少年保護事件と観護措置

2019-10-21

少年保護事件と観護措置

少年保護事件観護措置について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県丹波市に住むAくん(16歳)は、同級生の女子児童に対して無理わいせつな行為をしたとして、兵庫県丹波警察署に強制わいせつの容疑で逮捕されました。
その後、勾留され、神戸家庭裁判所に送致後、観護措置がとられました。
(フィクションです)

観護措置について

観護措置」というのは、家庭裁判所が調査や審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、その身柄を保全するとともに、少年の心身の鑑別をしたり、緊急に少年の保護が必要である場合に、終局決定に至るまでの間、暫定的に少年を保護するための措置です。

この観護措置には、2種類あります。
ひとつめが、家庭裁判所調査官の保護に付する措置です。
これを「調査官観護(または在宅観護)」といいます。
調査官観護は、少年の身柄を拘束することなく、少年を家庭等に置いたまま、調査官が随時少年と接触しながら、調査官の人格的影響力により、少年に一種の心理的拘束を与えることなどにより、観護の目的を達成しようとするものです。
しかし、調査官観護は、少年の身柄の保全としての実効性に乏しく、実務上調査官観護はめったにとられることはありません。

ふたつめは、少年鑑別所に送致する措置で、単に「観護措置」といったり「収容観護」と呼んだりします。
実務上は、「観護措置」といえば少年鑑別所に収容する措置を指すことが通例となっています。
観護措置は、少年を少年鑑別所に送致し、現実に少年を少年鑑別所に収容し身柄を保全しようとするものです。
少年鑑別所は、観護措置により送致された者等を収容し、医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識及び技術に基づいて少年の鑑別を行うとともに、必要な監護処遇等を行うため、法務大臣の管理する国立の施設です。

観護措置の要件

観護措置は、少年保護事件の継続している家庭裁判所が、適正妥当な調査・審判を行うために少年の身柄を保全する措置です。
この観護措置は、「審判を行うため必要があるとき」にとり得ることができると抽象的かつ包括的に少年法第17条1項に規定されています。
このように条項の文言では観護措置の要件は明らかではありませんが、実務上では、次のような要件が必要であると言われています。

1.審判条件があること

観護措置は、審判を行うためにとられる措置であるので、審判条件がある場合でなければなりません。

2.少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当の理由があること

観護措置は、少年の意に反してその身柄を拘束する強制的措置であることから、人権保障の観点から非行事実の存在について、勾留の場合と同様の心証が必要であるとされています。

3.審判を行う蓋然性があること

観護措置は「審判を行うため必要があるとき」とされていることから、審判を行う蓋然性のある場合でなければなりません。

4.観護措置の必要性が認められること

観護措置をとる実質的な必要性として、次の事由のうちいずれかの事由が存在していればよいとされています。
(ア)調査、審判及び決定の執行を円滑かつ確実に行うため、少年の身柄を拘束する必要があること。
具体的にいえば、勾留の理由と同様に、住所不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかに該当し、身柄を確保する必要性があることです。
(イ)緊急的に少年の保護が必要であること。
少年が保護を必要とする状態にある場合、これを放置するのは相当ではなく、終局決定に至る間においても保護的措置をとる必要があります。
例えば、自殺自傷のおそれがある場合、家庭環境が劣悪で、家庭で虐待を受けたり悪影響を受けるおそれがある場合、不良集団等の影響により審判までに少年の非行性が急速に進行するおそれがある場合などです。
(ウ)少年を収容して心身鑑別をする必要があること。
心身鑑別の必要性とは、少年の更生に向けて、相応の心理検査や継続的な行動観察を踏まえて、その有する問題性全般について詳細な鑑別を行う必要性が高い場合をいうとされています。
心身鑑別に必要性のみで観護措置がとれるかについては、これを否定する見解もありますが、これを肯定するのが通説となっています。

観護措置は、家庭裁判所に事件が係属中であれば、いつでもとることができます。
一般的には、逮捕・勾留により身柄拘束中の少年の事件の場合は、当該事件が家庭裁判所に送致されたときに観護措置をとることが多くなっています。
逮捕・勾留されていな少年であっても、家庭裁判所に送致された後に、観護措置をとる必要性が認められれば、観護措置がとられる可能性もあります。

観護措置において、少年鑑別所に収容する期間は、原則2週間、更新が必要な場合にはさらに2週間更新されることになります。
しかし、実務上は、少年鑑別所において行われる行動観察や心身鑑別に相当の日時を要することから、通常の事件については、1回更新することが多く、ほとんどの事件で収容期間は1か月ほどとなっています。

このような長期間少年鑑別所に収容されることになると、当然少年が社会に戻った後の生活にも影響が出てきます。
ですので、不要不当な身体拘束は回避する必要があります。
一方、観護措置の趣旨は、少年の心情の安定を図りながら心身鑑別等を行うことにあることを考慮すると、少年にとって外界から離れた環境で事件や自分自身と静かにゆっくりと向き合うことができる重要な機会とも言えます。
どちらが少年の更生にとって適切であるかは、少年や事件によっても異なりますので、少年事件に詳しい弁護士にぜひご相談ください。

お子様が事件を起こしてしまい対応にお困りであれば、少年事件・刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。