殺人罪と傷害致死罪 故意(殺意)の有無

殺人罪と傷害致死罪 故意(殺意)の有無

殺人罪傷害致死罪故意殺意)の有無について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
交際女性Vさんの死体を県内の山中に遺棄したとして、Aさんは死体遺棄の容疑で兵庫県南あわじ警察署に逮捕されました。
その後の取調べで、Aさんは、Vさんの首を絞め窒息死させたと供述し、殺人容疑の疑いで再逮捕されましたが、神戸地方検察庁殺意の立証は困難だとして殺人罪ではなく傷害致死罪でAさんを起訴しました。
(フィクションです)

殺人罪と傷害致死罪の違いとは

殺人罪傷害致死罪は、どちらも結果として被害者を死亡させてしまったという点で同じです。
しかし、両罪は、「殺すつもり」で暴行を働いたのか、つまり、殺意があったのか否かという点で異なります。
それでは、それぞれの犯罪の構成要件(刑罰法規によって定義された犯罪行為の類型)はどのようなものなのか、以下みていきます。

殺人罪

刑法第199条
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する

「人」が本罪の客体となりますので、人以外の動物を殺しても、殺人罪とはなりません。
ここでいう「人」の意義が問題となるのですが、人の出生・死亡をどの段階で線引きするか、という点で幾つかの見解が主張されています。
まず、人の出生についてですが、胎児が母体から一部露出した時点で人となると考える「一部露出説」が判例・通説となっています。
一方、人の終期については、人の終期は死亡であり、死亡後は死体であって生命・身体に対する罪の客体とはなりません。
死亡の判断については、争いがありますが、脈拍と自発呼吸が不可逆的に停止し、瞳孔が散大したこととを総合して人の死亡を判断する総合判断説が従来の通説とされていますが、近年医療技術の発展により、脳の機能が失われても心臓を動かしつづけることが可能となったため、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した時点を人の死とする脳死説も有力となっています。
本罪の行為である「殺」すとは、自然の死期以前に人の生命を断絶する行為のことで、その手段・方法のいかんを問いません。
そして、本罪の故意は、「人を殺すことの認識・認容」です。
客体が「人」であることを認識していたこと、及び、自分の行為によって死の結果が発生するおそれがあることを認識しながらも、その行為に出た場合、この故意殺意)が認められることになります。
この故意は、未必的なものでも、条件付きのものであってもかまいません。
上記のケースにおいて、Aさんが「殺してやる!死んでしまえ!」と思って首を絞めた場合のみならず、「死んでしまうかもしれないが、かまわない」と思って行為に及んだ場合にも故意殺意)が認められるのです。
殺意が認められるには、結果の発生に対する認識・容認が必要であるため、凶器の種類、行為態様、創傷の部位・程度等の客観的な事情を重視しつつ、動機の有無や犯行前・犯行時の言動、犯行後の行動等など要素を総合的に考慮して判断されます。

傷害致死罪

刑法第205条
 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪は、傷害罪の結果的加重犯であるので、傷害を受けた人が死亡したときに成立する犯罪です。
本罪は、殺人の故意は不要ですが、「暴行の故意」または「傷害の故意」が必要となります。
しかし、死亡結果について「予見可能性(過失)」を必要とするかには争いがあり、判例はこれを不要としています。

殺意」が認められなかった場合には、殺人罪や殺人未遂罪は成立しません。
量刑も殺人罪傷害致死罪では大きく異なります。

殺人の容疑で捜査されている場合、犯行当時に被害者を殺す意志が無かったことを客観的な証拠をもって説得的に主張していかなければなりません。
殺人の容疑がかけられていたとしても、殺意が認められなければ殺人未遂罪は成立せず、刑が軽い傷害罪として成立することもあります。
そのような弁護活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。

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