客引きで逮捕
客引きでの逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の繁華街で、Aさんは通行人に対して、「キャバクラどうですか?そこのXという店です。今なら5,000円ポッキリ。」などと、通行人の真横を沿って歩きながら声をかけ続けていました。
すると、声をかけた通行人が、「警察や。迷惑防止条例違反で現行犯逮捕や。」といってAさんを逮捕しました。
Aさんは、キャバクラXの経営者Bさんから、客を勧誘して連れてくるよう依頼され、1人連れてくる毎に3,000円の手数料を支払うことが約束されていました。
(フィクションです)
上の客引きで成立する犯罪は?
繁華街の路上で、通行人に対して、飲食店や風俗店の客になるよう勧誘する「客引き」行為は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、「風営法」という。)違反となるほかに、迷惑防止条例違反が成立する可能性があります。
風営法で禁止される客引き行為
風営法は、22条1号において、風俗営業者に対して客引きを禁止しています。
第二十二条 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
風営法における「客引き」行為とは、相手方を特定して営業所(お店)の客となるように勧誘することをいいます。
ですので、通行人に対して店の名前を告出さずに「お時間ありませんか」などと声をかけるだけでは「客引き」には当たりません。
風営法違反(客引き)の主体は、「風俗営業を営む者」です。
許可を受けて風俗営業を営む者は「風俗営業者」と風営法大2条2項で定義されていますので、「風俗営業を営む者」には、許可を得て風俗営業を営む者だけでなく、無許可で風俗営業を営む者も禁止の対象となります。
営業者自身が行う場合だけでなく、従業員や営業者から依頼を受けた者が客引きを行う場合も、風営法違反となります。
第五十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十二条第一項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の二十三及び第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の三第二項の規定により適用する場合を含む。)又は第三十一条の十三第二項第一号若しくは第二号の規定に違反した者
第五十六条 法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が、法人又は人の営業に関し、第四十九条、第五十条第一項又は第五十二条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
従業員らが客引き行為を行い風営法に違反した場合、当該従業員らだけでなく、営業者に対しても罰金刑が科せられることになる点で注意が必要です。
迷惑防止条例で禁止される客引き行為
第4条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対して、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 次に掲げる行為について、客引き(ウに掲げる行為に係る利用者に対する勧誘を含む。)をすること。
ア 人の性的好奇心をそそる見せ物、物品若しくは行為又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供
イ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法で異性の客をもてなして飲食をさせる行為又はこれを仮装したものの提供
ウ 人の性的好奇心をそそる行為を提供する営業又は歓楽的雰囲気を醸し出す方法で異性の客をもてなして飲食をさせる営業に関する情報の提供
(略)
(6) 第1号、第3号及び第4号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服を捕らえ、所持品を取り上げ、進路に立ちふさがり、身辺に付きまとう等の執ような方法で客引きをし、又は役務に従事するよう勧誘すること。
迷惑防止条例で禁止されている客引き行為は、「公共の場所」において、「不特定の者に対して」行うものです。
風営法と異なり、主体は制限されていません。
また、客引きは営業の一環としてなされていることまでは必要とされていません。
このように迷惑防止条例のほうが適用範囲が広く、客引き行為で現行犯逮捕する場合も、まずは迷惑防止条例違反で逮捕し、風俗営業者との共謀や支配従属関係が認められるか否かを検討するケースが多くなっています。
上のケースでは、Aさんは、キャバクラ店Xの経営者Bさんから手数料をもらう約束をし、X店の営業に関して客引きをすることを了承し、繁華街の道路上で、通行人に対して「キャバクラどうですか?そこのXという店です。今なら5,000円ポッキリ。」などと、通行人の真横を沿って歩きながら声をかけ続けて、X店の客になるよう勧誘したというものなので、Aさんの行為は、風営法違反および迷惑防止条例違反が成立することになり、客引き行為で2つの罪が成立することになります。
この場合の処罰は、最も重い刑により処断されることになります。
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