Archive for the ‘薬物事件’ Category
薬物摂取で傷害致死
薬物摂取で傷害致死に問われるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県加西市のホテルで、出会い系サイトで知り合った女性Vさんに、Aさんは、薬物を摂取した上での性交を提案したところ、Vさんに断られました。
Aさんは、Vさんには秘して薬物を混入した飲み物をVさんに飲ませたところ、Vさんの容態が急変し、動かなくなってしまいました。
Aさんは、暫くして救急通報しましたが、現場でVさんの死亡が確認されました。
Aさんは、兵庫県加西警察署に覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕され、Vさんの死については傷害致死の疑いも視野に入れて捜査を進められています。
(フィクションです。)
他人への薬物摂取
違法薬物を規制する法律には、主に、覚せい剤取締法、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法、あへん法、医薬品医療機器等法があります。
覚せい剤取締法は覚せい剤を、大麻取締法違反は大麻、コカイン・MDMAといった麻薬やLSDは麻薬及び向精神薬取締法、シンナーは毒物及び劇物取締法によって規制されています。
規制薬物の所持、譲渡などの行為が法律で禁止されており、違反した場合は厳しく罰せられます。
上記事例では、AさんがVさんに覚せい剤を摂取させていますが、他人に覚せい剤を摂取させる行為は、法律で禁止されているのでしょうか。
覚せい剤取締法は、①覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合、②覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合、③覚せい剤研究者が研究のため使用する場合、④覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合、⑤法令に基づいてする行為につき使用する場合、を除いては、何人も覚せい剤を使用することを禁止しています。
ここでいう「使用」とは、覚せい剤をその用法に従って用いる一切の行為のことをいい、その目的や方法の如何を問いません。
したがって、自分自身が摂取する行為も他人にこれを摂取させる行為も「使用」に当たります。
薬物摂取で傷害致死に
Aさんは、Vさんに多量の薬物を摂取させたところ、Vさんの容態が急変し、Vさんが死亡してしまいました。
Aさんは、Vさんの性感を高める目的でVさんに秘して覚せい剤を入れた飲み物を飲ませたと考えられます。
薬物を他人に摂取させた結果、その者を死亡させてしまうことについて、違法薬物を規制する法律は特に規定していません。
そうであれば、人を死亡させたことに着目した場合、Aさんを殺人罪に問えるのでしょうか。
殺人罪が成立するには、「人を殺意を持って殺した」と言えなければなりません。
しかし、AさんはVさんを殺そうと思って薬物を飲み物に混入して飲ませたわけではなさそうですので、この場合、殺意を認めることは難しいでしょう。
ただ、飲み物に混入した覚せい剤の量からして、Aさんが「この量を摂取したら、Vさんはもしかしたら死んでしまうかもしれない。」と思っていたのであれば、未必の故意が認められ、殺人罪が成立する可能性はあります。
殺意を立証することが困難な場合には、傷害致死罪の適用が検討されることになります。
傷害致死罪は、「身体を傷害し、よって人を死亡させ」る罪で、その法定刑は、3年以上の有期懲役です。
「人の身体を傷害」したことによって、人を死亡させた場合に成立するものです。
「傷害」の概念については、判例は、人の生理的機能に障害を加えることであるとする立場をとっています。
覚せい剤の多量摂取により、急性薬物中毒症状に陥らせた場合、覚せい剤の摂取により、人の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を引き起こしたとして、「傷害」が認められるでしょう。
傷害致死罪は故意犯ですので、故意がなければ罪は成立しませんが、暴行により傷害が生じた場合、行為者の重い結果についての認識・予見は必要とされず、暴行の故意があれば足ります。
また、暴行によらない傷害の場合は、傷害の故意が必要となります。
つまり、人の生理機能を傷害することの認識・認容していた場合に、故意が認められるのです。
覚せい剤という薬物の中でも強い作用のある薬物を人に摂取させる場合、覚せい剤の摂取により人の生理機能を傷害する可能性を認識していたものと考えられるでしょう。
傷害致死は、裁判員裁判対象事件ですので、傷害致死で起訴されれば、通常の刑事裁判とは異なる手続となりますので、裁判員裁判に精通する弁護士に相談・依頼させるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
薬物事件の再犯
薬物事件の再犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県川西警察署は、兵庫県川西市に住むAさんを覚せい剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕しました。
Aさんは、覚せい剤取締法違反(使用)の前科があり、10年前に懲役1年執行猶予3年が言い渡されていました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、Aさんが再び薬に手を染めたことを知りショックを受けています。
