことに注意が必要です。
「前歴」とは、刑事事件の被疑者として捜査対象となった事実です。
前歴については、警察および検察の管理するデータに保存されますので、次回犯罪を起こしてしまった場合には、初犯として扱われることはありません。
あなたやあなたの家族が刑事事件を起こしてしまい、対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
逮捕から勾留決定まで~勾留の要件~
逮捕から勾留決定まで~勾留の要件~
勾留の要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
ある夜、兵庫県三木市の自宅で晩酌をしていたAさんは、つまみが切れていたことに気が付き、近くのコンビニまで買いに行くことにしました。
Aさんはビール缶1本を飲み干したところでしたが、近所のコンビニまでなら大丈夫だと思い、そのまま自分で運転していくことにしました。
コンビニで買い物を終えて帰宅する途中、交差点を左折した際、手前から横断歩道を渡っていた自転車に気が付かず、自転車と接触し、自転車を横転させてしまいました。
Aさんは、飲酒運転していたことがバレることを恐れ、被害者を救助することなく、その場を後にしました。
後日、兵庫県三木警察署がAさん宅を訪れ、Aさんを逮捕しました。
Aさんは、その後勾留請求のため神戸地方検察庁に送致されましたが、このまま勾留となるのか不安でなりません。
(フィクションです)
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者の身柄を解放するか、身柄と証拠書類などを検察に送致するかを決めます。
検察に送致された場合、検察官は被疑者を取り調べた上で、引き続き身柄を拘束し捜査する必要があると判断すれば、裁判官に勾留請求を行い、その必要がないと判断した場合には勾留請求せずに被疑者を釈放します。
勾留の要件とは
「勾留」とは、被疑者・被告人の身柄を拘束する裁判とその執行をいいます。
この勾留には、「被疑者勾留」(起訴前勾留)と「被告人勾留」(起訴後勾留)とがあります。
ここでは、前者について説明していきます。
勾留の要件は、次のとおりです。
①勾留の理由
②勾留の必要性
1.勾留の理由
勾留の理由というのは、(ア)被疑者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、および、(イ)住所不定、罪証隠滅、逃亡のおそれのいずれかがあることをです。
2.勾留の必要性
勾留の必要性は、事案の軽重、捜査の進展の程度、被疑者の年令や身体の状況等から判断した「勾留の相当性」です。
被疑者勾留は、検察官の請求を受けて、裁判官が勾留状を発することにより行われます。
勾留請求を受けた裁判官は、被疑者に対し被疑「事件を告げこれに関する陳述を聴」かなければなりません。
これを「勾留質問」といいます。
検察官が裁判官に勾留請求した後、被疑者の身柄は検察庁から裁判所に移されます。
裁判所では、被疑者は公正中立な立場にある裁判官と面談し、事件についての弁解を聴いてもらうことになります。
裁判官は、勾留質問を行った上で、勾留の要件を満たさないと判断した場合には、検察官の勾留請求を却下し、被疑者を釈放します。
一方、勾留の要件を満たすと判断されれば、勾留状を発します。
勾留期間は、原則として、検察官が勾留請求をした日から10日間です。
また、検察官は、裁判官に対して、勾留期間延長の請求をすることができ、裁判官は、「やむを得ない事由がある」と認めるときは、勾留期間を延長することができます。
勾留延長は、10日を超えない範囲で認められますので、最大で勾留期間は20日となります。
兵庫県では、検察へ送致された日に勾留決定までが行われます。
たった一日で、その後の身体拘束の如何が決まってしまうのです。
逮捕された日からであれば、長くて3日、多くの場合は2日で勾留まで決まってしまいます。
「逮捕された!」と驚いていると、あっという間に勾留となり、長期間の身体拘束を余儀なくされてしまう可能性があるのです。
ですので、逮捕されたら、できる限り早い段階で弁護士に相談され、身柄解放に動くことが重要です。
弁護士は、勾留が決定する前に、勾留されないよう関係各所に働きかけます。
具体的に言いますと、まずは、検察に送致された段階で、担当検察官と連絡をとり、勾留要件を満たさない旨を客観的証拠と併せて書面にて担当検察官に対して説得的に主張します。
勾留請求後には、裁判官に対して、当該被疑事件において勾留の要件を満たしていないことを書面にて主張し、裁判官が勾留決定しないよう働きかけます。
これらの働きかけは、検察官の勾留請求をする前、裁判官が勾留を決定する前に行わなければ意味がありません。
そのため、刑事事件、特に身柄事件においては、刑事事件に熟知した弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件を起こし逮捕されてお困りの方、早期身柄解放とならないかご不安であれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約は、フリーダイヤル0120-631-881まで今すぐご連絡を!
