通貨偽造罪・同行使等罪で逮捕
通貨偽造罪・同行使等罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
会社員のAさんは、自宅でインクジェットプリンターを使い、一万円札10枚を偽造し、偽造した一万円札を使用して兵庫県伊丹市にある店でブランドの時計を購入したとして、兵庫県伊丹警察署に通貨偽造罪・同行使等罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)
通貨偽造罪とは
10月の増税や来年のオリンピック・パラリンピックの開催を機に、キャッシュレス決済が推進される今日ですが、私たちの生活において、お金は必要不可欠です。
物やサービスを購入するためには、お金を支払う必要があります。
お金には価値があるとの信用があるからこそ、私たちの経済取引は主にお金を用いて行われています。
しかし、もしそのお金の偽物が多く出回り、お金に対する信用が失われたとしたら、私たちの生活は様々な面でうまく回らなくなってしまいます。
そこで、お金の価値やその信用性を守るため、刑法は通貨偽造の罪を規定し、通貨の偽造等を処罰の対象としています。
通貨偽造の罪としては、通貨偽造罪・同行使等罪、外国通貨偽造罪・同行使等罪、偽造通貨等収得罪、以上の罪の未遂罪、収得後知情行使罪、通貨偽造等準備罪が規定されています。
ここでは、通貨偽造罪・同行使等罪について解説します。
通貨偽造罪・同行使等罪は、刑法第148条に次のように規定されています。
第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
通貨偽造罪
通貨偽造罪は、行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した場合に成立する罪です。
(1)客体:通用する貨幣、紙幣又は銀行券
「通用する」とは、事実上流通していることではなく、日本において強制通用力を有するという意味です。
古銭や廃貨は強制通用力を失っているので、通貨ではありません。
「貨幣」は、いわゆる硬貨で、「紙幣」とは、政府のは行する貨幣に代用される証券のことですが、現在紙幣は発行されていません。
「銀行券」とは、政府の認許によって日本銀行が発行している貨幣に代用される証券のことで、一般に紙幣と呼ばれているのはこの銀行券です。
通貨偽造罪における「通貨」は、貨幣・紙幣・銀行券の総称です。
(2)行為:行使の目的をもって偽造し、または変造すること
行使目的の「行使」は、神聖な通貨として流通におくことです。
他人に行使させる目的でもよく、行使目的があれば偽造通貨が流通に置かれる有意な危険が発生するので、成立要件とされています。
「偽造」とは、通貨の製造・発行権限を有しない者が、一般人をして、真貨と誤信させるような外観のものを作り出すことをいいます。
ですので、真貨に似てはいるけれども、一般人の注意力をもってすれば真貨と誤認しない場合は偽造ではなく、模造となります。
また、「変造」とは、通貨の製造・発行権限を持たない者が、真貨に加工して真貨に似た物を作成することをいいます。
偽造通貨行使等罪
偽造・変造した通貨を行使、又は行使目的で人に交付し、若しくは輸入した場合に成立する罪です。
(1)客体:偽造又は変造された貨幣、紙幣又は銀行券
行使の目的をもって偽造・変造されたことを必要とせず、また、誰によって偽造・変造されたかは問われません。
(2)行為:行為、行使目的による交付、行使目的による輸入
ここでいう「行使」というのは、偽貨を真貨として流通に置くことをです。
人に対して直接行使される場合だけでなく、自動販売機での使用も行使に含まれます。
「交付」とは、偽貨であることを告げ、又は偽貨であることを知る者に偽貨の占有を移転することをいいます。
また、「輸入」は、国外から国内に搬入することをいいます。
偽造通貨行使等罪は、偽貨を真正なものとして流通に置いた時点でただちに既遂となります。
通貨偽造罪・同行使等罪は、その法定刑が「無期又は三年以上の懲役」であり、裁判員裁判対象事件です。
裁判員裁判は、通常の刑事裁判と異なる手続となりますので、早期に刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。