Aさんの妻は、薬物事件に詳しい弁護士に相談し、執行猶予となる可能性について聞いています。
(フィクションです。)
薬物事件の量刑
裁判所・裁判官は、被告人が有罪であるとする場合、どのような刑を科すかを決めます。
当たり前ですが、裁判所・裁判官は、好き勝手に刑の種類や範囲を決めることはできず、きちんとルールに則って決めます。
刑法をはじめとした刑罰法令は、犯罪とされる行為を行った者について、どのような刑罰をどれぐらい科すかについて定めています。
ある犯罪に対して科されるべきものとして、法令が罰則により規定している刑罰を「法定刑」といいます。
覚せい剤取締法違反(使用)であれば、法定刑は「10年以下の懲役」です。
裁判所・裁判官は、覚せい剤取締法違反(使用)の罪で被告人を有罪とする場合、刑の種類を選択する際に、「罰金刑」を選択することはできません。
法定刑が「10年以下の懲役」であるので、懲役刑以外を選択することができないからです。
また、どれぐらいの懲役刑とするか、つまり、懲役刑の期間を決めるわけですが、これについても10年を超える期間とすることはできません。
裁判所・裁判官は、法定刑の範囲内で言い渡す刑罰の内容を決めるわけですが、法律に定められている特段の事情がある場合には、刑の加重減免が認められています。
例えば、自首が成立している場合には、その刑を減軽することができるとされているので、裁判所・裁判官は任意で刑を減軽することができるのです。
裁判所・裁判官が、法定刑を定める罰則に刑法を適用して定まる処断刑の範囲内で、被告人に下すべき宣告刑を決定する作業のことを「量刑」といいます。
薬物事件では、初犯であり、単純な自己使用目的の所持や使用のケースの場合、公判請求される可能性は極めて高いのですが、有罪となった場合でも、執行猶予となることが多くなっています。
ただ、薬物事件については、初犯であれば執行猶予が付く可能性が高いのですが、再犯となれば、いっきに実刑となる可能性が増します。
薬物事件に限ったことではありませんが、同種の犯罪で再び罪を犯した場合、裁判所・裁判官は、被告人は前回から反省、更生していないのではないか、社会内での再犯可能性は高いのではないか、と判断されてしまうからです。
そのため、基本的には薬物事件の再犯事件では、実刑となることをベースに考えなければなりません。
ただし、すべての再犯事件が実刑となるのかと言えば、必ずしもそうではありません。
前回の事件で執行猶予判決を言い渡されており、執行猶予期間中何事もなく経過し、その判決言い渡しがあってからだいぶん時間があいている場合、あるいは、前回の事件で実刑が言い渡されており、刑の服役を終えてからずいぶん事件が経っている場合であって、なおかつ、前判決を受けてから今までの生活の様子、今回の時間後の反省の態度や更生に向けた努力、そして、家族などの監督能力が期待できるといった事情があれば、今回の事件で執行猶予となる可能性はあります。
薬物事件の再犯で執行猶予を獲得することはそう簡単ではありませんが、再犯可能性が低いと認められ、社会内での更生が期待できると裁判所・裁判官に認めてもらえるよう最善を尽くす必要はあるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含め刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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接見禁止の解除に向けて
接見禁止の解除に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県西脇警察署は、大麻取締法違反(大麻栽培)の容疑で、兵庫県西脇市に住むAさんを逮捕しました。
その後、勾留が決定しましたが、接見禁止が付いており、Aさんの家族はAさんと面会することができません。
自営業のAさんは、仕事のことについて家族と直接話をしたいと思っており、どうにか接見禁止が解除されないかと困っています。
(フィクションです。)
接見禁止とは
身柄が拘束されている被疑者・被告人は、弁護人その他の物との接見交通(面会)や、書類その他の物の受け渡しをすることができます。
弁護人との接見等は、被疑者が逮捕された段階から認められており、家族などの一般の方との面会等は、通常、勾留が決定してから行えます。
しかしながら、裁判官は、「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるときは、検察官の請求により、または職権で、接見を禁止し、または授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁止し、もしくはこれを差し押さえることができます。
接見等を禁止する決定を「接見禁止決定」といいます。
接見禁止決定は、否認事件、認め事件であっても、組織犯罪や共犯事件については、起訴前まで付くことが多くなっています。
しかしながら、身体拘束により精神的・身体的な苦痛を強いられている被疑者は、接見禁止が付くことで家族等と会えず、さらに精神的に追い詰められた中で取調べを受けなければなりません。
そのような精神状態での取調べにおいて、被疑者が自己に不利な供述をしてしまったり、安易に取調官の誘導に乗ってしまうおそれがあります。
接見禁止による不利益を回避するためにも、弁護人は接見禁止決定に対して不服申立を行ったり、解除を申立て、被疑者と家族等が面会できるよう尽力します。
接見禁止の解除のために