逮捕から勾留決定まで~取調べ対応~
逮捕から勾留決定まで~取調べ対応~
逮捕から勾留決定までの取調べ対応について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市垂水区に住むAさんは、友人と居酒屋で飲んだ後、バーに入りました。
そこで、隣に座ったVさんと意気投合し、次の店に移ろうという話になりました。
しかし、Aさんは、Vさんといい雰囲気になったと思い、その場の流れでホテルに行けると思い、タクシーでホテル街へ向かいました。
Vさんはタクシーで移動中に眠ってしまっており、ホテルへ入る際も、Aさんが肩をかして入店する状態でした。
Aさんは、Vさんの合意があったと思い、性交渉に及びましたが、翌日Aさんが目覚めるとVさんの姿はなく、「合意なく行われた。警察に被害届を出します。」との置手紙が置いてありました。
後日、兵庫県垂水警察署の警察官がAさん宅を訪れ、準強制性交等の疑いでAさんを逮捕しました。
Aさんは、逮捕後あれよあれよという間に勾留決定がなされ、今後どのような流れになるのかとても不安になってきました。
(フィクションです)
刑事事件で逮捕されたら
逮捕から検察への送致まで
Aさんは、「強制性交等罪」という犯罪を犯した疑いで警察に逮捕されました。
Aさんの身柄は警察署に移され、警察署で取調べを受けることになります。
この取調べで供述した内容は、「調書」として記録されます。
調書は、検察にも送られる資料で、刑事裁判となった場合には証拠として取り扱われ得る重要なものです。
逮捕された直後に作成される調書は、「弁解録取書」と「身上経歴調書」です。
前者は、被疑者の事件についての弁解を記すものです。
後者は、被疑者自身のことについて記されており、履歴書のような内容となります。
このように、逮捕されると、すぐに警察による取調べが始まります。
この取調べにおいて、被疑者は必ず取調官の質問に答えなければならないわけではありません。
黙秘権
憲法第38条
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
刑事訴訟法第198条2項
前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
取調べに際して、被疑者は自己の意思に反して発言しない権利が保障されています。
どのような場合に黙秘するのがより効果的であるのかはケースにより異なりますでの、弁護士と相談した上で、当該権利を効果的に使われるのがよいでしょう。
また、取調べで被疑者が話した内容が「調書」として記録されることは前述したところですが、その調書に被疑者が署名押印することで、「調書に記載されている内容は被疑者が発言したもので間違いない」ものとして後の裁判で証拠として取り扱われます。
そのような重大な意味を持つものですから、出来上がった調書に署名押印する際にはしっかりとその内容を確認しなければなりません。
この署名押印もまた義務ではありません。
調書の内容が納得できるものでなければ、修正を求めることもできます。
納得できなければ、署名押印を拒否することもできますので、少しでも迷った場合には、署名押印する前に弁護士に相談するのがよいでしょう。
逮捕されたとしても、警察が取調べを行った上で、被疑者の身体拘束を継続する必要がないと判断した場合には、被疑者は釈放されます。
一方、警察が書類とあわせて被疑者の身柄を検察に送った場合には、今度は検察官からの取調べを受けることになります。
これらの判断は、逮捕から48時間以内に行われます。
逮捕により身柄が拘束された場合には、被疑者も多くの不利益を被ることになるので、手続にも厳格な時間的制約が設けられています。
逮捕から勾留決定までの間は、被疑者の家族であっても、原則として被疑者と面会することは出来ません。
しかしながら、弁護士であれば、いつでも逮捕された方と面会(接見)することが可能ですので、ご家族が逮捕されてお困りの方は、すぐに弁護士に接見を依頼されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件でお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約は、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
取調べ~被疑者の権利:弁護人選任権~
取調べ~被疑者の権利:弁護人選任権~
被疑者の権利(弁護人選任権)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県尼崎市の駅構内で、見ず知らずの女性の身体を触ったとして、会社員のAさんは迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されました。
Aさんは兵庫県尼崎南警察署に連れて行かれ取調べを受けています。
(フィクションです)
取調べにおける被疑者の諸権利
あなたが、何らかの罪を犯し、刑事事件の被疑者として捜査の対象となれば、捜査機関からの取調べを受けることになります。
また、身体拘束が必要と判断されれば、逮捕・勾留により長期の身体拘束となる可能性もあります。
「被疑者」とは、公訴の提起前において、犯罪の嫌疑により捜査の対象となっている者のことです。
「被告人」は、公訴を提起された者です。
両者とも、刑事訴訟におけるもっとも実質的な当事者として、刑事手続における権利義務の主体となります。
