警察官に虚偽の犯罪通報をした場合~虚偽告訴等~

警察官虚偽犯罪通報をした場合に成立し得る犯罪(虚偽告訴等)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース①~
兵庫県相生市に住むAさんは、知人Vさんからお金を借りていましたが、返済の催促に嫌気がさし、Vさんを刑務所送りにすれば催促されずに済むと考えました。
Aさんは、兵庫県相生警察署に、「債権者のAさんから催促される際に暴行・脅迫を受けて困っている。」と嘘の話をしました。
兵庫県相生警察署警察官は、Vさんから任意で取り調べをするなどしていますが、AさんとVさんの話す内容が全く異なるため、警察官はもう一度Aさんに話を聞くことにしました。
(フィクションです)

~ケース②~
兵庫県相生市に住むAさんは、知人Vさんからお金を借りていましたが、返済の催促に嫌気がさし、催促をやめさせるために狂言強盗の被害に遭って有り金をすべて奪われたことにしようと考えました。
Aさんは、兵庫県相生警察署に、「知らない人に殴られて有り金を全部盗られてしまった。」との嘘の通報をしました。
Aさんからの通報を受けた兵庫県相生警察署警察官は、被害に遭ったとされる場所を探索するなどしましたが、警察官はAさんの供述を不審に思い、Aさんに一度警察署に来るよう言いました。
(フィクションです)

警察官に虚偽の犯罪通報をした場合

上記のケースは、どちらも警察官に対して虚偽犯罪通報をしています。
警察官虚偽犯罪通報をした場合、刑法上の虚偽告訴等と軽犯罪法上の虚偽申告の罪が成立する可能性がありますが、刑法上の虚偽告訴等が成立する場合、軽犯罪法上の虚偽申告は虚偽告訴等に吸収されます。
ですので、警察官への虚偽犯罪通報を行った場合、まずは刑法上の虚偽告訴等が成立するか否かを検討し、これが成立しない場合に、軽犯罪法上の虚偽親告罪が成立するかどうかを検討することになります。

まずは、虚偽告訴等が成立する場合についてみていきましょう。

(1)虚偽告訴等

刑法第百七十二条 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

◇行為◇
虚偽の告訴、告発その他の申告をすることです。
過去の裁判例や通説によれば、「虚偽」とは、申告の内容をなすところの刑事・懲戒処分の原因となる事実が、客観的真実に反することをいいます。(最決昭33・7・31)
「告訴」については、刑事訴訟法230条における「告訴」と同じで、犯罪の被害者その他一定の者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して、その処罰を求める意思表示をいいます。
「告発」は、刑事訴訟法239条における「告発」と同じで、犯人または告訴権者以外の第三者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告してその処罰を求める意思表示をいいます。
「申告」は、自ら進んで事実を申告することを意味するので、捜査機関や懲戒権者等の取調べを受けて虚偽の回答をすることは申告には当たらないと解されます。

◇主観的要件◇
本罪の成立には、申告すべき事実が虚偽であることの認識である「故意」の他に、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的」が必要となります。
「刑事処分」には、刑事罰の他、少年に対する保護処分も含まれます。
「懲戒処分」は、公法上の監督関係に基づいて科される制裁をいい、司法上のものは含まれません。
人が刑事処分、懲戒処分を受けることの意欲までは必要とされず、未必的な認識で足りるとされます。(大判昭8・2・14)

さて、ここで上のケース①およびケース②について虚偽告訴等が成立し得るのかを検討しましょう。
まず、ケース①では、Aさんは、債権者であるVさんが刑務所に入ってしまえば借金の催促から免れられると考え、警察官虚偽犯罪通報をしています。
Aさんは、Vさんが刑務所に入ること、つまり自由刑を受けさせる目的をもって虚偽犯罪通報をしていますので、Aさんに対して虚偽告訴等が成立するものと考えられます。

一方、ケース②では、「知らない人に殴られて有り金を全部盗られた」と警察官に通報しており、強盗は狂言で犯人は実在しません。
また、実在しない犯人についての犯罪通報を行っており、実在する人物に刑事処分を受けさせる目的がありません。
ですので、ケース②では、Aさんに対して虚偽告訴等は成立しないことになります。
そこで、次に、軽犯罪法上の虚偽申告に該当するか否かを検討します。

次回のブログでは、軽犯罪法上の虚偽申告について解説します。

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