公衆トイレ放火で逮捕①

2019-05-21

公衆トイレ放火で逮捕①

放火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県佐用郡佐用町にある公園で、公衆トイレから煙が出ていると、通行人から通報がありました。
兵庫県佐用警察署は、付近の防犯カメラの様子などから、市内に住む中学生のAくん(13歳)とBくん(14歳)による犯行であることを特定しました。
同署は、Bくんを非現住建造物等放火の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)

放火の罪

放火の罪は、火力を不正に使用して、建造物等を焼損し、公共の生命・身体・財産に対して危険を生じさせ得る「公共危険罪」と呼ばれる犯罪です。

放火の罪には、主に次のものがあります。
・現住建造物等放火
・非現住建造物等放火
・建造物等以外放火

上記ケースでは、「非現住建造物等放火罪」に問われています。

第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

本罪の構成要件(犯罪類型)は、以下の通りです。
1項…①放火して
   ②他人の所有に属する
   ③現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を
   ④焼損したこと。
2項…①放火して
   ②自己の所有に属する
   ③現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を
   ④焼損し
   ⑤公共の危険を生じさせたこと。

まず、本罪の客体についてみていきましょう。
本罪の客体は、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗」です。
「現に人が住居に使用せず」というのは、犯人以外の者が住居に使用していないことをいいます。
「現に人がいない」とは、現に共犯者を含む犯人以外の者が存在しないことを意味します。
そして、「建造物」は、「家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するもの」(大判大13・5・31)をいいます。
毀損しないで取り外せるものは「建造物」には当たらず(大判大8・5・3)、布団、畳、障子、襖、カーテン等を焼いただけでは放火既遂罪は成立しません。
「艦船」は、軍艦その他の船舶を、「鉱抗」とは、鉱物採取するための地下設備をいいます。

次に、行為である「放火」の意義についてみてみましょう。
放火」とは、故意に不正に火力を使用し、物件を焼損することをいいます。
この点、不作為による放火については、判例は、自己の過失により物件を燃焼させた者が、その既発の火力により建物が焼損せらるべきことを容認する意思をもって、あえて必要かつ容易な消化措置をとらないことは、不作為による放火行為といえるとして、不作為による放火を認めています(最判昭33・9・9)。

続いては、本罪の結果である「焼損」について解説します。
客体を焼損した時点で既遂となります。
この「焼損」の意義については、学説上争いがあります。
1.独立燃焼説(判例)
火が媒介物を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を継続し得る状態に達した時点を「損傷」とする立場です。
放火罪の公共危険犯的性質を重視し、その段階で公共の危険の発生を認め得ることを根拠とします。
2.燃え上がり説
目的物の重要な部分が燃焼を開始した時点を「焼損」とする立場です。
3.毀棄説
火力によって目的物が損壊の程度に達した時点を「焼損」とする立場です。
4.効用喪失説
火力により目的物の重要部分が消失し、その本来の効用を失う程度に毀損された時点を「焼損」とする立場です。
このように、どの程度燃焼した段階で既遂と認めるかについて争いがあります。

放火」行為と「焼損」との間には因果関係がなければなりません。

2項については、客体の燃焼に加えて、「公共の危険」の発生を必要とします。
「公共の危険」の発生とは、放火行為により一般不特定の多数人を、所定の目的物を延焼しその生命・身体・財産に対し危害を感ぜしめるにつき相当の理由がある状態をいいます(大判明44・4・24)。
必ずしも建造物等に対する延焼の危険のみに限られず、不特定または多数の人の生命・身体・財産に対する危険も含まれます(最決平15・4・14)。

更に、故意がなければ本罪は成立しません。
1項については、「他人の所有に属し、人の住居に使用されておらず、かつ人が現在していない建造物等であること、火を放って客体を焼損することの認識」が必要となります。
また、2項については、「自己の所有に属し、人の住居に使用されておらず、かつ人が現在していない建造物等であること、火を放って客体を焼損することの認識が必要です。
公共の危険の発生の認識が必要か否かについては争いがあります。

1項の場合は、2年以上の有期懲役であり、未遂・予備も処罰されます。
2項の場合は、6月以上7年以下の懲役となっており、本罪の法定刑に罰金刑は設けられていません。

ご家族が、放火の罪で逮捕されてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。