ここでは、取調べに関連した被疑者の権利についてご説明したいと思います。
1.弁護人選任権
弁護人選任権に関して、憲法は次のように定めています。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
憲法第34条の前段は、身体拘束を受けている者に対して、また憲法第37条3項は、被告人に対して、弁護人選任権を保障しています。
これを受けて、刑事訴訟法は、被告人または被疑者はいつでも弁護人を選任できることを定めています。
第三十条 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
○2 被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。
被疑者・被告人は、法律知識に乏しく、身体拘束されて活動の自由が奪われている場合が多いため、相手方当事者である検察官と対等の立場で防御活動をすることが困難な立場にいます。
そこで、検察官と同等の法律的能力を持つ弁護人に被疑者・被告人を補助させ、当事者主義を実質的に保障する目的を有しています。
被疑者・被告人が選任する弁護人には、「私選弁護人」と「国選弁護人」の2種類あります。
(1)私選弁護人
「私選弁護人」は、被疑者・被告人またはその一定の関係者が選任した弁護人です。
弁護士費用は自己負担となりますが、被疑者・被告人またはその家族が弁護人を選ぶことができますので、弁護人の専門性や経験、人柄などを考慮して選任することができる点でメリットがあると言えるでしょう。
(2)国選弁護人
「国選弁護人」は、裁判所または裁判長が被告人のために選任した弁護人です。
被疑者・被告人が経済的理由により弁護人を自ら選任することができない場合に、国がその費用で弁護人を付することにより、被疑者・被告人の権利を守ることを目的とする国選弁護制度に基づき、就任した弁護人です。
国選弁護制度には、起訴後の被告人国選弁護と、起訴前の被疑者国選弁護との2つに分けられます。
●被告国選弁護●
被告人は、貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができないときは、裁判所に対し、国選弁護人の選任の請求をすることができます。
被告人が国選弁護人を請求するためには、自身の資力申告書を提出しなければなりません。
資力が50万円に満たない場合には、その請求が認められます。
また、法定刑が死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件、公判前整理手続若しくは期日間整理手続に付された事件又は即決裁判手続による事件については、既に私選弁護人が選任している場合を除き、裁判所は国選弁護人を選任しなければなりません。
●被疑者国選弁護●
被疑者の国選弁護人の請求は、次の要件を満たす場合に認められます。
・死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮に当たる事件であること。
・被疑者に対して勾留状が発せられていること。
・貧困その他の事由で弁護人を選任することができないこと。
被疑者国選弁護制度は、被疑者が勾留されており、かつ一定の重い事件に限られるため、全ての被疑者に認められるものではありません。
私選弁護人と国選弁護人は、選任方式の違いによる手続上の差異を除けば、基本的な権利義務は同じです。
しかし、被疑者段階においては、身体拘束の有無や起こした事件の種類により国選弁護人を選任することができない場合があります。
上記ケースでは、迷惑防止条例違反事件であり、Aさんは被疑者国選弁護制度の対象外となります。
逮捕後、更なる身体拘束を阻止するため、また早期事件解決のため被害者との示談を成立させるためにも、刑事事件で逮捕されたら早期に弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所(フリーダイヤル0120-631-881)までご連絡ください。
刑事事件で逮捕~現行犯逮捕~
刑事事件で逮捕~現行犯逮捕~
現行犯逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県篠山市の公園で、下半身を露出した男性がいるとの目撃者からの通報を受けて兵庫県篠山警察署の警察官が現場に駆け付けました。
警察官は、現場にいたAさんに話を聞いたところ容疑を認めたので、公然わいせつの容疑で現行犯逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、このまま身体拘束が長引くと会社をクビになってしまうのではないかと心配し、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
前回まで、3種類ある逮捕のうち「通常逮捕」と「緊急逮捕」について説明しました。
今回は、残りの「現行犯逮捕」についてみていきましょう。
現行犯逮捕について
現行犯逮捕は、現に罪を行っている、あるいは行い終った直後の者の場合に、逮捕状なしに逮捕できるというものです。
現行犯逮捕については、刑事訴訟法第213条に規定されています。
第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
現行犯逮捕は、現行犯は逮捕者の面前における犯行であるから、嫌疑が明白で、犯人を誤認して逮捕する危険が少なく、緊急性があるため、令状主義の例外として無令状の逮捕を認められています。
