少年鑑別所ってどんなところ?
少年鑑別所について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県伊丹市に住む高校生のAくん(16歳)は、同市にある住宅の敷地内に侵入し、外に干してあった女性ものの下着を盗もうとしたところ、住人に見つかってしまいました。
住人は急いで、兵庫県伊丹警察署に通報し、警察官が付近を巡回していたところ、犯人らしき人物を見つけ、警察官がAくんに職務質問をしたところ容疑を認めたので、Aくんを逮捕しました。
Aくんは、警察から「少年鑑別所に入ることになる」と言われましたが、一体どのような場所なのか不安になり、接見にやってきた弁護士に相談しました。
(フィクションです)
少年鑑別所とは
少年鑑別所は、医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識に基づき、少年の資質の鑑別を行う法務省管轄の施設です。
少年の資質の鑑別は、少年の素質・経歴・環境・人格や、それらの相互関係を明らかにし、少年の矯正に関して最も適した方針を立てることを目的として行われます。
鑑別のための調査は、主に次のことについて行われます。
・近親者及び保護者
・成育歴、教育歴、職業歴
・身体状況、精神状況
・不良行為歴、本事件の行為
・入所後の動静
・その他参考事項
このような資質鑑別と、鑑別所内での行動観察の結果を踏まえて、鑑別所としての鑑別結果の判定が行われます。
鑑別結果の判定は、主に以下の事項について行われます。
・保護処分決定の資料となるべき事項
・保護処遇の方針に関する事項
・少年院の処遇、指導、訓練に関する勧告事項
・その他将来の保護方針に関する勧告事項
判定結果は、鑑別結果通知書にまとめられ、家庭裁判所に提出されます。
この通知書は、社会記録に綴られますので、付添人である弁護士も閲覧することができます。
少年鑑別所では、少年の性別、性格、経歴、入所度数、年令、共犯関係、審判の進行状況等を考慮し、少年を別の部屋に収容します。
少年鑑別所では、警察署の留置場とは異なり、テレビを見ることができます。
少年鑑別所での面会は、近親者、保護者、付添人、その他必要と認める者に限って許可されます。
付添人との面会以外は、職員が面会に立会います。
少年鑑別所に収容される場合
少年鑑別所に収容されるのは、以下の措置がとられた場合です。
観護措置
家庭裁判所が、調査・審判を行うため、少年の心情の安定を図りつつ、少年の身体を保護してその安全を図る措置を「観護措置」といいます。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する在宅観護と、少年鑑別所に送致する収容観護がありますが、前者がとられることはあまりなく、観護措置は後者を指すのが通例です。
観護措置は、事件が家庭裁判所に係属している間、いつでもとることができます。
逮捕・勾留されている少年については、家庭裁判所に送致されたときに観護措置がとられることがほとんどです。
捜査段階では在宅捜査であったとしても、家庭裁判所送致後に、観護措置がとられることもあります。
勾留に代わる観護措置
検察官は、刑事訴訟法上の交流の要件を満たすと判断した場合であっても、裁判官に対し、勾留に代わる観護措置を請求することができ、裁判官は、勾留に代わる観護措置をとることができます。
勾留に代わる観護措置の手続は、基本的には勾留に関する規定が準用されますが、次の点で勾留とは異なります。
・少年鑑別所収容の観護措置の他に、調査官による観護の方法をとることもできる。
・勾留に代わる観護措置の期間は、10日であり、延長できない。
・勾留に代わる観護措置として少年鑑別所収容がとられた事件が家庭裁判所に送致されると、当然に家庭裁判所送致後の少年鑑別所収容の観護措置とみなされる。
勾留に代わる観護措置で少年鑑別所に収容された場合、先述した鑑別は行われません。
留置先が警察署の留置場から少年鑑別所に変わることになるので、少年鑑別所で取調べを受けることになります。
以上、少年鑑別所の役割や少年鑑別所に収容される場合について概観しました。
少年鑑別所に収容されると、収容期間中、学校や職場に行くことができませんので、少年の更生に不利益をもたらし得ることも考えられます。
一方、観護措置は、少年の心情の安定に配慮しつつ、少年の身体の安全を確保する措置でもあるので、様々な検査や鑑別を通じて、少年の更生に資するという側面も有しています。
少年や事件内容によって、観護措置がもたらし得る影響は異なると言えるでしょう。
お子様が事件を起こし、少年鑑別所に収容されるかもしれないと心配されているのであれば、一度少年事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。