勾留に接見禁止が付された場合には、家族等との面会が実現するように、弁護士は、次のような活動を行います。
■準抗告・抗告■
準抗告とは、裁判官がした裁判の取消しや変更を、その裁判官所属の裁判所に対して請求する手続のことです。
抗告は、裁判の取消しや変更を、その裁判をした裁判所の上級裁判所に請求する手続のことです。
■一部解除の申立て■
被疑者や弁護人に接見等禁止処分について解除を申し立てる権利はありません。
そのため、一部解除の申立ては、裁判官の職権発動を促すものにすぎません。
しかしながら、一般人である被疑者・被告人の両親や配偶者が罪証隠滅を行うおそれは低く、そのような近親者の一部解除が認められることは多いです。
いずれの手続においても、被疑者・被告人との接見を希望する近親者が、事件とは無関係であり、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないことを主張・立証する必要があります。
そのような活動は、刑事事件に精通する弁護士にお任せください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件を起こし、接見禁止となりお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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覚醒剤輸入事件で故意否認
覚醒剤輸入事件で故意を否認する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県警察は、兵庫県神戸市東灘区に住むAさんを覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで再逮捕しました。
約1か月前に税関で化粧品等と申告されていた荷物の中に大量の覚醒剤が見つかりました。
兵庫県警察は中身を他の物に入れ替えて配送し、当該荷物を受け取りに来たAさんを麻薬特例法違反の疑いで現行犯逮捕していました。
Aさんは、調べに対し、「友人から荷物を送るからと言われており、指示通り受け取っただけ。中身が覚醒剤であるとは全く知らなかった。」と容疑を否認しています。
(フィクションです。)
覚醒剤輸入事件
覚醒剤取締法は、「覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行う」ことをその目的としています。
覚醒剤の輸入については、覚醒剤取締法13条で、「何人も、覚醒剤を輸入し、又は輸出してはならない。」と規定されており、その輸出入について絶対的に禁止しています。
これに違反した場合の罰則は、1年以上の有期懲役と厳しいものになっています。
また、営利の目的で輸入した場合は、無期若しくは3年以上の懲役、又は事情により1000万円以下の罰金を併科することとされています。
ここで規制対象となる行為である「輸入」とは、覚醒剤取締法自体で定義してはいませんが、一般的に「輸入」とは国外から日本国内へ物品を搬入することと理解されています。
しかし、どの段階に至ったときに日本国内に搬入されたと考えることができるか、という点については様々な見解がありますが、海路又は空路による場合は、船舶から覚醒剤を日本領土内へ陸揚げした時点又は航空機の場合は機内から地上へ持ち出された時点で日本国内に搬入されたとする陸揚げ説が通説・判例となっています。
故意の否認
覚醒剤輸入罪を含む覚醒剤取締法違反が成立するためには、まず当該犯罪の対象となった薬物が覚醒剤でなければなりません。
これについては、捜査機関が当該対象物件が覚醒剤であるかどうかについて正式な鑑定をすることで明らかになります。
そして、覚醒剤取締法違反は故意犯ですので、罪を犯す意思(=故意)がなければ犯罪は成立しません。
覚醒剤取締法違反の成立には、被疑者が当該対象物件が覚醒剤であることの認識を有していたことが必要となります。
上の事例でいえば、Aさんが受け取った荷物(もしくはその一部)が覚醒剤であると知っていることが求められるのであって、Aさんが覚醒剤であると知らなかった場合には覚醒剤輸入罪は成立しないことになります。
この点、Aさんが覚醒剤であることの認識がどの程度あれば犯罪成立となるのか、が問題となります。
覚醒剤輸入罪については、その構成要件が「覚醒剤を輸入すること」であり、故意としては、自分が輸入する対象物が覚醒剤であることを、少なくとも未必的には認識・認容している必要があります。
故意の内容としては、未必的な認識・認容で足りるため、「これは覚醒剤かもしれないし、他の違法薬物かもしれない。」と認識・認容していた場合には、故意が認められます。
このような故意については、人の心の内のことですので、捜査機関は、故意があったと認定できるような状況証拠を収集し犯罪の立証にかかります。
例えば、Aさんと覚醒剤の送り主などの関係者との事前のやり取り、Aさんや関係者の前科前歴などを収集し、取調べにおいてAさんに送られてきた荷物が覚醒剤であることを知っていたのではないかと問いただすことが想定されます。
しかしながら、全く知らなかった場合には、その旨をしっかりと主張し、自己に不利な供述がとられることがないよう対応する必要があります。
そのためにも、早期に弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
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覚醒剤使用で逮捕