「現行犯人」については、刑事訴訟法第212条で次のように定められています。
第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
「現行犯人」の定義について
(1)「現に罪を行う者」
「現に罪を行う」とは、逮捕者の面前で犯罪の実行行為を行いつつある場合をいいます。
「罪」は特定されたものであることが必要となります。
(2)「現に罪を行い終った者」
「現に罪を行い終った」とは、犯罪の実行行為を終了した直後をいいます。
この判断は、時間的接着性および場所的接着性を考慮して行われます。
時間的接着性というのは、犯行と逮捕との間が時間的にそれほど隔たっていないことをいい、場所的接着性は、犯行と逮捕が場所的にも近接していることを指します。
「準現行犯人」の定義について
刑事訴訟法第212条は、その第2項で、現行犯人とみなす者(「準現行犯人」)について規定しています。
準現行犯人は、現行犯人とのものではないけれど、罪を行い終って間がない犯人であることの明白性が価値的に現行犯と同視できることから、現行犯とみなされます。
(1)「罪を行い終ってから間がない」
「間がない」というのは、時間的・場所的に近接した時点をいいます。
「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるとき」という文言は、刑事訴訟法第212条第2号の各号とあわせて、犯罪と被逮捕者との結びつきが逮捕者に明白であることを必要とします。
①追呼
「犯人として追呼されているとき」というのは、犯人として追われている、或いは呼びかけられている状態です。
②贓物等の所持
「贓物(ゾウブツ)」とは、他人の財産を侵害する犯罪行為によって不法に領得された財物を意味します。
「兇器」とは、人を殺傷し得る器物で、一般人をして危険を感じさせるものであればよいとされます。
この兇器は、「明らかに犯罪の用に供したと思われ」なければなりません。
③犯罪の顕著な証跡
その犯罪を行ったことが外部的に、客観的に明らかといえる痕跡が身体あるいは服に認められる場合です。
④誰何されて逃走
「誰何」という言葉は、相手が何者かわからないときに、呼び止めて問いただすことを意味しますが、ここでは、これに類似する行為も含まれます。
現行犯逮捕は、警察などの捜査機関のほか一般人でも可能です。
一般人が現行犯逮捕した場合、直ちに検察官または司法警察職員に現行犯人を引き渡さなければなりません。
公然わいせつ事件は、目撃者が警察に通報し、現場に駆け付けた警察官が現行犯逮捕するケースが多いです。
刑事事件で逮捕されたら、できるだけ早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件で逮捕~緊急逮捕~
刑事事件の緊急逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県洲本警察署は、殺意を持ち、ゴルフクラブで男性Vさんの頭部を殴ったとして、兵庫県洲本市に住む少年Aくんを殺人未遂容疑で緊急逮捕しました。
Aくんは、「Vさんとトラブルになりカッとなって殴ってしまったが、殺すつもりはなかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、急いで接見に行ってくれる弁護士を探しました。
(フィクションです)
被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分である「逮捕」には、3種類あり、前回はそのうちの「通常逮捕」について説明しました。
今回は、「緊急逮捕」についてみていきたいと思います。
「逮捕」や「現行犯逮捕」というワードは、ニュースなどで頻繁に耳にしているとは思いますが、「緊急逮捕」についてはあまり聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
緊急逮捕とは、一定以上の重大な罪の嫌疑が高い場合、急速を要して、裁判官に対して逮捕状を請求することができないため、ひとまず被疑者の身柄を確保した上で、その後、直ちに逮捕状を請求するものです。
緊急逮捕については、刑事訴訟法第210条に次のように規定されています。
第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。
当該条項の趣旨は、現行犯以外の場合で、犯人であることが明らかであるが、事前に逮捕状が必要であるとすると、その手続をしている間に被疑者が逃亡し、その後の逮捕が極めて困難になる場合もあるため、事実発見の観点から、一定の重い罪について厳重な制限の下に無令状の逮捕を認めた点にあります。
この緊急逮捕は、令状主義との関係で、憲法に反しているのではないかとの議論がありましたが、この点、最高裁判所は、「厳格な制約の下に、罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求めることを条件都市、被疑者の逮捕を認めることは、憲法33条規定の趣旨に反するものではない」とし、その合憲性を認めています。(最大判昭30・12・14)
緊急逮捕をする際には、被疑者に「その理由を告げて」行わなければならないとありますが、「その理由」には被疑事実の要旨および急速を要する事情にあることが含まれます。
緊急逮捕の要件は次の通りです。
