自殺ほう助未遂容疑で逮捕

2019-09-09

自殺ほう助未遂容疑で逮捕

~ケース~
兵庫県美方郡香美町に住むAさんは、ネットの掲示板で一緒に自殺をする人を募っていました。
呼びかけに応じた男女3人と共に、Aさんの自宅で練炭自殺をしようとしましたが、練炭が完全に燃えず、結局全員が未遂に終わってしまいました。
参加者の家族からの相談を受けていた兵庫県美方警察署の警察官が現場に駆け付け、Aさんを自殺ほう助容未遂の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)

自殺関与の罪

自らの命を絶つこと(自殺)自体は罪とはなりません。
しかし、他人の自殺を促したり手助けすることは犯罪となる可能性があります。

刑法第202条
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

第202条の前段は、自殺関与罪について規定しています。
自殺関与罪は、意思能力のある者を教唆して自殺させる(自殺教唆)、若しくは意思能力のある者の自殺行為をほう助して自殺させる(自殺ほう助)ことを内容となる犯罪です。

1.客体
自殺関与罪の客体は、「人」です。
この「人」は、自殺の意味を理解し、自由な意思決定の能力を有する者であることが必要です。
ですので、意思能力を欠く幼児や心神喪失者を自殺させる行為、強制的に自殺させる行為は、自殺関与罪とはならず、殺人罪の間接正犯となります。(最決昭27・2・21)

2.行為
自殺教唆罪の実行行為は、「教唆」です。
「教唆」とは、自殺意思のない者に、故意に基づく何らかの手段を講じ自殺意思を起こさせることをいいます。
例えば、Xさんは、元々自殺するつもりはありませんでしたが、XさんがYさんに「借金ばかりで人生楽しくない。」などと相談したところ、Yさんが「それならいっそ命を絶ったほうがいい。」などと説得され、Xさんが自殺することを決意したとしましょう。
元々Xさんには自殺意思がなかったのに、Yさんが自殺することを提案し説得にかかった結果、Xさんに自殺意思が生じたので、Yさんの行為は「教唆」に当たることになります。
それでは、なかなか自殺の意思が固まらないXさんに、Yさんが「一緒に自殺しよう。」と言って、Xさんが自殺を決意し、実際に自殺を図った場合はどうでしょう。
YさんはXさんに自殺を決意させるように動いていますので、Yさんの行為も「教唆」に当たりますね。
しかし、Yさんが実際に一緒に自殺するつもりはなく、Xさんに自殺を決意させるために嘘の提案をしていた場合にも、自殺教唆罪が成立するのでしょうか。
この、いわゆる偽装心中について、判例は、「被害者は被告人の欺罔の結果被告人の追死を予期して死を決意したものであり、その決意は真意に添わない重大な瑕疵である意思であることが明らかである。そしてこのように被告人に追死の意思がないにかかわらず被害者を欺罔し被告人の追死を誤信させて自殺させた被告人の所為は通常の殺人罪に該当する」とし、殺人罪を適用したものがあります。(最判昭33・11・21)
このように、判例は、自殺意思が真意に添うものか否かで、殺人罪か自殺教唆罪か否かの判断をする立場に立っています。

また、自殺ほう助の「ほう助」とは、既に自殺の決意にある者に対して、その自殺行為を援助し、自殺を容易にさせることをいいます。
自殺教唆罪と異なり、自殺ほう助罪が成立するためには、自殺する人が「既に自殺意思がある」ことが必要です。

自殺関与罪の着手時期については、教唆・ほう助行為が行われたときとする説と、本人が自殺行為に入ったときとする説とがあります。
これらの説の違いは、自殺を教唆・ほう助された者が、自殺を決意しながら翻意して実行しなかったときに生じ、前者の説をとると犯罪は成立せず、後者の説に立てば自殺教唆・ほう助の未遂罪が成立することになります。
自殺関与罪の既遂時期については、教唆・ほう助された人が自殺を遂げたときです。
上記ケースのように、実際に練炭に火をつけ自殺行為を開始したけれども自殺できなかった場合には、自殺行為に入ったが自殺を遂げなかったため、未遂となることに異論はないでしょう。
自殺関与罪の未遂も罰せられます。

自殺関与罪の法定刑は、6月以上7年以下の懲役または禁錮です。
罰金刑はありませんので、起訴される場合は公判請求となります。
公判請求されたら、情状弁護で執行猶予付き判決獲得に向けた弁護活動が重要となるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族が自殺関与罪で逮捕されたら、弊所の弁護士にご相談ください。