覚醒剤使用の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県須磨警察署は、兵庫県神戸市須磨区の路上で不審者がいるとの通報を受けました。
現場に駆け付けた警察官は、不審な言動をしている男性を発見し、薬物を使用しているのではないかと思い、男性に警察署で検査するよう求めました。
検査の結果、覚醒剤反応が出たため、警察はこの男性を覚せい剤取締法違反(覚醒剤使用)の疑いで逮捕しました。
男性は、「知人に体にいいという薬をもらったが、覚醒剤ではない。」と容疑を否認しています。
(フィクションです。)
覚醒剤使用の罪
覚醒剤取締法は、「覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うことを目的とする。」(覚醒剤取締法1条)法律です。
覚醒剤取締法は、特定の場合以外に覚醒剤を使用することを禁止しており、違反した場合には、10年以下の懲役に処するとしています。
覚醒剤使用の罪が成立するための要件は、
①法定の除外事由がないのに
②覚醒剤を
③使用する
ことです。
①法定の除外事由
覚醒剤の使用は、
(a)覚醒剤製造業者が製造のために使用する場合
(b)覚醒剤施用機関において診療に従事する医師または覚醒剤研究者が施用する場合
(c)覚醒剤研究者が研究のために使用する場合
(d)覚醒剤施用機関において診療に従事する医師または覚醒剤研究者から施用のために交付を受けた者が施用する場合
(e)法令に基づいてする行為につき施用する場合
を除いては、何人も禁止されています。
つまり、以上の事由に当てはまらない場合の使用は一切禁止されているのです。
②覚醒剤
覚醒剤取締法は、規制対象である「覚醒剤」を
(1)フェニルメチルアミノプロパン、フェニルアミノプロパンおよび各その塩類
(2)(1)と同種の覚醒作用を有する物であって政令で指定するもの
(3)(1)と(2)の物いずれかを含有する物
と定義しています。
③使用
「使用」とは、覚醒剤をその用途に従って用いる一切の行為のことをいいます。
他人の身体に覚醒剤を注射する行為も、他人から覚醒剤を受ける行為も「使用」にあたります。
覚醒剤使用の罪は、故意犯であるため、行為者において①~③の要件に該当する事実を認識、認容していることが必要となります。
上記事例では、使用した薬物が覚醒剤であるとは知らなかったと男性が述べています。
故意の内容は、未必的な認識・認容で足りるとされており、「覚醒剤かもしれないし、その他の有害で違法な薬物かもしれないとの認識・認容を有していた」という場合には、故意の内容としては十分であると解されます。
「何らかの違法な薬物」と認識している場合、特段の事情がない限り、その薬物の中に覚醒剤も含まれることになり、結果として、「覚醒剤かもしれないとの認識・認容を有していた」と未必の故意が認められることになります。
「知人から体にいいという薬をもらった」と述べている男性ですが、本当に健康に効果のある薬と信じて使用したのであれば、故意が欠け罪は成立しないことになりますが、暗黙に何らかの違法薬物であると認識していたのであれば故意が認められ罪が成立することになります。
故意は、人の心の中のことですので、立証することは容易ではありませんが、客観的証拠から故意があった、あるいは故意があったとは言えないことを証明することになります。
覚醒剤取締法違反の故意の有無について争いたい場合や、罪は認めるが寛大な処分とならないか心配されている場合には、薬物事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族が覚醒剤取締法違反で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
大麻取締法違反事件で逮捕
大麻取締法違反事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県神戸西警察署は、兵庫県神戸市西区の路上でAさんに職務質問を行いました。
Aさんの態度を不審がった警察官は、Aさんの所持品検査を行ったところ、持っていたカバンから乾燥大麻の入った袋を見つけました。
Aさんは、大麻取締法違反で現行犯逮捕されました。
Aさんは、容疑を認めていますが、このまま身体拘束がどのくらい続くのか不安でなりません。
(フィクションです)
大麻取締法について
大麻取締法は、昭和23年7月に施行された法律で、その目的は、大麻の所持、栽培、譲渡、譲受、使用、輸出、輸入などについて必要な取締を行うとともに、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図ることにあると解されます。
大麻取締法が規制の対象とする「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」をいい、「大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品」は除外されます。
大麻取締法は、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」としています。(大麻取締法第3条1項)
また、大麻取締法は、何人も、「大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く)」、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること」、「大麻から製造された医薬品の施用を受けること」、「医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告をおこなうこと」を禁止行為として規定しています。