①一定の重大犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること。
死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪が対象となります。
この「罪」は特定されている必要があります。
そして、そのような重大犯罪を犯したことに対して、単なる疑いがあるだけでは足りず、通常逮捕においては「相当な」とあるのに対して、緊急逮捕では「充分な」とあるため、より高い嫌疑が必要です。
②急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと。
「急を要し」とは、被疑者が逃走しまたは証拠を隠滅するおそれが高く、逮捕状を請求している時間的余裕がないことをいいます。
③理由の告知をすること。
④逮捕後、直ちに逮捕状請求の手続をすること。
⑤逮捕の必要性があること。
通常逮捕と同様に、逮捕時に逮捕の必要があることが前提となります。
このように、緊急逮捕の要件は通常逮捕よりも厳しいものになっています。
通常逮捕や現行犯逮捕と比べると、緊急逮捕で身柄確保となる件数は少なくなっています。
しかし、緊急逮捕された後の流れも、他の逮捕と同様に、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察に送致するかを決めます。
警察が検察に被疑者の身柄と証拠書類等を送致した場合、検察官は被疑者を取り調べた上で、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に対して勾留請求を行うかを決定します。
検察官が勾留請求をすると、裁判官は被疑者と面談をし、被疑者を勾留するか、釈放するかを判断します。
裁判官が勾留を決定した場合、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間身柄が拘束されることになります。
そのような長期の身体拘束を避けるためにも、逮捕されたら早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
刑事事件で逮捕~通常逮捕~
刑事事件で逮捕~通常逮捕~
刑事事件の通常逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県姫路市の路上で、性的暴行を加える目的で、帰宅中の女子高生Vさんの後をつけ、背後から襲い、「騒いだら殺す」などと脅迫し、性交しようとしたろこと、Vさんが抵抗したため、犯人がその場から逃げ出すという強制性交等未遂事件が発生しました。
兵庫県姫路警察署は、現場付近の防犯カメラの映像から、県内に住むAさんを特定しました。
ある朝、Aさん宅に兵庫県姫路警察署の署員が訪れ、逮捕状をAさんに提示し、Aさんを逮捕しました。
(フィクションです)
捜査の流れ
捜査は、警察などの捜査機関が、犯罪があると考える時に、犯人と思われる者(被疑者)を特定・発見し、必要な場合には、被疑者の身柄を確保するとともに、証拠を収集・保全するといった一連の手続です。
捜査は、被害届の提出や告訴・告発、警察官による職務質問、犯人の自首などをきっかけに開始されます。
捜査は、強制処分による強制捜査と、任意処分による任意捜査の方法により行われます。
捜査は、基本的に次のような原則に基づいて行われます。
・強制処分を用いるのは、刑事訴訟法にそれを許す特別の規定がある場合に限られます。
・捜査は、基本的には任意捜査の方法によって行われることになっています。
・被疑者の身柄拘束や捜索・押収は、原則として、あらかじめ裁判官の発布する令状を得て行われなければなりません。
これらの原則に基づいて捜査を行うわけですので、被害者の身柄拘束を伴う「逮捕」の実施にもきちんとしたルールが定められているのです。
「逮捕」とは、被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分をいいます。
この「逮捕」は、次の3種類に分けられます。
①通常逮捕
②緊急逮捕
③現行犯逮捕
今回は、①の「通常逮捕」についてみてきましょう。
通常逮捕について
通常逮捕は、裁判官からあらかじめ逮捕状の発付を受けて行われるものです。
憲法第33条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
逮捕は人の身体の自由を奪う重大な処分ですので、逮捕の許否判断は、原則として裁判官の事前の審査によるものとされます。
通常逮捕の要件は、
(1)逮捕の理由(刑事訴訟法第199条1項本文)
(2)逮捕の必要性(同条2項ただし書)
です。
(1)逮捕の理由
逮捕の理由とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことをいいます。
捜査機関が被疑者に対して数回出頭要請をしたにもかかわらず、当該被疑者が無視した場合、それ自体では犯罪の嫌疑があるとはいえないので逮捕の理由とはなりません。
しかし、それが続くことで、逃亡・罪証隠滅のおそれが増し、逮捕の必要性が推認される可能性はあります。
(2)逮捕の必要性
逮捕の必要性とは、被疑者の逃亡・罪証隠滅のおそれをいいます。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕状の必要性について判断します。
一定の軽微な犯罪については、被害者の住所不定、正当な理由なく出頭要求を無視する場合のみに逮捕の必要性が認められます。
