捜査の端緒~被害届・告訴・告発~
捜査の端緒(被害届・告訴・告発)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県三田市にあるマンションに住むAさんは、マンションの駐輪場に原付を止めていましたが、大型のバイクの止め方が気に食わず、怒りに任せてバイクを蹴って倒してしまいました。
Aさんは、倒したバイクを起こすことなくそのまま放置してその場を立ち去りました。
バイクの持ち主も、最初はたまたまこけたのかと思っていましたが、その後も何度かバイクが倒れていたため、誰かが故意にやっているのではないかと思い、兵庫県三田警察署に相談に行きました。
マンションに警察官が来ているところを見たAさんは、自分が被疑者として調べられているのではないかと思い、気が気でなりません。
(フィクションです)
捜査の端緒
捜査は、捜査機関が「犯罪がある」と考えるときに開始されます。
そのように考えるきっかけを「捜査の端緒」と呼び、概ね次のものが挙げられます。
①被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
②警察官による現認、職務質問、取調べ
③犯人の自首
被害者や被害関係者の届出、告訴・告発
事件の被害者が警察に被害届を提出したり、告訴を行ったり、関係者からの告発があった場合に、当該事件が捜査機関に発覚するケースは少なくありません。
(A)被害届
犯罪被害者が、捜査機関に対して、犯罪による被害の事実を申告する(被害届の提出)ことにより、捜査が開始される場合があります。
(B)告訴
犯罪の被害者及びその他の告訴権者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その訴追を求める意思表示を「告訴」をいいます。
被害届が犯罪事実の申告行為のみであるのに対して、告訴は犯人の訴追・処罰を求める点で異なります。
告訴は、犯罪事実に対して行うものであって、犯人に対して行うものではありません。
ですので、告訴の内容としては犯人の特定は必ずしも必要ではなく、判例は、親告罪である名誉棄損被告事件において、告訴には必ずしも被告人の氏名を指定する必要はないとしています。
告訴することができるのは、原則、犯罪被害者と被害者の法定代理人です。
告訴することができるのは、犯人を知った日から6ヶ月です。
告訴は、書面または口頭で、検察官または司法警察員に行い、告訴は、公訴の提起があるまで取り消すことができます。
しかし、いったん取り消した後は、再度告訴することはできません。
告訴は、親告罪においては特に重要な意味を持ちます。
「親告罪」というのは、告訴がなければ公訴を提起することができない罪のことです。
例えば、未成年者略取誘拐罪、名誉棄損罪、侮辱罪、過失傷害罪、器物損害罪などです。
(C)告発
告発は、第三者が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追・処罰を求める意思表示です。
告発の手続や効果は、告訴の場合に準ずることになりますが、代理人によることができないこと、期間の制限がないこと、起訴後の取消や取消後の再告発が禁止されていないことが異なります。
被害届の提出、告訴がされたら
被害者等から捜査機関に被害届が提出されたり告訴された場合、捜査機関は捜査を開始します。
捜査機関が被疑者を特定し、逮捕の要件を満たすと判断されれば、被疑者を逮捕することもあります。
しかし、捜査機関に事件が発覚する前に、被害者との示談が成立し、被害届の提出や告訴を行わない旨の約束ができれば、捜査機関が捜査を開始することもなく事件は終了します。
被害者等が既に被害届を警察に提出していたり、告訴をしてしまっていた場合でも、早期に被害者との示談を成立させ、被害届や告訴を取り下げてもらえれば、不起訴処分となる可能性も高まります。
このように、事件の早期解決には、被害者との示談の有無が大きく影響するわけですが、加害者が直接被害者と示談交渉することは困難です。
なぜならば、元々被害者と加害者が知り合いであるといった場合や被害者が加害者と連絡をとりたいと申し出る場合を除いて、捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えることはありません。
また、加害者に対する恐怖や嫌悪感から加害者と直接連絡をとることを承諾する被害者も少なく、加害者が被害者の連絡先を入手することは極めて難しいのです。
ですので、被害者との示談交渉は弁護士に任せるのが一般的です。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもよいと回答する被害者の方も多くいらっしゃいますし、当事者同士であれば感情的になりがちな話し合いも、代理人を立てることで冷静にすすめることができます。
あなたやあなたのご家族が刑事事件を起こし、対応にお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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