このような規定を受けて、大麻取締法は、次の行為について罰則を設けています。
①大麻の栽培、輸入、輸出:7年以下の懲役
②営利目的での大麻の栽培、輸入、輸出:10年以下の懲役、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金
③大麻の所持、譲受、譲渡:5年以下の懲役
④営利目的での大麻の所持、譲受、譲渡:7年以下の懲役、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金
大麻取締法違反は、故意犯ですので、「大麻だと知らなかった」場合には犯罪は成立しません。
しかし、大麻の認識については、その物件が依存性のある薬理作用をもつ有害な薬物であることを未必的であれ認識していれば足りると解されます。
「未必的」に認識しているというのは、意図的に犯罪の実現を図るものではないが、実現されたらされたで構わないとする心情を意味します。
「これは大麻だ。」としっかりと認識している場合だけでなく、「これは大麻かもしれない。」と思っている場合にも未必の故意が認められるのです。
大麻取締法違反に対する刑罰は、懲役刑、もしくは懲役刑と罰金刑の両方と、重くなっています。
大麻取締法違反で逮捕されたら
大麻取締法違反で逮捕された場合、他の薬物事件と同様、逮捕後勾留される可能性は非常に高いです。
勾留に付されると、検察官が勾留請求をした日から原則10日間身体が拘束されることになります。
勾留延長が決定すると、最大で勾留請求をした日から20日もの間、身体拘束を受けることになり、外界と遮断された生活が長期に及ぶことになります。
また、勾留と同時に弁護人以外との接見を禁止する接見禁止に付される可能性もあります。
大麻取締法違反事件では、初犯であっても、起訴される可能性があり、この場合、検察官による公判請求を受けて正式な刑事裁判となります。
起訴されると、起訴後勾留に切り替わり、引き続き身体拘束を受けることになりますが、起訴後であれば保釈制度を利用することが可能となります。
大麻取締法違反事件における弁護活動
◇身柄解放◇
長期の身体拘束は、被疑者・被告人だけでなく、その家族の生活にも大きく影響します。
そのため、できる限り早期に釈放となるよう動くことが重要です。
薬物事件では、組織犯罪が疑われたり、共犯者との接触を回避するために勾留となる可能性は非常に高いのが実情です。
しかし、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことや、身体拘束により被る不利益について客観的な証拠に基づいてしっかりと主張することにより、不当な身体拘束を避けることは重要です。
捜査段階での釈放が難しい場合であっても、保釈が認められる可能性はありますので、起訴されたらすぐに保釈請求書を提出し、身柄解放に向けて動く必要があるでしょう。
◇再犯防止策◇
罪を認めている場合には、再び薬物に手を出すことがないよう再犯防止策を講じることが最終的な処分にも影響します。
家族による被疑者・被告人の監督、専門機関による治療、人間関係の改善などは、被疑者・被告人に有利な事情として働くため、このような再犯防止策を講じ、更生に適した環境を整える支援をことも重要な弁護活動です。
◇取調べ対応のアドバイス・証拠収集◇
罪を争う場合には、被疑者・被告人の主張を裏付ける証拠を収集することが重要です。
また、弁護士は、被疑者・被告人の不利となるような内容の供述調書がとられないよう、取調べに対してどのように対応すべきかについて適切なアドバイスを提供します。
閉鎖的な空間での取調べでは、身体的にも精神的にも疲れ果てた被疑者・被告人が取調官の誘導に乗せられ、自己に不利な供述をしたり、異なるニュアンスで調書が作成されてしまうこともあるため、弁護士に相談し、どのように対応すべきかを把握していることは大切です。
興味本位で安易に手を出してしまうケースも少なくない大麻ですが、大麻取締法違反は軽微な犯罪ではありません。
大麻取締法違反でご家族が逮捕されてしまったのであれば、すぐに弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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薬物事件の身柄解放
薬物事件の身柄解放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県尼崎東警察署の警察官は、兵庫県尼崎市の路上を歩いていたAさんに職務質問を行いました。
所持品検査を行ったところ、持っていたバックから乾燥大麻が入った小袋が見つかりました。
Aさんは、大麻取締法違反(大麻所持)の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんは、どの程度身体拘束が続くのか不安です。
(フィクションです)
薬物事件における身体拘束
大麻や覚せい剤といった薬物事件で逮捕された場合、逮捕後勾留となる可能性は高いでしょう。
薬物事件では、余罪がある可能性や共犯者がいる可能性が高いので、被疑者を釈放すると、証拠を隠滅するおそれがあると判断される傾向にあると言われています。
有罪にするために充分な証拠を収集し終わるまで、被疑者の身体を拘束したままで捜査が行われ、勾留期間いっぱいまで、10日間の勾留では不十分な場合には勾留延長となりさらに10日間の身体拘束となることが多いです。