以上の要件を満たすと裁判官が判断した場合、逮捕令状が発付され、捜査機関により逮捕が実施されます。
逮捕されると、逮捕に引き続き短時間(48時間以内)の身体拘束を強いられることになります。
また、逮捕されることにより、家族や学校・職場に事件のことが発覚する可能性もあります。
そのような事態を回避するため、できるだけ早期に弁護士に相談し、逮捕を回避してもらえるよう捜査機関への働きかけを行うのがよいでしょう。
具体的には、弁護士は、家族等の身元引受人により被疑者の監督が期待できることや、学校や仕事があり逃亡するおそれがないこと、被害者がいる事件では被害者と連絡が取れない状況であることなど、逮捕の要件である逮捕の必要性がないことを客観的な証拠に基づき説得的に主張します。
あなたが、刑事事件を起こし、逮捕されるのではないかと不安を覚えいらっしゃるのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
捜査の端緒~自首~
捜査の端緒~自首~
捜査の端緒(自首)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県小野市のゲームセンターで、女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したAさん。
その様子を他の客が見ていたらしく、その客が店員に通報しようとしていることが分かり、Aさんは慌ててゲームセンターから逃げ出しました。
その後、店から誰かが追ってくる姿は確認しませんでしたが、Aさんは、店内に防犯カメラがあることからいずれ自分の犯行だと分かり、警察が逮捕しに来るのではないかと気が気ではありません。
自首したほうがよいのか、逮捕されるのだけはどうしても回避したいAさんは、刑事事件に強い弁護士に法律相談を申し込みました。
(フィクションです)
捜査の端緒として、主に
①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
②警察官による現認、職務質問、取調べ
③犯人の自首
があることは先述しました。
今回は、③の「自首」について説明していきましょう。
自首とは
みなさんは、「自首」という言葉は聞かれたことはありますよね?
「自首」は「犯人が警察署に出頭すること」によって成立する、と誤解されている方も多くいらっしゃるようです。
実は、法律上の「自首」が成立するためには、幾つかの要件を満たさなければならないのです。
「自首」とは、犯罪事実または犯人が誰であるかが捜査機関に発覚する前に、犯人自ら進んで犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示のことをいいます。
自首については、刑法第42条に次のように規定されています。
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
自首の成立には、以下の要件を満たす必要があります。
(1)自発的に自己の犯罪事実を申告すること
犯罪事実を自発的に申告していなければならず、単に捜査機関の取調べに対して自白した場合には、自発的な申告とはいえません。
もっとも、逮捕・勾留中の取調べ中であっても、未だ捜査機関に発覚していない余罪について自白した場合には自首が成立することになります。
しかし、捜査機関が嫌疑を持っていた場合には成立しないので注意が必要です。
また、発覚前に犯行をほのめかしたことをきっかけに行われた取調べで自供するに至った場合も自首は成立しません。
(2)自己の訴追を含む処分を求めること
犯罪事実の申告は、自己に対する処罰を求める趣旨が明示的もしくは黙示的に含まれていることが必要です。
犯罪事実の申告が、犯罪の一部を隠すためや、自己の責任を否定するものであった場合には自首は成立しません。
(3)捜査機関に対する申告であること
検察官や司法警察員に対して犯罪事実を申告していなければなりません。
(4)捜査機関に発覚する前に申告していること
犯罪事実だけでなく、犯人が誰かということまでも捜査機関が分かる前に申告する必要があります。
報告した相手が犯罪事実を知らない場合であっても、他の捜査機関の者が知っていれば、自首は成立しません。
また、犯罪事実および犯人が特定されているが、犯人の住所だけが不明の場合にも、発覚前とは言えません。
自首が成立した場合の効果
上の要件を満たし、自首が成立すると、刑が減軽される可能性が生じます。
自首をした者に対して刑を減軽するかどうかは、裁判所の裁量によって判断されるため、事件の性質や、自首の態様などの諸般の事情を総合的に考慮して決定されることとなります。
また、自ら犯行を素直に認めて捜査機関に出頭しているため、逃亡や罪証隠滅のおそれがないと判断されやすくなります。
そのため、逮捕されずに在宅で捜査がすすんだり、逮捕後に勾留請求されなかったり勾留請求が却下されたりと、早期に釈放される可能性が高まります。
先述のように、自首の成立には満たすべき要件がありますので、刑事事件を起こし自首を検討されている方は、一度刑事事件に強い弁護士にご相談されることをお勧めします。
また、自首の前に弁護士に相談することで、その後の刑事手続について説明や取調べ対応についてのアドバイスを受けることもできます。
刑事事件を起こしてしまい自首をしようかとお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を!
