放火事件で逮捕されたら
放火事件(現住建造物等放火罪)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県美方郡香美町にある実家に火をつけて全焼させ、不慮の火災を装って保険金の支払いを受けようとしたとして、兵庫県美方警察署はAさんを現住建造物等放火および詐欺未遂の容疑で逮捕しました。
Aさんは、調べに対して、「家を燃やそうと思って火をつけたのではない。脅しのつもりだった。事故だった。」と供述しています。
(フィクションです)
放火罪について
放火罪は、不特定または多数の人の生命、身体、財産に対し、火力によって危険を生じさせる公共危険罪です。
放火罪は刑法に規定されており、放火罪には、幾つかの種類があります。
1.現住建造物等放火罪
第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
現住建造物等放火罪の構成要件、つまり犯罪として処罰される行為の類型は、
①放火して
②現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を
③焼損したこと
です。
客体:現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑
「人」というのは、犯人以外の者であって、犯人の家族も含まれます。
「住居に使用」とは、放火行為当時現に犯人以外の人が、起臥寝食の場所として日常的に使用することをいい、放火行為の当時犯人以外の人が現在すると否とを問いません。
「建造物」とは、家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するものをいいます。
建物の一部のように見えても、毀損せずにとり外すことができるものは、「建造物」ではなく、器物損壊罪の「器物」となります。
例えば、布団、畳、障子、襖、カーテン等は「建造物」には含まれません。
上記ケースでは、Aさんが実家に火をつけたと疑われているわけですが、Aさんがこの家に家族と同居しているしていないにかかわらず、火をつけたときに誰もこの家にいなかったとしても、誰かがこの家で日常的に生活をしているのであれば、「現に人が住居に使用する建造物」に当たります。
行為:放火して客体を焼損すること
「放火」というのは、故意によって不正に火力を使用し物件を焼損することです。
積極的な放火行為に及んだ場合に放火罪が成立することが通常ですが、そうでない場合にも放火罪が成立する場合もあります。
この点、不作為による放火について、判例は、自己の過失により物件を燃焼させた者が、その既発の火力により建物が焼損してしまうことを認容する意思があるにもかかわらず、あえて必要かつ容易な消化措置をとらない行為は、不作為による放火行為といえるとして、不作為による放火を認めています。(最判昭33・9・9)。
ですので、火の不始末などが原因で着火させてしまった本人が、建物等の火が移り焼損させてしまうおそれがあることを知りながら、消火活動や消防署への通報をせずに、そのままにした結果、建物等が焼損した場合には、放火罪が成立することになります。
上記ケースでは、Aさんは火事は事故だったと言っていますが、仮にAさんが積極的に放火したのではなく、何らかの形で建物や媒介物に着火させてしまったとしても、消火活動を行わなかったり、119番通報しせずに放置した結果、実家を全焼させてしまったのであれば、不作為による放火罪が成立する可能性があります。
現住建造物等の「焼損」によって、現住建造物等放火罪は既遂になります。
この「焼損」の意義については、いくつかの見解が主張されていますが、判例は、独立燃焼説の立場を採っています。
独立燃焼説は、火が媒介物を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点を「焼損」とする、という考え方に基づいています。
現住建造物等放火罪の成立には、人が現に住居として使用していること、または他人が現在する建造物であることの認識、そして放火によりその客体を焼損させることの認識があったことが必要です。
現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑、無期又は5年以上の懲役と非常に重い犯罪です。
また、現住建造物等放火罪は、裁判員裁判の対象事件となります。
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