さらに、共犯者と接触し証拠の隠滅を図ることを防ぐために、弁護士以外との接見を禁止する接見禁止が付される場合がほとんどです。
このように、薬物事件においては、ほとんどの場合、長期の身体拘束を余儀なくされるのです。
それでは、薬物事件での身柄解放は不可能だと言うことなのかと言えば、それは違います。
起訴される前の段階であっても、勾留を阻止することや勾留の取消しを求めることはできます。
しかし、残念ながら、薬物事件において、捜査段階においてそのような申立てが認められ釈放される確率はそう高くありません。
一方、捜査が終了し起訴された後であれば、比較的保釈が認められる可能性が高いので、起訴後に釈放となるケースが多くなっています。
保釈とは
一定額の保釈保証金を納付することを条件として、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身柄拘束を解く裁判及びその執行を「保釈」といいます。
保釈には、以下の3つの種類があります。
1.権利保釈(必要的保釈)
裁判所は、権利保釈の除外事由に該当しない場合には、保釈請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
除外事由は、以下の通りです。
①被告人が、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が、前に、死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由のあるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
2.裁量保釈(任意的保釈)
裁判所は、上の権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することが出来ます。
3.義務的保釈
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により、又は職権により、保釈を許可しなければなりません。
保釈は、検察官が起訴した時点から、請求することができます。
保釈の条件として、一定額の保釈保証金を納付しなければなりません。
裁判所に保釈が許可されたとしても、保釈保証金を納付しなければ、実際に被告人の身体拘束が解かれることにはなりません。
保釈保証金の金額は、被告人の経済力に比例して決められるようです。
一般的な相場は、150万から300万円です。
保釈保証金は、判決後に戻ってきます。
しかし、保釈が取り消された場合、保釈保証金の全部または一部が没収されることにもなりますので、保釈中の行動には気を付けなければなりません。
薬物事件であっても、保釈が認められるケースもありますので、起訴後すぐに保釈請求を行い、釈放されることを目指します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含めた刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件で逮捕・勾留されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
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薬物事件で強制採尿
薬物事件での強制採尿について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市中央区を警ら中の兵庫県生田警察署の警察官は、路上を歩いている男性が挙動不審な行動をとったため、男性に対する職務質問を開始しました。
薬物使用を疑った警察官は、男性に任意での尿検査を提案しましたが応じなかったため強制採尿したところ、覚せい剤の陽性反応が出たので、男性を逮捕しました。
逮捕された男性は、「強制採尿は違法だ。」と主張しています。
(フィクションです)
薬物事件における尿鑑定
薬物の使用事犯においては、被疑者の尿を採取し、採取した尿から薬物の反応が出るかどうかの鑑定をすることは、薬物事犯として起訴するためにも非常に重要な証拠となるため、必要不可欠な手続です。
しかしながら、被疑者の立場からすれば、尿鑑定の結果によって自分が逮捕、起訴されるおそれがあることから、進んで自分の尿を提出することを嫌がることも少なくありません。
薬物を使用したと疑われる者に対して、尿鑑定を行うために尿を採取する行為は、捜査の実行であり、証拠の収集であって、きちんと法律に基づいたやり方で行われなければなりません。
捜査は、任意捜査と強制捜査に分けられます。
任意捜査というのは、任意処分による捜査のことです。
法律は、捜査は、できるだけ任意捜査によるべきとし、強制処分による捜査(強制捜査)は特別の必要がある場合にのみ許されるとの考えにあります。
ですので、薬物の使用事犯についても、可能であれば被疑者の同意の下に尿を採取し鑑定にかけるべきです。
強制採尿について
上のケースのように、薬物の使用が疑われている場合に、被疑者が尿の採取を拒否する場合が少なくありません。
そのような場合、強制処分として「強制採尿」が行われることがあります。
強制採尿とは、尿道にカテーテルを挿入して強制的に尿を採取する捜査手法のことをいいます。
強制採尿は強制処分ですので、事前に令状を得ることが前提となります。
過去の裁判例(最決昭55・10・23)が、捜索差押許可状によって行うことができると判断して以来、実務に置いてはこの決定に従った運用がされています。