捜査の端緒~職務質問~
捜査の端緒~職務質問~
捜査の端緒(職務質問)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市東灘区の路上をライトを点灯せずに自転車で通行していたAさん。
すると、兵庫県東灘警察署の警察官に呼び止められ、職務質問を受けました。
Aさんは、職務質問を拒否し、その場を立ち去ろうとしたところ、警察官が自転車のハンドルを持っていたため、うまく立ち去ることが出来ませんでした。
Aさんは、そのまま職務質問を受けたところ、乗っていた自転車が盗難車であることが発覚し、そのまま兵庫県東灘警察署で取り調べを受けることになりました。
しかし、Aさんは警察官の職務質問に不満があるようです。
(フィクションです)
前回、「捜査の端緒」のうちの①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発、について説明しました。
今回は、②警察官による現認、職務質問、取調べ、のうちの「職務質問」についてみていきたいと思います。
職務質問
職務質問というのは、警察官が、「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」等を、「停止させて質問すること」です。(警職法第2条1項)
職務質問は、主として、これから行われようとする犯罪の予防、及び、すでに行われた犯罪の鎮圧を目的として、街頭などで日常的に行われています。
職務質問の対象となるのは、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して」、
①罪を犯したと疑われる者、
②罪を犯そうとしていると疑われる者、
③すでに行われた犯罪について知っていると認められる者、
④犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者
です。
警察官は、このような者を「停止させて質問する」ことができますが、その場で質問をすることが本人に対して不利であり、また交通の妨害となると認められる場合には、付近の警察署、派出所、駐在所に「同行」を「求めることができ」ます。(警職法第2条2項)
これは、行政警察目的の任意同行で、犯罪捜査の一環である司法警察目的の任意同行とは区別されます。
職務質問およびその後の任意同行は、あくまでも「任意」であるので、要求に対する協力は強制されるものではありません。
ですので、制度上、警察から職務質問を受けても対応や回答を強いられることはなく、拒否して立ち去ることは可能です。
しかし、職務質問においては、逮捕の場合ような強制力を行使することはできないとしても、対象者が停止、応答ないし同行を拒む場合、言語による説得のみが許されるとしたら、職務質問の持つ犯罪防止・鎮圧の目的が実質的に意味を持たないことになります。
法文上、身柄の拘束や意に反する連行が認められないことは明らかで、犯罪がまさに行われようとしている際に抑止が認められますが(警職法第5条)、それ以上の規定はなく、職務質問における「停止」の意義、つまり、職務質問の際の有形力の行使が認められるかが問題となります。
この点、最高裁は、任意捜査における有形力の行使につき、強制手段にわたらない限り、「必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される」としています。(最三小決昭51・3・16)
この「必要性、緊急性、相当性」を判断する際の考慮要素として、
・対象者の嫌疑の内容と程度
・対象者の対応、
・侵害される対象者の利益と程度
・警察側の対応、
・有形力行使の態様・程度
などが多くの裁判例で挙げられています。
過去の判例で、以下の行為は適法とされました。
・職務質問中に逃げた者を130メートル追いかけ、背後から腕に手をかけ停止させた行為。
・酒気帯び運転の嫌疑がある者の逃走防止のため、窓から手を入れてエンジンキーを回してスイッチを切った行為。
・交通整理等の職務に従事していた警察官につばを吐きかけた通行人の胸元をつかみ歩道上に押し上げた行為。
・ホテルの宿泊客に対する職務質問を継続するため、ドアを押し開け、ドアが閉められるのを防止した行為。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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捜査の端緒~被害届・告訴・告発~
捜査の端緒~被害届・告訴・告発~
捜査の端緒(被害届・告訴・告発)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県三田市にあるマンションに住むAさんは、マンションの駐輪場に原付を止めていましたが、大型のバイクの止め方が気に食わず、怒りに任せてバイクを蹴って倒してしまいました。
