線路立ち入りで鉄道営業法違反

線路立ち入りで鉄道営業法違反

鉄道営業法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
撮り鉄のAさんは、播但線の電車の走行風景を撮影しようと兵庫県神崎郡神河町にある駅にやってきました。
ベストショットを撮るために、Aさんは線路立ち入り、駅に走り込んでくる電車の撮影を試みました。
線路内に人がいることを確認した付近の住人が、兵庫県福崎警察署に通報し、Aさんは駆け付けた警察官に事情を聴かれています。
(フィクションです)

鉄道営業法違反

一部の撮り鉄による行き過ぎた行為が、大きな注目を集めました。
自分の好きなショットを撮るため線路内に無断で立ち入ったり、立ち入り禁止の柵や金網を壊したり、ホームを占拠し他の乗客に迷惑をかけたりと、ほんの一部の撮り鉄によるものですが、このような行為は法律に違反する行為に当たる場合があります。

ここでは、鉄道営業法違反についてみていきたいと思います。
鉄道営業法は、鉄道運送の安全の確保と円滑な利用のために事業者と利用者との契約関係や鉄道運送の安全を脅かす行為や不正利用に対する罰則などを定めています。
この鉄道営業法は、鉄道が、多くの人によって利用されるという公共的性格を有するという鉄道運送の特質に基づき制定されたものであり、その機能の円滑な発揮に支障を生じた場合、公共の利益が損なわれるだけではなく、人の生命、身体及び財産に多大なる損害を与えるおそれがあるため、これらを防止するために罰則規定が設けられました。

旅客や公衆を処罰対象とする罰則のうち、適用される頻度の高いものとして、以下のものがあります。

(1)不正乗車罪

第二十九条 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 有効ノ乗車券ナクシテ乗車シタルトキ
二 乗車券ニ指示シタルモノヨリ優等ノ車ニ乗リタルトキ
三 乗車券ニ指示シタル停車場ニ於テ下車セサルトキ

本罪は旅客の不正乗車を禁止するための規定です。
いわゆる「キセル乗車」が本罪にあたります。
本罪は故意犯であり、有効な乗車券がないことの認識が必要となります。

(2)鉄道地内立入罪

第三十七条 停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス

本罪は、鉄道地内立ち入り行為が、旅客の乗降や列車の遅行の妨げとなり、危険発生のおそれがあるため、そのような事態を未然に防ぎ、鉄道地内の一般的保安を維持することを目的としています。

「停車場」とは、駅、信号場、及び操車場をいいます。
本罪の行為は、正当な理由なく、かつ管理権者の意思に反して鉄道地内に身体の全部を入れることを指します。

これらの罰則をみてみると、不正乗車罪については「五十円以下ノ罰金又ハ科料」、鉄道地内立入罪については「十円以下ノ科料」と記されています。
「罰金」も「科料」も財産刑です。
「罰金」は1万円以上の財産刑で、「科料」は1万円未満です。(刑法15条)
刑法では、罰金の上限については一般的に制限してはおらず、個々の条文で罰金額の上限を定めています。

先ほどの罰則を見て「え!?たったの罰金50円!?」と思われた方、実はそうではないのです!
条文の書きぶりからも分かるように、鉄道営業法は明治時代に制定された古い法律なのです。
ですので、当時の価格で50円、10円という財産刑が設けられたのですが、この財産形の額を、そのまま現在適用するとなると、なんら罰則としての効果が期待できません。
そこで、昭和23年に「罰金等臨時措置法」という法律が制定されました。
この法律は、物価変動に伴う罰金及び科料の額等に関する特例を規定しており、罰金や科料の額が法律制定時の物価からすると、かなり金額が安くなってしまった古い規定について、その額を一定額へ引き上げることを規定しています。
対象となる犯罪は、刑法、暴力行為等処罰に関する法律、経済関係罰則の整備に関する法律の3つの法律の罪以外の罪です。
「罰金」については、その最高額が2万円に満たないときは2万円とし、その最低額が1万円にみたないときは1万円となります。
つまり、「50円以下の罰金」は「2万円以下の罰金」となります。
額の定めがある「科料」は、定めがないものとし、「10円以下の科料」は「科料」、つまり1万円未満の財産刑となります。

他の犯罪の罰則と比べると、これらの罰則は軽いので大した犯罪ではないと軽視してはいけません。
罰金・科料ともに列記とした刑事罰であり、前科が付くことに変わりはありません。

前科を回避するなら、早期に弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
刑事事件を起こしてしまい対応にお困りなら、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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