この判例によれば、「被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解する」としています。
つまり、判例は、強制採尿について、
①犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に、
②最終的手段として、
③適切な法律上の手続を経て、
④被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な考慮が施される限り
許される、との立場を採るものと言えるでしょう。
また、強制採尿の手続について、判例は、「右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである」としていますが、「右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。」としています。
強制採尿に求められる要件を欠くような方法で行われた場合には、違法な捜査であることを主張していく必要があります。
強制採尿を行うに当たっては、職務質問で薬物使用が疑われ、被疑者の同意の下、最寄りの場所まで連行し、そこで尿を採取するという流れではなく、上のケースのように、尿採取を拒否したため強制採尿を行う必要が生じる場合もあります。
そのような場合、警察官は令状請求のために関係書類を作成し裁判所に提出するなど法律に従って様々な手続きを踏む必要があり、実際に令状を手にするまで時間がかかります。
そうすると、職務質問をした場所に被疑者を長時間留めておくことになりやすく、留めておくための手段も強度なものになりやすいので、違法性が問題となることがあります。
以上の様に、強制採尿を実施するにあたっては様々な要件を満たしていることが必要となります。
それらの要件を満たしていない、つまり違法だと主張する場合、単にその旨を主張するだけでは捜査機関や裁判所を納得させることはできません。
きちんと客観的な証拠に基づいて主張を展開する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
薬物事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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薬物事件:保釈で釈放
薬物事件における保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたAさんは、逮捕後に勾留となり兵庫県赤穂警察署に勾留されています。
勾留決定と共に、接見禁止が付されており、Aさんは家族と面会することはできません。
勾留延長の満期日に、Aさんは麻薬取締法違反の罪で神戸地方検察庁姫路支部に起訴されました。
Aさんは、弁護人に保釈請求をしてほしいと話しています。
(フィクションです)
薬物事件で逮捕されたら
麻薬取締法違反を含めた薬物事件で逮捕された場合、その後勾留となる可能性は非常に高いでしょう。
勾留とは、被疑者および被告人の身柄を拘束する裁判ならびにその執行のことをいいます。
起訴前の勾留を「被疑者勾留」、起訴後の勾留を「被告人勾留」と呼びます。
薬物事件の場合、薬物の入手先や譲渡先など、被疑者本人だけでなく複数人が事件に関与しているため、釈放されることにより被疑者・被告人が関係者と接触し、罪証隠滅を図るおそれがあると判断されることが多くなっています。
そのため、捜査が終了する起訴前の段階では、釈放される可能性はそう高くありません。
しかし、起訴後であれば保釈制度を利用することにより釈放される可能性はあります。
保釈制度について
「保釈」というのは、一定額の保釈保証金を納付することにより、勾留されている被告人を暫定的に釈放する制度です。
保釈には、次の3種類があります。
1.権利保釈(必要的保釈)
第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
例外として、刑事訴訟法第89条の1号~6号の除外事由がある場合には、請求を却下することができます。
2.裁量保釈(任意的保釈)
第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。
3.義務的保釈
第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許可しなければなりません。
上記ケースにおいて、Aさんは麻薬取締法違反の罪で起訴されています。
まずは、権利保釈が認められるか検討しましょう。
麻薬取締法違反の罪の法定刑は、規制薬物の種類及び違反形態により異なりますが、ここでは所持についてみていきましょう。
ジアセチルモルヒネ等の所持は、10年以下の懲役、ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の所持は7年以下の懲役、向精神薬の所持は3年以下の懲役です。
「短期一年以上の懲役」には該当しないので、除外事由1号には当たりません。
Aさんに前科がないとすれば、2号も該当しません。
しかし、問題は3号です。
Aさんが1件のみで起訴されたとしても、同じ犯罪を複数回(2回以上)繰り返していた場合には「常習」犯とみなされます。
また、法定刑が「長期3年以上の懲役」の罪となっていますので、上限が3年以上である上の所持罪も含まれますので、3号に該当する可能性はあります。
また、4号の「逃亡・罪証隠滅のおそれ」についても、余罪が複数ある場合や共犯者が複数いる場合など捜査が終了していなければ、罪証隠滅のおそれが高いと判断される可能性があります。