Aさんは、倒したバイクを起こすことなくそのまま放置してその場を立ち去りました。
バイクの持ち主も、最初はたまたまこけたのかと思っていましたが、その後も何度かバイクが倒れていたため、誰かが故意にやっているのではないかと思い、兵庫県三田警察署に相談に行きました。
マンションに警察官が来ているところを見たAさんは、自分が被疑者として調べられているのではないかと思い、気が気でなりません。
(フィクションです)
捜査の端緒
捜査は、捜査機関が「犯罪がある」と考えるときに開始されます。
そのように考えるきっかけを「捜査の端緒」と呼び、概ね次のものが挙げられます。
①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
②警察官による現認、職務質問、取調べ
③犯人の自首
被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
事件の被害者が警察に被害届を提出したり、告訴を行ったり、関係者からの告発があった場合に、当該事件が捜査機関に発覚するケースは少なくありません。
(A)被害届
犯罪被害者が、捜査機関に対して、犯罪による被害の事実を申告する(被害届の提出)ことにより、捜査が開始される場合があります。
(B)告訴
犯罪の被害者及びその他の告訴権者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その訴追を求める意思表示を「告訴」をいいます。
被害届が犯罪事実の申告行為のみであるのに対して、告訴は犯人の訴追・処罰を求める点で異なります。
告訴は、犯罪事実に対して行うものであって、犯人に対して行うものではありません。
ですので、告訴の内容としては犯人の特定は必ずしも必要ではなく、判例は、親告罪である名誉棄損被告事件において、告訴には必ずしも被告人の氏名を指定する必要はないとしています。
告訴することができるのは、原則、犯罪被害者と被害者の法定代理人です。
告訴することができるのは、犯人を知った日から6ヶ月です。
告訴は、書面または口頭で、検察官または司法警察員に行い、告訴は、公訴の提起があるまで取り消すことができます。
しかし、いったん取り消した後は、再度告訴することはできません。
告訴は、親告罪においては特に重要な意味を持ちます。
「親告罪」というのは、告訴がなければ公訴を提起することができない罪のことです。
例えば、未成年者略取誘拐罪、名誉棄損罪、侮辱罪、過失傷害罪、器物損害罪などです。
(C)告発
告発は、第三者が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追・処罰を求める意思表示です。
告発の手続や効果は、告訴の場合に準ずることになりますが、代理人によることができないこと、期間の制限がないこと、起訴後の取消や取消後の再告発が禁止されていないことが異なります。
被害届の提出、告訴がされたら
被害者等から捜査機関に被害届が提出されたり告訴された場合、捜査機関は捜査を開始します。
捜査機関が被疑者を特定し、逮捕の要件を満たすと判断されれば、被疑者を逮捕することもあります。
しかし、捜査機関に事件が発覚する前に、被害者との示談が成立し、被害届の提出や告訴を行わない旨の約束ができれば、捜査機関が捜査を開始することもなく事件は終了します。
被害者等が既に被害届を警察に提出していたり、告訴をしてしまっていた場合でも、早期に被害者との示談を成立させ、被害届や告訴を取り下げてもらえれば、不起訴処分となる可能性も高まります。
このように、事件の早期解決には、被害者との示談の有無が大きく影響するわけですが、加害者が直接被害者と示談交渉することは困難です。
なぜならば、元々被害者と加害者が知り合いであるといった場合や被害者が加害者と連絡をとりたいと申し出る場合を除いて、捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えることはありません。
また、加害者に対する恐怖や嫌悪感から加害者と直接連絡をとることを承諾する被害者も少なく、加害者が被害者の連絡先を入手することは極めて難しいのです。
ですので、被害者との示談交渉は弁護士に任せるのが一般的です。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもよいと回答する被害者の方も多くいらっしゃいますし、当事者同士であれば感情的になりがちな話し合いも、代理人を立てることで冷静にすすめることができます。
あなたやあなたのご家族が刑事事件を起こし、対応にお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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