権利保釈が認められない場合であっても、裁量保釈が認められる可能性もあります。
形式的には逃亡・罪証隠滅のおそれが残る場合であっても、その程度が低く、身体拘束によって被る被告人の不利益の程度等を考慮して、裁判所の裁量によって保釈が許可されるのです。
権利保釈と同時に裁量保釈を請求することが出来ますので、弁護人に頼んで両方の保釈を請求してもらうのがよいでしょう。
裁判所に保釈が許可され、保釈保証金を納付すれば、被告人は釈放されることになります。
保釈保証金の額は、犯罪の性質や被告人の資力にもよりますが、150~200万円が相場となっています。
出頭を拒んだり、逃亡したりしなければ保釈保証金は、裁判終了後に戻ってきます。
ご家族が薬物事件で逮捕・勾留され、長期の身体拘束を受けてお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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大麻所持で逮捕されたら
大麻所持で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県東灘警察署は、大学生のAさん(21歳)を大麻所持の疑いで逮捕しました。
離れて暮らすAさんの両親は、警察から逮捕の連絡を受けました。
Aくんの両親は、警察から詳しいことは教えてもらえず、何をしたのかもはっきりと分かりませんでした。
心配になったAくんのお父さんが、面会の申出をしましたが、「すぐには面会できない。明後日には面会できるかもしれない。」と言われました。
「そんなに待っていられない。どうしたらいいのか。」と藁にも縋る想いで、ネットで検索したところ、すぐに接見に行ってくれる刑事事件専門弁護士がいることが分かりました。
Aくんのお父さんは、急いで刑事事件専門弁護士に接見依頼の電話をしました。
(フィクションです)
大麻所持罪
有名人が大麻事件で逮捕されるというニュースが後を絶ちません。
大麻は、有名人に限らず、一般人でも比較的手に入りやすい薬物です。
許可された者以外が大麻を所持することは、大麻取締法で禁止されています。
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
「所持」は、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為」です。
大麻について所有権や処分権を有していることまで求められません。
所持の形態は、自ら保管・携帯している場合だけでなく、他人に保管させる場合、他人の依頼によって保管する場合、運搬する場合、隠匿する場合など社会通念上実力支配関係にあると認められるすべての場合が含まれます。
大麻所持で逮捕されたら
大麻をはじめ薬物事件で逮捕された場合、その後に勾留となる可能性は高いでしょう。
「勾留」とは、被疑者・被告人の身柄を拘束する裁判およびその執行をいいます。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、検察官に被疑者の身柄とともに証拠や関係書類を送致するかを決めます。
検察官に送致された場合、検察官は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、もしくは裁判官に勾留請求を行います。
検察官からの勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留するかどうかを判断し、勾留しないとの決定(勾留請求却下)がなされた場合は、被疑者の身柄は釈放されます。(ただし、検察官からの勾留に対する準抗告が申し立てられ、準抗告が認められれば、当該被疑者の身柄は引き続き拘束されることになります。)
勾留となった場合には、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば、最大で20日間身柄が拘束されることになります。
逮捕から勾留までの間は、原則、家族であっても逮捕された被疑者と面会することはできません。
しかし、弁護士は、いつでも被疑者と面会(接見)することが法律で認められており、勾留前でもすぐに接見することができます。
加えて、薬物事件の場合、その背後に犯罪組織の存在が疑われたり、売人や譲受け人など共犯者がいるため、罪証隠滅のおそれがあると判断され、勾留とともに接見禁止が付されることもあります。
接見禁止は、弁護人以外の者との面会を禁止する決定です。
接見禁止が付せられると、事件には無関係な被疑者の家族とも面会することができない可能性があります。
外界から閉ざされた空間で連日の取調べを受けるといった非日常的な生活の中、被疑者は身体的にも精神的にもストレスを感じるものです。
そのような状態で、家族との面会も出来なくなれば、被疑者も精神的に益々追い詰められてしまいかねません。
そのような場合には、弁護士に相談し、家族との面会を許可してもらうよう接見禁止一部解除申請を行い、家族との接見禁止を解除してもらうよう動く必要があるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、大麻を含む薬物事件も取り扱う刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
大麻所持でご家族が逮捕されてお困りの方は、すぐに弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。